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鈴木成一賞 狩野岳朗個展「あるいは、ガランとした空洞」

HBファイルコンペvol.23 大賞展5週目は鈴木成一賞を受賞された狩野岳朗さんです。
狩野さんはファイルコンペ初参加で見事に大賞を受賞されました。
普段は、高円寺でアンティークや古道具を中心に扱うお店、IONIO&ENTAを経営しながら作品を制作されています。

— 鈴木成一賞、おめでとうございます。受賞を聞いた時、どんなお気持ちでしたか?

びっくりしました。まさか…と。
嬉しくって、小躍りしました。

— 小躍り!こちらもうれしいです。HBファイルコンペは初めて応募されたんですよね。

毎年毎年、出したいとは思っていたんですが、いつも時期を逃してしまっていたので
今年は絶対に出そう!と思っていました。それで賞を頂けたので本当にうれしかったです。

— 普段は絵の制作だけでなく、お店も経営されていると聞きました。

2年程前から店をはじめました。
古びた感じのノートなど商品として作って売っています。

— 狩野さんの絵も売っているのですか?

自分の絵も…置いてはあります。嬉しいことに、時々買ってくださる方がいて。
最初は、絵とは全く関係のない別のものとして店をやっていこうとしたのですが、
一人で絵も店も両方やっているので、どんどんくっついてきました。

— 絵を描くアトリエのような場所はあるのですか?

絵は家で描きます。
理想的なのは、週の半分店を休みにし、その空間をアトリエとして使えたらなと思います。
半分は店で、半分は店をアトリエに。

— 居心地の良い空間なのですね。絵はいつ頃から描かれているのですか?

絵は独学でずっと描いていました。
美大に行きたかったけど、行けなかったから今も描いているのかなと。
行ってたら続けていなかったかも。
20代前半は女の子の絵ばかり描いてました。パソコンで色をつけた漫画っぽい絵を。

今の作風になった最初のきっかけは、
部屋に飾るための木の絵を描こうと思って描き始めたんです。
熊谷守一が好きで、その真似のような絵を描いて飾っていました。

守一が晩年、「これから何が描きたいですか」という問いに対し、
「命ですかね。長生きしたいです。」というようなことを言っていたのが、
ずっとひっかかっていて。
ある時、枝を見ていたら、陽に向かってまっすぐ生えればいいのに、
いろんな方向に向かって生えている、それは命の形を表しているのかと。
それから木の枝を描くようになりました。

木の枝や木々の絵を描いてるうちに、だんだんと形が変わってきて。
またある時から、自分の手相が木の枝みたいにも見えてきて、
(手を見て)ここでスケッチができる、と思ったんです。
手相でスケッチブック1冊分を描いてみたのですが、結局絵にはなりませんでした

—  手相を見ながら絵を描くというのは、なかなか無い発想です。
絵にはならなかったけれど、その後も描くことは続けていたのですね。

 

ずっと一緒に絵を描いてきた友人は、ダメな時も絵を描くし、ダメな絵も自分なんだ、
という話しをしてくれたのですが、自分の場合はそれができなくて。
気持ちが乗らないと描けないんです。
今回展示した作品の中に、自分ではいいと思うし好きなんだけど、
この作品を外に出すのは怖い…というものがあったんです。
なんだこれは?と言われたらすごく落ち込むなぁ…と思って。
でもその作品を鈴木成一さんが「いいね」と評価してくださってすごく嬉しかったです。
自信になりました。気持ちよく描いていればいいんだ、
細かい描写で時間をかけて描けばいいというものでもないんだなと。
小手先で描くのではなく、”気持ち”が大切なのかもしれないと思いました。
 

— それは嬉しいですね。気持ちよく描いた絵は見る人にもきちんと伝わるのですね。

最後になりますが、今後はどのような活動をしていきたいですか?

コンペにはこれまでも応募してきたので、今後は絵でお仕事をしていきたいなと思っています。
最近、”アート”や”現代美術”と呼ばれているものと、”イラストレーション”と呼ばれているものが、
違う場所にあるんだなというのが気になっていて。
アート作品を扱うようなギャラリーで、何十万、何百万という価格がつけられている作品がある一方で、
HBギャラリーのように、イラストレーションを扱うギャラリーでは1~2万円でも作品が買えたりする。
もちろんバックグラウンドの違いや絵画とイラストでは目的が違うのかもしれませんが、
これはどういうことなんだろう?と思ったんです。
これからの活動では”アート”と”イラストレーション”の真ん中くらいのことが、
何かできたらいいなと思っています。
どこのジャンルにいるとか関係なく、絵を通していろんなお仕事をやっていきたいです。

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