HB Gallery

Blog

大竹守個展「PUNK / 生きる 3」

今週の作家さんは大竹守さんです。約2年ぶり3回目の個展となります。
大竹さんならではの、疾走感溢れるタッチで描かれた太宰治の生涯。数々のエピソードと共に、太宰の生き様を体感するような展覧会となりました。大竹さんの最近手掛けられた装画、末井昭『自殺』や田中慎弥『宰相A』などの原画も展示しております。ぜひ多くの方にご覧いただきたいです!

 

 

— 今回も、ものすごい作品数ですね。テーマはなぜ太宰治なのですか?

今回急遽個展の開催が決まり準備期間が非常に短かったため、どうしよう間に合うかな?間に合うかな?間に合うかな?間に合うかな?と相当苦悩しました。そしてこの「間に合うかな?」という感覚をどこかで経験したことがあるぞこれは『走れメロス』じゃないか!と。そういえば以前仕事で『走れメロス』の装画をたくさん描いたっけ、それじゃあテーマは太宰にしようと。『走れメロス』の仕事の経緯はというと、2012年『PUNK/生きる1』で『人間失格』の文庫本160冊を自分で装丁し『勝手に人間失格フェア』と称して展示をしたのですが、その個展の直後に個展のことをまったく知らない方から偶然『走れメロス』の仕事の依頼が来て、もしかして太宰を呼んじゃったのか?と怖かったんですが、以来、太宰のことは強く意識していました。もしかしたら太宰に憑依されてるかもしれませんw

 

「勝手に人間失格フェア」写真

 

— 大竹さんにとって、太宰治はどんな存在なのでしょうか?

そもそも太宰初経験は教科書に載っていた『走れメロス』で「なんだか説教くさい話だな」という印象でした。その後まったく読まず、青年期に「太宰太宰」言ってる太宰大好き人間のことを「太宰太宰うるせえな、辛気くせえなまったく」と思っていました。30代半ばにして絵を描きはじめ、生活に行き詰まり、自分がそろそろ太宰が死んだ年齢(38歳)に近づこうとする頃、そういえば読んでなかったなと、初めて『人間失格』を読んだんです。そしたらものすごく面白かったんです。主人公が絵描きという設定で自分と重ね合わせたのかもしれません。

その頃つきあった婦女子が多少メンヘラ気味の太宰好きだったため、毎年6月の桜桃忌に太宰の墓参りに一緒に行ったりしていたんです。その太宰好きの婦女子にはよく「太宰みたいだね(内面の屈折具合が)」とか言われていました。

その太宰好きの婦女子とは5年ほどつきあい、自分が装画を描いた『走れメロス』が発売されたそのすぐ後に別れました。今思い出しましたが『走れメロス』発売記念にその婦女子にお祝いをしてもらえることになり、そのスケジュールの調整の過程で色々もめ事があって痴話喧嘩となりそれが引き金となって大喧嘩して最終的に別れました。(以前から別れる別れないの修羅場を幾度となく繰り返していたためそれが直接の原因ではないですが)もしかしたらその婦女子と別れたのも太宰に憑依されたせいかもしれないですねw

 

 

 

 

— 大竹さんは近年、装画を描く機会が増えたと思うのですがどれもぴったりないいお仕事ですね。
それぞれの本にまつわるエピソードをお聞かせ頂けますか?

●末井昭『自殺』
2013年のHBファイルコンペ藤枝リュウジ賞個展『PUNK/生きる2』の後、末井昭さんの『自殺』の装画の依頼が来ました。装丁は鈴木成一デザイン室です。太宰は最終的に自殺したので、今回の太宰がテーマの個展に、末井さんの『自殺』の原画も違和感なく展示できると思いました。初日には末井昭さんと、現在の奥さんで写真家の神藏美子さん(最近『たまきはる』を出した)も来ていただきとてもうれしかったです。『自殺』は悩める現代人必読の名著なので1人2冊は買うべきですね。末井さんにサイン本もわざわざ作ってもらったので欲しい人はお早めに。(残りわずかです)

 

 

大竹さんが書いた『自殺』推薦文

 

 

●田中慎弥『宰相A』
2013年TIS公募で大賞をとり授賞式のスピーチで酔っ払って長々とスピーチし今では何を話したかほとんど忘れてしまったのですが、たしか「大賞受賞が自分には身分不相応で肩の荷が重いけれども、せっかく審査員のみなさんに選んでいただいたので(辞退するわけにはいかず)いただきておきます(もらっといてやる)」みたいな発言をして「田中慎弥の芥川賞受賞会見みたいだな」と言われた記憶があります。その田中慎弥さんの本の装丁の仕事が自分に来たのも不思議な縁で面白いです。

 

 

— 今回の個展も、極限まで出し切った感があり、大竹さんのPUNK精神を感じました。展示した感想をお願いします。

唐仁原教久さんも新潮文庫の太宰治シリーズを手がけています。その唐仁原さんのHBギャラリーでテーマが太宰の個展ができてとてもうれしいです。太宰のすごいところは、常に死を鼻先にぶらさげて全力疾走しているにもかかわらず、なおかつユーモアにあふれているところです。『人間失格』執筆時の太宰は本当にもうヘロヘロでいつ死んでもおかしくない状態にあったのに『人間失格』の中には笑ってしまうくらいにユーモアがあふれているんです。

実は、昨年1年間ずっと調子が悪く仕事以外で絵をほとんど描かず、絵から逃げていました。もしかしたら、今回突如個展を開催することになったのも「絵から逃げるな、ちゃんと走れ(描け)」という太宰からのメッセージなのかもしれません。今もまだ自分に太宰が憑依しているかどうかはわからないですが、自分も太宰を見習い権威に媚びることなく、PUNK&ユーモア精神で今後も突っ走り続けたいと思います。

元気で行かう。絶望するな。では、失敬。(太宰治『津軽』より)

 

 

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

*

次のHTML タグと属性が使えます: <a href="" title=""> <abbr title=""> <acronym title=""> <b> <blockquote cite=""> <cite> <code> <del datetime=""> <em> <i> <q cite=""> <strike> <strong>

コメントフィード

トラックバックURL: http://hbgallery.com/blog/2015/04/04/%e5%a4%a7%e7%ab%b9%e5%ae%88%e5%80%8b%e5%b1%95%e3%80%8cpunk-%e7%94%9f%e3%81%8d%e3%82%8b-3%e3%80%8d/trackback/