日下潤一賞 藤井紗和個展「焼かれた魚」
HBファイルコンペvol.25 大賞展ラストを飾るのは、日下潤一賞を受賞された藤井紗和さんです。
ご自身初めての個展開催となりました。作家・小熊秀雄の童話『焼かれた魚』をテーマに、藤井さんならではの深みのある色彩と、引っ掻くように描かれた線で、繊細かつ大胆に表現されました。見る人の気持ちにそっと寄り添うようなあたたかい作品です。1匹の魚が主人公の、せつないお話とあわせてぜひお楽しみくださいませ!
— 今回は『焼かれた魚』という童話をテーマにされていますが、このお話を知ったのは何がきっかけでしたか?
この童話を書いた小熊秀雄という作家が、私の生まれ育った旭川に縁の深い詩人で、小学生の頃通っていた市民プールのある公園に小熊の言葉が刻まれた詩碑があるのですが、大人になるまで読んだ事がなく、家にあった小熊の童話をまとめた本で初めてその作品と出逢いました。
暗く救いがないお話しで衝撃を受けたのを覚えています。
ただ暗く悲しい中に、何かひっかかるものがあり、とても印象に残っていました。
— 地元に愛されていた作家さんなのですね。今回、藤井さんはまず物語を読んで、そこからイメージを膨らませるように描いていったのですか?
一番最初は、童話の頭から順にシーンを描いていたのですが、並べたときに面白くなさそうな状態になっていました。
一度リセットをし、全体の構成を考えてからまた新たに描き進めました。
— 文章を読み絵を描くという作業はやってみていかがでしたか?
最初は説明の図のようになってしまったのですが、だんだん1枚の絵としておもしろくしていかなきゃと思い苦労しました。
— 日下潤一さんの賞を受賞したときは、どんなお気持ちでしたか?
びっくりして、これはどっきりなのかと思うくらいでした。まさかそんなことが起きるとは思ってもおらず、身に余る光栄で展示が近づくにつれて、実感とプレッシャーが湧いてきました。
— この手法ではいつ頃から描かれているのですか?
昨年の12月のコンペに向けて制作しているときに、初めて描きました。
— この手法にはどのように辿り着いたのですか?
それまで自分なりの画材に出会えておらず、絵をおもいっきり描くという事が出来ずにいたのですが、唐仁原さんに「クレヨンで描いてみたら大胆になれるよ」と、言って頂いていた事があり、チャレンジしてみました。
それからは自分なりに試行錯誤しました。
道具や材質が変わると生まれてくるニュアンスが変わる事に気付き、試してみるごとに発見があり、新しい表情が生まれてきました。
— この手法の魅力、おもしろさはどんなところにありますか?
自分の性格上、白い紙にペンで描くときよりも、この描き方だと割とおもいきり大胆に描けます。プラスから引いていく感じが自分の性格に合っているなと感じています。
— 今回、初個展とのことですが制作してみていかがでしたか?
あまりの緊張感で、皆さんこんなことをされていたのだなと、初めて知りました。
でもとても濃密な時間になりました。
— 今後お仕事ではどのようなものをやってみたいですか?
やらせて頂けるなら、何でもトライしてみたいです。装画や挿絵などもいつか描いてみたいです。
審査員の日下さんと。
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