小池ふみ個展「Small Things」
HBギャラリーで2023年最後の展示を飾ったのは小池ふみさんです。
些細な出来事をひとつひとつ受け止める心や、
小さなものに優しく語りかけるような視点を感じられる作品がずらりと並びました。
小池さんのお人柄が暖かく滲んだタッチをこちらのブログでもお楽しみください!
展示作品はオンラインショップでお取り扱い中です。
http://hbgallery.shop-pro.jp/
ー小池さんはHBギャラリーでは8年ぶりの発表となりました。
会期が決まってからは、どのようなお気持ちで準備を進めて来られたのでしょうか。
また、クライアントワークと並行して個展作品を制作される中で
気持ちの切り替えであったり時間配分など、
個展準備のために意識されたことはありますか?
東京での個展の開催自体が8年ぶりだったので、
時が経つ早さに驚くと同時に、そろそろやらなきゃという気持ちでした。
8年前の個展も最近のことのように思えますが、
それでも振り返ると、自分の環境はとても変化していて、
その間にさせていただいたお仕事や出会えた人たちのことがたくさん頭に浮かびました。
毎日、仕事やこどもたちとの生活に慌ただしく、
今の自分を見つめる時間をなかなか取れていなかったので、
個展に向けて制作をすることで、一度この機会に内省の時間をとってみよう
というのが個展の動機にもなりました。
1年くらいの時間があったにもかかわらず、
やはり期日が迫られるものを優先してしまう癖が厄介で、
なかなか個展作品の制作は進みませんでしたが、
もうこの日は個展のことだけやる日!と手帳に書いたり、
夫にこどもの託すことで集中する時間を普段より多く用意したりなど
家族の協力ももらいながら進めていきました。
今回の個展のテーマは実生活の延長線上にあり、
日常からインスピレーションをもらいながら制作していったので、
ある意味、生活と制作の気持ちの切り替えはあまり必要ないものでしたが、
時間を作ることが一番大変だったかもしれません。
ー展覧会タイトル「Small Things」のようなささやかな物事を、
忙しい日々の中でも取りこぼさないために、
小池さんが普段から心がけてらっしゃることはありますか?
なんでしょう…そういう本当にすぐ忘れてしまいそうな小さな発見とか
ちょっと心が動いた出来事や風景なんかがないと、
私の場合は、体調を崩したり心がぎすぎすしたりしてしまうんだろうなと思います。
心掛けているわけではないですが、心身元気でいるためにも、
小さなことに素直に感動したり心を動かしていたいと思っています。
こどもと一緒に過ごしたり、自然や生き物と触れ合うと
そういうことに気付かされることが多いなと感じている最近です。
ー小池さんは現在お2人のお子様を育てながら
イラストレーターとして数々のお仕事を手がけられています。
子育てとお仕事を両立させるために、
制作面で何か工夫されていることはありますか?
また、お子様を出産されてから描く意識に何か変化はありましたか?
こどもが家族に加わる前までは、自分次第で夜遅くまで続けることも
休日なく仕事することもできマイペースにやれていましたが、
今はこどもたちが保育園に行っている時間と
寝かしつけで一緒に寝落ちしなかった夜だけが制作できる時間。
こどもの体調にも大きく左右されるので、できるだけ前もって進めて余裕を持たせたり、
時間に対してはとてもシビアに考えるようになりました。
自分の体調管理の意識も変わりましたね。
とにかく睡眠はしっかりとらないともうダメですね。
こどもの影響だけではないかもしれませんが、
以前よりのびのびと素直に描かれている絵が気持ちよく感じられるようになり、
自分も以前より素直に描きたいと思うようになりました。
前はスタイルのようなものを意識しすぎて悩みがちだったかも…。
ープロのイラストレーターとして仕事を進める上で
小池さんが大切にされていることはありますか?
社会に出て就職をしたときに初めて、
私は仕事をするのが好きなんだと気が付きました。
1人で何かを作っているだけよりも、
作ることを通して何かに出会ったり人や物事と関わることが楽しかったのです。
前職は自社で製造する鞄を自社で販売する会社に所属し、
販売を促進するためのWEBサイトやカタログなどを編集したりデザインしたり、
店舗のディスプレイや新店舗の内装、イベントの企画など、
まだ会社が小さかったので本当に様々なことを経験させてもらいました。
自社製品の魅力を伝えることが仕事だったわけですが、
同じ建物の中に製品を作っている職人もデザイナーもいて、
その技術も努力も人柄も目の当たりにして尊敬していましたし
伝えていく時には自分ごとのように思いが入る仕事でした。
そしてちゃんと物事を理解して気持ちの入った仕事をすると相手に伝わるということも
実感できた会社員時代でした。
その後、徐々にイラストレーターとして仕事をいただくようになり、
今はフリーランスで様々なお仕事に関わることになったのですが、
お声がけいただいた案件の、少ない情報の中でも自分が共感できる部分を見つけて
気持ちを高めて仕事に取り組むように心掛けています。
あとは、スケジュール面。現時点では家族のケアに傾ける時間も大きいので、
無理なスケジュールは極力立てないようにしています。
自分の場合は、気持ちと時間が大事だとようやくわかってきたので、
共感できる部分があるかどうか、制作時間に無理はないかをよく見極めることも
長く続けていくために大切なことなのかなと思っています。
ー小池さんが今後挑戦されたいことや、
展望などを是非お聞かせください!
いろんなことに興味が湧いて、やりたいことが浮かびやすいわりに
やる時間がいつもないという、落ち着きのないタイプなのですが、
来年の夏に少し都会を離れた場所に住まいを移すので、
身近な海や野山や生物にこどもたちと触れ合って、
そこから得たものを仕事にも反映させられたらと思っています。
しっくりくる言葉が書けるようになったら楽しいだろうなと思うので、
文章を書く訓練もしてみたいですね。
多様な出会いを楽しみながら、おばあちゃんになっても仕事をしていたいです。
インタビュアー 須貝美和
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