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HB FILE COMPETITION vol.34 河西達也賞 IQGM個展「ユウカ・リーの殺人事件簿」

HBファイルコンペvol.34 受賞者展、第5週目の作家さんは
河西達也さんの大賞を受賞されたIQGMさんです!

緻密に描き込まれた作品で、ストーリー仕立てに会場を構成していただきました。
いらっしゃったお客様は作品だけでなくストーリーにも興味津々。

今の作風となったいきさつ等もお聞きしました。

会場の様子をインタビューとともにお楽しみください!

一部展示作品はオンラインショップでもお取り扱い中です。
http://hbgallery.shop-pro.jp/

 

 

ー河西達也賞 大賞受賞、おめでとうございます。
受賞を知った時はどんなお気持ちでしたか?
河西さんに選ばれた感想もお聞かせください。

 

びっくりしました。同時にとても嬉しかったです。昨年、河西さんに選ばれていたこみひかるこさんの作品が大好きで、同じ審査員の方に選んでいただけたことはとても光栄でした。

ファイルコンペの審査員の皆さんのお写真がモノクロで、全員怖そうだなと思っていて笑、特に河西さんは怖そうだったので(すみません笑)、個展の際に直接お話しできるまではドキドキでした!とても気さくな方で、作品についてや作品以外のこともいろんなお話ができてとっても楽しい時間を過ごさせていただきました。本当にありがとうございました!

 

 

ー受賞されたIQGMさんのファイルはストーリー仕立てになっており、
ページをめくるたび、手に汗握るスリル満載の内容です。
IQGMさんご自身はファイル作りにおいて、
意識されたことや工夫されたことなどはありますか?

 

自分の作品は消費期限が短いと個人的には感じるので、当たり前かもしれませんが最新作を入れました。去年の11月に開催した個展の絵を中心に、枚数は多い方がいいかなと思ったので、個展以外の作品はそれと親和性のある作品だけを入れました。

 

 

ー受賞展「ユウカ・リーの殺人事件簿」では
IQGMさんが近年制作されている「わるさ」をしている人々(コアラ)のシリーズで描かれた
「小守優狩(こもりゆうかり)」を取り巻く物語が展開されています。
徹底的に描きこまれた11枚の作品が持つ力はもちろんですが、
過去の出来事がフラッシュバックするかのように質感の異なる紙に出力されていたり、
レシートなどの証拠品、事件現場を示す地図までもが展示されていたり
物販では捜査資料のZINEまで用意され
展覧会に対するIQGMさんの大変な熱意とこだわりを感じます。
捜査資料や押収品などのアイデアは作品を描く前からあったのでしょうか?
IQGMさんの絵のストーリーはどのように生まれるのでしょうか?
文章は書かれたりされますか?

IQGMさんの創作の背景をお聞きしたいです。

 

 

昨年の個展が終わってから次の作品は刑事物を描きたいとずっと思っていたので、受賞した時からふんわりと構想はありました。

小守優狩は一度しか描いた事が無かった人物でしたが、なぜか心に残っていたので、彼の人生は本当に逮捕される運命が正解だったのか、どんな人生を送った人なのかを考え始め、逮捕されなかった世界線を信じてみたのが今回の個展のストーリーの始まりです。

捜査資料や相関図、証拠品などの展示のざっくりとした「やりたいこと」は2月か3月ごろには決まっていて、それをベースに4月くらいから物語を考え始めました。私が大好きなドラマ「相棒」や「古畑任三郎」「BORDER」「SHERLOCK」「The Killing」などの(あげたらキリがない)刑事ドラマの事件の構造を書き出して参考にしたり、小説を描くためのミステリー入門的な本を読んだりもしました。

事件は時系列で考えて、とにかく紙に書き出しました(言葉で)。考えるうちに物語が複雑になると、個展の規模や絵を描ける時間が限られていることから簡素化しようとしてしまい、登場人物たちに不自然な行動をさせてしまったりして、それは良くないな、まあ複雑でも仕方ない、この人物はこう考えてるんだから、私が頑張って描けばいいと思って描きました。結果、とんでもなく複雑な話になり笑、描きたかったシーンが他にもたくさんあったのですが、ギリギリ話の内容がわかる範囲でシーンを切り取る形となりました。このギリギリ話の内容がわかる、のギリギリのラインを攻めるラフが本当に大変で、またどうしてもドラマで見たことがあるような構図になってしまい、これは反省点なのですが一つ一つのイラストレーションとしての面白みには欠ける展示になってしまったかなと思います。コントとしてはまあまあ成り立ってはいるけど、大喜利としてはイマイチだったかなと……これはリベンジしたいです。話を考えるのも小学生の時に考えた漫画ぶりだったので、その辺りも修行したいなと思います。

また、デジタル作品なのでアウトプット方法については考えるところがありました。元々自分の作品を額装することはしっくりきていない(画風と合わない気がする)ので、額装以外の選択肢で…となるとこれまた限られていて、これについてももっと他の作家さんの展示を見に行ったり印刷所の方と相談したりしながら模索していきたいです。今回は和紙に出力したのですが、これはすごく良かった気がします。和紙のアイデアをいただいたのはHB WORKのグループ展で一緒だった安里貴志さんで、安里さんは木材や布に出力されていたりして、どれも作品とマッチしていて素敵です。

 

 

ーIQGMさんの作品はいくつもの線が集積されたハッチングによる描写で、
背景の隅々にまで丁寧に描きこまれた密度の高い作品です。
iPadで制作されているとお聞きしていますが
アナログで制作されていた時期はありますか?
現在の画風になった経緯などお伺いできますでしょうか。

 

デジタルは中高生の時から始めていて、当時はアナログで制作もしていましたし、今も本当はアナログで制作したいと思っているのですが、まだ技量が足りなくて挑戦できてないです。

現在の画風は、パレットクラブスクールに通っていた時に動物を擬人化して描く課題があった時くらいからで、コアラは在学中にインスタのフォロワーさんからコアラを描いてほしいとご依頼をいただいたことがきっかけです。

 

 

ーIQGMさんが今後挑戦されたいお仕事や活動、
イラストレーターとしての展望などをお聞かせください。

 

仕事としては啓蒙系のポスターや広告などに挑戦してみたいです。装画や挿絵も好きなので、引き続きやっていけたら幸せな仕事です。

今回の展示では、一応事件の全貌を把握できるような内容にしていましたが、謎解きができる展示と銘打ってはいませんでした。ですが、来ていただいた方の中には事件を解決するために展示を何周もしてくださった方がたくさんいらっしゃったのがすごく嬉しかったです。次回個展をする際には、絵だけでなく立体や音なども取り入れて、謎解きを本格的にできるインスタレーションのような展示に挑戦してみたいと思っています。

 

 

インタビュアー 須貝美和

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