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HB FILE COMPETITION vol.34 鈴木成一賞 南景太個展「Quantum」

今回ご紹介するのは、HBファイルコンペvol.34 受賞者展、
鈴木成一さんの大賞を受賞された南景太さんの展示です!

2024年8/16~8/21に開催された個展では、
南さんの新しい境地である光を取り入れた作品が数多く並びました。

一部展示作品はオンラインショップでもお取り扱い中です。

http://hbgallery.shop-pro.jp/

 

 

 ー鈴木成一賞 大賞受賞、おめでとうございます。
受賞を知った時はどんなお気持ちでしたか?
鈴木成一さんに選ばれた感想もお聞かせください。

 

受賞を知った時は「まさか!?」と思いました。私は今までトータル10回くらい応募して3次選考まででしたので「最終選考いけたら前進だ」なんて思っていた所、まさかの3弾跳びで大賞!
ましてやセツに通っていた20年以上前からお名前やお仕事を存じ上げていた装丁界のレジェンド・鈴木成一さんの賞ということで、「こんな日がくるとは。。」ととても感慨深かったです。

 

ー個展会場でも目を引く光るシリーズは
鈴木成一さんからも「巧みに操られた光の演出が、そこに奥行きある物語を紡ぎ出している。」と評されています。こちらの光の表現はファイルコンペの搬入直前に偶然発見されたそうですね。
こちらのシリーズが生まれてから
ファイルコンペの応募作品は軌道修正などされたのでしょうか。
ファイル作成にあたり、南さんが工夫されたことや、意図されたことなどはありますか?

 

光るシリーズはファイルコンペ搬入の1ヶ月前に偶然うまれました。最初はPhotoshopの画面上で、白い背景に人物のパーツとなる素材(頭、上半身、下半身)を適当に並べ、何となく消しゴムツールで輪郭をぼかしながら消していました。すると、何だか体が発光しているように見えてきたのです。「体が発光する人物画って、おもしろいかも」と思いそこからイメージを掘り下げていって、一つ目の作品が出来上がりました。
そしてコンペ搬入に間に合った光シリーズ4作品を入れて応募したのですが、その後鈴木さんから大賞の決め手となったのは「光るシリーズ」だと伺い、ギリギリ滑り込んだということを知りました!ファイルの順番は日常から非日常へと誘うようなイメージで、カラフルな昼間のシリーズからスタートして背景が黒い夜のシリーズ、そして光るシリーズへと繋げていきました。

 

ー個展会場では大賞受賞後の鈴木成一さんとのお仕事、
ブコウスキー新装版シリーズの原画も展示されています。オリジナリティのある独自の世界を描かれる南さんが
装画や挿絵など、自分以外の他者の創作による物語の絵を描くときは
どのような意識で制作されるのでしょうか?
南さんの世界に引き込むイメージですか、
もしくは南さんが他者の世界に降り立つようなイメージでしょうか。
南さんの意識やイメージをお聞きしたいです。
 
 

私が物語の絵を描くときは、語られていない場面だったり、その物語から少しだけずれた世界(パラレルワールド)を描いているような感覚で描きます。物語の大事な核は共有しているけど、ところどころ違う世界。そういう感覚でイメージを泳がせると自分自身もワクワクしながら描くことができます。
そういう意味では、まず「他者の世界に降り立ち」そこから「自分の世界に引き込む」ような感じかもしれません。・・・もちろん「飛躍しすぎなのでボツ」と言われたら、すぐに別案を考えますので仰ってください!!
 
ー受賞展では南さんのこれまでの変遷が楽しめる展示構成になっています。
南さんはセツモードセミナーへ通われていた頃からクレヨンで描かれ、
アナログとデジタルを行き来される現在でも、クレヨンやオイルパステルを活用されています。
様々な技法を研究されてきた南さんにとって、クレヨンやパステルはどのような存在でしょうか?
 
クレヨンやオイルパステルは、「直接的で包容力のある画材」だと思います。
絵具や色の表現が苦手だった10代のころはずっと鉛筆・シャーペンで絵を描いたのですが、20歳のときに偶然使った「サクラクレパス」が感動的に楽しく、そこから20年以上ずっとクレヨン・オイルパステルをメイン画材として使い続けています。
筆などの道具を介さずに、直接手から色が出るような感覚的な使い心地も好きでした。スポーツでも道具を使うテニスや野球は苦手だったのですが、バスケやサッカーは比較的得意で好きだったので、直接的な表現が向いているようです。
また気分の波が大きかった20歳頃の私にとって、「あ、絵を描きたい!」と思ったら準備ゼロですぐ描き始められて、急に「あきた!」とすぐに手を離しても問題なく、使用後の手入れも必要ないクレヨンは、描き手の我がまま(不安定さ)を受け入れてくれる、包容力のある優しい画材だと思います。

 

 

ー南さんが今後挑戦されたいお仕事や活動、
イラストレーター、アーティストとしての展望などをお聞かせください。

 

私は創作においても生きる上でも、狙っていなかった「偶然」を取り入れることが、より物事を生き生きと充実させるカギだと思っています。ですので、例えばワークショップを通して多くの人と一緒に「偶然をキャッチする」遊びとかできたら楽しいですね。
あとスキルがないので自分ひとりでは作れませんが、自分の絵を使ったMVのアニメーションも作ってみたいです。昔から言い続けていて実現できていない、オリジナル絵本も作りたいです。
あとは未経験のお仕事は自分の世界を広げてくれるので、絵にまつわるどんなお仕事も経験してみたいです。

 

 

インタビュアー 須貝美和

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