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山口志のぶ個展「蜜蝋画と四季」

今回ご紹介するのは、2024年11/1~6に個展を開催された山口志のぶさんへのインタビューです。

四季を感じる蜜蝋画で制作された作品で、素敵な展示空間にしていただきました。
蜜蝋画ならではの独特のテクスチャはずっと観ていたくなります。

以前は違う画材で制作されていた山口さん。
蜜蝋画を始められた経緯もお聞きしました。

会場の様子をインタビューとともにお楽しみください!

展示作品はオンラインショップでお取り扱い中です。
http://hbgallery.shop-pro.jp/

 

ー山口さんは2回目のHB個展となりました。
2022年3月の個展「蜜蝋と版画」でも
蜜蝋を使った版画作品を展示されましたが、
今年の個展は前回の版画形式とは違う技法とお聞きしました。
具体的にどのような点が異なるのでしょうか?

 

前回の技法は紙とアイロンを使った版画技法で今回の作品は木製パネルに描いた作品を加えました。
大きく違うのはアイロンを使わずパネルに描いたそのものが作品になるところです。
紙技法は紙に溶かした蜜蝋を薄く塗り、ニードルなど鋭利なもので引っ掻いて絵を描き、その溝に絵の具を擦り込みます。
できたらその上から別の紙を重ね上からアイロンをかけます。
すると余分な絵の具と蜜蝋が重ねた紙に吸い取られ、溝にすり込んだ線だけが残ります。

パネル技法はまず下地を塗り、そこに溶かした蜜蝋を塗って引っ掻いて絵を描きます。
ここまでは同じですが、パネルの場合はこれが作品となります。

 

ー山口さんが今回の個展「蜜蝋画と四季」で、
四季をテーマにされた理由をお伺いできますか。

 

昨年蜜蝋画で初めていただいたお仕事がカレンダーでした。
それまでも蜜蝋画でカレンダーを作っていたのですが、植物や食材など季節のものが表
現しやすい技法でした。
そして近年の異常気象によって日本の四季がなくなりつつある中で、改めてそれぞれの
季節を大切にしたいと言う願いを込めて今回の展示を開催しました。

ー山口さんは電線や路地をモチーフに
これまでの個展でも風景画の作品を発表されてきました。
リキテックスとペンで数々の風景を描かれてきた山口さんが
蜜蝋画を始められたきっかけは何でしたか?
また、山口さんが感じる蜜蝋画の魅力を教えてください。

 

イラストレーターはお仕事上クライアントさんの意向を反映するために思うように描かなければなりません。
実際私も考える通りに絵を描いてきました。
でもそうなるとやはり表現がパターン化して面白みもなくなってきます。
それに比べ蜜蝋画は使い慣れないニードルや描き慣れない蜜蝋の質感、
そしてアイロンや色付けなど全て出来上がるまでどのようになるか分かりません。
思うように描けないのが面白いと感じました。

 

ー会場でも展示されている、
片山鋲螺工業株式会社さんの今年のカレンダーのお仕事では
ネジやボルトなど、企業が製造されている製品が、
季節のモチーフと共に山口さんの蜜蝋作品で見事に表現されています。
これまで描いたことのないモチーフを、ご自身の世界観で表現するために、
山口さんが工夫されたことや、逆に苦労されたことなどはありますか?

 

ネジを描くのは非常に面白かったです。
いいモチーフだなと思いました。
どの月にどのネジを使うか被らないように考えるのは大変でしたが楽しみながら作業できました。
一度に描いてしまうと修正が効かないので線、色、背景を全てバラバラに描きパソコン上で重ねるといった工夫もしました。
あとは印刷の段階で微妙な蜜蝋の色合いを出してもらうのも大変でした。
その甲斐もあって、大変好評で増刷されたとか。
嬉しいことです。

 
ー山口さんは2026年に銀座で個展を予定されているとのこと。
今後の画家としての活動はもちろん、
イラストレーターとしての展望などもお聞かせください。

 

とにかく蜜蝋画は原画を見てもらいたいと思いました。
あの独特の柔らかい質感は印刷や画像ではなかなか伝わりにくいと思います。
なので蜜蝋画は原画を楽しんでもらいたいと思い販売目的で画廊を選択しました。
蜜蝋画の素晴らしさを伝えつつも、イラストレーターとしてもまた違った伝え方をできればと思います。
要するに欲張りなんですよー。

 

インタビュアー 須貝美和

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