HB Gallery

Blog

未分類

HB FILE COMPETITION vol.33 鈴木久美賞 濵佳江個展「アソートメント」

HBファイルコンペvol.33 受賞者展、第3週目の作家さんは
鈴木久美さんの大賞を受賞された濵佳江さん。初個展です!
動物、お菓子、お花…思わず集めたくなるような可愛らしいものたちがぎゅっと詰まった展示です。原画の丁寧な筆致にもご注目ください!

会場ではハンカチやワッペンなど濵さんならではのオリジナルグッズのほか、コンペ受賞ファイルも閲覧できますのでぜひお立ち寄りくださいませ!

一部展示作品は後ほどオンラインショップでもお取り扱い予定です。
http://hbgallery.shop-pro.jp/

Q1.
鈴木久美賞大賞受賞、おめでとうございます。
受賞を知った時はどんなお気持ちでしたか?
鈴木久美さんに選ばれた感想もお聞かせください。

A1.
受賞を知った時はやった〜!と心が躍るような気持ちでした。そしてだんだん冷静になって覚悟の気持ちに変わりました。

鈴木久美さんの審査評を拝聴した時に、とても細やかな部分まで丁寧に解説してくださっていて主観では気付けなかった捉え方や可能性を知ることができました。ひとつひとつの言葉を糧にして評価していただいた部分をもっと伸ばせるように頑張ろうと思いました。

Q2.
応募されたファイルを作成するにあたり、
工夫されたことや意図されたことなどはありますか?
何かテーマは持たれたのでしょうか。

A2.
一枚の絵を簡潔にすることを意識しました。「りんご」「犬」「花」といった認識しやすいモチーフを選び、「持つ」や「つまむ」などシンプルな手の動作を加えた構成にして、ページをめくるとテンポよくシーンが切り替わっていく見せ方にしてみました。楕円の形に揃えたのは手元に焦点を当てたくて視野を狭くできたらという意図があります。絵のテーマは「理想の暮らし」です。飼っている動物を可愛がったり、季節の果物や植物を楽しんだり、そんな本の挿絵のような世界観を目指しました。

Q3.
受賞が決まり、個展までの約半年間、
決して長くはない準備期間と思われますが
濱さんにとってどんな時間でしたでしょうか?
個展タイトル「アソートメント」にされた理由もお聞かせください。

A3.
この半年間は個展に向けて毎日少しずつ絵を描いていました。頭の中にあったアイデアをたくさん作品にできたので、描き終わった今は気持ちがすっきりしています。時間に追われる日々でしたが東京で個展ができるという非日常なわくわく感を楽しんでいました。

「アソートメント」は「詰め合わせ」や「色んな種類」という意味があると解釈しています。同じモチーフが等間隔に並んでいたり、色んなものが集合しているレイアウトにはなぜか人の心を惹きつけるものがあると感じていて、そんな絵をたくさん描いて並べたいと思いました。お気に入りのモチーフを集めたり、配色や柄を考えたりすることがとても楽しかったです。

Q4.
濱さんの作品は形の美しさはもちろん、
配色においても、青の使い方がとても魅力的だと感じました。
特に、描かれた動物の澄んだ瞳が印象的で心に残ります。
絵とご自身と、丁寧に向き合われているのだなと感じるのですが
濱さんご自身は、描く際に何か心がけられていることはありますか?

A4.
学生の頃はプロダクトデザインを学んでいたので形の美しさを評価していただけることはとても嬉しく感慨深いです。
心がけていることはデザインしている気持ちで絵を描くことです。必要な線や色数をなるべく少なくしたり、レイアウトや配色のバランスにメリハリをつけたり、心地よい形や色のことをいつも考えています。

Q5.
イラストレーションのお仕事で手がけてみたいことや、
作ってみたいグッズ、取り組みたい活動など
濱さんの今後の抱負を是非お聞かせください。

A5.
手がけてみたい仕事はバレンタインのパッケージです。毎年デザインを楽しみにしていて憧れる仕事のひとつです。
作りたいグッズは絵の中でデザインした器や包装紙や靴下たちです。もともとはデザインしてみたいものを絵の中に落とし込んでいるのでそれを実際に作ってみたいです。

絵を描き始めて3年経ちますが、描きたいテーマや細部の表現方法などしっかりと定まっていない部分がまだまだたくさんあると感じています。もっとたくさん作品を描いて研究して、自分らしい絵が描けるように技術とセンスを磨いていきます。

 

HB FILE COMPETITION vol.33 池田進吾賞 三宅崇之個展「_YO_SO_MO_NO_」

HBファイルコンペvol.33 受賞者展、第2週目の作家さんは
池田進吾さんの大賞を受賞された三宅崇之さん。初個展です!
デジタルコラージュによって作られた世界は、静かな佇まいでありながら情熱が感じられます。
会場では、エディションナンバー付きの作品集も販売しているほか、コンペ受賞ファイルも閲覧できますのでぜひお立ち寄りくださいませ!

一部展示作品はオンラインショップでもご覧いただけます。
http://hbgallery.shop-pro.jp/

 

 

Q1.
池田進吾賞大賞受賞、おめでとうございます。
受賞を知った時はどんなお気持ちでしたか?
池田進吾さんに選ばれた感想もお聞かせください。


A1.
全く予期してなかったので、最初は「ん?」でした。
その後に個展のことも書いてあって、だんだん何が起きたのかコトの大きさの実感が湧いてきて、嬉しさと同時に焦りの気持ちに満たされました。

池田さんに選んでいただけたことは、特別に喜びです。
僕がコラージュに手を出したきっかけが大竹伸朗さんで、その大竹伸朗さんの「全景」のあのとんでもない図録をデザインされた池田さんに引っかかっただけでも、何かが繋がった気がして、心底嬉しかったです。

 

Q2.
応募されたファイルを作成するにあたり、
工夫されたことや意図されたことなどはありますか?

 

A2.
当時、コンペのためとかではなく、自分の絵のスタイルを一つに決めようとしていた時期でした。
彫刻作品のように、一つのカタチに魂を込めるスタイルでやっていきたいな〜と思っていて、それで生まれた最初の作品たちをファイルにまとめました。

 

 

Q3.
個展のタイトル「_YO_SO_MO_NO_」
アンダーバーの入り方が魅力的です。
こちらのタイトルにはどんな思いが込められているのでしょうか
個展のテーマもお伺いしたいです

 

A3.
個展のテーマは、居場所が定まらない「余所者感」で、今の自分の心境を表しています。
イラスト業界で仕事がジャンジャン来るような作風ではないことは自覚していて、そんな自分が超有名なイラストギャラリーで展示することに、違和感が半端ないです。

タイトルは、日本語の「余所者」では作品の彼らに似合わないと思い、言葉の意味に縛られない記号的なものにしたくて「YO_SO_MO_NO」を思いつきました。

アンダーバーは空白の意味で使われますが、何かと何かを繋ぐ役目がある気がして、彼らがこれまで歩んできた過去がYの前に、これから向かって行く未来が最後のOの後に繋がるイメージで、アンダーバーを入れました。

 

 

Q4.
三宅さんの作品は、フォトショップによるデジタルコラージュだそうですね。
現在の手法になられた経緯やきっかけなどをお伺いできますか。

A4.
過去に一度アナログ絵で煮詰まってしまって全ての作品をゴミに出したことがあるんですが、あのとてつもない虚しさを感じて以降、二度と作品をゴミにしないように、デジタルコラージュに専念しました。
デジタルコラージュだと、ダメだと思ったらまた解体して再利用できるので、ゴミにならなくて安心です。

 

 

Q5.
イラストレーションのお仕事で手がけてみたいことや、
取り組みたい活動、挑戦されたい表現方法など、
三宅さんの今後の抱負をお聞かせください。

A5.
挿画やCDジャケットに使われたいとは思っています。
ですが、現状イラストレーターとしてコンスタントに仕事が来るわけない作風なので、とりあえず今はもっと色々吸収しつつ、どんどん作品を増やします。
そうした中で、使える作品があれば、ぜひ使っていただきたいです。よろしくお願いします。

 

インタビュアー 須貝美和

藤原なおこ個展「MOGU MOGU MOGU」

2023年6/23~6/28に行われた、藤原なおこ個展「MOGU MOGU MOGU」
藤原さんはHBでは初めての個展です。たべものをテーマに楽しいアイデアの作品が盛りだくさんの展示でした!ぜひこちらのブログインタビューでも展示の様子をお楽しみくださいませ。

一部展示作品はオンラインショップでもご覧いただけます。
http://hbgallery.shop-pro.jp/

 

Q1.
現在は書籍や雑誌、広告など、幅広い媒体でお仕事をされている藤原さん。
案件によって求められるモチーフは様々ですが、何を描かれても一目で藤原さんの絵だとわかります。
お仕事の絵を進める上で、藤原さんが大事にされていることなどはありますか?

 

A1.
求められているものをちゃんと描くことに一番意識を向けています。
ちょっと難しいテーマだったり固い印象のものを柔らかくシンプルにして欲しいという
ご要望が多いのですが、それに答えつつ案件によってきちんと感も加えたり
クスッと笑える面白い感じのニュアンスを足したりと、ヒアリングしたことに
「こういうものをイメージされてるかな」と答え合わせしにいくような感じだと思います。

 

 

 

Q2.
オリジナル作品ではコラージュやアニメーション、
カレンダー制作など、様々な表現手段でご自身の絵を具体的な形にされています。
お仕事とは別に、このような創作活動を積極的に行われている理由や目的などをお伺いできますか。

 

A2.
オリジナルの作品は自分のために描いているような気がします。
その時に気になっているものを描いたり作ったりしては満足するんですが
グッズを作って販売したり展示をするのは、それを誰かも気に入ってくれたら嬉しい、
というやっぱり自分のためが原動力になっていると思います。
なのでオリジナル作品からお仕事に繋がっていくのはとっても嬉しいです。
カレンダーも元々は自分の「作ってみたい」という気持ちからでしたが「毎年楽しみにしている」と
言ってくださる方がいるのが嬉しくて10年近く続けられています。

 

 
Q3.
イラストレーターとして1日の時間をどのように過ごされていますか。
お仕事の時間帯や生活リズムをお聞きしたいです。

 

A3.
会社員時代があったせいか、9時-17時みたいな生活リズムをずっと続けています。
お仕事の返信が夜に来ることも多いので夜も稼働してるのですが、あまり大きく
リズムを崩すことはないように思います。
最近は座りっぱなしはやばいと気づき、1時間に1回は立って動いたりストレッチを
するようにしていますが頻繁に忘れがちです…
Q4.
今後の発表予定や挑戦されたいこと、
イラストレーターとしての展望などをお聞かせください。

 

A4.
今回の展示でプロダクト作品を多く作った経緯でもある、パッケージイラストや
雑貨商品などのお仕事に携われたらと思っています。
展示で生まれたキャラクターの漫画の続きや絵本なども制作していきたいし、
アニメーションもやってみたいことのひとつです。
作ることが好きなので、ただ絵を描くだけでなく色んなものに自分のイラストを
落とし込んでいきたいと思います。

 

インタビュアー 須貝美和

亀山和明個展 「鎌倉の海へようこそ。」

今週の作家さんは亀山和明さんです。
HBでは初めての個展です。日々変化する鎌倉の海の一瞬を切り取った作品をお楽しみください。

一部展示作品はオンラインショップでもご覧いただけます。
http://hbgallery.shop-pro.jp/

Q1.
亀山さんは20年もの間、グラフィックデザイナーとして活躍されたのち、
2002年に画家へと転身されました。そのきっかけは何だったのでしょうか。

また、海を描くために鎌倉へ移住されたそうですね。
その後描き続けられた鎌倉の海の作品点数は約4,200点以上にものぼります。

今回のHB個展でも海がテーマですが、
亀山さんにとって「海」とはどのような存在なのでしょうか。

A1.
まだ時代もイケイケで、昼夜逆転当たり前だったデザイナー生活から、画家に転向したキッカケは、休暇に訪れたハワイの自然でした。朝陽で目覚める。夕陽と飲むビール。真っ青な海。満天の星空。都会の中でクタクタだった僕にとって、自然と共に過ごした数日は忘れられない時間となり、この先はそんなふうに生きたいと思ったんです。
なので鎌倉に移住して、海をテーマに絵を描こうと考えたのは自然な流れだったと思ってます。
そして、いざ描き始めると海ってやつは、刻々と変わる表情、色合い、時間帯、季節、自分の心の有り様によっても見え方が変わってしまう果てしなく手強いモチーフだと気づかされたのです。
5000枚近く描いたものの、未だ満足には至らずといった所。
きっとこの先も、もしかしたら生涯追い続けるテーマなんだと思います。惚れちゃったから仕方ないんでしょうね。

Q2.
亀山さんは各地で毎年個展を開催されていますが
HBギャラリーでは初めての発表となります。
長く展示経験を積まれてきた亀山さんから見て、
HBギャラリーはどのような印象でしょうか。
今回、HBで展覧会を開催する目的などもお聞かせください。

A2.
とても使いやすい、開放的なギャラリーですね。
ギャラリー自体のファンの方も多いようなので
僕にとっての新しい出会いに期待しています!
表参道では、初の展示なので、はじめましての意味も込めて、活動初期から現在までの作品を展示してます。

Q3.
精力的な制作と作品の発表を何年も継続されている亀山さん。
続けることが一番難しいことだと思うのですが、
亀山さんの継続力の源は何でしょうか。
制作と発表を続けていくために、大切にされていることなどはありますか。

A3.
自分がやってる事、自分の作品を好きでいる事、信じてあげる事が大事だと思っています。その、根っこにあるのは、感動です。海や空の光景に感動して、表現したいと思えば、作品は生み出せる。でも感動がないと何も描けません。
僕の場合は、日々海に通って感動の種をチャージしてます。
あとはやりやすい形を見つけて楽にやる事でしょうか。苦しい事で頑張ると折れてしまうので、楽しいと思える事を楽しくやってればいいと僕は思ってます。
そのうち、気づいたら積み上がってる、、みたいなのがいいんじゃないでしょうか。

インタビュアー 須貝美和

青山功「where are u now ?」

今週の作家さんは青山功さんです。aoyamaisao.com

青山さんの初個展、心地の良い海辺の風景をお楽しみください!

Q1.
既にイラストレーターとしてご活躍なさっている印象ですが、
個展は初めてですね。グループ展と個展の違いや、初個展開催の経緯をお聞かせください。

まだ活躍しているとは思っていません。個展開催については、絵を習い始めて6〜7年がたったのでひとつの句読点みたいなものです。今回の個展で少しは自分の立ち位置とかがわかるのかなぁと思ってます。タイトルの”where are u now ?”は自分への問いかけでもあります。
 個展だとグループ展と違い自分だけの空間が出来るのでそこは嬉しいけど、責任感も感じます。
r
r
r
r
r
r
r
r
Q2.
ゆったりと心地良い時間が流れる青山さんの作品。
実際に海の近くにお住まいの青山さんは、日常的にサーフィンもされているとのこと。
海で過ごす時間はご自身の絵にも影響があると感じますか?

自分にとって合った環境に身を置くことはすべてに大きく影響していると思います。色々な面でバランスを取れてるような気がします。
r
r
r
r
r
r
r
r
r
r

Q3.
車やバイクなどの乗り物は複雑な形のモチーフですが、
青山さんは基本的に下描きなしで絵を描かれていますが、
絵の制作過程や、下描きをされない理由などあればお教えください。

自分の絵は色合いが淡いので、下書きをすると鉛筆の線が見えてしまうのもあるのですが、大概最初の線の方が良いことが多いので、そこは下書きより絵の具の方に取っておきたいなと思ってます。
r
r
r
r
r
r
r
r
Q4.
青山さんの1日の生活リズムや過ごし方を教えてください!
(絵の制作時間の確保、サーフィン、etc…)

家で仕事をする日は朝起きて海を見に行きます。頭と身体が起きるのと、波のチェックのためです。潮の動きと波を見て仕事と海に入るタイミングなど考えます。
r
r
r
r
r
r
r
r

Q5.
今後はイラストレーターとしてどのような活動をしていきたいですか?
(展示予定や最近のお仕事などもお聞かせください)
r
r
 とりあえず今のところは大きい展示は予定無いです(少し前の絵で国内とTISの香港の展示に参加予定です)。
 今回の展示で少しでも仕事の幅が広がればいいなと思っております。
漠然としてますが、なるべく多くの人の目に触れるような媒体の仕事ができたらと考えております。
r
r
r
r
r
r
r
r
青山さんのお優しいお人柄や、日々の海沿いでの心地よい暮らしが絵に溶け込んで
とても気持ちの良い空間となっております。明日は最終日、ぜひお立ちよりくださいませ!

陣内昭子作品展『樹』- The Tree with Me -

今週の作家さんは陣内昭子さんです。HBでは2回目の個展となりました。
陣内さんにとっても初の試みとなる大作の掛け軸など、見応え抜群の展示です!

一部展示作品はオンラインショップでもご覧いただけます。
http://hbgallery.shop-pro.jp/

 

Q1.
昨年3月のHB個展では作家としてのキャリアをスタートするアクションと位置付けられました。
2回目の個展はどのような思いで準備に取り組まれましたか。
また、今回の個展タイトル『樹』- The Tree with Me -についても教えてください。

 

A1.
何事にも言えるのですが、始めることより続けることの方が大変だと思っています。
2回目は、今後の自分の制作スタイルを見ていただく個展と位置付けて制作しました。
まずは、テーマ設定から。最初の個展の中心だった絵本の準主役、木馬の母親の「くすのきのきりかぶ」
に想いを馳せて、個展タイトルを決めました。

 

Q2.
入った時にまず目に入る大きな樹の絵。
こちらは実在する樹木なのでしょうか。

 

A2.
これは最初に描いた絵で、『My Mentor』と名付けました。
F80のキャンバスにアクリルで描いています。
近所の公園にある実在の欅(けやき)で、毎日に前を通るたびに挨拶をしています。
樹肌が自然と剥がれて、雨に濡れると色鮮やかなオレンジが現れ
美しい模様が魅力。
どんな時にもそこにいて、動じずに私を受け止めてくれる存在です。
そこにいてくれるだけで感謝したいキモチを象徴する作品にしました。

 

 

Q3.
絵本「ふうちゃんとミーのぼうけんのうた」で用いられたステンシルによる表現は
陣内さんの作品の魅力の1つですね。
今回の展示作品ではステンシルに加え、紙版画も用いられています。
そのような表現方法に至った理由を教えてください。

 

A3.
ステンシルで描く時の線は、面の境界線になります。色面で構成する画面がしっくりとくる気がして自分の好きな技法になりました。
ただ、今回は見上げるような樹を描くために長い画面にする必要があり、最初は、ステンシルで樹のラインを描こうしましたが、
型の制約(ドーナツ状にはできないなど)を守ると、思い描いていたイメージと離れてしまいました。
そこで何か方法はないかなと考えているうちに臨床美術の仕事で、高齢者の方と一緒にやっている紙版画を思い出しました。
紙を自由な形に切れ、線が伸びやかになること、紙の質感の差が和紙の上にテクスチャーとして現れて、
樹肌のテクスチャーと重なることから「これはイケる!」と取り組みました。掛け軸の長さや仕立て方法など、
課題はありましたが、手応えを感じています。

 

 

Q4.
アートディレクター、臨床美術士、絵本作家としてキャリアを積まれてきた陣内さんが、
今後目指していかれるビジョンや姿はどのようなものでしょうか。

 

A4.
職業上の肩書はあまり気にしていません。
ただ、作家としてスタートしたという覚悟はしっかり維持していこうと思います。
作品を作って発表する行為は、これまでの自分の経験を総動員し、
さらけ出す行為で、ある意味恥ずかしく勇気がいることです。
でも、それだけに自分がやってきたこと全てが必要だったと自己肯定にも繋がるとも感じています。
昨日の来訪者のおひとりから「一度釜の火を落とすと良い火加減になるまで時間がかかる」と名言を頂きました。
苦しくても1年に1回は個展をやり続けてみようと思っています。
しばらくは、『樹』のテーマは続けていくつもりです。

 

インタビュアー 須貝美和

しまだたかひろ個展「しろとくろ」

今週の作家さんはしまだたかひろさんです。HBでは3回目の個展となりました。
しろとくろで統一された、モノクロのコミカルな原画をお楽しみください!

一部展示作品はオンラインショップでもご覧いただけます。
http://hbgallery.shop-pro.jp/

 

 

Q1.
昨年4月のHB個展ではアナログとデジタル、カラーとモノクロ、双方の対照的な展示構成が印象的でした。
今回の個展は全て白黒作品で、画材も画用紙に墨汁とアナログの手法を取られています。
今回そのようにされた理由を教えてください。

 

A1.
白黒なのは、前回はカラフルな作品だったから、というすごく単純な理由です。
前回の展示作品も転写でしか出せない風合いを持った作品で、あれはあれで良い作品だな〜と我ながら思いますが、もう少し強度のある絵にしたいなということで今回は手描きにしました。(下書きまでの作業は完全にデジタルなんですが)

 

 

Q2.
しまださんは3回目のHB個展となりました。
お仕事の合間を縫って個展を開催される理由や目的をお伺いできますか。

 

A2.
認知を広げる、というのが最大の目的です。
それは別にデザイナーさんや編集者さん等のお仕事をご一緒する可能性のある方に向けて、ということではなく、趣味で絵を描く人や絵を見るのが好きな人、何ならそういうことに全く興味のない人まで、直接ギャラリーに足を運んでいただくまでは至らなくとも、「こんな絵描いてるしまだって人がいるよ〜!」ということを少しでも多くの人に知っていただけたら それがベストだと思います。

 

 

Q3.
自由な作風とポップな線画が魅力のしまださん。
しまださんはwebや書籍、雑誌などで幅広くお仕事をされていますが
お仕事の絵は全てデジタルで制作されているのでしょうか?
アナログとデジタル、線を描く感覚に違いを感じることはありますか?
A3.
仕事で描く場合は、クライアント側から特に要望がなければフルデジタルで作業しています。
納得するまで何度でも早急に修正できるデジタルは、締切という期限がある仕事においては非常に便利だなと思います。
ほとんど一発勝負になるアナログは、緊張感が加わって画の強度を高めてくれるなと感じます。
一長一短あるので、どっちかに比重を置くよりはシチュエーションや目的で使い分けするのが良いと個人的には考えてます。

Q4.
ますます活躍が期待されるしまださん。今後の展望を是非お聞かせください。
イラストレーターとしてのお仕事はもちろん、
どのような表現者でありたいですか。

 

A4.
基本お仕事はいただければ何でも嬉しいですが、2歳になる甥がいるので子供向けのお仕事が何かできると良いなと思ってます。「これ、おじさんが描いたんやで」って言いたいです。
イラストレーションの仕事は勿論、並行してオリジナルの作品も評価していただけるようになれたらなと。
どちらにせよ、作品の魅力がなければお話しにならないので、今後も精進あるのみです。

インタビュアー 須貝美和

柊有花個展「月はわたしたちを照らしている」

今週の作家さんは柊有花さん。HBでは2回目の個展です。
会場では、ニュースレター「海辺の手紙」や特製のハーブティーなど、柊さんならではの素敵な物販もございます。
ぜひ、柔らかな月の光に包まれた作品たちに会いに来てください。

一部展示作品はオンラインショップでもご覧いただけます。
http://hbgallery.shop-pro.jp/

 

Q1.

今回HBでは2回目の個展ですが、
柊さんは全国各地で個展を開催されていらっしゃいます。
昨年のにじ画廊での個展では、絵と詩を展示されたほか、演奏会なども催されたりと、
ギャラリーへ訪れる方に絵を観る以外の楽しみを提供されているように感じます。
柊さんにとって個展を開催することは、どのような意味を持つのでしょうか。

 

A.

日々忙しくしていると、いろんなことをこなすことで精一杯になることも多いと思います。わたし自身、生活と制作とのバランスはいつもむずかしいなあと思っているのですが、個展にいらした方が目や耳や鼻などいろいろな感覚を通じてほんのひとときでも静かな自分に戻れるような場所を作れたらいいなあと思っています。以前訪れたパリのマドレーヌ寺院がとても静かであたたかく、光と影に包まれていて、個展の場づくりを考えるときにはその場所がいつも頭の片隅にあります。


Q2.

柊さんのモットーである「見えないものを形にし、誰かに何かを届ける」についてお聞きします。
見えないものが形づくられる制作過程はどのようなものでしょうか。
具体的な資料集めなどはされますか。
また、誰かに届けるために意識されていること、心がけてらっしゃることはありますか。

 

A.

普段誰もが触れたり感じたりしているけれど、忙しい時間のなかでどんどん流れていってしまう、形のないささやかなものを形に託してとどめておけたらいいなあと思っています。
そのために自分の暮らしをしっかり味わうことがむずかしいけれどとても大事で…。
暮らしのなかで思いついた言葉や場面を手帳に書き留めておいて、
それを参照しながら制作することが多いです。
書き留める段階では主観を大事にしつつ、制作においては普遍的なものへひらいていければいいなと思っています。

 

Q3.

イラストレーターとして独立されてから、
1日の時間をどのように過ごされていますか。
毎日の制作時間や生活リズムをお聞きしたいです。

 

A.

朝は家のことをやって、10〜11時くらいに散歩・喫茶店でアイディアを練ります。
帰宅して食事をとったあとは18〜19時くらいまで作業するというのが最近のルーティーンです。

 


Q4.

柊さんはイラストレーターとしてはもちろん、詩人として
画文集を出版されたり、noteやポッドキャストなどで、
言葉を使った表現活動もされています。
柊さんが「詩人」と名乗られるようになったのはいつ頃からでしょうか。
何かきっかけはありましたか。

 

A.

絵を描いているなかでいろいろ考えごとをするのですが、
そのなかで絵を通して詩を書きたいのだな、ということが最近の発見で。
同時に詩を使って絵を描きたいとも思っていて、
わたしにとって絵も、言葉も、詩のなかに含まれているんだと思ってから
詩人という言葉を使うようになりました。
ただ、自分にふさわしい言葉なのかな?とつねに考えてしまうので名乗らないときもあるのですが、
生きることに対する姿勢そのものが詩を書くひとのようであれたらとはいつも思っています。

 

Q5.

今後の活動予定や、イラストレーター、詩人としての柊さんの展望などをお聞かせください。

 

A.

絵本を作りたいです。画文集も新しいものを作りたいです。

 

インタビュアー 須貝美和

花村信子個展「リリック」

今週の作家さんは花村信子さん。HBでは2回目の個展です。
儚げで優しい雰囲気の人物画をお楽しみ下さい!

一部展示作品はオンラインショップでもご覧いただけます。
http://hbgallery.shop-pro.jp/

 

Q1.

今回の個展のタイトル「リリック」にはどんな思いがこめられているのでしょうか。
個展のテーマについてお伺いしたいです。

 

A.
「リリック」は歌詞カードの様な一枚の絵を描きたいとタイトルに決めました。
個展のテーマは人物です。

 

Q2.

2021年のHB初個展では、一輪挿しに飾られている花をイメージした人物を描かれ、
作品に花の名前を付けられました。
今回は一転、アルファベット1文字のタイトルにされています。
そのようにされた理由はなぜでしょうか。

 

A.
「リリック」と題しているのもあり、題名をつけるとイメージを牽引してしまうのではと感じ、
どこか無機質な印象にしたくて、タイトルはアルファベット一文字にしました。

Q3.
花村さんは挿絵など、文芸のお仕事を数多く手がけられてらっしゃいます。
物語に絵を付ける仕事において、何か心がけていらっしゃることなどはありますか?

 

A.
読んでいただく導入の部分を担うので、ついつい深く考えてしまうのですが、
感情移入しすぎず、少し距離をとり俯瞰してみる様心がけています。

Q4.
花村さんはこれまでも人物画を多く描かれてきましたね。
花村さんが絵にしたい、描きたいと思う人物はどんな人物なのでしょうか?

 

A.
その方の個性は語らずして現れると思っているので、絵が喋りすぎない様心がけています。
絵にしたい人はその時によって様々です。

Q5.
2年後にまたHBで個展を開催されるとのこと。
次回の抱負や目標などをお聞かせください。

A.

HBで個展をさせていただくことは、自分の目標でもありモチベーションを保つ要因になっています。2年後またご覧になっていただける様、描き続けていきたいです。

インタビュアー 須貝美和

西山寛紀個展「IN THE MOMENT」

今週の作家さんは西山寛紀さんです。
いまの季節にぴったりな、爽やかでのびのびとした心地よい作品をぜひご覧ください!

展示作品はすべてオンラインショップでもご覧いただけます。
http://hbgallery.shop-pro.jp/

 

 

Q1.仕事を削りながら個展作品の制作をされたそうですが
今回のHB個展は西山さんにとってどのような思いがありますか。

 

HB GALLERYは2018年のHB FILEコンペの副田高行賞以来5年振りでした。人生初の個展もHB GALLERYだったので、自分にとってはホームというか思い入れの深い場所です。
この5年間でさまざまな場所や環境で展覧会を開催したのでその経験が良い意味で反映できればいいなという思いで臨みました。
原画の支持体や大きさに対する考え方も5年前とは大きく変わりました。

 


Q2.西山さんは「日常」をテーマに描かれていますが、
個展タイトル「IN THE MOMENT」にされた理由をお聞かせください。

 

「日常を讃えること」がここ数年の個人的な絵のテーマで、今回の「IN THE MOMENT」もその一環の制作になっております。
今年の年明けにフィルムカメラを購入して自分の日常も撮るようになりました。

撮影時に何枚も撮ってすぐ見直したり補正ができるデジカメと違い、限られた枚数を無駄にしないよう一瞬を丁寧に一枚一枚切り取るように撮影する体験が新鮮でした。
自分にとって良いと思える写真が撮れる天候や時間帯は限られています。

特に自分の部屋で撮る場合は、光と影の関係がきれいに写る晴れた日の午前中がゴールデンタイムで、一枚一枚撮影する中で何げない一瞬も有限であることを改めて感じました。その時々に感じた空気感をより良いかたちで絵に反映させたいという意識が制作のモチベーションになったように思います。

今回作品を描く上では「シーン」というより「瞬間」のニュアンスをより強く意識したのでタイトルは「IN THE MOMENT」としました。

 

 

Q3.DMにも使われている作品「DAY LIGHT」を制作されていたときにレコードで流されていた曲は何でしょうか?
その曲を選ばれた理由も併せてお伺いしたいです。

 

James Ihaの“To Who Knows Where”ですね。晴れた日にぴったりで好きな曲で好んで流しながら制作していました。

以下の楽曲も最近の制作中によく聴いています。

Bat for Lashes “Desert Man”

Mount Kimbie “Human Voices”, “Black Stone”
Pinkshinyultrablast “Songs”, “The Cherry pit”

Tycho “Adrift”, “Whether”

 

 

Q4.仕事ではデジタルで制作されているそうですね。
展覧会などで発表されるアナログ作品の制作において、
何か意識されていることはありますか。
デジタルとアナログではどのように差を付けていらっしゃいますか。

 

自分は色と形による構成というとても汎用性のある作風なのでデジタル作品もアナログ作品も絵のディテール、内容で意識していることは基本的に同じです。
仕事でのデジタルで制作した作品はメディア(ポスターや装画、WEB)の正確な原稿として、アナログ作品は1点ものの作品として捉えています。

アナログ作品は支持体の種類、絵の具の調合や質感、塗る工程や厚みなど、自分の細やかな選択がよりダイレクトに反映されるので、それらを含めた「物体」として気に入るかどうかを特に意識して制作しています。

 

 

Q5.昨年のLurf MUSEUMからキャンバスに絵を描かれるようになったそうですね。
キャンバスでの制作は今後も継続されますか?
今後、挑戦されたいと思ってらっしゃる表現方法などはありますか?

 

キャンバス作品はガラス越しの額装をせず、絵の質感を剥き出しにして飾ることができるので気に入っています。大きな作品でも自分でキャンバスを張って制作できるので今後も続けていきたいと考えております。新しくやってみたいのは陶器などの立体作品ですね。仕事ではブランケットなど、日常使いできるアイテムも制作してみたいです。

 

インタビュアー 須貝美和