足立ゆうじ個展「今は昔の物語」
今回ご紹介するのは、2025年3月7日から3月12日に個展を開催された、足立ゆうじさんの展示インタビューです。
江戸時代の人々や風景の作品を展示してくだいました。
確かな技術によって描かれた精緻な作品にじっくりと見入るお客様もたくさんいらっしゃいました。
大学でイラストやデザインを教えながら挿絵のお仕事もされている足立さん。
お仕事の原画も展示され、見ごたえ満載の個展です。
お仕事以外の制作についてもお聞きすることができました。
会場の様子をインタビューと共にお楽しみください!
展示作品はオンラインショップでお取り扱い中です。
http://hbgallery.shop-pro.jp/
ー足立さんはイラストレーターとして小説の挿絵を中心に数々のお仕事に携わり、
名古屋造形大学ではイラストレーションの授業や、
「自分にしか描けないイラストレーション」を研究する「足立スタジオ」を主宰されています。
普段は名古屋で後進の指導をされている足立さんが、
東京のギャラリーで個展を開催されようと思ったきっかけや理由などをお伺いできますか?
2023年の夏にゴトウヒロシさんが名古屋で個展を開催されていましてお邪魔したところから話が進みました。
名城公園駅真上に移転したばかりの名古屋造形大学の新しいギャラリーで個展がしたいと相談をいただきました。
学生にイラストレーションの今を観せる良い機会と思いましてお手伝いをさせていただいたのですが、
個展の打ち合わせを重ねていく際に逆に相談に乗っていただき次に目指すべき方向が定まりました。
歴史に興味があって時代小説の挿絵を売り込もうとしていましたところHBギャラリーで個展すべしと背中を押していただき、
翌日即申し込みを致した次第です。
普段は鉛筆画を描くのですがデジタルでの着色方法もご指南いただき今回初めてカラー作品での個展に至りました。
ーHB個展「今は昔の物語」では、
江戸時代の情緒や市井の人々をモチーフに描かれた作品を展示されています。
2022年頃から、物語の余白や行間が描けるタッチを目指して描かれているそうですが、
余白を表現するために足立さんが心がけていらっしゃることは何でしょうか。
余白を見せるために描くこと、描かないことはありますか?
読者様の邪魔をせず、小説に寄り添える挿絵が描けたらと常々考えております。
また、作者様の伝えたい意図を正しく理解するために原稿を繰り返し丁寧に読むようにしています。
説明しすぎず描きすぎず、そしてしっかり情景が伝わる一枚を目標にしています。
ー足立さんのホームページでは
https://adachiyuji.jp/
お仕事で描かれた作品はもちろん、
人物クロッキーの数々が掲載されています。
足立さんは既に10年以上もクロッキーを継続されており
その枚数はクロッキー帳60冊にも及びます。
クロッキーを行う時間は5分ということですが
5分間で何枚も描かれるのでしょうか?
足立さんがその5分間で意識されていることや
クロッキーにおけるご自身のルール、テーマなどはありますか?
自分にしか描けない美しい一本の線を見つける事を目標に、週一回クロッキーを10年以上継続していまして5分で一枚を仕上げていきます。
クロッキー帳100冊描き切れば到達できると信じてコツコツ続けてるところです。一番大切にしているのは重さです。
重心をしっかりと捉えること、それから関節や筋肉のつながり、服のしわの流れを少ない線で的確に表現することを目標にしています。
単調にならないよう線に抑揚や調子をつけたり、バランスよく省略し、イラストレーターらしいおしゃれなクロッキーが描けるよう創意工夫をしています。
ー足立さんが今後挑戦されたいお仕事や、
イラストレーターとしての展望などをお聞かせください。
これまで挿絵を中心に描いてまいりました。
挿絵のお仕事はスケジュールの見通しが立てやすく資料収集など計画的に進めることが出来ています。
鉛筆画は得意なのですが、苦手なことも多々ありましてその一つが着色です。
クロッキーや水彩など苦手にしていたことを苦手のままにしていてはもったいないと気づいた時からコツコツと勉強をしています。
今回初めてカラー作品に取り組んだことで少し苦手意識が薄まったような気がします。
今は本にとても興味がありまして自宅の棚いっぱいにお気に入りの本を並べています。
そのコレクションに自分が関わった本が増えるとますます嬉しくなります。
これから装丁画など本作りに積極的に関わらせていただけたら幸いです。
インタビュアー 須貝美和