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4月2024

HB WORK Competition vol.4 Exhibition

今週はHB WORK Competition vol.4の受賞者展によるグループ展です。
新作を含む、受賞者12名の力作揃いの作品たちをどうぞお楽しみください!

岡本歌織賞 / 安里貴志
特別賞 /4co、たかまるゆうか

黒田貴賞 / IQGM
特別賞 / 井上知也、山本祥子

川名潤賞 / SHIKA
特別賞 / 西本未祐、mur

アルビレオ賞 / いちろう
特別賞 / 黒崎威一郎、ゴトーヒナコ

岡本歌織賞 / 安里貴志

黒田貴賞 / IQGM

川名潤賞 / SHIKA

 


アルビレオ賞 / いちろう

上段:岡本歌織特別賞 /4co

下段:岡本歌織特別賞 /たかまるゆうか

上段:黒田貴特別賞 /井上知也

下段:黒田貴特別賞 /山本祥子

上段:川名潤特別賞 /西本未祐

下段:川名潤特別賞 /mur

上段:アルビレオ特別賞 /ゴトーヒナコ

下段:アルビレオ特別賞 /黒崎威一郎

 

次回HB WORKvol.6とHBFILEvol.35の応募要項が完成致しました。
皆さんの力作、お待ちしております!
ぜひご応募下さい!
https://www.hbgallery.com/compe.html

陣内昭子 作品展 「こもれび よろこび」

今回ご紹介するのは、2024年4/19~24に個展を開催された陣内昭子さんへのインタビューです。
一貫して樹木を描かれ、掛け軸の作品や
80号サイズの大きな樹木の作品で迫力のある展示となりました。
会場の様子をインタビューとともにお楽しみください!

展示作品はオンラインショップでお取り扱い中です。
http://hbgallery.shop-pro.jp/

 

ー陣内さんは3年連続3回目のHB個展となりました。
一貫して樹を描かれ、今回のDMではのびやかにダンスする樹が描かれています。
陣内さんが今回のタイトル「こもれび よろこび」へこめた想いや
個展のテーマを教えてください!

 

『樹』-The Tree with me – に続き、『樹』から受け取る印象をテーマにしました。
前回は“樹の肌の表情”や“枝の動き”がメインでしたが、
今回は葉が作る光と影を中心に制作を進めていきました。
“こもれび”の下にいると守られているような
穏やかな気持ちになる。あの静かな”よろこび“を表現できたらと思いました。

 

ー会場では大きな樹の作品「PLEATS TREES」が一際存在感を放っています。
こちらは昨年展示された『My Mentor』と同じ80号サイズの作品ですが、
今回はどのようなイメージで描かれたのでしょうか?

 

前回の『My Mentor』は、毎朝行く小金井公園では私が勝手に慕っている地味な存在ですが、
今回の『Pleats Trees』のユーカリの木は、高さが32mあり広場の名前になるような女王様的存在。
その木肌は長く細い皮が折り重なるようになっていて、まるでプリーツドレスを纏っているようです。
空に向かって堂々と立つ樹の美しさを表現したいと思いました。
タイトルは、贔屓のブランドからサンプリングさせてもらいました。

 

 

ー掛け軸に仕立てられた3部作「踊る樹〈月夜〉」「眠る樹〈赤い実と鳥〉」「踊る樹〈夜明け〉」 は力強く情熱的な色彩が印象的です。
こちらの3作品にこめた陣内さんの思いをお聞かせください。

 

”こもれび“の下で光を享受する『私』の視点ではなく、
”こもれび“ができるような光を浴びている『樹』の視点で、
描いたのが『踊る樹<朝日><月夜>』の2点。
私たちが知らない瞬間にはきっとこんな大胆でエネルギッシュな姿があるのではと妄想しました。
そして、真ん中の『眠る樹 <赤い実と鳥> 』は、
その大胆な活動ぶりを奥にひそめて周囲の生命を育む存在です。
ずっと同じところに変わらず立っているように見える『樹』ですが、
実際はもっと色々なことが起きているような、
そんなミステリアスな魅力を表現したいと思いました。

ー次回の個展はどんな展覧会にされたいですか?
今後も樹をテーマに陣内さんは制作されるのでしょうか。
今後の展望をお聞かせください!

 

 

ひとつ具体的にやりたいことは、今回の『踊る樹』を発展させて、
『樹』それぞれが持っている個性(樹皮の様子、枝の伸び方、芽の出方、葉の茂り方、落ち方、実のつき方)を
盛り込みながら、それぞれをダンサーに見立て舞踏団のお話を絵本にしたいなと思っています。
所属するボランティア団体(小金井公園樹木の会)のメンバーの方の知識をいただきながら、
図鑑風味の学べる要素も入れられるといいなあと。
次の個展はその過程で生まれた作品たちによって、ギャラリーの空間を森の中のようにできるといいですね。

 

インタビュアー 須貝美和

右近茜個展 「春と白昼夢」

今回ご紹介するのは、2024年4/12~17に個展を開催された右近茜さんへのインタビューです。
春が訪れ、右近さんならではのどこかホッとするような作品たち。
会場内もゆるやかな時間と空気が流れる素敵な空間にしていただきました。
会場の様子をインタビューとともにお楽しみください!

展示作品はオンラインショップでお取り扱い中です。
http://hbgallery.shop-pro.jp/

ー右近さんはHBでは初めての個展となりました。
今回の個展に寄せる右近さんの想いや
「春と白昼夢」という展示タイトルにされた理由をお聞かせください!

 

この頃、イラストレーターの仕事がぽつりぽつりと貰えるようになったのですが、安定した状況とは程遠く、ここで一度仕切り直しをてしっかりと売り込み活動する必要があると考えました。

HBギャラリーは、私にとって憧れの存在でいつの日か個展ができたらいいなと少し遠くに感じてたのですが、勇気を出して個展をさせて欲しいと唐仁原さんにお願いしました。

普段、身の回りのものを描くことが多い私にとって「春」は新しいことに挑戦したくなったり、少し遠くへ出かけたくなるような活力に満ちた季節です。また暖かな気候の中で、花が咲き、若葉が茂り、見慣れた日常がいつもよりぼんやりと美しく映る「白昼夢」のようなときでもあります。そこで「春と白昼夢」というタイトルに決めました。

ー右近さんはパレットクラブスクール、山陽堂イラストレーターズ・スタジオでイラストレーションを学ばれています。

各々のスクールで右近さんが得た気づきや基礎となった考え方はありますか?
また、講師の方から受けたアドバイスで印象に残っていることなどがあれば教えてください!

 

 

私は子どもの頃から絵を描く職業=イラストレーターに憧れていました。そこで美術大学に行ってデザインを学びますが、イラストレーション作品をほとんど描かないまま、学校を卒業してしまいます。恥ずかしいことに、子どもの頃「私はイラストレーターになれる」と思い込んでそれを疑わず、自己暗示にかかったまま大人になってしまったのです。

イラストレーターへの道が見えないまま大学生活が終わってしまい、困っていたところ、パレットクラブのことを知ってすぐに通う事を決めました。
パレットクラブの基礎コースは週1回、プロとして活躍しているイラストレーターの先生が出す課題をこなしていくのですが、毎週別の先生が色々なアドバイスするので、イラストレーションを描き始めた私にとっては迷うことばかりでした。一年間の授業で一度だけ安西水丸さんの授業を受けてもっと話が聞きたいと思っていたところ、水丸さんが講師の山陽堂イラストレーターズ・スタジオ(SIS)が開講する話をパレット仲間から聞きます。

翌年、一年間SISで安西水丸さんの授業を受けます。課題はなく、月に1回山陽堂書店のギャラリースペースに集まり、描いた作品を先生に見ていただきます。枚数制限もないので、たくさん出す人もいれば1枚しか出せない人もいます。私は後者でした。生徒の中には実際の仕事の絵を先生に見せている人もいたので、とても勉強になりました。

水丸さんの授業の中で私がたくさん作品を持っていけたのは最後の一回だけで褒めてもらえたのも、その時だけでした。「君はどうなることかと思ったけどなんとかなりそう」みたいなことを言ってくれた講評から数日後、水丸さんが突然逝去されたことを知ります。

呆然としていたところにK2の長友啓典さんが講師を引き継いでくれるという話が舞い込んできます。残された水丸さんの生徒たちは、長友さんにどんな授業をしてもらうのか、授業内容から相談しながら2代目講師長友さんとのSISが始まります。

水丸さんと、長友さんでは指導のアプローチが全く違いました。
水丸さんはどんな絵でも一枚の絵の中からいい部分を見出そうとします。よく絵のすみの方に描かれた部分を褒めて、ここがいい、全部このくらいの調子で描いたらいいのにと言っていました。講評の際に水丸さんは作品だけでなく、描いた人の座る位置や作品を置く場所、服装、髪型、態度などからその人の全体を鋭く観察しながらアドバイスします。講評ではぐさりと刺さる毒舌が飛んできたりするので、ピリっとした緊張感がいつもありました。
いい絵とはなんなのか、水丸さんの講評を聞いているとなんとなくわかってくるような気がします。
いい絵とは絵には描かれていない部分、ニオイや温度までも想像させる、見ていて気持ちがよくなる絵だと言っていました。
今思えば、水丸さんの授業に出ているとその感性を少しずつ共有できる、そんな授業だったと思います。

一方長友さんは一枚の絵がどのようなプロセスを経て描かれているのかを知った上で講評するために、作品を一枚だけ持ってこられては困ると言います。講評の際には描いたものはラフでもなんでもいいから、全部持ってきなさいと言いました。絵の束を持ってくる人がいると嬉しそうにして、全てに目を通しました。そしてイラストレーターになりたい人をイラストレーターにするために「たくさん描け」、「描き続けろ」この2つを口酸っぱく言い続けました。K2に持ち込みにくるイラストレーターみんなに毎日たくさん描き続ければイラストレーターになれるって言っているけど、それができる人はほとんどいない。辞める理由なんて探さないで、どんなときも描き続けて欲しいと言いました。
正反対のような二人の指導でしたが、イラストレーターになるには水丸さんの感性や見る目を養う授業と長友さんの四の五のいわずに描くこと、描き続けることの大切さを教える授業は両方大事で、二人の授業を受けられたことは私にとって幸運でした。

ー右近さんは今回の個展のためにアクリルガッシュで描きおろしされ、
アナログでの作品制作は久しぶりだったそうですね。
普段、お仕事のために描かれるデジタルでの制作と比べて、
絵の具や筆を使われた感触や印象はどのようなものでしたか?
楽しかったことや面白かったこと、
逆に苦労したことなどがあれば教えてください。

 

私は普段、タブレットやPCで絵を描いています。水丸さんの授業を受け始めた頃、版画や切り絵など、紙と手に距離がある方法を試したらどうか、と言われて以来ペンタブレットを使っています。それから展示する時を除いて仕事の時もほとんどデジタルで描いています。
ただギャラリーで展示する際には絵の具を使いたいと考えています。全く同じものが描かれていたとしても(私の技術ではできませんが)、出力されたものと、絵の具など使って描かれた絵ではなにか説得力が違うように思います。出力には乗らない情報が原画にはあって、ギャラリーで絵を見る際にはそれを見ることが醍醐味だと感じているからです。
デジタルで描く時には簡単に曖昧な色味を作れるのですが、その色を絵の具で作ろうと思うとなかなか難しくて、色作りには苦戦しました。
計画していた色と違う色ができても気に入って使うときもあって、いつも使わない色が使えたのは楽しいなと思いました。
今後は仕事でも、用途によって絵の具とデジタルを併用できたらいいなと思っています。

ー右近さんが今後挑戦されたいことや、
イラストレーターとしての展望などをお聞かせください。

 

イラストレーターとして、もっと仕事がしたい。書籍の仕事が少しずつ増えてきたので、これをもっと増やしたいと思っています。本に限らず他のジャンルの仕事にもどんどん挑戦できたらいいなと思っています。

インタビュアー 須貝美和

タカヤママキコ個展 「奇譚」

今回ご紹介するのは、2024年4/5~10に個展を開催されたタカヤママキコさんへのインタビューです。
ポップとミステリアスが共存する世界は水彩と切り貼りを併用された独自の表現で描かれています。
タカヤマさんがこれまで手がけられた数々のお仕事作品も展示され、大変見応えのある展覧会となりました。
会場の様子をインタビューとともにお楽しみください!

展示作品はオンラインショップでお取り扱い中です。
http://hbgallery.shop-pro.jp/

ー昨年は東京と京都での個展や、複数のグループ展での発表、そして数々のクライアントワークと、
非常にお忙しい毎日を過ごされていたと拝察いたします。
HBでの個展が決まってからは、どのような展覧会にしようと準備を進めて来られたのでしょうか。
今回の個展に対するタカヤマさんの想いを是非お聞かせください!

 

昨年の個展では、コロナ禍中に描き溜めた自主制作のイラストを中心に展示したため、テーマを決めて描くということをしなかったのですが、今回の個展では何かしらテーマを決めて描こうと思っていました。ここ最近、イラストを見ていただいたデザイナーさんやエージェンシーの方から「タカヤマさんが描く不気味で怖いイラストをもっと見たい」と言っていただくことが多かったので、今回は不思議な物語を意味する『奇譚』をテーマに、ちょっと不気味で怖い雰囲気のイラストを中心に展示しようと準備を進めてきました。また、イラストからストーリーを自由に想像していただきたかったので、タイトルを表記したキャプションはあえて掲示しませんでした。

ータカヤマさんは水彩絵具で描かれてから、切り貼りの工程を経て仕上げるとお聞きしています。
実際に原画を拝見すると、カットされた紙の重なりや輪郭の表情、髪の毛や顔の陰影表現など、
丁寧な手作業に目を奪われ、アナログの魅力を改めて実感します。
タカヤマさんが現在のような制作スタイルになった経緯などをお伺いできますか?

 

10年くらい前から線画にPhotoshopで透明水彩の着彩をしたイラストで、挿絵やパターンデザインなどの仕事をしていたのですが、ずっと憧れていた装画の仕事をしたいと思ったときに、装画としてはイラストの印象が少し弱いのではないかと思いました。そこで、ほかの画材や手法を色々と試してみたのですが、以前のスタイルよりは強い印象を与えることができ、楽しく描き続けられそうだと感じた現在のスタイルに落ち着きました。
切り貼りのスタイルを始めた頃に、ギャラリーハウスMAYAのブラッシュアップ講座で講師をされていたアルビレオさんと大島依提亜さんからイラストを評価していただけたことも、今のスタイルを続けていくうえで大きく影響していると思います。

 

ーHB個展のDMはタカヤマさんの切り絵の表現が再現されているかのようなエンボス加工が施されており、
世界観が滲み出るタイポグラフィも見事です。
昨年のtwililightでの個展でも円型の変形DMに手書き文字と、手元に保管したくなる素敵なDMだと感じます。
双方のデザインを担当された千崎杏菜さん(https://twitter.com/senzaki_d)へは、

タカヤマさんからデザインの希望などはお伝えされるのでしょうか。
ご自身でも寒中見舞いなどで印刷にこだわられていると存じますが、
タカヤマさんがDM制作に力を注がれている理由や、
千崎さんにデザインを依頼されている理由などもお伺いできますか。

 

千崎さんにはDMに使用したいイラストやサイズ規定など最低限の希望はお伝えしますが、デザインについては基本的にお任せしています。いつも想像を上回る素晴らしいデザインをご提案くださるので、安心してご依頼しています。千崎さんとの関係は、3年前にケーキのパッケージイラストをご依頼いただいたことからスタートしましたが、偶然自宅が近所だったり、アートやファッションなどの好みが似ていたりと、不思議なご縁を感じています。DM制作に力を注いでいる理由としては、目を惹くDMを作ることによって、より多くの人の記憶に残ることができるのではないかと考えているからです。私自身、紙ものが好きで素敵だと感じたDMを収集して壁に飾っているのですが、DMを持ち帰ってお部屋や仕事場に飾って毎日眺めてもらえたら本望だと思っています。

 

ー会場では、タカヤマさんが装画を担当されたソン・ボミさん著/橋本智保さん訳『小さな町』が掲載されている、
書肆侃侃房さんの海外文学カタログが配布されています。韓国文学の装画担当はタカヤマさんの念願だったそうですね!
タカヤマさんが思う韓国文学の魅力はどんなところでしょうか?

 

『小さな町』で初めて韓国文学の装画として過去作のイラストをご使用いただいたのですが、念願だったのでとても嬉しかったです。また、イラストが物語の内容と絶妙にリンクしていて、『小さな町』の装画ために描いたのかも…と思えるほどでした。
すべての韓国文学を読んでいるわけではないので一概には言えないのですが、韓国文学では社会問題や実際に起きた過去の事件などを物語に織り込んでいたりして、それらの問題に触れながら物語が進んでいく点に、深みや面白さを感じています。私はとくにチョン・セランさんのSF作品が好きなのですが、ストーリーの面白さもさることながら、社会的に自立していて、ありのままの自分を生きている女性が主人公のことが多く、読んでいて背中を押されます。チョン・セランさんのSF作品と自分のイラストの世界観には、不思議とリンクする部分を感じていて、読んでいるとイラストのイメージがむくむくと湧いてきます。韓国のエッセイも好んで読んでいますが、これまで社会で当然とされてきた慣習や価値観に抗い、ありのままの自分で人生を謳歌するために行動する女性の姿に共感しますし、勇気づけられる点にも魅力を感じています。

 

ータカヤマさんはX(旧Twitter)で、ご自身のやりたい仕事を公言され、見事実現されています。
まさに有言実行、イラストレーターとして明確なビジョンを持って活動されているとお見受けします。
是非こちらのインタビューでも、タカヤマさんがこれから挑戦されたいお仕事や、活動の展望などをお聞かせください!

 

大変ありがたいことに、やりたいと公言してきた仕事を一つ一つ実現することができました。たくさんのイラストレーターの中から私を見つけて、ご依頼くださる方々のおかげに他ならないと思っています。また、やりたいと公言した仕事を1度実現して終わるのではなく、繰り返しできたらいいなと思います。装画の仕事はもっとたくさんしたいですし、お菓子などパッケージの仕事もたくさんしたいです。

これから挑戦したい仕事は、商業施設のビジュアルや映画のオルタナティブポスターなど広告系の仕事ですが、基本的にはどんな仕事にも挑戦していきたいと思っています。

今後の展望としては、昨年から陶芸を始めて面白さに目覚めたので、いつか陶芸作品での展示を開催してみたいです。

インタビュアー 須貝美和

並木千香個展 「どこかで出会う」

今回ご紹介するのは、2024年3/29~4/3に個展を開催された並木千香さんへのインタビューです。

並木さんはHBWORKvol.3で見事アルビレオ賞を受賞され、受賞者によるグループ展に続き、
今年は個展での作品発表となりました。
日常生活の中で見落としてしまうような一瞬の風景が、
並木さんの筆遣いや色彩によって、情景として蘇り、穏やかに心地よく表現されました。
会場の様子をインタビューとともにお楽しみください!

展示作品はオンラインショップでお取り扱い中です。
http://hbgallery.shop-pro.jp/

ー並木さんはHBWORKでアルビレオ賞を受賞され、昨年の受賞グループ展に続き、今回は初個展です。
グループ展と異なり、個展は全て一人で展示の準備を進められたと思いますが、
その中で大変だったことや悩まれたこと、
逆に楽しかったこと、やってみて良かったことなどをお聞かせください!


作品のサイズをどうするか悩みました。いつもは2号くらいのサイズに描いているのですが、ひとつの空間を通して見るときの体験を想像すると、大きめの作品もあるとよいと思いました。ただいきなり大きな作品を描く勇気はなく、段階的にいくつかサイズを用意して、感覚をつかみながらサイズを上げ、作品点数を増やしていきました。結果的に今回一番大きな作品は8号でしたが、ギャラリーで展示してみるとあまり大きくはなかったです。また、作品のサイズはある程度揃えたほうがよいなと、これも展示してみて思いました。

よかったのは写真を一緒に展示できたことです。受賞後にアルビレオのお二人から「写真も展示してみては」と助言をいただいて、うれしかったのですが、これは出せるものなのかという迷いがあり受賞展では出せませんでした。それから写真を撮っていくうちに、これはこれで見てもらいたいという気持ちが湧いてきて、そのときの助言を励みに2年越しの実現となりました。

ー展示されている絵は油絵具で描かれていますが油絵具を使われるようになった理由や
油絵具の魅力を教えてください!
また、油彩画でありながらグレイッシュで穏やかな印象を受けますが、白い絵の具を多く使われているのでしょうか?
木製パネルに描かれているのには何か理由があるのでしょうか?

絵を描きはじめたとき、鉛筆、パステル、水彩、切り絵、と思いつくまま画材を試してみて一度アクリル絵の具に落ち着いたのですが、どうも乾きが早いことに焦ってしまい、油絵具を試してみることにしました。ウエマツ画材店で店員さんに相談し、合わなくても潔くやめられるよう、本当に最小限の道具を教えていただき揃えて、描きはじめました。
油絵具のいいところは、乾きがゆっくりなので長い間全体のコントロールが効くところ、乾く過程で色が変わらないところです。安心して描けます。
絵の具は白と、グレー、青も好んでよく使っています。空気をふくめるようなイメージでいろんな色に混ぜています。
木製パネルは初の試みでした。いつもは油彩用の紙に描いているのですが、額装を用意するのがおっくうだったので、これを機にパネルに描いてみようと思いました。キャンバスに描く選択肢もあったのですが、枠のサイドがすっきりして見えるパネルの方を今回は選びました。

ー会場には並木さんが撮影された写真も展示されています。
並木さんはイラストレーションとは別に
写真のアカウントもお持ちですね。
https://www.instagram.com/chika_namiki_/

見落としてしまいがちな日常の一瞬の光景が写真に収められており
写真作品も魅力的です…!
写真を撮られるようになったきっかけなどはありますか?
また、並木さんが写真から絵に描きおこす際、何か意識されることはありますか?

 

はじめは絵を描くための素材としてスマホで写真を撮るようになったのですが、だんだん写真を撮ることそのものがたのしくなり、最近は絵のために撮ることはほとんどなくなりました。絵を描くときは、日頃から撮りためている写真のなかからそのとき描きたいものを選んで、トレースして描いています。
展示用の絵を描きながら意識しはじめたことなのですが、筆をどの方向に滑らせるかということが空気感をつくるうえで結構重要だということに気がつきました。過去の絵を振り返るとなんとなく無意識にはやっているのですが、今後は意識的にやっていくと思います。

ー並木さんは徳間書店発行の総合文芸誌「読楽」で1年間表紙絵を担当されました。
表紙絵を描くにあたって、並木さんが普段描かれる絵と何か意識は変わりましたか?


描きたいように描いて大丈夫ですと言って頂き、ほんとうに自由に描かせていただきました。
表紙の色味は各号で変化があったほうがよいとのことだったのでその点は意識し、
1年間分を並べた時になるべくかぶらないような配色を心がけました。
モチーフの色味の選定の他に、外のシーンだったら、昼、夕方、夜、と違う時間帯を選ぶことで色の違いが出るようにしています。
また、同じ理由で彩度も上げたほうが変化がつけられると思ったので、普段の絵よりも鮮やかに色味を感じられるように調節しています。ちなみに人物は自撮りしています。服の色や画面に対する肌の割合などを考え、三脚とリモコンシャッターを使ってもとになる写真を撮っています。

ー並木さんが今後挑戦されたいお仕事や活動、
ペインター、イラストレーターとしての展望などをお聞かせください。

 

フェミニズムに関心があるので機会があれば何かしらのお仕事で携わってみたいと思っています。
でもあまりテイストが合わないんじゃないかとも思っています。
おそらくこれからも生活の中で写真を撮ったり絵を描いたりして過ごしていくだろうと今は思っていますが、いちばんはその時々にやりたいことをやれるといいなと思っています。同じことを続けたり、休んだり、新しいことを試したりしながら、変化する気持ちに合わせて過ごしていけたらと思っています。

インタビュアー 須貝美和