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1月2013

山下アキ個展「君住む街角」

今週の作家さんは、HBでは初めての個展となるイラストレーターの山下アキさんです。
普段は、イラストレーターの上田三根子さんの事務所でお勤めされながら絵を描かれています。
カラーペンで描いたユニークな線画が印象的な山下さんですが、
今回は貼り絵の手法でイラストレーターさんやデザイナーさん、山下さんのご家族のポートレートを制作されました。
人物を真正面から捉え、これまでの作風とはすこし違った新しい作品がならびました。

—  まずは今回の展示コンセプトについてお聞かせ下さい。

今回は苦手意識のあった人物を前に出して、新しい作風に挑戦しようと取り組みました。
自分の殻を破りたかったという気持ちがあって、「これもあるけど、こんなのもあるよ」というように、
ひとつの描き方だけではないぞ、というのをいろんな人に見てもらおうと思いました。

自分の作風にいきづまっていた時に、スケッチで描いた人物を日下潤一さんに見て頂いたら
「人物がいい」とおっしゃってくださったので頑張ってみようと思いました。
苦手を克服できるよう、みなさんから背中を押してくださるような助言を頂き、本当に感謝しています。

— 手法は全く違いますが、背景の描き方などを見るとやはり山下さんならではと思いました。
すごく素敵です。貼り絵の手法はいつ頃はじめたのですか?

2011年の夏頃に「紙わざ大賞」という公募展があり、それに応募したのがきっかけです。
元々、山下清さんが好きで改めて画集を見直したりしていたので、試しに遊び半分でやってみよう!と。
山下清さんにインスパイアされたことと、公募展がタイミング良く重なって、入選というごほうびまで頂けました。
それがうれしかったです。

— 山下さんの性に合っているのですね。こんな所まで貼り絵なんだ!とびっくりしました。
話しは変わりますが、山下さんは長崎県のご出身で、地元で12年間会社員としてお仕事をされていたそうですが、
イラストレーターになろうと思ったきっかけなどお聞かせいただけますか?

2000年に、当時京都にあったインターナショナルアカデミーの九州校(福岡)という学校に
OLをしながら通い始めたのがきっかけでした。
元々絵を描くのは好きだったのですが、月1回、福岡に遊びに行けるというのもうれしかったし
その頃はまだ遊び感覚で「イラストレーターになるなんて自分の人生にあるわけない」と思ってたくらいで。
3~4年通ってみると、だんだん「福岡で同じことをしていてもなぁ…」という気持ちが大きくなっていき、
2006年に意を決して、築地のパレットクラブに通うため単身上京しました。

パレットクラブの方から「上田三根子さんの事務所でスタッフを募集しているよ」と紹介してくださり、
タイミングよくお仕事もみつかりました。

— お仕事をやめて上京というのはすごく勇気がいったと思うのですが。不安はありましたか?

当時、あまりにもつまらない毎日だったので、東京に行ってやらなければ自分の未来は無いと思っていて。
父には「自分の人生を切り開きなさい」と、背中を押してもらい決心しました。
第二の人生を!という気持ちの方が強かったです。

— それからは売り込みなどをされたのですか?

たくさんしました。パレットクラブを受講後、安西水丸さんの教室(コム・イラストレーターズ・スタジオ)に
何年か通っていたのですが、その先輩や仲間から刺激をうけて、とにかくやらなきゃ!と
どんどんファイルを見てもらいました。

今思うと、この業界のことを何も知らないから出来たんだと思います。
知らなかった分、見てもらう方にも新しい絵に感じてもらえたんじゃないかなと今となっては思います。
それからはいろんな方々とのご縁で、少しずつお仕事を頂けるようになりました。

— やはり自分の足で動くことが大切なんですね。勉強になりました。
最後に、HBで展示してみていかがでしたか?

HBでの展示は夢だったので、有意義な時間を過ごせました!
敷居が高い印象がありましたが、空間も素敵ですし、スタッフのみなさんもすてきで楽しかったです。
夢のようでした。

— こちらこそ素敵な展示をありがとうございました!

 

ひとつの手法にとどまらず、少しずつ成長をしていきたいという
想いと行動力が、着実にお仕事へとつながっているのだなと感じました。
常に感謝の気持ちを忘れない山下さん。これからもたくさんの方々との出会いが待っているでしょう。
すこしずつ変化を重ねていく山下さんのご活躍を楽しみにしております!

工藤慈子個展「模倣図-カヴァーズ-(球美主義Ⅱ)」

今週の作家さんは、HBでは2回目の展示となる工藤慈子さんです。
昨年12月に行われたHBファイルコンペの審査では見事、仲條正義さんの大賞を受賞されました。
3回目の個展が、今年の8月に大賞展として控えています。

今回はそのファイルコンペに出品された作品を中心に、
世界の名画を「○」を使って描いた濃密な26点の作品が並びました。

— 2回目の展示をされてみていかがでしたか?

1回目の展示よりトータル性を持たせようと制作していたのですが
そのことがファイルコンペ大賞という結果を招き、全部がうまく繋がったような感じがしました。
期間中、たくさんの方が観に来てくださり本当にうれしいです。

— 1点1点素晴らしいですが、たくさん並ぶとさらに圧倒されますね。
布にプリントした作品もすごい迫力。画材は何を使っているのですか?

近所のスーパーでみつけたPILOTのボールペンです。80円くらいで売ってます。
他にはサインペンや事務用のボールペン、広い面は墨汁なども使ってます。
画材というより文房具を使って描いてる感じですね。(笑)

— 身近な筆記具から生まれたんですね。丸を使った描き方はいつ頃から始めたのですか?

2009年頃からで、TISのコンペがあったのですがその直前あたりです。
当時トカゲの絵を描いていて、体の表面を丸でずーっと埋めて描いていたら
頭から何か出てくる感じがして…きもちいいなと。すごく没頭できたんです。

それまでは今とは全く違う作風でアクリルガッシュで描いていたのですが、
色の使い過ぎでまとまりが無く、スタイルが見つからない状態でした。
丸を使って描くようになってからは、周りの人もおもしろがってくれて
どんどんやる気も出てきたので、早く描きたい!という衝動に駆られました。

— 工藤さんと絵が近づいていった感じですね。
作品から楽しそうな感じが伝わってきます。1枚の制作時間はどれくらいですか?

2~3週間かかるものもあれば、1日や3日くらいで描き終えるものもあります。
仕事から帰った後と、休みの日はずっと描いてます。家にいる時間は絵を描く時間というくらい。
もう取り憑かれているので。(笑)睡眠不足な日が続きました。

 

— キャプションも凝っていますね。切り文字は以前から制作されていたのですか?

15~16年くらい前から好きで作っていました。
友人の結婚祝いにご家族の名前を切り文字にしてプレゼントしたり、
ウェルカムボードを切り文字で作ったり。最初は切り絵から初めたのですが、
徐々に文字や数字を1枚につなげていくことの楽しさに気付きました。
青山塾に通っている頃、講師の舟橋全二さんにお見せしたら、
「文字と絵の中間で、文字イラストレーションだね。」と言って頂けました。
絵も切り文字も「全部埋めて1枚にしたい!」という隙を与えない感じが似ているのかなと思います。

— なるほど。近い部分があるんですね。
最後になりますが、今後やってみたいお仕事、描いてみたいテーマなどお聞かせ下さい。

広告のお仕事をやってみたいですね。
描いてみたいものは、龍・鬼・ユニコーン…など伝説の生き物に挑戦しようと思っています。
2月にグループ展があるのでそこで出展するかもしれません。
夏の個展については…まだノープランです!

— また作品を拝見出来るのを楽しみにしております!

 

思わず、ぐーっと近づいて見入ってしまう工藤さんの作品。
“楽しい”という純粋な気持ちが絵に向かうと、
こんなにもパワーのある作品が生まれるのだなと感じました。
誰にも真似出来ない、工藤さんだけの球美主義-キュビズム-をこれからも極めてほしいです。

山﨑若菜個展「Oh!カルト」

2013年最初の作家さんは、イラストレーターの山﨑若菜さんです。
HBギャラリーでは初めての個展です。
以前はPVなどで使用する装飾美術を作るお仕事をされていて、立体作品も得意とする作家さんです。
会場入り口にはユニークなキャラクターがお出迎えし、楽しくにぎやかな展示となりました。

— 今回、展示をされてみていかがでしたか?

みなさん楽しんで観てくれていたので嬉しかったです。
普段、絵を描いていると一人でいる時間が長いので
会場でいろんな方とお話をしたり、意見が聞けるのでとても楽しいです。
自分では思ってもいなかった絵が人気だったりしたので、
展示をしてみないとわからないものだなと感じました。

— 占星術や魔方陣など、描かれているものが独特ですね。

中世の銅版画や百科図鑑などが好きで、その中からおもしろいモチーフを選び、
自分のイラストレーションをプラスしてみました。
ディドロの「百科全書」が好きでよく開きます。
すこし固い印象の本ですが、色をカラフルにしたり
自分なりのイラストレーションにすることでポップなイメージに変化し
違った見方ができるのがおもしろいですね。

— ほかにはどんなものに影響を受けましたか?

ホラー映画も好きで、「キラークラウン」や「毒々モンスター」など…
80年代のホラー映画に影響を受けました。少しコメディタッチなものが好きですね。
ホラーな絵もポップに変化させるのがおもしろいので、ゾンビやミイラなどよく絵に出てきます。

— 山﨑さんが描くとかわいいですよね。

話しは変わりますが、山﨑さんの身につけているアクセサリーがとても気になるのですが…

元々はキーホルダーだったものをピアスにしてます。
名刺入れは、本物のお菓子に樹脂を流し込んで作りました。
イラストレーターの方たちと手芸部を作って、
アクセサリーや人形など、朝から晩までみんなで作ったりしてます。

— 色合いなど山﨑さんらしくてとってもお似合いです。
最後に、今後やってみたいお仕事や描いてみたいものなどお聞かせ下さい。

広告や音楽関係のお仕事をしてみたいです。夢のあるお仕事がいいですね!
これまで人物をたくさん描いてきたので、動物や未知な生物なども描いてみたいです。

 

山﨑さんは昨年TIS会員に選出され、最も注目されている若手イラストレーターさんの一人です。
今にも動き出しそうな、のびやかな線や自由な色遣いがとても魅力的でした。
作品と共に、山﨑さんの明るく接しやすいお人柄が、今後沢山の人を魅了することでしょう!

これからのご活躍も楽しみにしております。