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7月2013

藤枝リュウジ賞 大竹守個展「PUNK/生きる2」

HBファイルコンペvol.23 大賞展4週目は藤枝リュウジ賞を受賞された大竹守さんです。
2008年のファイルコンペで特別賞を受賞された後、さらに作品に磨きをかけ今回の大賞受賞へと繋がりました。
また今年の5月に開催されたTIS公募でも見事に大賞を受賞され、今最も注目を集めている作家さんです。

HBでは2008年の特別賞展、2012年1月の個展「PUNK/生きる」につづき、今回で3 度目の展示となります。
会場には、永井荷風  色川武大  深沢七郎  ブコウスキー等々、PUNK精神を貫き生きた人々と引用した数々の言葉、
それに引けを取らない大竹さんのPUNKな生き様を垣間見るような95点もの作品が会場いっぱいに並びました。

— 受賞を聞いたときはどんなお気持ちでしたか?

信じられませんでした。
審査があった日の深夜2時頃に、多里さん(HBスタッフ)から電話がかかってきました。
でも夜中だったので就寝中で気づかず、出られなくて。
近々、一緒にカレーを食べに行く約束をしてたのでその電話かなと。でもなんでこんな夜中に?と思いました。

次の日、お昼頃にまた電話がかかってきて、てっきりカレーの電話だと思って今度はちゃんと出たら、
「大竹さん、藤枝さんの大賞に選ばれたよ!」という知らせでした。
それを聞いた時点では話がうまく理解できませんでした。(とりあえずカレーの話ではなかったというのだけは理解できましたが。)
賞を獲れるなんてまったく予想も期待もしていませんでしたし、
藤枝さんは自分の絵には興味ないと思っていたので余計にびっくりして…
その年のコンペは、出すか出すまいか迷っていたのですが、
出さないとなんだか逃げている様な気がして、一応出してはみたものの本当にまったく期待はしていなかったです。

— 狙っていなかったのが功を奏したのですかね。
これまでコンペには何回くらい応募していましたか?

初めて出したのが、特別賞を受賞したときで、かれこれ4~5回出してます。
最終選考に残った年もありました。

—   ファイル作りで意識した点はありますか?

今回に限っては、昨年の個展で展示した作品をまとめました。そこそこ評判がよかったので。
ドローイング作品と貼り絵作品を両方入れてますが、技法は変わっても描く世界観は一貫統一させてます。

— 今回の展示は貼り絵の方がメインですね。

藤枝さんが一番良いと選んでくれた絵が貼り絵だったので、
これは「貼れ」ということなのだと思い、とにかく貼りまくりました。
技法はコピー用紙に絵の具で色をぬりたくり、それをちまちまちぎって厚紙にざっくり貼る。
細かいところはあまり気にしないです。
昔の古いモノクロ写真の退廃的な質感や空気感を貼り絵でうまく再現できればと思いながら貼っています。

— 昨年の「PUNK/生きる」の個展後、何か動きや変化はありましたか?

個展の約1ヶ月後に装画のお仕事をいただきました。
太宰治「走れメロス」の文庫本のカバー装画を描く仕事です。

その個展の際に壁に飾る作品とは別に、太宰の「人間失格」200冊が本棚に並んであるという
シュールなインスタレーション作品を試みようとしていたんです。ブックオフの100円コーナーを都内色々まわって約200冊の「人間失格」を買い集めました。(どんだけ人間失格したいんだい、君は!という阿呆みたいな話ですが。)
こんなアイデアを個展会場でやろうと思うのですが、とあるADの方に相談したところ、
「並んでいる本のカバーが、ぜんぶ大竹の絵だったらおもしろいのに。既成本のままじゃ全然面白くないしPUNKじゃない。」と言われてしまいました。でもその時点で既に個展の2週間前くらいで時間もあまりなくて。でも悔しいからやってやろう!と。
今までに描きためてきた絵の中から、本の内容に合う160枚の絵を選び自分でデザインしインクジェットプリンターで出力し本に巻き
「勝手に人間失格フェア」と題して160冊の「人間失格」を並べて展示しました。

それを発表した1ヶ月後に太宰治の「走れメロス」の仕事が来たので、
当然「展示を見た(知った)方がお仕事を発注してくれたんだ。大変だったけれどやってよかった!」と思いました。

しかし打ち合わせに行きよくよく話を聞いてみると、その展示は見ていないし知らない、
それとは関係のない理由で自分が選ばれたのだと、そのときわかったんです。
あれっ?と思いました。こんなことってあるんだと。
このタイミングで偶然に太宰の仕事が来るなんてありえないし…正直ちょっと怖かった。

あれは太宰からの、
「200冊買ってくれてありがとう!」「人間失格フェアやってくれてありがとう!」ってことだったのかなぁと思っています。

オーナーの唐仁原さんにも「(太宰を)呼んじゃったんじゃないの?」と言われました。
HBではこういう奇跡がよく起こるんですよ。

最近やった深沢七郎さんの「人間 滅亡的 人生案内」という装画のお仕事の時もそう。

[時流に媚びずPUNK精神を貫き生きた怒れる奴らを描きました。永井荷風 色川武大 深沢七郎 ブコウスキー等々。 彼らの言葉や生きざまは腐れた今を生きる我々の道標となるはずです。]

これはHBのサイトに、個展内容を掲載するためのコメントなのですが、
この文章をギャラリーへ送った一週間後に、深沢七郎さんの人生相談本の装画を描くお仕事が偶然来たんです。
このタイミングで?!とまたびっくりしました。HBで展示するたびに何か奇跡が起こるんですよね。
他にも今回のDMに決めていた絵をTIS公募に出したら、その絵が大賞作品の中の1枚に選ばれたり…
今回もなにか起こるのではないかと、ちょっとだけ期待しています。

— そんなことがあったんですね。大竹さんの引きが強いのでは…と思いますが。
今回も何かいいことが起こりますように!最後になりますが、今後はどのような活動をされたいですか?

実は、去年の個展終わった後くらいから絵と並行して別の仕事をはじめようと考えていたんです。
決して後ろ向きな理由ではないのですが、今の時代絵一本で食べていくのは相当厳しいので、何かしらの副業に就こうと考えていました。
でもこの藤枝リュウジ賞を獲ってしまって、個展が決まったので今回の個展が終わって落ちついたら職を探して、絵と両立させていくぞ!と考えてた矢先に、今度はなんとTIS大賞受賞の知らせが…
もう自分でもなにがなにやらわけがわからなくなってきてしまいましたが、もしかしたら
これは「このまま絵一本で行け」という啓示なのかなと。せっかく追い風も吹いてきたことですし、今後は苦手な営業活動に力を入れてみようかなと思っています。

 

副田高行賞 柴崎早智子個展「ぼくは、いつもギューニュー」

HBファイルコンペvol.23 大賞展3週目は副田高行賞を受賞された柴崎早智子さんです。
ファイルコンペの応募は今回が初めて。渾身の力作20点で見事大賞に輝きました!
今回の受賞展がご自身初の個展となります。
現在、山形県在住の柴崎さん。今回の展示のためはるばるお越し頂きました。

— 副田高行賞おめでとうございます。受賞を知ったときはどんなお気持ちでしたか?

一次選考に残るか残らないかだろうな…と思っていたので、とにかくびっくりしました!

— ファイルコンペは初参加だったんですよね。ファイル作りではどんな工夫をされましたか?

抽象的な背景と子供の表情で、子供が感じてることや、どんな子供なのかを伝える絵を描こうと思いました。
絵の具や色鉛筆など様々な技法で描くので、バリエーションはあっても
表現したいことやテーマはぶれずに、というのは意識していました。
ファイル1冊で「こういう世界の絵を描きます」というのを表現したいなと。20点という数はとても大変でした。

— これまでもコンペに出そうと思ったことはありましたか?

青山塾に通っていたのですが、通い終わる頃にようやく今のスタイルが出来てきたので、
それまではコンペに出せる絵がなかったんです。
習作ではなく作品として完成させたくて、卒業後もひとりで制作を続けていました。
背景と子供の世界を一致させるのに特に時間がかかってしまって、
色合いがするどすぎたり、時には大人っぽすぎたり。

— 抽象とポップな子供の絵を組み合わせた柴崎さんの絵は、見た事がなく新鮮だなぁとみなさん感心されています。
子供の表情を描く時、資料はどんなものを見ますか?

自分で撮った写真や、サイトで画像を探したり、YouTubeの動画を見て描いたりします。
はじめてレモンを食べた子供の表情や、はじめて炭酸を飲んだ表情などを撮影した動画がたくさんアップされていて、
それらを参考にすることもあります。実際の光景だと、じっと観察するというのは難しいので動画を見ることが多いですね。
一発描きなので、口元を描く時は特に慎重に。一本線なので、少しでもゆがむと違った表情になってしまうんです。

— 柴崎さんの絵は子供の表情がゆたかで可愛らしいです。そういった観察から生まれているんですね。
今回の展示が初個展だそうですが、実際に展示してみていかがでしたか?

ほっとしました。ファイルに入れていた2作品も展示しているのですが、それ以外はすべて新作なので、
HBさんで飾るのにこれで大丈夫かなぁ… という気持ちでした。ドローイング作品も発表するのは初めてなんです。

— みなさん楽しそうに絵を見ていますよ。すばらしい初個展だとおもいます!
話しは変わりますが、柴崎さんは幼稚園に通うお子さんがいらっしゃるそうですが、
制作時間はどのように確保されていますか?

まず、朝9時に幼稚園に送っていき、その帰りにドトールやスタバに立ち寄って絵を描きます。
だいたい10時頃まで描いて、そのあと近くのスーパーで20分くらいで買い物を済ませます。
帰ったら今度は家事を。家事は手抜きしちゃうんですけど(笑)。その時間がだいたい11時くらいでしょうか。
家にだれもいない時間なので、そこから絵の具を使って絵を描いていきます。
幼稚園のお迎えが13〜15時くらいで、夜は20~21時に子供を寝かせて、22時に主人のご飯の支度。
24時からまた絵の具で絵を描いていきます。個展前は深夜3~4時くらいまで描いていたり、寝れない日があったりしましたね。
子供が泣き出しちゃった時などは、30分くらいで寝かしつけ、
よしまた描こう!と机に戻ってみると、今度は絵の具が乾いていたりして…(笑)
また色作りから?!ということも。
そんな断片的な描き方をしていたら、1枚のいい作品として絶対に出来ないだろうと思うこともありました。
けれど、そんな作品でも評価してくださる方がいたことで「描けるんだ!」と思えて、いい発見がありました。
ぜひ、子育てをしてる方にも絵を頑張ってほしいと思います!

— 素晴らしいですね。工夫次第で、絵を描く時間は作れるんだ!と。
まだまだお話を聞きたいのですが、最後に今後のイラストレーターとしての抱負をお聞かせ下さい。

だれかに見て楽しんでもらえる作品を描きたいです。
子育てをしていると、行き詰まったりすることもあります。
そんな人に向けて、明るく気分転換させられるような仕事をしたいです!

— たくさんのすてきなお話、ありがとうございました!

日下潤一賞 もとき理川個展「real life motoqui もとき理川がイラストレーターになるまで 1」

HBファイルコンペvol.23 大賞展二週目は日下潤一賞を受賞されたもとき理川さんです。
HBでの個展は3回目となります。
昨年9月の個展で展示した作品をコンペに応募したところ、見事大賞に輝きました。

 

— 日下潤一賞、おめでとうございます。まずは感想をお聞かせください。

ギャラリーからお電話をいただいたときは、
「わたし、なにか忘れ物をしましたか?」といった感じのまぬけた対応をしていたところ、
スタッフの方から「いえいえ、そうではなく…大賞を受賞されましたよ」という内容で。
もう、ぎょぎょっ!という感じでした。
日下さんは厳しそうなお方だし、きっと自分の作品は好きじゃないだろうな…
と勝手に思っていたので、信じられなかったです!

— ファイルコンペのご参加は何度目でしたか?

青山塾に通っていた頃からなので、10回くらいは参加していると思います。

— 今回、ファイル作りで工夫されたことはありましたか?

いえ、今回は一番楽なファイル作りだったんです…。なのに受賞してしまった!という。
これまでは新作描き下ろし主義だったのですが、今回は時間がなかったこともあり
9月の個展で展示した作品をそのまま出したんです。

— あの個展は本当にすばらしかったです!納得の大賞です。
今回は、もときさんのこれまでの人生を垣間みれる展示となりましたが、エピソードがどれもいいですね。
みなさんの反応はいかがでしたか?

みなさん笑いどころをわかってくださっていて、安心しました。
きっちり笑ってくれる!知ってるひとも知らない方も、反応がいいですね。

— じーんとするエピソードもあり…感動しました。

それぞれ見る方に重なる所がきっとあるのでしょうね。

— そうかもしれません!
今回は画材もいろいろと挑戦されましたね。いかがでしたか?

えのぐは厳しかったですね。10年ぶりくらいに使いました。
また、もともと色のついたカッティングシートを使用してましたが
今回は、白い紙にえのぐで色を塗ってさらにオイルパステルでテクスチャーをつけ
切り絵をするというのもやってみました。
人のぬくもりやあたたかみのあるタッチになって、自分でも発見があり感動しました!
いままでの手法は体温が低そうな感じがして、すこし飽きていたのかもしれません。

— マチエールのついた作品、とてもすきです。広がりを感じますね。
最後になりますが、今後の目標や抱負をお聞かせ頂けますか?

いろんなタッチで描くたのしみを知ったので、頂いたお仕事によって
描き方を変えてみたいなと思いました。これまでの手法プラス新しい手法で。

— ありがとうございました!今後のご活躍もたのしみにしております。

特別賞展 特別賞6人によるグループ展

今週からファイルコンペvol.23の大賞展が始まりました。
7月5日から8月28日まで、受賞者の作品を展示致します。
第1週目は、特別賞に輝いた受賞者6名のグループ展です。
皆さんの個性がはじけた楽しい展覧会となりました。

 

ファイルコンペvol.23 特別賞受賞者

日下潤一特別賞/山口法子
鈴木成一特別賞/千海博美
副田高行特別賞/志水洋
仲條正義特別賞/町田かおる
藤枝リュウジ特別賞/後藤美月
永井裕明賞特別賞/鈴木匡

 
受賞者のなかには、すでにイラストのお仕事をされている方もいれば、
他のコンペでも様々な受賞歴のある方、受賞も展示も今回が初めてという方などさまざまです。
どんな人にも受賞チャンスがあるのがHBファイルコンペのおもしろいところ。
今年も、たくさんの応募作品の中から審査員の目にとまった作品とあって、
受賞者6名の作品レベルの高さに驚かされます。

オープニングパーティでは、審査員の日下潤一さん、鈴木成一さん、藤枝リュウジさんもお越しになり
華やかな授賞式となりました。
あこがれの審査員とお話ができて嬉しそうな受賞者のみなさん。
とても贅沢で楽しいひとときとなりました。

 

審査員の鈴木さん、日下さん、藤枝さんと特別賞の皆様

 

山口法子さん

 

千海博美さん

 

後藤美月さん

 

志水洋さん

 

町田かおるさん

 

鈴木匡さん

 

 

今年もHBファイルコンペVol.24の募集がはじまりました。
http://hbgallery.com/compe.html
みなさまの力作20点、お待ちしております!