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7月2012

副田高行賞 くぼあやこ個展「素っ気」

大賞展4週目は、副田高行さんの大賞を受賞されたくぼあやこさん。
現在専門学校で講師も務める、プロのイラストレーターさんです。

 

 

—副田高行賞おめでとうございます。まずは感想をお聞かせ下さい。

最初お電話でお知らせを頂いたとき、足がガクガクしてしまうほどびっくりしました。
ほんとに嬉しくて、泣いてしまいました。(笑)

—一見シンプルに見えますが、よく見ると不思議な質感を持った作品ですね。画材は何ですか?

クレヨンを使用していますが、ちょっと変わったやり方をしています。
色をのせたあと、トレーシングペーパ—をひき、その上からアイロンをかけます。
そうすると、画面が波打つようなマチエールになるんです。
クレヨンを厚くのせている部分と、薄くひいている部分では質感が違って出てきて、
それが面白いなと思い、試行錯誤しながら今の作品にたどりつきました。

—クレヨンをアイロンで温めるのですか、そのような制作方法は初めてお聞きしました。
以前テレビで「クレヨンで描いた子供の絵の保管方法」というのがやっていまして。
アイロンで熱すると、裏写りしなくなるみたいです。
ある時その方法をふと思い出して、やってみました。
細かい線はひっかいたり、薄くといたアクリル絵の具で描いています。
水気が多いとクレヨンの油分で水がはじくので、その雰囲気も生かして制作します。

—まだまだ面白い質感になりそうなタッチですね。

はい、アイロンのかけ方や手を動かす方向でも、違った質感になったり模様が出来たりするので
そういった所も面白いですね。

—絵を描くときに大事にしている事などありますか?

そうですね、自分らしくあるという事でしょうか。
描いている物も好きなものばかりで。自分らしいといいますか。
あとはやりすぎないようにもしています。
例えば、このスカートの絵は、最初制服の襟やスカーフも描いていたのですが、
書き直して4回目ぐらいに、スカートだけの作品を描いてしっくり来ました。

 

 

—くぼさんならではのバランス感覚があるんですね。

行き過ぎると、なんだか自分らしくない気がしまして。
これだというものが出来るまで描きます。

—今後はどのような制作活動をしていきますか?

そうですね、今考えているのは、物だけでなく人物も描けるようになりたいです。
顔の部分が難しいので、今後の課題ですね。風景も挑戦してみたいです。
あとは仕事と両立しながら、売り込みも行こうと思います。

 

一見シンプルに見えますが、独特の存在感のあるくぼさんのイラストレーション。
くぼさんの制作に対する思いが滲みでているように感じました。

 

インタビュー / HBstaff 土生はづき

 

永井裕明賞 小笠原徹個展 「色付き線我小笠原徹個展」

大賞展3週目は、永井裕明さんの大賞を受賞された小笠原徹さんです。
2009年に仲條正義大賞を受賞し、今回は二回目の受賞となります。

 

 

 

― 2回目の大賞受賞おめでとうございます。まずは感想をお聞かせ下さい。
2回なんてもらえないと思っていたので、「え?宜しいんですか??」という感じで、とてもびっくりしました。

― いえ、1回受賞しても再度受賞される方もいますよ。てっきり2回目を目指しているのかと思いました。
参加するからには勿論狙いますが、今回は、絵を描く状態にもっていく動機付けに近かったので。
また、僕の場合コンペというのは、新しい事を試す場と言いますか、
この作品(作風)だとどう評価されるのか?という実験の場でもあります。

― 審査員の永井さんとお会いしていかがでしたか。
ダンディーで素敵な方でした。夜の街でお酒を飲みながらお話ししてみたいです。

― 今回の絵は、前回の仲條賞で発表した絵とは作風が違いますね。
先にお話しした内容の理由もありますが、僕は線が好きで生きた線ってあるじゃないですか、
見てて理屈抜きに「スコーン」と入ってくる気持ちの良い線。これを全面に出していきたいなと。
「スコーン」は線に限らず、塗りや構図など良い作品には当てはまる事なのでしょうが。
あとはモチーフの存在感。全てをイメージで描くとちょっと説得力が薄くなるので、
今回段ボールや三角フラスコなども描いているのですが、90%自分の表現、10%モチーフ、みないな。
自分なりの表現で崩して描くにしても、どこか本物を取り入れたい。

― 2回も受賞できた勝因はなんでしょうね。
何でしょうね(笑)
でもファイルコンペなので、自分が気に入っている良い作品をただ並べて入れるのではなく、
20枚最後まで惹き付けるような、「あれ?もう終わりか!!」みたいな見せ方とか運び方に
もっと気を配ると良いのではないでしょうか?
これは売り込みファイルにも通ずる所があると思います。媒体によって印象は変えていかないと。
ほんとは、自分がいえる立場ではないのですがね…。

― 作品を制作するときに、何か大事にしている事はありますか?
作業にならないよう、まずは楽しんで描くようにしています。
そして、「スコーン」と入る瞬間です。「スカーン」でもいいんですけど。これ大事。
わからなくなったら、一日寝かせてみたり、一年放置したり。グチャグチャにしちゃったり。
何をするにも、人間臭さは大事にしたいです。

 

 

― 小笠原さんがイラストレーターになったきっかけはなんですか?
僕はもともと工学部で、同じ敷地に芸術学部があってイラストレーターという職業を知ってから意識し出しました。

― 工学科にいたのですか、意外です。絵はどちらかで学ばれたのですか?
いえ、完全独学(我流)です。絵を本格的に意識し描き始めたのが24〜25歳なので、
他の方と比べてとても遅い出発ですね。

― 独学(我流)ですか。すごいですね。今のご活躍までの経由を教えて頂けますか?
最初は何をしていいのかわからなかったので、とりあえずイラストレーション誌を見て、コンペに出しました。
とはいえ、今の時代、入賞したからといって仕事に繋がる事はほとんどないので、
最終的には出会いを大切にしました。そこから色々と繋がったりです。
だれでも続けていれば、チャンスやターニングポイントがあると思います。
そこをどのように生かすか。まずは信じて続ける事です。出会いを大事にする事です。

― 前回の作品と同様、今回の作品もとても楽しそうに制作しているようです。
この作品(作風)でお仕事をしたいとお考えですか?
もちろんですし、まだまだ進化もさせます。僕は絵をずっと楽しんで描きたくて。
たとえばファッションイラストレーションのみをずっと描いて、
その道で活躍されている方もすごいと思うんですが、僕にはそれが出来なくて。
一つを続ける事が途中で飽きてしまうというか、違う事がしたくなるというか。
いろいろ描いてる事が僕らしいので、今回のような感じでも仕事が欲しいなぁ。
それが自分らしい作風なのかもと思えるようになりました。
逆に、もっともっと全体的に完成度も上げないといけないんですがね。

 

 
インタビュー / HBstaff 土生はづき

日下潤一賞 武智 則浩展

HBファイルコンペvol.23 大賞展二週目は武智則浩さんです。

どこか奇妙で、うつろげな女性像。
見ているとゾクゾクするような感覚になる不思議な作品が並びました。
足の指の折れ具合や髪の毛の質感、ほくろの数など描写も細密に描き、
デティールに強くこだわりを感じます。

 

 

— このような作品を制作するようになるまでの経由を教えて下さい。

最初はインターネットなどの画像を組み合わせて制作していましたが、
出来上がる作品に違和感を感じ、実際に写真をみながら描くようになりました。

— モデルさんも実際にいる人ですか?

モデルさんは友達に頼んだり、知り合いに紹介してもらったりしています。
初対面だと断られる事が多いですが、紹介されて仲良くなり
その方と距離感が短くなると、了解を頂けることが多いです。
自分で交渉して撮影するので、なかなか大変ですが。

 

 

— モデルさんを選ぶ基準はありますか?

自分がピンときたらですね。
ピンときたらダメもとでお願いします。(笑)

— 撮影時の様子も楽しそうですね。絵をみると、彼女たちも楽しんでいるように見えます。

モデルの方が決まると、どのようなポーズをとってもらおうかと方向性を考えます。
何を着てもらおうか、何を食べてもらおうか…
自分で考えた構図をしてもらいながらの撮影が一番楽しいですね。

 

 

— 今後はどのような作品を制作したいですか?

自分が美しいと感じる人を描きたいですね。
今は女性が多いけど、キレイだなと思える男性とかも描いてみたい。
例えばhydeさんとか(笑)GACKTさんもいいな。外国人も描いて見たいですね。
今後の活動はアート系のギャラリーに売り込みに行ったりしたいです。

— では、最後に受賞された感想をどうぞ。

HBギャラリーは正統派な場所だと思っていたので、
僕のような作風のものが入賞するなんて、意外でとても嬉しく思いました。
続けるとどこかで見てくれる人がいるんだと感じました。

 

日下潤一氏とオープニングにて

 

インタビュー / HBstaff 土生はづき

 

特別賞展 特別賞6人によるグループ展

今週からファイルコンペvol.22の大賞展が始まりました。
7月6日から8月29日まで、受賞者の作品を展示致します。
今週は特別賞に輝いた受賞者のグループ展です。
皆さん個性的な作品ばかり。
力作ぞろいの展覧会となりました。

 

ファイルコンペvol.22 特別賞受賞者

日下潤一特別賞/益田由ニ
鈴木成一特別賞/石井理恵
副田高行特別賞/若松哲也
仲條正義特別賞/金子正美
藤枝リュウジ特別賞/大沢浩一
永井裕明賞特別/駒井和彬

 

今回は男性の人数が多い結果に。

他のコンペでも受賞し、すでにご活躍されてる方や、
今回の受賞が初めてという方もいました。
イラストレーターを初めてまだ間もない方がほとんどです。
歴代の受賞者はグループ展きっかけでお仕事を頂いたり、
展覧会後、イラストレーターとしてご活躍されている方も多いHBコンペ。
まさに「イラストレーターの登竜門」のような存在になっています。
オープニングパーティでは、審査員の日下潤一さん、鈴木成一さんもお越しになりました。
受賞者直々に、コメントを熱心にされていたお二人。
とても贅沢で楽しいひとときとなりました。

審査員日下さん、鈴木さんと特別賞受賞者の皆様

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

益田由ニさん

 

石井理恵さん

 

若松哲也さん

 

金子正美さん

 

大沢浩一さん

 

駒井和彬さん