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1月2024

増田いづみ個展「My nostalgia . .」

今回ご紹介するのは、2024年1/26~31に個展を開催された増田いづみさんのインタビューです。

故郷である大阪の街をテーマに描かれた増田さん。
大阪に馴染みがある方も、初めて見るという方も、
懐かしさを感じずにはいられないあたたかい風景が並びました。
会場の様子を制作インタビューとともにお楽しみください!

展示作品はオンラインショップでお取り扱い中です。
http://hbgallery.shop-pro.jp/

 

 

ー今回の個展「My nostalgia . .」は、
増田さんが生まれ育った大阪の風景を描かれたそうですね。
個展制作のために実際に現地で取材をされたのでしょうか?
幼少期に過ごされた町を描かれようと思われたのはなぜですか?

 

現地には昨年春と冬、2回訪れました。
2年前に大病を患い、大げさですが人生観が変わりました。自分にとって本当に大切なものとそうでないものが明確になりました。
大切なものの一つが幼少期の記憶です。
いつも苦しい時に自分自身を助けてくれていることに気づき、その時代の空気感や町を描いてみたいと思いました。

 

 

ー増田さんはアナログの線で、風景や人物、食べ物を味わい豊かに描かれます。
増田さんが線を引かれる時に心がけてらっしゃることや意識されていることはありますか?

 

感情が線に現れるので気持ちを落ち着けてリラックスした状態で、ゆっくり大切に描くようにしています。
仕事はデジタルが多いのですが、デジタルでも線の引き方は同じです。

 

 

ー現在の作風になるまでに、増田さんが影響を受けた表現や、基礎となった考え方などがあれば是非お伺いしたいです。

 

小学生の頃からイラストを描くのが好きで、学級新聞のカットや絵に関わる事をよく頼まれ、描いていました。
自分のイラストで誰かが喜んでくれたり、イラストでお手伝いする事に喜びを感じたので将来仕事にできたらいいなと思っていました。
高校生で愛読していた『オリーブ』には可愛いイラストがたくさん載っていて、そこでイラストレーターという職業がある事を知りイラストレーターになりたいと思いました。

イラストレーションの塾には3つ行きました。
最初のF-schoolではアクリルや水彩、油性色鉛筆などいろんな画材を使用させていただき、色々な画材を組み合わせて描いていいんだと絵を描く上での柔軟さを教えてもらいました。

山田塾では、今の作風のベースとなる自分の線が描けるようになりました。
自由で楽しく描けていた幼少期に戻していただいたと思います。
自分が楽しければ良い線が描けて、良い絵になるのだと気づかされました。精神面でのぶれない軸ができました。

HB塾ではさらにその線を活かした絵を描き続けました。唐仁原さんに、『気持ちが途切れると線が良くなくなる、そういうの分かるから。ゆっくり大切に』と言われその言葉をいつも忘れずに描いています。
コロナ禍で塾は途中で終わってしまい唐仁原さんもお亡くなりになってしまったのですが、その言葉を胸に描き続けて今の作風にいたります。

 

 

ー増田さんが今後挑戦されたいお仕事や活動、
イラストレーターとしての展望などをお聞かせください。

 

変わらず書籍、雑誌の表紙やカットはやりたいです。広告やテキスタイルにも挑戦したいです。

自分が楽しくないと良い絵にならないので、これからも年齢や性別にとらわれず楽しい、描きたいと思うものをどんどん見つけて行きたいと思います。

 

 

インタビュアー 須貝美和

小牧真子個展「hana no yume」

今回ご紹介するのは、2024年1/19~24に個展を開催された小牧真子さんのインタビューです。

静かな夜にそっと咲く花の作品たちは、小牧さんらしい優しげな佇まいです。
会場の様子を制作インタビューとともにお楽しみください!

展示作品はオンラインショップでお取り扱い中です。
http://hbgallery.shop-pro.jp/

 

 

ー小牧さんご自身は個展の開催が実に6年ぶりだそうですね。
 HBでは初個展です。 久しぶりに個展を開催する決意をされた理由や、
 今回の個展に寄せる想い、目標などをお聞かせください!

ちょうど1年前、HBギャラリーでの田中きえさんの個展に訪れていた時、お会いできたきえさんと堀川直子さんが「今やらないと明日どうなってるかわからないよ」と言って、背中を押してくださったんです。習作づくりに没頭していた私にとって、お二人の言葉は新鮮で、それが個展をするきっかけになりました。
 
イラストレーター 唐仁原教久さんとHBギャラリーは、私にとってイラストレーション界の灯台のような存在で、こちらで個展を開催することは夢のまた夢だったので、きっかけを作ってくださったお二人には、本当に感謝しています。
 
ずっと憧れていたHBギャラリーでの個展を、活動のマイルストーンにしようと決めました。そうすると次は、今後の活動プランをHBギャラリーからリスタートできるということになるんじゃないかと思うようになり、それはこの上なくHappyなこと。
 
これからの目標は、たくさんの方がHappyになっていくビジネスやお仕事をイラストレーションでサポートさせていただくことです。特にお子さんや若い方々から、「イラストレーションが好き」と言ってもらえるような活動に携わってゆけたら幸いです。

ー個展タイトル「hana no yume」にもあるように
今回の展示作品は、小牧さんが夢の中で見た花たちを描かれたそうですね。
夢で見た花を、絵としてアウトプットするために、
夢から覚めた後、何か描きとめたりされるのでしょうか?
小牧さんの夢の中の花が、作品となるまでの制作プロセスをお伺いできますか?
 
子供の頃から、夢の中は極彩色なので、現実よりも鮮やかに見えてとてもイマーシブです。いい夢を見た朝は、目覚めたら布団の中で夢を回想してから起きると、とてもスッキリとした気分になって、その時々に印象に残った夢の回想を、スケッチブックや手帳にスケッチやメモで書き留めています。
 
今回の作品は、昔の手帳やスケッチブックをもとにラフ(構図)を作っていきました。さらに夢で見た花とよく似た実在の花を探して、花びら、茎、葉などの資料を集めて参考にしながら細部も決めていきます。夢のイメージを再現するように作ったラフができたら、実在の花を繊細に描いていきました。
 
夢の回想は、大学の一般教養科目に「夢の心理学」という大変人気の授業があり、それがもとになっています。自分の夢を記録する手法が、大変興味深いものでした。朝起きて、夢を忘れる前にすぐにメモを取るだけ。本来は夢の自己分析をするのでしょうが、スケッチしたり、ちょっとした短歌のような言葉で書いたりしするだけで適当なものです。夢の回想は、自分の無意識を書き出しているのかもしれません。
 

 
ー小牧さんはアナログでの制作はもちろん、 デジタルやシルクスクリーン、
エッシャータイリングなど様々な表現方法に挑戦されています。
 ご自身では扱いやすい画材、一番心地の良い表現方法は何でしょう?
 また、今後新たに取り組んでみたいと思う技法はありますか?
 
扱いやすい画材はデジタルで、一番心地よい画材はアナログ(線画)です。
一番自然な表現方法は、アナログ+デジタルで、デジタルとアナログの境目がないかもしれません。ですが、私の中で一番好きな画法は版画です。エッチング、紙版画、シルクスクリーンを研究しています。ただ版画は体力的に継続していくのがむずかしいとわかったので、私なりに版画の手法や美しさを「デジタル+アナログ」で取り入れて表現しています。
 
シルクスクリーンは、デジタルで製版データを好きなように作れるところが、「デジタル+アナログ」なスタイルでとても気に入っています。
 
コロナ禍に部屋でこもって始めたのが、大学で学んだテセレーションでした。よりシンプルで楽しい作品を作っていきたいです。参考にした書籍の中で特にデザイン的に美しく秀逸な一冊は、藤田伸氏の『装飾パターンの法則 —フェドロフ、エッシャー、ペンローズ—』(三元社)です。親しみやすいお人柄の藤田先生と直接お会いできる機会に恵まれ、軽快な行動力や発想力に感銘を受けました。
 

ー小牧さんが今後挑戦されたいお仕事や、展望などをお聞かせください!

ひとつは、峰岸達氏主催のMJイラストレーションズを中心に、イラストレーションを学んできましたので、これからも守破離と心技体を心がけた精進を続けることです。

もうひとつは、イラストレーションでHappyをお届けできるようなお仕事にチャレンジすることです。特にパッケージやテキスタイル、テーブルウェアなど、ライフスタイルを彩るお仕事にどんどん挑戦してゆけたらうれしいです。

宮下恵理歌個展「触れたら光る」

今回ご紹介するのは、2024年1/12~17に個展を開催された宮下恵理歌さんのインタビューです。

キラキラ光る不思議な景色を描かれる宮下さんの初個展となりました。
ぜひこちらの制作インタビューをお楽しみください!

展示作品はオンラインショップでお取り扱い中です。
http://hbgallery.shop-pro.jp/

 

ー個展のタイトル 「触れたら光る」 こちらのタイトルに込められた想いをお聞かせください。

 

メインビジュアルの作品タイトルです。指先が心の琴線に触れたら、接触部分の温度が少し上がって
光を放つようなイメージの絵なのでそう名付けました。
メインビジュアルとタイトルに合わせて、他の展示作品もどこかしら光らせるように統一しました。

ー宮下さんの作品は既視感のない、類い稀ない視覚的表現だと感じます。
現在のような画風になられたのはいつ頃からなのでしょうか。
また、宮下さんご自身はどのような表現に影響を受けてこられたのでしょうか?

学生時代働いていた飲食店が独創的で、「他人に理解されなさそうな思想をいざ表に出すと案外形になり、
個性と評されたりする」実例を目の当たりにし、自分の制作への意識が変わりました。
その後、専門学校の先生が今の画風の原形となる卒制に肯定的な対応をして下さって方針が固まりました。
 漫画家・市川春子先生の作品は中学時代から読み込んでおり、
モチーフのデザインやスケール感など影響を受けていると思います

ー描かれているモチーフは実在する何かですか?
陰影や空間が感じられることから静物画のようにも風景画のようにも見えます。
実際にモチーフを観察して描かれるのでしょうか?

取り留めもない考え事や聴いている音楽の内容を咀嚼する手段とし
脳内で自動的に立体図形化するような癖があり、 それが風景のように見えるので絵として描写しています。
そのままだとルックスが悪いので、 肉付けの段階で好きな洋服などを参考にデコレーションする工程を踏んでいます。

ー宮下さんは2022年に桑沢デザイン研究所を卒業されました。
 卒業制作作品では、 アクリルガッシュや木片を使用した重厚感のあるアナログ作品を制作されていました。
現在のようなデジタル作品へ転向されたきっかけなどはあるのでしょうか?
アナログで制作していた頃と現在では、 作業プロセスや制作中の意識に何か大きな違いはありますか?

アナログの卒制が大変だった反動でしばらく絵を描けず、通勤電車で気軽に制作するために
中古のiPadを購入しました。初めはデジタルに抵抗がありましたが、
いつの間にかデジタル描画のチープな拙さ、清潔感といった特性を画材として気に入りました。
デジタルを絵の具の代替品としては使っておらず、絵の趣味がデジタルの特性に合わせて変わっていきました。
微妙にコントロールが効かないデジタル描画のもどかしい感覚は好きですが、
モチーフの形や動きを探る案出しの段階では、自分の頭と手を誤差なく連動させたいので今も紙と鉛筆を使っています。

 

ー宮下さんのこれからの展望をお聞かせください!

作家活動はこれから始めるので、まずは絵を描くのが楽しい・自分の制作が好きだという
恵まれた現状を大切に育てること、育てるための場を見つけることから着手したいです。
コミティアのような所にも出たいですし、年末には好きな街で展示も決まっているので楽しみです。

インタビュアー 須貝美和