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5月2014

S H I K I 個展「今しか知らない」

今週の作家さんは、二人で作品を制作されているイラストレーターのSHIKI (しき) です。
日常の景色を描きながらも、独特な視点と表現力で
不思議な世界観を作ることのできるお二人。
今回が初めての個展となるSHIKIの、たかの香織さんと清須岳さんにお話を伺いました。

(以下、たかの香織さん=香、清須岳さん=清)

 

 

— まずは今回の展示テーマについてお聞かせください。

今回は初めての個展という事でSHIKIが今まで描いてきた物の中から
共通点を見つけようと思い今回のテーマになりました。
古かったり、新しかったり、完成されていたり未完成だったりの、その時々の良さが
あるなと普段からよく思っていて、その時々を今回が「今」として描いています。
今なんかいいね、おもしろいねっていうものをSHIKIなりにチョイスしています。
「今しか知らない」というのは、今がよければなんでもいいという意味ではなくて、
余計な事を考えなくていい、シンプルでいいんだという事を表しています。

 

 

 

 

—  SHIKIというお名前には、どのような意味が含まれているのですか?

香 = 日本語の名前がいいというのが最初にありました。
「しき」という言葉は、色彩の「色」「四季」「式」など色んな意味を持っていて
いいなと思いました。二人でやっていることから、特に「式」には
組み合わせたり、掛け合わせたり、割ったり引いたりすることで、ひとつの形を生み出す…
そういった理由から、一番近い意味合いの言葉だと思っています。
響きや字面もいいなと思いローマ字でSHIKIにしました。

 

 

 

— すてきな由来ですね。
お二人とも、阿佐ヶ谷美術専門学校をご卒業されていますが、
学生時代から イラストレーションを専攻されていたんですか?

香 = 私はエディトリアルを専攻していました。
清=僕はイラストレーションを専攻していて、元々は一人で描いて個展などもしていました。
ロバート・クラムが好きで、学生時代はアメコミ調の作風で、これでもかというくらい描き込む絵を描いていました。当時の絵を知っている方が見たら、今描いている絵は、
誰が描いたかわからないくらい全く違います。でも、ずっと線画が好きで追い続けてきました。

香 = 私はおせっかいなので、彼の絵に「もっとこうしたらいいんじゃない?」と、
よく意見を言っていました。あるイベントをきっかけに、どうせなら改めて二人で違う絵を描いてみよう、となったのが最初のきっかけです。

 

 

— 2人で制作することで、楽しいこと、難しいことは何ですか?

香 = 楽しいことは、童心に帰り遊んでいるような感覚で描けることです。
「もっとこうしたら良くなるね! 」と言い合ったり、ギャラリーを観に行ったりしても
2人で意見とか感想を戦わせることが出来るのも楽しいです。

清 = 色塗りと線画を分担し、お互い得意な方を描いているので、出来あがりを見ると
「こうなったのか!」という驚きがあります。

香 = 大変なことは、何よりもコミュニケーションをとることです。
普通は一人で頭の中で自然とまとまることが、二人だと”まとめる”という行為を起こさないといけないことが大変です。感覚値の共有が難しいなと思います。

 

 

— なるほど。でもお二人だと心強いですね。
最後に、今後どのような活動をしていきたいですか?やってみたいお仕事などもお聞かせください。

お仕事の経験が少ないので、どんな事でもやってみたいなと思っています。
でもやはり、装丁に使っていただく事をイメージして描いている部分が大きいので、
そういったお仕事が出来ればうれしいです。

— SHIKIさんの絵が装丁に使用されたら素敵でしょうね。ぜひ見てみたいです!
この度はすてきな展覧会をありがとうございました。

 

本村加代子個展「くらすひと」

今週の作家さんは本村加代子さんです。
HBでは4年ぶり5回目の個展となります。
瑞々しい色彩と、繊細なえんぴつ線で捉えられた日々の風景。
河原で拾った石、グラスの水滴、チャシュウの包み紙など
何気ない日常の風景も、本村さんが描くときらきらと輝いた豊かな光景に変わります。
本村さんの、暮らしへの愛情や優しさの伝わる素敵な展覧会となりました。

 

 

 

— 今回4年ぶりの個展ということですが、展示してみていかがでしたか?

楽しかったですし、嬉しかったです。
喜んでもらえるかどうか、お客さんの様子をずっと見ていました。

 

 

 

— 「くらすひと」とは、本村さんご自身のことも描かれていますか?

日々の何でもないことを描くというのがベースになっています。
自分のことではなく、友からいただいたもの、自分が見ているもの、
見えているものを描ければいいのかなと。
正面の壁に展示したモノクロの絵は、幸田文さんのご本を読みながら描いていました。
モノクロシリーズでノートに描きためていて、 そこから自分の視点にシフトしていきました。

 

 

 

— 本村さんは、絵を描く際にどんなことに気をつけていますか?

いいなと感じてもらえるか、加減がどうか。
この2ヶ月間は、製作中ずっと楽しくてニヤニヤしながら過ごしました。

— すてきですね。生みの苦しみより、楽しさの方が勝りますか?

生まずに、見えているものを描いているだけです。

 

 

 

— 結果、素晴らしいものが生まれていますね。

本村さんはご自身の作品が変化してきているなと感じることはありますか?

線が変わってきたねと仰ってくださる方も居られうれしかったです。

— あまり変えようとは思わず、描いているうちに自然とこうなったという感じでしょうか?

変えようということよりも、出来ることを増やしたいという気持ちです。

— なるほど、そういった気持ちが少しずつ絵にも表れているのでしょうね。
最後になりますが、今後やってみたいお仕事などお聞かせ頂けますか?

喜んでもらえるお仕事がしたいです。
それと最後に、HBさん30周年おめでとうございます。

— すてきな作品とお話をありがとうございました。これからもどうぞよろしくお願い致します!

 

矢吹申彦個展「板にブリキ」

今週の作家さんは、矢吹申彦さんです。
HBでは2005年の「カンゲキカンレキテン 峰岸達×矢吹申彦2人展」以来、
約9年ぶりの展覧会となります。

今回はこれまでも何度かモチーフにしてきたという、”ブリキのおもちゃ”がテーマです。
板にブリキを打ちつけたような作品を描きたかったという矢吹さん。
自然の風景と、そこへ置かれた愛らしいブリキのおもちゃ。
2つの融合が矢吹さん独特の、不思議な雰囲気を醸し出しています。

今回はそんな矢吹さんの新作イラストレーション、全20点を展示・販売しております。
ベニヤ板に描かれた丁寧な手塗りの質感、色彩の美しさは原画ならではです。

 

「サーカスⅡ」

 

 

「空しいブランコ」

 

矢吹さんといえば、空と雲。
そしてどこか儚げなブリキのおもちゃ。
矢吹さん色の様々な青空が広がりました。

 

 

「豚を飼ふ」

 

 

「1956年の青嵐」

 

矢吹さんは1つの作品を描き始めると、はやく完成が見たくなるそうで、
1点ずつ集中して描き進めていくそうです。
描くのが楽しくてたまらないという雰囲気が作品からも伝わってきます。
「70歳のおじいちゃんでもまだまだ頑張っているよ。」と矢吹さん。

 
「板にブリキ」展は、5月14日(水)17:00まで開催中です。お見逃しなく!