HB Gallery

Blog

10月2023

西山竜平個展 「TERRA」

今週の作家さんは西山竜平さんです。
HBでは5回目の個展となりました。
何層にも色を重ねて表現された空のグラデーション、
丁寧に描写された星の輝き、
アクリル絵具で丹念に描かれた美しい原画を是非会場でご覧くださいませ。

展示作品の複製画を一部オンラインショップでお取り扱い中です。
http://hbgallery.shop-pro.jp/

ーHBでは5回目の個展です。
個展の度に西山さんは、モチーフを選び取る着眼点や画材の工夫など、
様々な挑戦を続けてこられました。
今回はご自身最多、50点もの作品を展示されています。
今回の個展のテーマや、展示タイトル「TERRA」の意味、
新しく挑戦された点などについて教えてください。

 

3回目の個展「うつけのうた」の頃から絵本を意識して自主制作を続けてきました。
その時は架空の物語の断片を作り、それぞれの物語に合わせたテイストの絵をつける
という設定で展示を行いました。

次の個展「Dawn」では全部を空想にするのではなく、普段暮らしている場所をモチーフに
そこからイメージを膨らませて現実と想像が混ざり合った風景を作り、そこに短い文章を添える
形で展示を行いました。

そして今回の個展「TERRA」はこれまでの展示で培った経験をもとに
一つの絵本を作り上げて、その原画を展示することを目的にしました。

展示タイトル「TERRA」は大地や地球という意味のラテン語からつけました。
不思議な景色の広がる世界を放浪する物語を表す言葉として、短いながらも響きの良い語感に惹かれてつけました。
一から絵本を作ること自体初めての挑戦なのですが、なかでも文字のない絵本として
作っているので、コマ割りのある絵を作ったところが自分の中で一番の挑戦でした。

ー作家さんからギャラリーへ提出いただく展覧会用のコメントは85文字以内と限られています。
しかしながら、西山さんのコメントはその限られた文字数の中で、展覧会の本質を凝縮され、
加えて七五調の形式で綴られた詩のような響きは、私たち読み手の想像力をかきたてさせてくれます。

あたりいちめん しろいすな
かぜのほかには なにもない
しろい しろい すなのおか
そらにうかぶは われたつき
そこはかつての あおのほし

こちらのコメント文は、
絵本に掲載する絵を描かれる前に生まれたのでしょうか?
美しいコメント文が生まれた背景やエピソードなどがあれば是非お聞かせください。

 

このコメントは今回の展示用に後から考えました。
前々から展覧会用のコメント部分から展示の導入になればいいなと思っていて、
展示の雰囲気や作品のニュアンスが伝わる演出として今回のようなコメント文にしてみました。

ー今回展示されている絵本原画のアイデアはどこから生まれたのでしょうか?
はじめに思い浮かんだ言葉やイメージなどはどんなものだったのでしょうか?


もともと広大な景色を描きたいという欲求がずっとあって
絵本も白くて広い広い砂漠の景色が最初から頭にありました。
「あたりいちめん しろいすな」はそのイメージを言葉にしたものです。


ー西山さんはHBでの3回目の個展「うつけのうた」(2021年)で初めてオリジナルの短編集をつくられ、
各々の物語に合わせて絵を展開されました。
今回の個展は絵本の原画展示となりますが、もちろんこちらもストーリーが存在します。
お仕事でも物語に触れる機会が大変多かったと存じますが、
ご自身で物語を創作されるようになってから、西山さんの作品制作に何か変化はありましたか?

 

仕事の絵でも自主制作の絵でも、画面に映らない部分をより意識するようになりました。
例えば装画や挿絵を描く場合は文章には書かれていない登場人物たちの暮らしや
今の性格になった経緯、そこから発生する行動などを以前よりも想像して
絵を描くようになりました。

今回初めて絵本を制作してみて、実際に描いている場面の前後、ページには描かれていない場面と
そこからまたページとして描かれるところまでの繋がりをイメージすることがとても大切で、
そしてそこが非常に難しいということを身をもって知りました。
言葉にしてみるとすごく当たり前のことなのですが、なかなかできませんでした。

これまで描いてきた絵(装画や雑誌の表紙など)は1枚の絵で全体を包んで表現するイメージなのですが、
絵本の場合は一枚で完結せずに、前後の繋がりを意識しながらどの部分を切り取って絵にするかを考えるので、普段とは違った頭の使い方をしていて考え方を切り替えるのにとても苦労しました。


ー西山さんは絵本制作やイラストレーションのお仕事のほか、
webストアでも作品を販売され、
作家としての幅を広げられているように感じます。
西山さんの今後の展望をお聞かせください。

 

イラストレーター、絵本作家、画家としての活動を続けて、
それぞれで培った経験をそれぞれの創作に還元しながら
これからも絵を描き続けていければと思っています。
そして日本だけではなく海外の仕事や展示もできるようになりたいです。

インタビュアー:須貝美和

若林夏個展「good condition」

HBでは3回目の個展となる若林夏さん。

背景の隅々まで色鉛筆で描かれた若林さんの作品はエネルギーと愛情で満ち、

訪れるお客様の笑顔あふれる幸せな空間となりました。

一部作品はオンラインショップでもお取り扱い中です。
http://hbgallery.shop-pro.jp/

ー若林さんは3年ぶり3回目のHB個展となりました。

夕暮れ時や夏の終わりの花火など、

ふとした切なさを柔らかな色彩で表現された2016年「センチメンタル・ジャーニー」。

2020年「SWEET TIME SWEET MOMENT」では、

至福なシーンの集積を咲き誇るような色彩と画面の隅々まで描かれた描写で見事に表現されました。

今回の個展「good condition」はどのような思いで準備を進めて来られたのでしょうか。

個展のテーマと併せてお聞かせください。

 

「good condition」はまさに良いコンディション[状態・調子]のことをさします。

自分からいい気分になろう!というよりも。気候や体調など、

たまたま色々なことが整った時に、ふと立ち現れる良い気分。そんなニュアンスです。

なんてことない日に部屋でお茶を飲んでてて、

「あれ?なんか今めっちゃ幸せじゃん」とか思って一人でニヤニヤする時や、

道を歩いてて、前にすごい綺麗な赤いコート着てる人が歩いてて、そこに自転車で緑のツナギの子供が走り込んで来て

「あれ?今目の前の風景(構図?)が絶妙に最高なんだけど!」など、そんな「good condition」な時を絵に留めたいなと思いました。

 

ー若林さんは2009年からブログ「おなつだよ全員集合」を10年以上更新され続けています。

http://blog.waka-natsu.com/

ブログでは若林さんの仕事はもちろん、毎日の生活の中で感じたこと、直面した出来事、
喜びも、笑いも、痛みも含めてイラストと共に綴られいまを生きる等身大の若林さんの姿が描き出されており、
ほのかな感動を覚えます。

継続することが一番難しいと言われる中で
若林さんが長くブログを続けられている理由は何でしょうか。
また、各種SNS(InstagramやX)とブログはどのように使い分けてらっしゃいますか。

 

イラストレーションを習い始めた頃に、ささめやゆきさんのトークショーを見に行きまして。その時にささめやさんが「毎日絵日記を描いてるんです。そうすると毎日がとても愛おしく感じるよ」っておっしゃってて。

その時まだ、自分では何をどう描いていいかわからなかった頃だったので、これはいいぞと始めました。そしてまさにどうでもいいような日でもプププと笑えたり愛おしく感じることを実感できたんです。

あとは思いのままに吐き出したことが公開されることで、客観視して一旦整理できたり、気が済んだりします。多分単純に心と体に良いので続けられてるのかもしれません。

近年はSNSが広まったから、ブログはより公共性の少ないパーソナル空間のように勝手に思えて、SNSに上げるほどでは無いどうでもいいことを伸び伸び描いているのでますます息抜きの場所になってる気がします。

それでも机の引き出しにしまうより、どこか公開はしているという微すかな緊張感がちょうどいいなとも思います。

ー多岐にわたるジャンルで仕事を手掛けられている若林さん。
どのお仕事でも出し惜しみのない、
モチーフの細部にまで意識がこめられた描写に、
描くことへの情熱を感じます。
限られた時間の中で、これだけ密度の高い仕事を完遂できるのはなぜでしょうか?
若林さんの仕事に対する心構えをお伺いしたいです。
また、描くツールの面で何か工夫されていることがあればお聞かせください。

 

描き上げるのに、裏技や合理的な方法などなくて、ひたすら「気合い」と「愛」で乗り切ってます。
描くツールの工夫は時にないですが、最近は納期とボリュームの具合もタイトになことも多かったり、
1つの絵をさまざまに展開して使われることも多いので、デジタルで作成することも増えました。
デジタルだと、どうしても絵が整ってきてしまうので、
手描きのライブ感みたいなものを無くさないように心がけています。

 

ー若林さんが今後、挑戦されたいお仕事などはありますか?
これからの展望をお聞かせください。

 

具体的にあまり無いです。舞い降りてきた何かに固くならず、なるべく楽に身を委ねるように仕事できたら幸せです。

お仕事は自分で描いている時と違って、デザイナーさんや編集さんなどさまざまな方とやりとりがあります。
皆さんの魅力と知恵と技が絡み合い、絵、または企画自体に魔法がかかった時のトキメキがこの仕事の醍醐味なので、
できる限り沢山人と出会って面白いことを沢山できたらいいなと思います。

あとは、受注いただく仕事はありがたく沢山ください!なのですが、
自分から発信(発表)していくことにも興味あります。
面白い展示を企画したり、絵を動かしてみたかったり、
テキスタイルに落とし込んだりして「モノ」にして
グッズ展開することなどあまりやってきてないので挑戦していきたいです。

あとはたまにイベントなどで似顔絵描いたり子供たちと絵を描いたりするのが刺激的で至福な時間なのを知ってしまっていて、、
コロナも落ち着いてきたし、そういうのも増やしたいです。

あと何でしょう、画風の問題なのか装画など文芸のお仕事少ないので実は密かにもっとやりたいです。お待ちしてますw

まあでもとにかくもっといい絵が描けるようになりたいです。

インタビュアー:須貝美和

田口実千代個展「melody」

今週の作家さんは田口実千代さん。
HBでは4回目の個展です。
朗らかでのびのびとした筆跡は田口さんならでは。
ゆったりとした時間が流れる、心地よい展示をお楽しみください!

一部作品はオンラインショップでもお取り扱い中です。
http://hbgallery.shop-pro.jp/

 

 

━田口さんは3年ぶり4回目のHB個展となりました。
多様なモチーフを描かれる田口さんが、
今回の個展タイトルを「melody」という1つの言葉に集約された理由をお聞かせください。

 

普段音楽を聴きながら絵を描くことがあるのですが、
一瞬で心掴まれ筆がのる事があります。
そんな音楽みたいに生活の中で、ふっと良いなと思える絵がいつか描けたらと、
「melody」というタイトルにしました。

 

 

━ 最近では油絵具で描くことも多くなっているそうですね。
油絵具の魅力はどんなところですか?
田口さんはアクリルガッシュやiPadでも描かれていますが、
画材はどのように使い分けているのでしょうか。

 

油彩画の魅力はキャンバスに描く時に伸びやかにかける事です。
アクリルガッシュはずっと使っていて一番馴染みある画材です。
iPadは線画を描いたり落書きしたり、今は気軽な感じで楽しんでいます。

 

 

━田口さんは絵日記やスケッチも数多く描かれていますね。
田口さんが生活の中で目にする全てが描くモチーフとなり、
風景も静物も有機的に瑞々しく表現されていることに感嘆します。
田口さんは1枚の絵の完成をどのように見極めるのでしょうか?
よし!と思った瞬間です。
ただ油絵は一週間以上乾かすのですが、乾いた後に見た時に少し描き足す事もあります。

 

 

━今後の発表予定や挑戦されたいこと、
イラストレーターとしての展望などをお聞かせください。

 

次の発表予定はないですが、作品を見て頂けるのはうれしいです。
装画、雑誌、パッケージ、ポスター、
見た方がちょっとでも心惹かれる、そんなお仕事が出来たら嬉しいですし、
そういうお仕事がくるよう出来るよう精進しないとと思います。

 

 

インタビュアー:須貝美和