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8月2015

ヒラノトシユキ個展 「Somewhere,Something」

今週の作家さんはヒラノトシユキさんです。HBでは約3年ぶり、3回目の個展開催となります。
広告のお仕事や本の装画など、多方面でご活躍中のヒラノさん。
色鉛筆で描かれたラフな線画や、幾重にも塗られた絵の具の質感など、どの作品も見れば見るほど引き込まれます。さまざまな画材を駆使した自由な作風はヒラノさんならではです。風が吹き抜けるような気持ちのよい空間です、ぜひお立寄りくださいませ!

 

— 今回はどんなテーマで制作されましたか?

僕の場合、テーマを決めて描くというよりは、日頃してきたことや経験に伴うこと、旅行で見たものや撮った写真などを元に日々描いています。日々積み重なった時間の経過や記録、それらの中でやってきたことを展示しようと思いました。

 

 

 

 

— 色んなタッチで自由な作風がいいですね。タッチは違ってもヒラノさんらしさが出ています。描くときに心がけていることはありますか?

仕事でもオリジナルでも、自分の匂いや跡が感じられる作品、心に風が吹くような絵を描きたいと思っています。
自分の絵を並べてみると、落ち着くし、好きだなと思ったりいい絵だなと思ったりするので、その気持ちを大切にして描いています。

ただそれだけではなく、描いた絵に対してイラストレーションになるかは考えます。
どんな絵を描いても、その絵だけでは終わらせないようにはしたいなとか、イラストレーションになるための絵を常に研究しながら描いています。自分の色やタッチを残しつつも、それをどうイラストレーションにしていくのかというのが課題です。

 

 

— ヒラノさんは絵を描くときに画材の使い分けはどのようにされているのですか?

作品に勢いが欲しい時は筆を使い、少し繊細さが欲しい時は色鉛筆を使ったりしています。僕の作品サイトに載せている絵も、タッチが色々と分かれているのですが、お仕事の依頼によって変えてています。

 

 

— 最近はどのような営業活動をされていますか?

昔は色々と営業にまわりましたが、最近は特にしていないです。展示があるときには、DMや、年賀状を送るぐらいです。地道ではありますが、そうゆう事を何年も続けていく事が大事だと思います。

 

— そういった積み重ねが大切なんですね。今後、どんなイラストレーターになっていきたいですか?

極端かもしれませんが、ヒラノさんの一本の線が欲しいと言われるようなイラストレーターになりたいです。

 

ヒラノさんのオリジナルグッズも好評販売中です。
残り僅かのグッズも!ぜひこの機会にお求めください!

 

日下潤一賞 藤井紗和個展「焼かれた魚」

HBファイルコンペvol.25 大賞展ラストを飾るのは、日下潤一賞を受賞された藤井紗和さんです。
ご自身初めての個展開催となりました。作家・小熊秀雄の童話『焼かれた魚』をテーマに、藤井さんならではの深みのある色彩と、引っ掻くように描かれた線で、繊細かつ大胆に表現されました。見る人の気持ちにそっと寄り添うようなあたたかい作品です。1匹の魚が主人公の、せつないお話とあわせてぜひお楽しみくださいませ!

 

 

— 今回は『焼かれた魚』という童話をテーマにされていますが、このお話を知ったのは何がきっかけでしたか?

この童話を書いた小熊秀雄という作家が、私の生まれ育った旭川に縁の深い詩人で、小学生の頃通っていた市民プールのある公園に小熊の言葉が刻まれた詩碑があるのですが、大人になるまで読んだ事がなく、家にあった小熊の童話をまとめた本で初めてその作品と出逢いました。
暗く救いがないお話しで衝撃を受けたのを覚えています。
ただ暗く悲しい中に、何かひっかかるものがあり、とても印象に残っていました。

 

 

— 地元に愛されていた作家さんなのですね。今回、藤井さんはまず物語を読んで、そこからイメージを膨らませるように描いていったのですか?

一番最初は、童話の頭から順にシーンを描いていたのですが、並べたときに面白くなさそうな状態になっていました。
一度リセットをし、全体の構成を考えてからまた新たに描き進めました。

— 文章を読み絵を描くという作業はやってみていかがでしたか?

最初は説明の図のようになってしまったのですが、だんだん1枚の絵としておもしろくしていかなきゃと思い苦労しました。

 

 

— 日下潤一さんの賞を受賞したときは、どんなお気持ちでしたか?

びっくりして、これはどっきりなのかと思うくらいでした。まさかそんなことが起きるとは思ってもおらず、身に余る光栄で展示が近づくにつれて、実感とプレッシャーが湧いてきました。

— この手法ではいつ頃から描かれているのですか?

昨年の12月のコンペに向けて制作しているときに、初めて描きました。

— この手法にはどのように辿り着いたのですか?

それまで自分なりの画材に出会えておらず、絵をおもいっきり描くという事が出来ずにいたのですが、唐仁原さんに「クレヨンで描いてみたら大胆になれるよ」と、言って頂いていた事があり、チャレンジしてみました。
それからは自分なりに試行錯誤しました。
道具や材質が変わると生まれてくるニュアンスが変わる事に気付き、試してみるごとに発見があり、新しい表情が生まれてきました。

 

 

— この手法の魅力、おもしろさはどんなところにありますか?

自分の性格上、白い紙にペンで描くときよりも、この描き方だと割とおもいきり大胆に描けます。プラスから引いていく感じが自分の性格に合っているなと感じています。

 

 

— 今回、初個展とのことですが制作してみていかがでしたか?

あまりの緊張感で、皆さんこんなことをされていたのだなと、初めて知りました。
でもとても濃密な時間になりました。

 

— 今後お仕事ではどのようなものをやってみたいですか?

やらせて頂けるなら、何でもトライしてみたいです。装画や挿絵などもいつか描いてみたいです。

 

審査員の日下さんと。

藤枝リュウジ賞 桑原紗織個展「青い空の下で」

HBファイルコンペvol.25 大賞展6週目は、藤枝リュウジ賞を受賞された桑原紗織さんです。普段はHBギャラリーのスタッフとしても働いている、桑原さんの2回目の個展です。

 

 

— この度は受賞おめでとうございます!受賞されたお気持ちをお聞かせください。

藤枝さんに選んでいただけるとは思っていなかったので、驚きましたが、今年こそは受賞したいと思っていたのでとても嬉しかったです。それと同時に、展示するんだというプレッシャーも感じていました。

— タイトルの「青い空の下で」のコンセプトをお聞かせ頂けますか?

今まで、楽しんで自然に描いてきた作品に共通するテーマだと思ったのと、夏の8月の展示なので、さわやかなイメージのタイトルにしました。

 

— 桑原さんは今年のHBファイルコンペの小冊子のイラストレーションも担当されています。さわやかなブルーが印象的です。

こちらもぜひご覧下さい。http://www.hbgallery.com/compe.html

 

 

— 前回の展示から、作風ががらりと変わっていますが、何か心境の変化があったのでしょうか?

学生の頃から身近な線画の技法で制作を続けてきました。画材を変えてもっと質感のある作品を作ってみたいなと色々画材を試していたところ、紙版画という技法を知りました。

 

 

— 紙版画の魅力はどんな所でしょうか?

刷りあがった時の楽しい気持ちと、圧力のかけ方や紙の塗らし方で、刷り方が変わり、偶然に思いがけない質感のものが出来る所が面白いと思います。

— 計算できない部分が魅力なんですね。今後もこの技法で続けていきたいですか?

景色とか、背景もある絵も描いてみたいので、もう少し続けていきたいです。

 

 

— 今回アンティークな小物の絵が多いですが、どのようにセレクトされたんですか?

泥くさい感じのものやシルエットが面白いもの、少しけったいなものなど、自分が楽しく描けるものを選んでいます。紙版画の質感に合いそうだなと思ったので、そういったものを中心に描きました。

 

 

— 今後はどんなお仕事をしてみたいですか?

普段絵を描いていて、怖いものやちょっと気持ち悪いものを描く方が楽しいなと思ったので、そういった絵が必要な本のお仕事をやってみたいです。装画のお仕事はまだやったことがないので、今年は目標にしています。お仕事以外では、詩を書いてくれる人を探して、詩と絵の本を作りたいです。

— 受賞によって活躍の場も広がりそうですね!ありがとうございました。

 

 

 

副田高行賞 星野ちいこ個展「ivory」

HBファイルコンペvol.25 大賞展5週目は、副田高行賞を受賞された星野ちいこさんです。
ご自身初めての個展開催となりました。人物のふとした表情が丁寧に描かれた星野さんのポートレイト。風を感じる軽やかなタッチと、強さと繊細さを秘めた眼差しが魅力的です。お見逃しなく!

 

 

— この度は受賞おめでとうございます。今回、初めて応募してくださったそうですが、受賞を知ったときはどんなお気持ちでしたか?

その前の年に、一度申込みはしたのに作品搬入ができなかったので、今年こそは間に合わせようと思っていました。受賞を聞いたときは、みんなそう思うと思うのですが、最初は何かの間違いなんだろうなと半年くらい思っていました。すごい人がいっぱいいるのに、と思っていました。

 

— 今回、ファイル作りで意識されたことはありますか?

人を描く事は元々やっていたので、そこだけはありました。絵のテイストが定まらないままファイルに入れていたので、統一感があまりないなと思いつつ作っていました。

— ポートレイトはいつ頃からテーマにされているのですか?

子どもの頃から人ばかりを描いていました。よくお人形さんを描くじゃないですか?あの延長だと思います。マンガ家になりたかったのでずっと人を描いていました。

 

 

— 星野さんの作品は透明感がありますが、画材は何を使用されていますか?

アクリルガッシュで描いています。コンペに応募する2年前くらいから、ちゃんと絵の具で描き始めました。描く方法が定まっていなくて、絵の具を厚めに塗ったり、顔を黒く塗ってみたり、白くしてみたり、試行錯誤中だったなという感じでした。

— イラストレーターになりたいと思い始めたのはいつ頃でしたか?

高校生の時、進路を美大に決めてその時には漫画家になりたいという願望はいったん終了しました。その後は、お話はないけど絵だけ描いている状態で、習慣のように続けていました。
大学ではデザイン科に入り、その後はデザイナーになりました。並行して人物の絵も描いていました。
デザインの仕事をしていると、イラストを描く仕事がたまに出てくるので、ちょいちょい自分でも描いていました。ただ、仕事によって絵柄を変えなければならないので、それをやっているとバラバラすぎて、中心の芯がない状態になってしまうんです。「こういう絵を描いていますよ」というのがありたいという気持ちは常にもっていました。そこから、ちゃんとやってみようと思いました。

 

 

 

— 人物を描くときは資料など見ますか?

街を歩いている人を眺めるのが好きなので、そういう人たちを参考にしたり、写真集や雑誌を見てこういう雰囲気の人が好きだなと思ったらストックしています。

— 現代の人の雰囲気が、着ている服などからも感じられますね。星野さんはもう作品の売り込みはされていますか?

まだしていないんです。自分の職場で、広告の絵を描かせて頂いたのですが、それ以外ほとんど外の仕事はやったことがなく、これからやらねばと思っています。

 

 

— やってみたいお仕事はありますか?

なんでもやってみたいです。以前、MeMe Design Schoolの装丁の授業で、青山塾の生徒さんとMeMeの生徒さんが組んで、1冊本を作る授業がありました。仕事ではないですが、装丁の絵をはじめて描いたのですごくおもしろかったです。

— 本のお仕事も来るといいですね。今後益々のご活躍を楽しみにしております!