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6月2018

赤井稚佳個展「待ち遠しい」を描く

今週の作家さんは京都在住のイラストレーター赤井稚佳さんです。HBでは約7年ぶりの個展開催となりました。
2017年2月〜2018年3月まで毎日新聞日曜版で連載されていた、柴崎友香さんの小説『待ち遠しい』で挿絵をご担当されていた赤井さん。今回はその挿絵の中から厳選された原画を展示いたします。京都・誠光社より出版された限定版作品集の展示・販売も!お楽しみに。

 

 

小説の舞台は現代の大阪。大阪ご出身の赤井さんにぜひお願いしたいとお声がかかったそうです。これまでも宮本輝さんや黒木亮さんの新聞連載の挿絵を描かれたご経験のある赤井さん。約1年続く連載のお仕事、いい絵を描くのはもちろん、体調管理をしっかりすることがまず第一だそうです。会場には赤井さんが選ばれた好きなシーンがずらりと並びました。お手製のダンボール額縁も!

 

 

京都を拠点とし活動されている赤井さん。HBファイルコンペVol.9での藤枝リュウジ賞受賞や、雑誌『Coyote』のブックイラストレーションを描くお仕事で赤井さんの絵が広く知られるようになります。本つながりで、都内や関西の本屋さんとの親交も深く、展示も多数開催されています。

 

 

2015年に出版され、今年重版された人気の作品集『Bookworm House & Other Assorted Book Illustrations』も会場でお求めいただけます。ブックワームハウス=本の虫荘という名のアパートは、入居条件が「本が好き」ということ、またどんな「書斎」を作りたいのかという、オーナーのテストに受かったものだけが住むことのできるというユニークな物語。後半には赤井さんをはじめ3名の選書と共に、ブックイラストレーションを収録。本好きにはたまらない1冊です。

150冊限定の『MES TRUCS ADORES de A a Z』は、赤井さんのお気に入りのモノを集めて描かれた作品集。ライナーノート付きでBOXに入った豪華な1冊です! A a Zは原画も展示しております。ぜひお越しください!

 

 

 

原倫子個展「的皪」

今週の作家さんは原倫子さんです。ご自身初めての個展開催となりました。
印象的な黒と色鮮やかな描写で、さまざまな人物と情景を綴ります。新作の展示も!ぜひお越しくださいませ!

的皪 【てきれき】…あざやかに白く輝くさま。

今回の作品はタイトル「的皪」という言葉に合わせどんな絵を描こうか、表現をたどりよせていくイメージで描かれたそうです。白昼の下にさらされた世界、昼日向の光を意識して描かれたという新作たち。
6月生まれの原さん、その月になると幼い頃の記憶が遡ることがあるそうです。ご自身の記憶、あるいは誰かの記憶をクロスオーバーしたような絵を描きたかったとのこと。好きな言葉からイメージしたり、実際に行った場所を撮影しそれらを元に自分なりの表現へと昇華させるそうです。

 

「Empty Pool」

「鈍色テーマパーク」

多摩美術大学卒業後、しばらくして地元長野へ戻りデザインのお仕事をされていた原さん。イラストレーターになるきっかけは、ある時、雑誌『イラストレーション』で大学の先輩がコンペで賞をとり活躍されている姿に感化され、自分も絵を描きたいと思ったことでした。その後コンペへ出してみるものの賞には届かず、しっかり勉強したいと思い峰岸達さんのMJイラストレーションズへ通い始めます。当時は今とは違う絵で、アクリルガッシュで様々な描き方を試していたそうですが、通い始めて3年目、普段使わない画材で描いてみたところ「線画がいいね」と友人たちが評価してくれたそうです。こっそり練習を重ね、ある程度作品がたまってから峰岸先生へ提出し「このタッチに変えます」と宣言したそう。それらの作品が2016年、チョイスで入選。少しずつタッチも固まり、お仕事に繋がるようになったそうです。社内報の表紙や、雑誌・小説誌の挿絵、CDジャケットなど、MJイラストレーションズブックを見た方から依頼が来ることも。

 

「水曜日は薔薇色」

お仕事では広告などもジャンル問わず挑戦してみたいそうですが、一番は装画のお仕事をやってみたいとのこと!本を読むことがお好きだそうです。今後も益々進化していきそうな原さんの作品が楽しみです!

 

「水無月」

妹尾香里個展「STORY」

今週の作家さんは妹尾香里さんです。HBでは約3年ぶり2回目の個展開催となりました。
1枚の絵からはじまる、ちいさな動物たちが主人公のショートストーリーを描かれました!妹尾さんのたくさんのこだわりがつまった作品たち、ぜひご覧いただきたいです!

「お菓子作り」

今回展示されたのは、文字のない2~3コマの絵で綴られた短いお話たち。見る人それぞれがイメージを広げ、続きを想像してもらえるような絵にしたいと思ったそうです。妹尾さんの自由な発想が楽しい作品です!

 

「押し花作り」

キャラクターの表情やカタチには特にこだわりがあるそうで、何度も何度も納得のいくまで描き直すそうです。そこからうまれる筆跡の表情や線が妹尾さんの作品の特徴に。お仕事では絵以外にも「題字を描いてほしい」というご依頼もあるそうです。ご自身では気づかなかったという描き文字の魅力、ほのぼのとした妹尾さんのお人柄が感じられる可愛らしい字体です。

 

「収穫」

 

正面の壁面には、物語から飛び出して来た動物や宇宙人たちも!

「到着」

お洋服が大好きという妹尾さん、アパレルのポスターや広告のお仕事をしてみたいそうです。CMのお仕事もずっと目標にしているそうです。今年の4月からは料理雑誌での連載のお仕事もはじまりました。描き込みすぎず、カラフルに美味しそうに描ける妹尾さん、近頃は食べもの関係の雑誌や書籍のお仕事が続いているとのこと。今後さまざまな媒体でのご活躍が楽しみです!

 

 

白尾可奈子個展「SQUARE」

今週の作家さんは白尾可奈子さんです。初めての個展開催となりました。
今回は、白尾さんがこれまでイラストレーションと並行して制作されていた木彫作品も展示しております。新作の作品集の販売も!モノトーンの美しい空間をお楽しみください!

 

 

大学時代、彫刻を学ばれていた白尾さん。今回展示している白い彫刻は、木を削ったものに漆喰塗料で着彩されているそうです。平面作品と対になった彫刻たちは様々な角度から楽しめ、顔やリボン、クエスチョンマークなどユニークな形があしらわれています。彫刻を制作する際に、方眼紙に設計図を描く手法からうまれた表現です。

 

 

学生時代の彫刻作品はいまのようなスタイルではなく、当時は自分の作品としてスタイルが定まらなかったといいます。卒業後は仏像の修復師としてお仕事をされた経験も。イラストレーションのお仕事に興味をもったのはその頃、友人の紹介で出版社の方からカットのお仕事を頂いたことでした。元々、マンガや雑誌、印刷物も大好きだった白尾さん、漠然とイラストレーターというお仕事に憧れがあったそうです。しかし実際に描いてみると、オーダー通りにしか描けず、自分で思っていたよりうまくいかないもどかしさがあったそうです。それが何度か続き、ちゃんとイラストレーションの勉強をしてみたいと思い、MJイラストレーションズへの入塾を決心したそうです。

 

 

MJでは毎回課題が出るものの、画風が安定せず悩む日々だったそうです。峰岸先生からも「画風を作るように」とのアドバイスがあり、自分が好きなものやどういう絵が描きたいのかを考えたそうです。自分らしい絵が描けるようになったことで、彫刻にも自分らしさを落とし込めるようになった、と白尾さん。
今後も、広告や装画のお仕事などどんどん経験してみたいとのことでした!今後益々のご活躍が楽しみです!

 

 

今回の個展にあわせて制作された『白尾可奈子作品集 スクエア 彫刻と絵』(photo/本多康司 Design/漆原悠一)¥1,300も好評販売中です!木彫作品とイラストレーション両方が収録され、造本にもこだわった美しい1冊。会場へぜひお越しください!