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2月2016

平井利和個展「遠く絵行きたい」

今週の作家さんは平井利和さんです。ご自身の初個展となります。
青山塾でイラストレーションを勉強された後、フリーランスのイラストレーターとして活動されています。

竹ペンと紙版画で描かれた、味わいのあるタッチが魅力の平井さんの作品。
日本の昭和の風景から海外の街並み、心象風景などさまざまな世界を描かれました。
会場の装飾にもこだわった、見応えのある展示となっております。ぜひお立寄りくださいませ!

 

 

東京造形大学を卒業後、アートディレクターとして、会社にお勤めをされていた平井さん。
パイプ役となって人にイメージを伝えるという作業が多かった当時、
もっと手を動かして自分で作りたい、そんな欲求が大きくなっていったそうです。
年齢をかさねすぎないうちに、その欲望を満たしたいという気持ちが強くなり、イラストレーターを目指すことに。デザインやグラフィックに興味があった学生時代、アイドルや芸能人、スポーツ選手よりも、デザイナーやアートディレクターが平井さんにとってのアイドルだったそうです。

 

 

イラストレーターを志しはじめた会社勤め時代から、朝2~3時間は手を動かし
ひたすら手のデッサンを描く練習をしていたそうです。いきなり絵は描けないだろう、という考えから練習は半年間続けられました。その後、会社を辞めてすぐに青山塾へ通うことに。井筒先生に教わったモデルドローイングや、雑誌や写真をもとに、平日はとにかく手を動かし1日10枚の作品作りを目標にしました。

 

 

サン・アドの葛西薫さんとのお仕事、伊藤忠商事の企業広告イラストレーションです。
日本経済新聞に大きく掲載されました!

TIS公募やチョイスなどコンペでも入選し、作品の露出がふえて来た平井さん。
売り込みも始められ、少しずつお仕事にも繋がっています。

 


新しさと懐かしさが感じられる平井さんの作品。幅広く愛されるイラストレーションになりそうです。
来年の5月には、HBギャラリーで2回目の個展を控えている平井さん。
1年後、作品がどう進化するのか、今から楽しみです! また来年もぜひ見にいらしてください!

 

原裕菜個展「Dancing in the light」

今週の作家さんは原裕菜さんです。HBでは初個展となります。
溶けこむようなインクの筆跡や、黒と白のコントラストが美しい原さんの作品。
小説の挿絵や装画、舞台の宣伝イラストレーションなど、徐々に活動の幅を広げられています。
そんな原さんの3年ぶりの個展、新作イラストレーションやお仕事の原画を展示しております。ぜひご覧くださいませ!

 

 

今回のタイトル「Dancing in the light」は、余白のリズム感と色のコントラストを連想させる、原さんの作品を象徴するテーマです。その言葉からイメージをふくらませ、人物や身近にあるモノを中心に描き下ろしました。
画材はアクリルガッシュとパステルペンシル。筆の動きに任せるように描かれたインクの滲みが魅力です。

白黒写真がお好きで、今の作風に至ったのも写真の影響があるようです。
原さんが興味をもったのは、マイケル・ケンナという女性写真家の黒い三角が並んでいる写真集の表紙。抽象的なカタチに見えたものが、よく見ると実際は木が並んでいるという写真だったそうで、はじめに視覚に入ってくるカタチと、あとから意味が入ってくるおもしろさを追究してみたくなったそうです。原さんの絵にも、そんな視覚のコミュニケーションのおもしろさが感じられました。

 

 

 

これまでは、シンプルな丸や三角にこだわって描いていたという原さん。仕事でも対応できるようになりたいという思いから、今回の新作では少し描きこみを増やすことにも挑戦されました。それでも決して描き過ぎず、見る人に想像させる余白があるのが原さんの絵の魅力です。日本画のような透明感と和の雰囲気もありつつ、ロシアアバンギャルドを意識したという黄色の差し色が効いた、原さん独自の画風となりました。

 

 

 

現在は文芸のお仕事の依頼が多く、原さんご自身も好きな本の世界をこれからも広げていきたいそうです。
カフェやお店の壁画を描いたり、広告などの大きく印刷されるお仕事にも興味があるそうで、今後のご活躍が楽しみです!

売り込みをはじめたきっかけは、玄光社のコンペ『チョイス』に入選したこと。
イラストレーターの先輩たちから「今、動かないとダメだよ」とアドバイスをもらい、売り込みへ行くことに。行った先々で「チョイスで作品を見ていましたよ」と知ってもらえていて、今動かなければいけない意味はこれだったんだ、と気づけたそうです。昨年は月に2件売り込みへ行くと決め、その成果もあり少しずつお仕事も増えてきました。

初めての装画のお仕事は「狼少女たちの聖ルーシー寮」。パレットスクールへ通われていた時に、名久井直子さんに作品ファイルを見てもらったことで繋がったそうです。その本がきっかけで、次のお仕事へ繋がったりと、原さんの代名詞になる1冊となりました。見る人のイメージを広げてくれる原さんの作品、たくさんの本に必要とされるのではと思います。

 

 

菅野博子個展「 Just 11th 」

今週の作家さんは菅野博子さんです。HBでは11回目の個展となります。
人物画をお得意とする菅野さん。今年はおともだちのダンサー薔薇絵さんや、菅野さんの地元福島の身近な人々と風景を描かれました。おしゃれな着こなしと、表情豊かな薔薇絵さんの魅力が溢れています!
絵を描く楽しさや、人物を描く楽しさが伝わってくる作品です。ぜひお立寄りくださいませ!

 

「Amanojaku」高円寺の古着屋さん。

 

「セブンスターズ☆」高円寺のすてきな美容室。

 

 

現在はダンサーとしてご活躍中の薔薇絵さん、セツ・モードセミナーでデッサンのモデルをされていたことがあったそうです。菅野さんは在学時、授業で薔薇絵さんを描く機会はあったものの、当時は生徒とモデルという関係でそれ以上、交流はなかったそうです。あるとき、自宅で薔薇絵さんを描いているという卒業生に誘われ、デッサン会へ参加することになった菅野さん。薔薇絵さんとの交流はそこからはじまりました。

今回の作品を制作するにあたり、薔薇絵さんが住んでいた高円寺を訪れ、古着屋さんや美容室でポーズをとってもらったそうです。

 

 

 

「髪飾り」いつもおしゃれな薔薇絵さんを描いた1枚。

 

「ネルケン」高円寺にある名曲喫茶での1枚。

 

薔薇絵さんの思い出がたくさんつまった『としまえん』で描いた1枚。
ドイツ生まれで100年の歴史がある回転木馬に楽しそうに乗っている薔薇絵さん。お二人の仲の良さが伝わってくるような作品で、菅野さんにとっても思い入れのある1枚となったそうです。
今回展示された作品はすべて、イーゼルを立てて実際にモデルさんを見て描かれました。その場の空気や温度感、絵筆を動かすライブ感が伝わってきます。ぜひ原画をご覧いただきたいです!

 

「カルーセルエルドランド」

 

町田七音個展「For a moment」

今週の作家さんは、立体イラストレーションを制作している町田七音さんです。
HBでは初めての個展開催となりました。
街ですれ違ったり見かけたりする、 
一瞬の記憶の中の人たち。
そんな気になる人たちを、粘土を使った立体造形で表現されました。服のしわやまつげなど細部までこだわった、今にも動き出しそうな町田さん渾身のキャラクターたちです。ぜひお気に入りの子をみつけてみてください!

 

 

 

立体イラストレーション制作歴は6年という町田さん。
作りたいモチーフが思い浮かんだら、スケッチなどは描かずに、
「どんな服にしようかな?」とイメージを肉付けするように、手を動かし作っていくんだそうです。
まだ作ったことのないポーズや服のイメージがきっかけとなり、少しずつキャラクターの人格が形成されていきます。
モデルは実際にいるわけではないそうで、町田さんの直感と記憶から作られたキャラクターたちです。

 

 

1体の制作日数は、大きさやポーズにもよりますが、だいたい10日前後。
上の写真の女の子は、”長い髪がマフラーに巻かれている感じ”というイメージを元に、
徐々に作りながら考えていき、イメージをより固めていくといった作業をくりかえします。
絵をさっと描くのではなく、何度もイメージを練り、作り進めることのできる行程が楽しいそうです。
町田さんが一番好きな作業は、服のしわを作ること。今作っている服と、似たような服を着ている人をみつけて、こんなふうにしわが入るんだなと観察したりするそうです。

 

 

 

今回はプロの方にお願いしたという、写真パネルでの展示も。
普段は町田さんご自身が撮影をされるそうですが、光の加減や調整などが素晴らしく、自分では絶対に撮れないような仕上がりになったそうです。立体と平面の表情の違いもぜひお楽しみください!

今後は、文芸誌や小説のお仕事やってみたいという町田さん。今回展示したようなテイストや、SFものの本のお仕事をしてみたいそうです。実際には起こり得ないようなシーンなど、町田さんにしか作れない世界観を見てみたいですね!