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3月2013

石村光枝個展「5月と海とキイロと私」

今週の作家さんはHBでは初めての個展となる、イラストレーターの石村光枝さんです。
これまでは銀座界隈の画廊で個展をされていて、イラストレーションとして発表するのは今回初めてだそうです。
作品には、さくらんぼ、水玉、リボン、ラナンキュラスの花 … など、大好きなものがたくさん描かれています。
お部屋にかざりたくなるような小さな作品が14点と、120号の大きなキャンバスにのびのびと描いた大作1点が並びました。


すべてキャンバス地に油絵の具や、えんぴつ、クレヨンなどでリズミカルに描かれています。

 

時折見られる羅列したアルファベットの文字。ppppppppppp …

石村さんの作品ファイルにも、たくさんの羅列文字が。
RRRRRRRRRRR …

  

「職場のパソコンの中に入ってる記号を打ち込んで作ってるんです。」

と教えてくれた石村さん。お仕事の合間にカタカタとキーボードを鳴らし、
こっそりと作品作りに勤しむ、いたずらっ子のような石村さんの姿が浮かびます。
はなうたを歌うように自由に並べられた文字や記号は、詩のようでもありイラストレーションにも見える不思議な魅力がありました。その羅列文字をベースに、油彩作品へと展開しているようです。

今日の終わりは明日の始まり
それはもう今日になっていて
今はいつも進行中

作品のテーマは日常です。
生活の細やかな変化に耳をすませ、ぽつりぽつりと紡がれた言葉たち。
うれしい知らせ、楽しい会話、悲しい出来事。
決して一様にはゆかない毎日を、石村さんの並べた記号や、繰り返し描かれる模様がそれを表現しているようでした。

会場に並んだ作品と共に、石村さんの礎ともなっている作品ファイルもぜひご覧いただきたいです!

h i d a r i t e d e k a i t e ‘ s u k i ‘ t t e .
i t t u m o !

桑原紗織個展「トゥクトゥクに乗って」

今週の作家さんはHBギャラリーのスタッフでもある
イラストレーターの桑原紗織さんです。
初個展となる今回の展示はタイをテーマに、ゆるやかで暖かいタイの風が
感じられる様な風景や人、モノを描いた線画作品25点が並びました。

— 初個展、おめでとうございます。ご自身の勤務先であるHBで
初めてとなる個展をされてみていかがですか?

ありがとうございます。普段他の作家さんのお手伝いをさせて頂いていて、
展示の流れは分かっていたのですが、何ヶ月か前から制作を始めて
DMを作ったりポスターを作ったりというのをやってみて、やはり見ているのと
実際にやってみるのとでは違うな、と感じました。
ずっと学生の頃から好きなギャラリーで、イラストレーターさんの歴史がつまった
ギャラリーなので個展はすごく夢でしたし、ここで初めての個展が出来て光栄です。

—今回、タイがテーマという事ですが、実際にタイに行かれたのですか?

はい、夏にタイのバンコクに行ってきました。
初めての海外で初めての1人旅でした。
怖い思いもたくさんしたのですが、肝試しになっておもしろかったです。
日本には無いものを描きたかったので、タイらしいなぁというもの、
装飾が多いとか、色づかい等、初めて見るものをばしゃばしゃ写真に撮って
いった感じですね。写真を撮っている時点で風景をトリミングしてますが、
絵を描く時にさらにトリミングして います。

 

—初めての海外、しかもタイで1人旅。すごいですね!
キャプションの言葉も雰囲気が伝わってきてとっても素敵です。

ありがとうございます。当時の雰囲気を思い出しながら、
どんな気持ちだったっけなぁとか、なんでこの写真撮ったんだっけなぁと、
記憶を頼りに作っていきました。

—画材は何を使われているのですか?

Gペンと黒のベタ面は水彩絵の具で塗っています。
ペン先の扱いが難しいので、ゆっくりじわじわとペンを進めて描いています。

—モノクロの線画はどこまで描くかという所が難しいと思うのですが
描かれる際に気をつけている事、また心がけている事はありますか?

急ぐとすぐに線に出てしまうと思うので、ゆっくりじわじわと描いています。
どこまで描くかというのはいつも気にしていて、
どこを省略して、どこを黒く塗るかというのはまださぐりさぐり描いています。
まだまだ勉強中です。

—色を使っている作品はどの様に制作されているのですか?

線と面をそれぞれ別で手描きで描き、それをパソコンに取り込んで
レイヤーで重ねています。
版ずれの様にしたのがポイントです。

—左右の壁面で、同じ線画でも少し違った印象の作品が並んでいますが
どの様に描かれているのですか?

写真をトレースして描き、要素を足したり引いたりしながら描いているものと、
写真を見ながらフリーハンドで描いているものがあります。

—では最後に、今後描いてみたいものや目標、また挑戦してみたいお仕事に
ついてお聞かせ下さい!

またテーマを見つけて、とにかくたくさん枚数を描いていきたいですね。
時間がかかると思いますが、焦らず、絵と向き合っていきたいと思います。
また今後は色数を使える様に勉強していき、挿絵や書籍に関わるお仕事が
してみたいです。

 

普段スタッフとして多くの作家さんと関わっている桑原さん、
日々色々な事を吸収し、今後更なる進化、ご成長をされる事と思います。
桑原さんの人柄と同様、のびやかで気持ちのよい、人の心を楽しくさせる
イラストも、これからどんどん進化してゆく事でしょう!
ギャラリースタッフとして、イラストレーターとして、今後の更なるご活躍
楽しみにしております!

 

 

 

オビカカズミ個展「私の居るトコロ」

今週の作家さんはHBでは初個展となる、香川県在住のイラストレーター、オビカカズミさんです。
展示にあわせ、現在お住まいの香川県高松市からはるばるお越し頂きました。
地元をテーマに、山も海も近くにあるという大好きな風景や、おいしい特産物、
縁起モノなど、カラフルな色合いのたのしい作品たちが並びました。

今回の作品は、鉛筆で描いた線をパソコンに取り込み着彩をし、徳島県で作られている『阿波紙』という和紙に印刷しているそうです。素朴な線と、味わいのある版画のようなテクスチャーが特徴です。

— 初個展、おめでとうございます。HBギャラリーで展示していただけてうれしいです。
展示をされてみていかがでしたか?

学生の頃、イラストレーション誌などでHBさんを知ってから
ずっとあこがれの場所だったので、実際に展示ができてうれしいです。

— ありがとうございます!学生の頃はどんなイラストレーターさんが好きでしたか?

イラストレーションファイルに載っている人はぜんぶ憧れ!という感じで。
いつか載りたいなとずっと思ってました。

— イラストレーターとして独立される前は、デザインのお仕事をされていたとお聞きしました。
どれくらいの期間お勤めされていたんですか?

10年くらい、マンションの広告やパンフレットなどを作る会社にいました。
フリーになる2年前くらいはデザイナー兼イラストレーターという感じで、
会社ではデザインをし、家に帰ってからは頂いたイラストのお仕事をしていました。
半年に一回くらい、休みの日には東京に行って売り込みするといった具合です。

— どんな方に絵を見てもらいましたか?

好きな出版社さんや、自分の絵が合いそうなところですね。とにかくかたっぱしから電話をしました!
雑誌に載っていた「イラスト受け入れOK」というようなデザイナーさんや出版社さんのところにも。
電話の時は手が震えるくらい緊張するんですよ。 上京する一週間くらい前になると、
「なんでこんなことしてるんだろ…」と、ナーバスになったり…。

— 電話って緊張しますよね。でもすばらしい行動力!
東京に住みたいなと思ったことはありましたか?

ずっとあこがれで、隙あらば出てみよう!と思ってました。
でもうまくタイミングが合わず、ずるずると地元に残ることに。
「こういうやり方だったら、なんとか東京と繋がれるかな?」と
試行錯誤しながら地元でやっていける方法をみつけていった感じです。

— オープニングでも東京のおともだちがたくさんいらしてましたね。

東京に来るときは売り込みのほかに、ギャラリー巡りをしていたので友達もどんどん増えて。
地元に帰ってからも連絡をちょこちょこ取り合ってました。
Facebookやtwitter などで「生きてるよ!」って伝えたり。(笑)
顔を合わすことって大事だなと思います。一度お仕事をした方には、後日お礼も兼ねてご挨拶に行ったり。
作品だけじゃなく実際に顔を見てもらうと、覚えてもらえるんじゃないかなと思います。

— 地元でのお仕事がとてもすてきです。パッケージデザインもオビカさんがされているのですか?

そうなんです。地元でのお仕事は去年くらいから増えてきて、
これは地元のそうめん屋さんが「一緒にやろうよ!」とお声を掛けてくださって実現しました。
今回は展示に合わせたデザインで赤いリボンがついてます。パッケージのデザインは初めてやりました。

— すごくかわいいです。御礼まできちんとご用意があるなんて!
話しは変わりますが、オビカさんはお子さんが2人いらっしゃるんですね。
お母さん業の傍らイラストのお仕事はいつされてますか?

私の場合、夜が弱いので朝4時に起きて、頭が冴えているうちにイラストを描きおこしてます。
お昼くらいまでは脳みそが元気なんです。
お昼過ぎたあたりからは単純な色付けの作業をして、夕方くらいまでに終わらせるといった感じです。
朝は6時半くらいに一旦作業をやめて、ごはんの準備にとりかかります。夜ごはんも一緒に作っておくんです。

— 工夫されてますね。かっこいいお母さん!最後になりますが、今後やってみたいお仕事はありますか?

装画のお仕事をしてみたいです。ずっと憧れなので!

— オビカさんなら繋がるとおもいます。応援してます! お話ありがとうございました。

見ていると元気をもらえるようなオビカさんの作品たち。
地元ならではの、のんびりとした空気感や、自然に囲まれた環境だからこそ描ける
空気感の感じられるすてきな展示会となりました。
これからも香川と東京、両方でのご活躍をたのしみにしております!

青木欣二個展「後頭部美女コレクション2」

今週の作家さんは、HBでは初めての個展となるイラストレーターの青木欣二さんです。
青木さんは、デザイン会社のイラスト部でお勤めされた後、
10年ほど前からフリーランスでイラストレーターのお仕事をされています。

会場には目を見張るほどの、女性の美しい後頭部だけがずらりと並びました。
HBギャラリーでは珍しいリアルイラストレーションの世界です!

— 青木さんは、デザイン会社でイラストレーションを描くお仕事をされていたんですね。
どれくらいお勤めされていたんですか?

14~15年ほど会社にいました。フリーになった今も、前の会社からお仕事を頂くことが多いので、よく通っています。
まだ自分の机があって、機材なども豊富なのでなにかと会社に行くことが多いですね。
フリーで他のお仕事もいただいたり、という具合でやっています。

会社勤めの頃はカンプスケッチというものをよく描いていました。
広告のプレゼンに使うイメージ画のようなものなんですけど、今だったらパソコンで人物や背景を画像で合成できますが、その頃は全部手描きで作っていたんです。すごく忙しい仕事でした。

— そのお仕事でだいぶ鍛えられたのでしょうか?

結果的にはそうでしょうね。でもその頃はやりたくなかったですよ。(笑)
実際には印刷物にならなくて、プレゼンのためだけに使う絵だったので。
カンプはパステルで描いていたのですが、その頃から鉛筆で描くのは好きでしたね。
会社をやめてからも鉛筆は好きでよく使って描いていました。
鉛筆だと描きはじめるのも、途中でやめるのも楽で手軽なのがいいですよね。

— 後頭部を描いてみようと思ったきっかけを教えて下さい。

以前、車と動物を組み合わせたシリーズの絵を鉛筆画で描いていたのですが、
その作品をイラストレーション誌の『チョイス』に応募したところ、準入選を頂けたんです。
でもやっぱり入選を目指したいなと思って、このタッチでもっと面白いモチーフを探そう!と。

この絵になる前は女性のうしろ姿を肩くらいまで入れて描いていたんです。
あるとき、肩の部分を消して後頭部だけを残してみたら、あまり見かけない絵だなぁと。
これはおもしろいかも!と思いました。
その作品を再びチョイスに応募したところ、箭内道彦さんの審査で念願の入選に。
それがこのシリーズにつながるきっかけです。
僕の絵はヘタすると怖い絵になっちゃうかなと思うんですが、今は「多少怖くてもいいかな」という気持ちで描いてます。

— 頭だけがふわっと浮かんでいるような、不思議な存在感がありますよね。
後頭部のモデルさんは実在する方ですか?

はい。前の職場の方や、知り合いや家族など。
写真を撮らせてもらって、プリントしたものを見ながら描いてます。

— 1枚にかかる制作時間はどれくらいですか?

ショートヘアとロングヘアでかかる時間も様々ですが、
1週間〜10日くらいでしょうか。大きい作品だと20日〜1ヶ月くらいかな?
ずっと描き続けるというよりは、間をあけながら少しずつ描くという感じですね。

— 描いていて楽しいなと思うのはどんなときですか?

最初は鉛筆でばーっとたくさんの線を描いていくので、物体だったり塊にしか見えないのですが、
徐々に描き進めていくと、髪の毛のツヤ感が出てくる瞬間があるんです。
8割くらい書き進めたあたりかなぁ…それが見えてくると楽しいですね。

— では逆にむずかしいところはありますか?

背景の余白と髪の毛との境界線の描き方が一番むずかしいですね。
単純にぼかすと立体感がなくなってしまうんです。練りゴムをうすくのばして、そーっとなぞるようにぼかすのですが、境目の描き方でうまく立体感が出る時と、そうでない時があるのでむずかしいです。

あと、もう一点挙げるならば鉛筆を削ることでしょうか。
4Hの硬い鉛筆をよく使うのですが、描き始める前に7本くらいたくさん削っておくんです。
1本目を使って描いて、先が丸くなったら2本目に移って…というふうに。
そのストックがなくなってしまうとまた7本削らなくてはいけないので、その時間がね…。
4Hってすごく硬いじゃないですか?なかなか削れないんですよ。

— 意外なところに難点が。大変な作業ですね!
青木さんの絵は、ここで終わりというやめ時を決めるのがむずかしそうに見えます。なにか決め事はありますか?

そうですね。フィキサチーフをかけてしまえばもう諦めがつきます。(笑)
どんな絵にしても「もうちょっと描けるけど、ここでやめておこう。」というくらいが丁度いいと聞きますね。

— なるほど。奥が深いですね。
最後になりますが、これから挑戦してみたいことなどお聞かせ頂けますか?

また新たなテーマをみつけて描いていこうと思います。B全やB倍くらいの大きな鉛筆画にも挑戦してみたいですね。
普段は水彩画のお仕事を頂くこともあるので、そのタッチで自分の作品も作っていけたらなと思ってます。

— ありがとうございました!また作品を拝見できるのを楽しみにしております。

パソコンの普及と共に、リアルイラストレーションの存在が希薄になりつつありますが、
青木さんの確かな技術力と表現力のある作品を見ると、手描きだからこそ表現できる説得力のようなものを感じました。改めて原画の持つ力はすごいなぁと感動させられます。
ぜひ、 原画を観に来てください!みなさまのお越しをお待ちしております。