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1月2016

中村菜都子個展「祈りの島」

今週の作家さんは中村菜都子さんです。HBでは初めての個展です。
今回は中村さんのおばあさまの故郷、長崎の五島列島をテーマに制作されました。
実際に長崎を訪れたことで、歴史や文化に触れ、ご自身のルーツを知った中村さん。教会やカクレキリシタンの歴史などを、版画をベースに、刺繍や螺鈿の貝殻などを用いて描かれました。工芸品のような美しい作品、ぜひ原画をご覧いただきたいです!

 

「祖母にみる聖母マリア」

 

「漁村のある風景」

 

幼い頃から、アジア雑貨の香りや、中国、台湾、香港などアジア映画の雰囲気など、異国情緒漂うものが大好きだったという中村さん。20歳を過ぎてからは興味はヨーロッパへと移り、6年間ほどロンドンで暮らしていたご経験も。自分がなぜアジアやヨーロッパの文化に興味を持つのか、その根源を知りたい、そんな思いが今回の制作に繋がりました。

自分のルーツを探るため、これまで訪れたことのなかった、中村さんのおばあさまの故郷、長崎県の五島列島を訪ねます。
調べていくうちに、アジアやヨーロッパとの交易が盛んだった長崎のこと、おばあさまの生い立ち、活版印刷が普及した時代のことなど、現在の自分に通ずるような様々な歴史に触れることになりました。作品のエピソードと合わせてじっくりご覧いただきたいです!

 

「天正遣欧使節」

 

「ルドビコ茨木」

 

美大時代、金属工芸を専攻されていた中村さん。鉄や木材、陶芸や漆を扱っていた経験が今の手法にも繋がっています。イギリスの学校ではイラストレーションコースを専攻。絵の課題でゴム版画を制作したことが、中村さんの平面作品作りへのきっかけとなります。ヨーロッパは、聖書や本の挿絵などすべて木版画や銅版画などで描かれていて、生活にとても身近なものなんだそうです。

カッターやハサミ、針、彫刻刀などを扱うことが自分に合っているそうで、切ったり貼ったりすることは作品作りにかかせないことだそうです。絵に金箔や貝殻を取り入れる手法は、漆を扱っていた大学の先生から教えてもらった技術が生かされています。漆器のようにきらきらとした美しさは、原画ならではの魅力があります。

 

「天国の庭」

 

   

 

これからは、イラストレーションのお仕事も広げていきたいという中村さん。CDジャケットや本の装画、絵本、舞台にも興味があるそうです。印刷物になった中村さんの作品もぜひ見てみたいですね!

会場では、中村さんのオリジナルグッズも好評販売中です。ミラーやリング、ネックレス、ブローチなど種類もさまざまです。受注販売も承っております。展覧会の記念にぜひどうぞ!

 

草谷隆文個展「ALPHABET」

今週の作家さんは、デザイナー・アートディレクターの草谷隆文さんです。HBでは初めての個展開催です。
ご自身でイラストレーションを描きデザインを手掛けられることも多い草谷さん。今回はお気に入りのミュージシャンの名前、イニシャルをテーマに、自由なアイデアで独自のアルファベットを作られました。グラフィック、音楽好きの方にもたまらない展覧会となっております。ぜひお立寄りくださいませ!

 

「ALPHABET」

 

3~4年程前から、マジックインキで絵を描き始めたという草谷さん。
今回の作品もすべてマジックで素材を描き、パソコン上でコラージュや色変換をすることで、独特のマチエールが表現されました。ミュージシャンのイニシャル、人柄や音楽からイメージを膨らませ考えられたユニークなアルファベットたち。会場で流れている音楽にもぜひ注目していただきたいです!

 

「Phil Upchurch」

「Quincy Jones」

 

幼い頃、設計技師のお父さんが使っていたコピー機が大好きだったという草谷さん。
当時はまだ珍しかったコピー機で、自分の描いた絵が拡大されて手元に戻って来た時はとても衝撃的だったそうです。
そんな想いから、現在でもコピー機は草谷さんにとって大切なツールのひとつとなっているとのこと。
自分ではコントロールできないような、偶然生まれる表現のおもしろさが魅力だそうです。

 

「Ike Turner」

「Herbie Hancock」

 

高校生の頃には演劇のご経験もあるそうで、舞台ポスターやパンフレット、舞台美術も手掛けられていたそうです。
Dee Dee Bridgewater の舞台を実際に見たり、同じ演目をご自身が演じたこともあるということも、作品に影響しているそう。さまざまな経験を元にアウトプットされた、草谷さんならではの表現は見応えたっぷりです!

短いサイクルで個展をすることで、絵を描く時間を作るようにしているという草谷さん。
どこまでもおもしろい表現を追い求めたい、そんな草谷さんの探究心を垣間見る展示となりました。

 

「Dee Dee Bridgewater」

 

小林達介個展「kobatatsu image」

今週の作家さんは小林達介さんです。HBギャラリーでは初めての個展となります。
昨年開催された、第3回東京装画賞で金賞を受賞された小林さん。今年も活躍が期待される大注目の若手イラストレーターさんです。木炭で生き生きと描かれた風景や人物、懐かしさも感じられる独特な雰囲気が魅力です。
ご自身、約9年ぶりの個展開催となりました。

 

「タイムマシン」

今回は新作イラストレーションのほか、東京装画賞で受賞された作品、コンペ出品作など小林さんのこれまでの活動を一堂にご覧いただけます。「タイムマシン」は、小説が書かれた当時の最新の技術、蒸気機関車や真鍮の歯車などを組み合わせたり、映画を参考にして描いたそうです。ご自身が白いシャツを着て、ポーズをとり撮影して描いた、リアリティある1枚となり見事金賞に輝きました!

 

「冬の忘れ物」

「主演女優」

 

元々は服飾系の大学で勉強をされていた小林さん。毎月、課題で出されていた100枚ドローイングをきっかけに、絵を描くようになったそうです。小林さんの作品を「毒があって、独特でいい」と評価してくれた先生の言葉がきっかけとなり、絵描きになることを決心。 ドローイングやコラージュ、木版画などさまざまな画材を経て、現在の木炭での表現となりました。描きたいモチーフが少しずつ変わり、次第に画材も変わっていったそうです。

 

「鏡よ鏡」

普段は自分に合ったイメージ作りのため、海外ミステリーやサスペンスものの小説を中心に読み勉強中とのこと。
同じ小説や映画を何度も繰り返し見て、そこから得たイメージを1枚の絵にすることが多いそうです。

 

小林さんが装画をてがけられた『消滅した国の刑事』

 

 

 

今後は、自分の絵に合うようなミステリーやサスペンスの本のお仕事のほか、自分の絵と対極にあるようなジャンルでの仕事も見てみたいとのことでした。小林さんの親しみやすいお人柄と作品、両方の魅力をぜひ多くの方に知って頂きたいです。ぜひお立寄りくださいませ!

 

柿崎紗良個展「RYE10580」

新年最初の展示、今週の作家さんは柿崎紗良さんです。ご自身初めての個展開催となります。幼い頃住んでいた、ニューヨーク州ライ市の思い出を、色とりどりのペンと絵の具で丁寧に綴られました。穏やかな時間が感じられる作品です。ぜひご覧くださいませ!

 

 

小学校1年生の頃、2年程住んでいたというニューヨーク州ライ市。展示のタイトル「RYE10580」は、住んでいたお家の番地名です。紗良さんの住むお家は、近くに海や遊園地、湿原のある自然豊かな場所で、シカを見かけることも度々あったそう!英語も自然と覚え、日本に戻ってからも、中高生時代は英語の勉強はしなくてもよいくらい理解できたそうです。


 

デザインの勉強をされていた専門学生時代。卒業制作で作った、カラフルなボールペンで描いた絵本がきっかけとなり、今もそのタッチで描き続けています。高校生の頃、ノートをとっていたボールペンが、のちに紗良さんの画材になりました。

 

 

卒業後は広告制作会社へ就職。仕事ばかりでほとんど手を動かさなくなっていたとき、イラストレーターのお母さんから、HBファイルコンペの存在を教えてもらったことが、また絵を描きはじめるきっかけとなりました。
2014年にはLUMINE meets ART AWARD で受賞。紗良さんの絵がルミネのエレベーターのグラフィックとして使用されました。その作品から絵本のお仕事にも繋がったそうです。

 

 

夢はクリスマスキャンペーンのお仕事をすること。 会場には、そのまま広告にしたくなるような楽しい冬の景色が描かれたポスターも。紗良さんのセンスが光る初個展となりました。