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9月2023

Tsuin個展「はなとどく」

今週の作家さんはTsuinさんです。
HBギャラリーでは初めての個展となりました。
美しさの中に、怖さや危うさが垣間見える魅力的な作品群。
Tsuinさんの妖麗な世界観をご堪能ください!

一部作品はオンラインショップでもお取り扱い中です。

http://hbgallery.shop-pro.jp/

 

━ 個展タイトル「はなとどく」には
「花と毒」「花届く」2つの意味をこめられたそうですね。
展示作品も人物と併せて、花が描かれている作品が目立ちます。
Tsuinさんにとって花とはどのような存在なのでしょうか。

花は色や形から元気をもらえ、特に生きている花はそこにあるだけで元気をもらえる、ありがたい存在です。今回、DMをイメージして作った花束をくれた友人がいて、とても嬉しかったです。

 


 

━ Tsuinさんは装画や挿絵の仕事を数多く手がけられており、
今回の個展でもお仕事で描かれた挿絵が展示されています。
お仕事とオリジナルの作品を並列して展示しても、雰囲気に統一感を感じますね。
Tsuinさんご自身は物語に絵を添える仕事において、好きなジャンルはありますか?
また、得意なモチーフなどがあれば教えてください。

お話を読むのが好きなので、本の仕事はいつも楽しくさせて頂いています。モチーフとしては女性や子供、動物が好きです。ジャンルは問いませんが、ホラーやミステリーはウキウキして描いています。

 


 

━ 最近ではご依頼を受けたウェディングフォトの制作もされているとのこと。
依頼された方とはラフなどのやりとりはあるのでしょうか。
納品までどのようなプロセスを踏みますか?
これからお願いされる方に向けてご案内いただけますか。

ラフのやり取りはせず、完成までお任せいただいた形でした。細かく指定頂くより、自由に描かせて頂いた方が描きやすいので、絵の元となる写真を頂き、他は自由に描かせて頂きました。納期は1ヶ月ほど頂きました。

 


 

━ Tsuinさんの筆致には、人物の内面やバックグラウンドまで想像させてくれるような余地を感じます。
人物を描く際に意識されていることは何でしょうか。
また、現在の画風になるまでに影響を受けた方がいれば教えてください。

人物はほとんどその時の自分の気持ちを込めて描くことが多く、自画像のようなものだと思っています。描く時は音楽をかけて気分を高めています。

ピーター•ドイグ、網中いづるさんや日端奈奈子さんのようなきっちり描かない方が好きで、影響を受けていると思います。ちなみに網中いづるさんの原画(個展で購入しました)が家にあって、毎日眺めてます。

 


 

━ 今後挑戦されたいお仕事などや活動など、
Tsuinさんの展望を是非お聞かせください!


装画や広告、パッケージなど、見た人が何かしら嬉しくなるとか、癒されるとか、心を動かされるような仕事ができたらとても嬉しいです。

 

 

インタビュアー 須貝美和

春日井さゆり個展 「おままごと」

今週の作家さんは春日井さゆりさんです。

HBギャラリーでは初めての個展となりました。

アクリル絵具で丁寧に描かれた美しい作品の世界は

非現実的な側面もありながら心地の良い感覚を覚えます。

 

一部作品はオンラインショップでもお取り扱い中です。

http://hbgallery.shop-pro.jp/

 

ー春日井さんは装画や挿絵のお仕事で既にご活躍されており、

グループ展でも作品を発表されてらっしゃいますが、

HBでは初めての個展となりました。

今回の個展はどのような思いで準備を進めて来られましたか?

 

とてもありがたいことに、HB WORKコンペで特別賞をいただき、その受賞者展の際にオーナー様から個展のお誘いをいただきました。

本当に嬉しくて光栄だったのですが、急なことでしたのでとにかく思いついたものから作っていって、

はじめは綿密な計画やテーマは決めることなくふわっとした状態で、手を動かすことが先だと思い、なんとなくで進めていきました。

制作を進めていく中で、本当に身近な、日常で感動したことを切り取り作品にしたいと思いました。

「おままごと」というタイトルにして、全体としてはまとまったと思っています。

ー春日井さんは絵を描かれる際、

模型を作って描いたり、鏡を見て描かれるそうですね。

そのような描き方になったのはいつからなのでしょうか。

今の手法になった経緯などをお伺いできますか

 

以前、四谷のギャラリーでグループ展に参加した際、来てくださったお客様に

「ディティールを大事にしたほうがいい、まだ迷ってるところがあるように思うから見本や模型を簡単でいいから作ってみては」

と仰っていただいて、それから下準備的なことを以前よりしっかりするようになりました。

実際、やはり説得力みたいなものが強くなったかなとは思います。

 

ー書店に並ぶ春日井さんの装画は人目を引き、

ダヴィンチ8月号でもジャケ買いしたくなるイラストとして紹介されています。

普段描かれているオリジナル作品と、仕事のための作品、

描き進める中で、双方に意識の違いなどはありますか。

 

お仕事とオリジナルでは特に意識はないと思うのですが、装画の絵のラフを描くときは、

今までの私の絵と物語の雰囲気を結びつけるような感じで考えて、

その上でもう一歩踏み込むようなラフが描けるように心がけていますが、

やはり自分だけの作品ではないので、本当に緊張していて、

汗びっしょりになっていたりします。。

ー春日井さんは漫画も描かれており、

「幽霊とゆーれい」で、講談社が主催するアフタヌーン四季賞の佳作を受賞されています。

漫画でも日常のシーンを土台に描かれながらも、

非現実的な世界を私たち読者に体験させてくれます。

春日井さんのポストにある「すぐそばにある異世界」がイラストでも漫画でも共通する視点のように思えました。

春日井さんご自身は、独自の世界を表現されるために、

普段から準備されていることや取り組まれていることなどはありますか。

 

取り組んでることと言っていいのかは分からないのですが、漫画は小さい頃から大好きで、日常が嫌なとき、私の逃げ場となったときもありました。

大人になってからはお酒を飲んだり、出かけたりして逃げ場を作れるようになったのですが、

好きな作品の世界を思い描いたり、日常とは違う時間を過ごしたときの感じをストックしておく頭の逃げ場コーナーみたいなものをいつも設置しています。

頭の逃げ場には夜中に少し起きたり、日差しがいつもと違うなぁなど、ピンとくる景色や音や手触りのような形容しがたい感じもあり、

それを形にしたいと思っていて、それが絵や漫画の作品になっているので共通点があるのかもしれません。

 

ーますます活躍が期待される春日井さん。

挑戦されたいお仕事などや活動などはありますか。

今後の展望を是非お聞かせください。

 

また装画のお仕事ができたらなと思います。

雑誌や、商品パッケージなどにも挑戦したいです。

個展で大きい絵を描いたり、漫画も新作を描きたいですし、

作りたいものはたくさんありますのでこれからも制作を続けていきます。

この度はありがとうございました。

インタビュアー 須貝美和

松木直紀個展 「スクランブル」

今週の作家さんは松木直紀さん。HBでは3回目の個展となりました。

今回のテーマは渋谷の街。雑踏の中を交錯する音や光、空気感の描写は必見です。
松木さんらしい、しっとりとした臨場感をぜひお楽しみくださいませ!

一部作品はオンラインショップでもお取り扱い中です。
http://hbgallery.shop-pro.jp/

 

 

Q1.
松木さんは3回目のHB個展です。
「atmosphere」と題された2019年の初個展では明かりが灯る夜の街を、
続いて2021年「雨と雪」では新雪と雨の光景を描かれました。
今回は「スクランブル」と題し渋谷の街をテーマにされています。
渋谷をモチーフに選んだ理由をお聞かせください。

過去二回の展示では、近隣の住宅街など、誰も知らない街を描くことが多かったので、次は皆が知っている光景を描きたいと考えていました。
渋谷は、老若男女 国籍問わず色々な人がいて、明るいところも暗いところも、都会的な場所も自然が多い場所もあり、文化もスポーツも盛んで、本当に色々な要素がごちゃ混ぜになった面白い街だなという印象があり、そんな渋谷の光景を描き集めてみたいと思いました。

 

 

Q2.
松木さんはご自身で撮影された写真を元に絵を描かれるそうですね。
今回も実際に渋谷へ撮影に行かれましたか?
取材を終えてから絵を仕上げるまで、
松木さんはどのようなプロセスを踏まれるのでしょうか。

展示の構成をざっくり考えてロケ地の候補を洗い出した後、渋谷に取材に行きました。いくつか作品ができると全体の構成を見直すので、その度に何回か行っています。もともと20年くらい前にはよく渋谷に遊びに来ていたので、その頃を思い返しながら、街の変化を楽しみつつ歩き回っていました。
取材で撮影した写真は、フォトショップ等で他の写真や資料と組み合わせたり、線画を描き足したりして下絵を作ります。その後は下絵をベースにアクリル絵の具で描画します。

 

 

Q3.
お仕事で描かれる風景画はどのように制作を進められますか。
小説推理で挿画を担当された遠藤秀紀先生の連載小説「人探し」
こちらで描かれた駅の改札は、どこか特定の場所なのでしょうか。

制作の進め方は、基本的にはオリジナルと同じです。こういう絵にしたいというラフを作った後に、それに合う資料を探したり、ロケ地が思い浮かべば取材に行きます。それらを元に下絵を作って、アクリル絵の具で描きます。
物語の場合、あまり場所や人物が確定してしまうような描写はしたくないという思いがあって、ぼかすことが多いです。「人探し」の場合は実在する駅が舞台になっているので一応参考にはしましたが、それと特定できる要素は残していません。

 

 

Q4.
普段からどんなモチーフを描くときにも「空気感」や「雰囲気」を大切にされているそうですね。
絵を描き進めて行く中で、空気感、雰囲気を保つために工夫されていることはありますか?

意識的に気をつけているのは、あまり描き込みすぎないようにすること、あとは構図とモチーフ・ライティングでしょうか。
フルデジタルの制作だと描きすぎてしまうので、描画の段階ではアナログにしています。
街の絵の場合、街の空気は人が作ると思っているので、画面内に人がいない光景でも人の存在を感じさせるようなモチーフや灯りを入れるようにしています。

 

 

Q5.
松木さんは今年のTIS公募で見事入選され、ターナー賞,ファーバーカステル賞と企業賞をW受賞されました。
確かな実力をお持ちの松木さん。ますますのご活躍が期待されます。
今後の展望をお聞かせください。

書籍の装画や挿絵のお仕事はとても楽しく、今後も続けて行けたらと思っています。
街の絵を描くのが好きなので、そのあたりで雑誌や広告などのお仕事につながると嬉しいです。

 

 

インタビュアー 須貝美和