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8月2018

仲條正義賞 綾野本汰個展「無題町∞丁目」

HBファイルコンペvol.28の受賞者展、ラストを飾るのは仲條正義賞大賞に選ばれた綾野本汰さんです。
「無題町∞丁目」という町に暮らす住民たちが、レストランで楽しくおしゃべりをして過ごす様子が描かれています。
幕の内弁当が滑り台から落ちてくるアスレチック、 チョコレートフォンデュの温泉、パンの家具屋…などなど、綾野さんのアイデア満載な作品をお楽しみください!

 

 

動物型やユニークな立体のトピアリーの並ぶ緑豊かな住宅地。ここは砂漠の真ん中にあるニュータウン「無題町」という町だそうです。人工的に山を築きオアシスの水を利用し、電気と水を町中に供給しています。ニュータウンの山の頂上には不思議なレストランが建っていて、住民はそこでおしゃべりを楽しんでいます。
人が集まっているところを楽しく描きたいと思った、と綾野さん。それぞれが好きなことをして、自由に過ごしている感じを大切に描いたそうです。ダンベルをしていたり、寝ながらサンドウィッチを食べていたり、皆が思い思いに過ごしています。

 

 

普段から興味のある事をメモしておいたり、絵を描いている時に思いついたことを組み合わせて絵を描いているそうです。描くときはおもしろいかどうかが大事なポイント、と綾野さん。色彩や図形的な面白さと、どんな状況を描くかということ。今回の展示で特に描きたかったモチーフはレストラン、ニュータウン、トピアリーだそうです。それらに綾野さんが面白いと思ったことをたくさん詰め込んで描かれたとのこと。

 

 

昨年のファイルコンペは3回目の応募だったそうです。試行錯誤の段階で、毎年違う絵を出されていたとのこと。色鉛筆で描いたシリーズがたまったので応募しようと思ったそうです。賞に入るとは思っていなかったので本当にびっくりした、と綾野さん。受賞時、仲條正義さんから頂いたコメントに「ともかくこのままで良いです。ありがとう。」と書いてあったことが嬉しかったそうです。
今後は、絵本や漫画の制作も続けながら、挿絵やカット、装画などのイラストレーションの仕事をしていきたいそうです。これからのご活躍が楽しみです。
楽しくて明るくて、フワッと柔らかい綾野本汰さんの個展は8月29日水曜日まで。どうぞお見逃しなく。

日下潤一賞 村田恵理個展「MARBLE」

HBファイルコンペvol.28の受賞者展、第6週目は日下潤一賞大賞に選ばれた村田恵理さんです。
HBでは約3年ぶり、4回目の個展開催となりました。版画とペイントを組み合わせたユニークな技法の作品たち。灯台や船などの夏らしいモチーフと、どこか懐かしく味わい深いタッチをお楽しみください!

 

 

「MARBLE」と題された今回の展示、大理石を思わせる質感が涼しげな作品たち。木版のように、木に墨を塗り画用紙に刷ったものをベースに、白いアクリル絵の具で描かれているそうです。飾るならこんな絵がいいなというイメージを最初に思い描いていたとのこと。好きなカタチをみつけて描いたというモチーフは、建物や車や飛行機など。窓がいっぱいあるものを見ると描きたくなるのだそうです。
HBコンペは今回が11回目の応募。ダメだったら諦めようと思っていたそうで、受賞の知らせを聞いたときは本当に嬉しかったそうです。年に20枚、自信作を揃える作業が自分を成長させてくれた、と村田さん。賞はともかく自分の成長のために描き続けたそうです。ファイルの中で個展をする気持ちで描くといいかも、とこれから応募する方へのアドバイスも。

 

 

2011年にHBギャラリーで初個展をし、イラストレーターとしてスタートした村田さん。今回の技法で描き始めたのは、前回のコンペ応募の1ヵ月前だったそう! 版画ではなく、アクリル絵の具でぺったりと塗った色面構成で応募しようと思っていたところ、「テクスチャをつけてみたら?」とアドバイスしてくれたのは、以前日下潤一賞を受賞された藤井紗和さん。ぺったり描くのをやめて今の版画を組み合わせたタッチをみつけたそうです。それが受賞のきっかけだったと思う、と村田さん。人に絵を見てもらったり、アドバイスをもらったことでタッチが変わったそうです。

 

 

受賞から8ヵ月、ずっと個展のことだけを考えていたという村田さん。今後もまた面白いものをみつけて、タッチも自由に描き続けていきたいそうです。自分が面白いと思うことに取り組んで、それを見て一緒に仕事がしたいと思ってくれる方がいたら嬉しいとのこと。

会場では作品をモチーフにした焼きもののブローチやはし置きも好評販売中です!
村田さんが絵付けを担当されている「山小屋」の作品たち。数に限りがございますのでお早めにどうぞ。
展示は8/22(水)(最終日のみ17時まで)です。村田さんの新境地、ぜひご覧いただきたいです!

 

鈴木成一賞 小林夏美個展「Where is my home?」

HBファイルコンペvol.28の受賞者展、第5週目は鈴木成一賞大賞に選ばれた小林夏美さんです。
コンペ初応募で見事大賞に輝いた小林さん、今回が初めての個展開催となりました!
広々とした憧れの風景を、独自の手法で学んだリトグラフで描かれています。お楽しみに!

 

 

絵を描き始めたのはここ1~2年という小林さん。広くて単純で素直な風景に憧れ、絵を描き始めたそうです。実際にある遠くの風景だそうですが、行ったことはなく憧れの気持ちだけで描いたとのこと。描いてみると北の寒い国や水辺の景色が多く、自分が憧れている場所はそういう場所なんだ、と描いているうちにわかったそうです。大学時代はインテリアを学ばれ、その後は造園屋さんでお勤めをされていたそうです。植物の単純で素直な性格が好きなところ、と小林さん。それを大きくした原風景も、単純で素直なものだろうと思い、えがく絵が見えてきたのだそう。

 

 

技法は、独学で学んだというリトグラフです。工房には通わず自宅で絵を描きたいという気持ちから、動画サイトにアップされている、自宅でできるリトグラフのフランス語動画を見よう見まねで実験そうです。2歳のお子さんをもつ小林さん。子どもができたら絵を描きたいと以前から思っていたそうで、最初は植物の細密画の教室に通われていたそうです。しかしあまりにも大変で、もっと自分に合う技法がないか探したところ、現在の手法にたどりついたそうです。

「版画の偶然性が好き。子供が寝静まってから夜な夜な刷り遊んでいた」と小林さん。

受賞の知らせを聞いたときは、信じられなくて本当に自分のファイルが選ばれたのか、すぐにギャラリーに確認をしに来たそうです。今もあまり信じられない…と小林さん。描き始めたばかりだったことから、応募する時点で作品が15点しかなく、自信もなかったとのこと。けれども、ファイル形式で見せるコンペが自分の作品に合っていたのかも、と今では思うそうです。初めてイラストレーションのコンペに応募された小林さん、HBのコンペは1次〜最終選考まで発表があるため、自分がどこに入ることができるのか、見てみたかったという気持ちが強かったそうです。

 

今回展示された作品はほとんどが新作。たくさん描いてきた方々に太刀打ちできない…という気持ちで、個展までにとにかくたくさん絵を描いたそうです。 絵を仕事にしたいと思い応募したコンペ、ご自分の絵が本や印刷物になった姿を見てみたいとのことでした。生涯に一冊は絵本を出版したいそうです!今後が楽しみな小林さんの初個展、ぜひお越しくださいませ!