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2月2022

マナベレオ個展「そ。」

今週の作家さんはマナベレオさんです。初個展となりました。アナログとデジタルを融合させたユニークな表現が魅力のマナベさん。チョイスに多数入選経験のある今注目の作家さんです。予測不能、ワクワクする作品をぜひ会場で体感して頂きたいです!

 

「かあむす」

今回は3年ほど前からマナベさんが応募し続けている「チョイス」に向けて描いた作品の数々を展示。自分の作品を振り返ってみようという想いもあったそうです。現在の作風になったのは、2年前の塩川いづみさんのチョイスへ応募したことがきっかけだったとのこと。最終選考ではあったものの、その時の絵で手応えを掴んだ、とマナベさん。その後はチョイス入選が4回続き、一昨年にはHB WORK コンペ VOL.1で見事、川名潤さんの大賞に選ばれました。チョイスに応募する際には毎回戦略を立て、自分が出来る範囲の中で、審査員の目に留まるような表現を模索しているそうです。

 

「原色のソネット」

「草を棄てる」

 

マナベさんの持ち味でもある、グラフィカルな造形とアナログのテクスチャ。手作業でしか出せない表情を組み合わせることが楽しく、周りからも評価された実感があるそうです。突拍子のないユニークなモチーフや描き方は、バラエティ番組が好きなことや、ダウンタウンが好きなことも大きく影響していると思う、とマナベさん。特にお母様の影響で見ていたという「ダウンタウンのごっつええ感じ」は、未だに見返すというほど大好きな番組だそう。

 

「movie show」

「トランプ原画」
オリジナルトランプのために描かれた全55枚。絵柄のバリエーション豊かにずらりと並んだ力作です。会場ではトランプの受注販売も!

 

近年は色を抑え、モノトーンで描くことにも挑戦。描くなかで滲みの表現は特に面白く、技術の行き届かない領域であり作品を俯瞰で観れる要素だと思う、とマナベさん。また、自分自身で説明できる作品はほとんど無いとも言います。落書きや思いついたものをメモに残し、そこからコラージュするように構成していくのだそう。音楽や文章からも影響受け、寺山修司の世界観は特にお好きとのこと。

 

「act3」

「遠い祭囃子」「act4」

今年に入り美術展の公募でも賞を受賞されたマナベさん。イラストレーターとしてのみならず、美術方面でも活動していきたいそうです。今後の作品にも注目です!

才村昌子個展「見るものすべて」

今週の作家さんは才村昌子さんです。HBでは1年ぶり2回目の個展開催となりました。1つの版からさまざまな表情を生み出す、才村さんの遊び心いっぱいの銅版画の数々をお楽しみください!

「時の変奏 」犬の望遠鏡

 

今回の展示では、動物と植物をモチーフに描かれた新作「時の変奏」シリーズが見どころ。銅版画ならではの線の美しさが際立つ単色刷りからはじまり、手彩色、箔、抽象版との組み合わせなど、次々とアイデアが生まれたそうです。銅版画は何枚も同じように刷れるけれど、刷っていると少しニュアンスを変えたくなる…そんな一人遊びの過程を披露しているような展示になった、と才村さん。

 

「時の変奏」華やかに

「時の変奏」愛らしく

グラフィカルな色版が目を惹く作品。

 

「時の変奏」cantabile

手彩色に、銅版画を刷った作品。

 

正面に飾られたシリーズは、銅版画と金や銀の箔を組み合わせたもの。音楽をテーマに切り出された、箔のダイナミックな形がユニークな作品です。好きな形は日頃からストックしているという才村さん、紙の切りくずなど思いがけない形の発見を楽しみます。求める表現は、具象と抽象の間とのこと。刷り位置や抽象版との重なりなどは、事前にかなり設計するそうですが、箔の着き具合や光の反射でどのように見え隠れするか未知なところが楽しいのだそう。普段はデザイナーとしても活動されている才村さんですが、銅版画は現代のデザインとは逆のベクトルにあり、制作過程に多分に実験を盛り込めること、様々な現象の痕跡を作品に取り込める偶然性との出会いが魅力とのこと。

 

「時の変奏」violins

今回の作品で才村さんが新たに挑戦されたのは線の表現でした。これまではエッチングの硬質な線が気になっていたそうですが、点描の集積で柔らかな線の表情が出るようになったとのこと。心地よい線が描けてたまらなく嬉しい、と才村さん。楽しみながら理想の表現を追求される才村さん、今後の作品も楽しみです!

水上みのり個展「HORIZON/地平線」

今週の作家さんは水上みのりさんです。HBでは約17年ぶりの個展開催となりました。亡き師匠、坂川栄治さんに捧げる心象風景や人物画など、思い思いに描かれました。絵を描き続ける覚悟を決めた、水上さんの言葉と作品をお楽しみください!

 

「よびごえ」

地平線をテーマに描かれた今回の作品たち。いつもは仕事に繋がるように描こうかな…と思ったりするが、今回は好きなように描こうと心に決めたそうです。個展をしてみようと思ったきっかけは、来た仕事を受けるだけの日々で、自分を世の中に出すということを全くやっていなかったと感じたことだったそうです。「自分はここにいるよ」とアピールしたいと思い、古巣のHBでまたやってみようと思えたとのこと。

 

故郷・北海道の記憶と、心象風景。

 

濃紺で描かれたシリーズは、悩んでいる今の気持ちと状況をそのまま絵にしたいと描かれたもの。家庭や子どものこと、色々なものに縛られていることから本当は逃げたい…そんな心の内を思い切り表現された迫力ある作品。絵に添えられた、水上さんによる詩と共にぜひ味わって頂きたいです。

 

 

 

一方で、猫の可愛いらしい姿を描かれた作品も。幼い頃からずっと猫を飼い続けているという水上さん。自然な仕草を愛情たっぷりに表現されています。水上さんオリジナルの猫カレンダーも好評販売中!

「六月 あさつゆ」

 

近頃は子ども向けの本のお仕事が多いそうですが、幅広いジャンルで本の表紙を描いていきたいそうです。デジタルが主流の時代だけれど、また手作りのものや、温かみをのある手描きに価値が出るといいなと思う、と水上さん。「坂川装画塾」での水上さんへの課題は「自信を失ってハッキリ描く事をおそれている」事だったそうです。これからも坂川さんの教えを胸に、歩き続ける水上さんでした!