8月2013
今週の作家さんは、イラストレーターの北原明日香さんです。
北海道ご出身の北原さん。地元で中学校の美術教師を経験したのち、イラストレーターを目指し上京されました。
現在は、装画や挿絵、広告のお仕事などでご活躍されています。
今回は「森」をテーマに、北原さん独特のタッチと色彩が気持ちのよい26作品が並びました。
— 北原さんはこれまでも、個展やグループ展で活動の場を広げていらっしゃいますが、
今回HBギャラリーで展示をしようと思ったきっかけは何ですか?
今までとは違ったお客さんに来て頂けるのではと思ったことと、
好きな作家さんが個展をされている会場なので、いつかは自分も!と思っていました。
— ありがとうございます。とても素敵な空間になりました。
今回の展示は「森」がテーマですが、普段の北原さんの作品も自然のものや風景の印象があります。
身近な風景や、身の回りのものをモチーフにするのが好きですね。
そこから物語がイメージできるようなものを描きたいと思っています。
— これまでの北原さんのお仕事をご紹介したいのですが、特に印象的なのが
「置かれた場所で咲きなさい」の装画のお仕事。どの書店にも必ずと言っていいほど置いてありますよね。
この本は2012年のベストセラー第2位になったそうです。ちなみに1位は「聞く力」だそうですよ。
— 2位!すごいですね。たくさんの方の印象に残っていると思いますよ。
こちらの本「ハローグッバイ」はまた違ったタッチで素敵ですね。中にもたくさんの絵が描かれています。
この本は、松浦弥太郎さんにお送りした作品ファイルがきっかけで頂いたお仕事です。
ファイルにはこれまでのアクリルガッシュで描いた絵を入れていたのですが、
この本は全ページに絵が入る予定だったので、それだと重い印象になってしまうのでは…ということで
はじめて線画に挑戦しました。
— 線画からも北原さんらしさが感じられます。
中身の絵もすごく素敵なのでぜひたくさんの方に見ていただきたいですね。
会場の作品に話をもどしますが、モノトーンの草花の作品はこれまでの作品とまた違った印象がありますね。
実際に見て描かれたものですか?
近所で見つけた草花を元に描きました。
色で迷ってしまい、形のことを色々と考えることができず…
モノクロである程度の枚数を描いてできた作品です。
— インテリアになるような作品ですね。見ていると心が落ち着きます。
色鮮やかな自然の風景と、モノトーンの草花の対比が楽しめますね。今回、作品を飾ってみていかがでしたか?
今回は迷いながらしつこく描きました。失敗しては描き直して…両方とも実験的にやってみました。
色を変えたり、重いかな?と思いつつ何重にも色を重ねたり。どんな反応があるのか楽しみです。
いろんな意見を聞いて、これからの方向性を考えていこうと思います。
2013年8月29日 6:10 PM |
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HBファイルコンペvol.23 大賞展7週目、ラストを飾るのは仲條正義賞を受賞された工藤慈子さんです。
今年1月に開催された展覧会から、さらにパワーアップし「模倣図 – COVERS – 球美主義Ⅲ」として帰ってきました!
今回は工藤さんが描いた作品と、元にした名画とを見比べることができ、それぞれの違いを楽しめる展示となりました。工藤さんらしいアレンジによって、全く新しい作品として生まれ変わった水玉の名画たちをぜひご覧下さい!
— 仲條正義賞おめでとうございます。
-COVERS- としては今回が3回目の展示となりますが、取り組んでみていかがでしたか?
思っていた以上に浮世絵が好きなんだなと気付いたり、
元の名画の線をなぞっていくことでとても勉強になりました。おもしろかったですね。
あとは、好きな名画を次々と選んでいくので、次はどんな絵を描こうかな?と考える時間がなく、気持ちが楽でした。
— 工藤さんの名画のチョイスもおもしろいです。ご自身で気に入っている作品はありますか?
ルソー、写楽、北斎が気に入っています。
この作品は、ぎっくり腰になってしまい寝ながら描いていた絵で…思い入れが強いですね。
ルソーは思いのほか自分の描き方と相性がいいなとも思いました。
写楽と北斎はどうしてもやりたくて描いた作品です。
一度失敗してしまったのですが、もう一度描き直したら納得がいきました!
— どの作品も名画をそのまま描くのではなく、
それぞれに工藤さんらしいアレンジが効いているのがおもしろいですね。
風神雷神も、最初は一枚ずつ描こうと思っていました。
でもそれだとつまらないしなぁ…ならばくっつけてしまえ!と。
↑この絵も元々は一人ずつ描かれた細長い作品なのですが、
2作品が隣同士で並んでいたのを何かの図録で見ていたので、自然とこのような構図に。
同じお芝居に出てくる登場人物だそうで、2人の仕草などが隣り合わせになっても不自然にはならなかったですね。
— 背景も含め、とてもモダンな仕上がりです!着物の柄がおしゃれですね。
着物の格子柄は特に大変でした。描いては他の作業をし、また描き始めて…と
時間をかけて少しずつ温めてきた作品です。
— 板に描くのも新しい試みですよね。
お金をかけずにそのまま板に描けるのがいいです。
最近、私の周りに板や木目を利用して絵を描く作家さんが多いので、
自分も真似してみよう!と思い描いてみました。
— 前回の個展の際、工藤さんが「もう出し切ってしまった。次の展示どうしようかな…」と仰っていたのが印象的でしたが、今回の作品を拝見して、その言葉を払拭するような素晴らしい展覧会だなぁと感じました。新しい試みもあり、改めて工藤さんの探究心に感動しました。
もうちょっと描けそうな気がしますね。
(壁面の空いたスペースを見て) この隙間が気になるなぁ…なんて。
2013年8月24日 8:01 PM |
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HBファイルコンペvol.23 大賞展6週目は永井裕明賞を受賞された濱愛子さんです。
普段はグラフィックデザイナーの遠藤享さんのデザイン事務所でお勤めしながら、
イラストレーションを描かれています。
HBでは初個展となる濱さん。紙版画を用いた独特な風合いで描かれたモチーフは、
ほとんどが濱さんの身の回りにある大切なもの。それぞれに愛着が感じられます。
濱さんならではのユーモアな形や表情をぜひお楽しみください!
— 永井裕明賞おめでとうございます。
受賞の知らせを聞いたときはどんなお気持ちでしたか?
びっくりしました。
— 今回は何回目の応募でしたか?
5~6回目くらいでしょうか。その間、作風も変わっていったと思います。
— 今回の展示テーマについてお聞かせいただけますか?
ファイルコンペの作品は、背景のベージュに助けてもらっていた作品だったので、
それに頼らないものを作りたいなという想いから、
今回は強い作品、重みのあるものを作りたいと思い制作しました。
以前の作風に飽きていたということもあり、別のものにチャレンジしたかったんです。
まとめられるか心配でした。
— モノクロを基調としていますが、ところどころ色も入っていて涼しげですね。
個展は2回目になるそうですが、HBで展示をしてみていかがでしたか?
みなさん親切な方ばかりで…スタッフさんにおんぶにだっこでした!
期間中、多くの方においで頂いて幸せでした。
— そう言って頂けてこちらも嬉しいです!
濱さんは普段、デザイン事務所でお仕事をされているそうですが、絵はいつ描かれていますか?
電車の中と、朝、自宅で描いています。
— 電車の中ですか!
誰かに見ていてもらった方が描けるんです。
自分が降りる時間が来るので、それまでにやらないと!という感じで。
何もしていない時が、電車の中しかないというのもありますね。
夜は基本的に描きません。
ネコと遊んだり、掃除や洗濯、明日の準備、ごはんを食べたり…といった感じです。
— 時間の使い方を工夫されていますね。両立されていて素晴らしいです!
最後になりますが、今後の抱負をお聞かせ下さい。
強くて、風が吹くような涼しい絵が描きたいなと思います。
絵を上手に描くというよりは、心身統一でしょうか。
心と体が一緒になったときに、いい絵が描けるのかなと思っています。
あまりがんばらないようにしています。変に力が入っちゃうので。
— すてきなお話をありがとうございました。また作品を拝見できるのを楽しみにしております!
2013年8月20日 7:35 PM |
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HBファイルコンペvol.23 大賞展5週目は鈴木成一賞を受賞された狩野岳朗さんです。
狩野さんはファイルコンペ初参加で見事に大賞を受賞されました。
普段は、高円寺でアンティークや古道具を中心に扱うお店、IONIO&ENTAを経営しながら作品を制作されています。
— 鈴木成一賞、おめでとうございます。受賞を聞いた時、どんなお気持ちでしたか?
びっくりしました。まさか…と。
嬉しくって、小躍りしました。
— 小躍り!こちらもうれしいです。HBファイルコンペは初めて応募されたんですよね。
毎年毎年、出したいとは思っていたんですが、いつも時期を逃してしまっていたので
今年は絶対に出そう!と思っていました。それで賞を頂けたので本当にうれしかったです。
— 普段は絵の制作だけでなく、お店も経営されていると聞きました。
2年程前から店をはじめました。
古びた感じのノートなど商品として作って売っています。
— 狩野さんの絵も売っているのですか?
自分の絵も…置いてはあります。嬉しいことに、時々買ってくださる方がいて。
最初は、絵とは全く関係のない別のものとして店をやっていこうとしたのですが、
一人で絵も店も両方やっているので、どんどんくっついてきました。
— 絵を描くアトリエのような場所はあるのですか?
絵は家で描きます。
理想的なのは、週の半分店を休みにし、その空間をアトリエとして使えたらなと思います。
半分は店で、半分は店をアトリエに。
— 居心地の良い空間なのですね。絵はいつ頃から描かれているのですか?
絵は独学でずっと描いていました。
美大に行きたかったけど、行けなかったから今も描いているのかなと。
行ってたら続けていなかったかも。
20代前半は女の子の絵ばかり描いてました。パソコンで色をつけた漫画っぽい絵を。
今の作風になった最初のきっかけは、
部屋に飾るための木の絵を描こうと思って描き始めたんです。
熊谷守一が好きで、その真似のような絵を描いて飾っていました。
守一が晩年、「これから何が描きたいですか」という問いに対し、
「命ですかね。長生きしたいです。」というようなことを言っていたのが、
ずっとひっかかっていて。
ある時、枝を見ていたら、陽に向かってまっすぐ生えればいいのに、
いろんな方向に向かって生えている、それは命の形を表しているのかと。
それから木の枝を描くようになりました。
木の枝や木々の絵を描いてるうちに、だんだんと形が変わってきて。
またある時から、自分の手相が木の枝みたいにも見えてきて、
(手を見て)ここでスケッチができる、と思ったんです。
手相でスケッチブック1冊分を描いてみたのですが、結局絵にはなりませんでした
— 手相を見ながら絵を描くというのは、なかなか無い発想です。
絵にはならなかったけれど、その後も描くことは続けていたのですね。
ずっと一緒に絵を描いてきた友人は、ダメな時も絵を描くし、ダメな絵も自分なんだ、
という話しをしてくれたのですが、自分の場合はそれができなくて。
気持ちが乗らないと描けないんです。
今回展示した作品の中に、自分ではいいと思うし好きなんだけど、
この作品を外に出すのは怖い…というものがあったんです。
なんだこれは?と言われたらすごく落ち込むなぁ…と思って。
でもその作品を鈴木成一さんが「いいね」と評価してくださってすごく嬉しかったです。
自信になりました。気持ちよく描いていればいいんだ、
細かい描写で時間をかけて描けばいいというものでもないんだなと。
小手先で描くのではなく、”気持ち”が大切なのかもしれないと思いました。
— それは嬉しいですね。気持ちよく描いた絵は見る人にもきちんと伝わるのですね。
最後になりますが、今後はどのような活動をしていきたいですか?
コンペにはこれまでも応募してきたので、今後は絵でお仕事をしていきたいなと思っています。
最近、”アート”や”現代美術”と呼ばれているものと、”イラストレーション”と呼ばれているものが、
違う場所にあるんだなというのが気になっていて。
アート作品を扱うようなギャラリーで、何十万、何百万という価格がつけられている作品がある一方で、
HBギャラリーのように、イラストレーションを扱うギャラリーでは1~2万円でも作品が買えたりする。
もちろんバックグラウンドの違いや絵画とイラストでは目的が違うのかもしれませんが、
これはどういうことなんだろう?と思ったんです。
これからの活動では”アート”と”イラストレーション”の真ん中くらいのことが、
何かできたらいいなと思っています。
どこのジャンルにいるとか関係なく、絵を通していろんなお仕事をやっていきたいです。
2013年8月5日 11:18 AM |
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8月に刊行される” HB HUMAN BOOKS ” 第1弾として、
中山とし子書き下ろしの新作「いきものたちのうた」を発売致します。
「いきものたちのうた」価格1,300円(内税)
作・中山とし子 絵・唐仁原教久
発行・HBギャラリー
ともきの家には、山つばきがおおいかぶさっている、トンネル道を通って行きます。
うす暗いトンネル道は、赤いつばきの花がコロコロ落ちていて、
道の先に、丸い出口が見えています。
一人で通る時は、少しだけこわい。
だから、みづえは思わず足をはやめました。
だれもついて来ないのに、後ろが気になって、後ろをチラ、チラと見ながら、
小走りに走りました。
(以上、本文より抜粋)
れんげ草、山つばき、おたまじゃくし、アリの行列、みかんの木…
たくさんの「いきものたち」に囲まれて育った幼少期。
あたりまえのようにあった美しい自然と、それと戯れる子どもたちの風景は、今ではすこし懐かしくもあります。
田んぼや野山で遊びまわった頃の、中山さんの大切な思い出の中からうまれた、
天真らんまんな「みづえ」と、おっとりした「ともき」による、9つの物語を収録しました。
中山さんの瑞々しい情景描写によって、
読む人それぞれの”あの頃”の気持ちがこみ上げてくる、心温まる1冊となりました。
イラストレーションは唐仁原教久。
中山とし子+唐仁原教久のコンビでは、これまで『父の山 母の河』、『はぐれひよどり』を刊行。
『いきものたちのうた』は6年ぶり、待望の3冊目となります。
中山さんの文章に添えられた、唐仁原の奥ゆかしいイラストレーションが物語を引き立てます。
HBギャラリー又はHBオンラインショップで発売中です。
<著者プロフィール>
中山とし子 (なかやまとしこ)
1950年鹿児島県生まれ。
佛教大学国語国文学科卒業。
奈良女子大学 大学院博士前期課程国語学コース修了。
2005年『父の山母の河』出版
2007年『はぐれひよどり』出版
保母、児童英語教室講師、日本語教師などを経て、
現在、老齢期の人々や子供をテーマに執筆活動中。
2013年8月2日 7:14 PM |
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