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2月2024

大床嘉代子個展 「愛でる」

今回ご紹介するのは、2024年2/16~2/21に個展を開催された大床嘉代子さんのインタビューです。

繊細な切り絵とボールペンで描かれた黒の質感が印象的な大床嘉代子さん。
技法によって身の回りの物の見方が変わるようにも思います。
会場の様子を制作インタビューとともにお楽しみください!

展示作品はオンラインショップでお取り扱い中です。
http://hbgallery.shop-pro.jp/

 

 

ー大床さんは初めての個展となりました。
個展「愛でる」はどのような思いで準備を進めて来られましたか?
個展のテーマと併せてお聞かせください。

 

今回、個展を通じて自分を見つめなおす、ということが大きなテーマとして自分の中にありました。
なので「愛でる」というタイトルは早い段階から決まっていて、自分の好きなものたちを切り絵にこだわらず、自分が好き、良いなと思う描き方で描いていきました。
ですが一方で、今まで描いてきた絵と違った印象になるので、これで展示を進めていってもよいのか、すごく悩みながら作っていました。
11月にHBギャラリーのスタッフさんにそのことを相談したときに、大丈夫ですよって言ってもらえて、そこからは吹っ切れたというか、自信をもって進められました。

 

 

ー展示作品を間近で拝見すると
ボールペンやアクリル絵の具で描かれたイラストレーションに切り絵の表現が併用されています。
切り抜かれた箇所から鮮やかな色彩がのぞいたり、
一方で切り抜かれたパーツ自体が画面に美しく構成されていたりと
繊細な表現に思わず目を見張ります。
大床さんが現在のような切り絵の表現をされるようになったきっかけや、
影響を受けた作家などをお伺いできますか?

 

きっかけは本屋さんで「切り絵の切り方」という本を見かけて、やってみたのが最初です。
そのときに、紙の切れる感触や出来たときの達成感にとらわれてしまいました。
影響を受けた作家さんは、パレットクラブスクールの同期の友人たちだと思います。
美大などには通っていないので、あんなにたくさんの感性に触れられたのは本当な貴重な体験でした。

 


 

ー展示作品の「黒い静物シリーズ」はバスケットやお皿、急須などの
生活雑貨がグラフィカルに表現され、黒の色面はペンが重ねられた跡が見受けられます。
バスケットの作品は種類も様々ですが、モチーフは大床さんが普段愛用されている物なのでしょうか。
これから黒で描いてみたいモチーフはありますか?
また、ペンで色面を作られている理由などはありますか?

 

はい。うちで愛用しているものと、こういうのが欲しいというあこがれのものと、半々くらいです。
バナナのかごなんかは、本当に描いているときにバナナを入れていました。
しばらくは身の回りにある雑貨たちを描いていきたいと思っていますが、ゆくゆくはこの感じで人物も描いていけたらと思っています。
ペンを使っているのは描くための準備がいらないからです。
絵の具などを使うときに水をくんで、絵の具を準備して…というのが私には結構ハードルが高くて、なかなか行動に移せないのです。
ペンならすぐに描き始めることができるので私に合っているのだと思います。あとはインクの少しメタリックに光るところが好きです。

 

 

ー大床さんは化粧品会社の研究員を経てイラストレーターになられたそうですね。
どのような経緯でイラストレーターになられたのでしょうか。
会社員として働く経験は現在の活動に影響されていますか?
 

化粧品会社に勤めながらも、イラストレーターという夢を諦めたくないという気持ちで両方続けていました。
会社で働いたお金でパレットクラブスクールに通ったり、デザインフェスタなどに出ているうちに少しずつイラストのお仕事が入るようになった感じです。
会社員としての経験は、効率化できそうな雑務は効率化してく、といったイラストレーターのイラストを描く以外の部分に生かされている気がします。

 

 

ー大床さんが今後挑戦されたいお仕事や活動、
イラストレーターとしての展望などをお聞かせください。

 

今回展示した、黒い静物たちが新しいお仕事に繋がってくれると嬉しいです。
本の装丁や、広告のお仕事もいつかできるようなイラストレーターになりたいと思います。

 

インタビュアー 須貝美和

MIKITAKAKO個展 「LOVE and HANDWORKS」

今回ご紹介するのは、2024年2/9~2/14に個展を開催されたMIKITAKAKOさんのインタビューです。

和紙に紙版画で制作された、独特の風合いのある作品を展示されたMIKITAKAKOさん。
展示方法にも工夫があり、原画ならではの作品がならぶ素敵な展示空間でした。
会場の様子を制作インタビューとともにお楽しみください!

展示作品はオンラインショップでお取り扱い中です。
http://hbgallery.shop-pro.jp/

 

 

ー今回の展覧会「LOVE and HANDWORKS」では
愛おしさと煩わしさ、過去と未来といった相対する出来事を和紙と紙版画で表現され、
原画を間近で楽しむことができる展示方法は、
初個展とは思えないほどの完成度の高い展覧会となりました。
MIKIさんご自身は、どのような想いで展覧会の準備を進めて来られたのでしょうか。

 

このような場所で展示させていただくというのはイラストレーションの仕事獲得の為の重要なショーケースだと考えています。また普段お世話になっている方々、ひいては友人や家族へ感謝、成長を見てもらう機会でもあります。その中で自分がイラストレーションの作品の中で大切にしていることを間近に見て知っていただけたらという思いで制作を進めました。また今年の年始は悲しいニュースも多かったのでゆったりとやすらげる絵画空間を目指しました。

 

 

ー今回の展示作品では12枚の絵に12ヶ月の日常を表現されてらっしゃいます。
桜やサンタ帽など、季節に関連するモチーフも見受けられますが、
描かれた各月の女性は髪の長さも肌の色も多様です。
MIKIさんが人物を描かれる際に意識されていることや大事にされていることはありますか。

 

今回の会期が春節とバレンタインの時期に重なっており、贈りものにもなるような12枚(とイントロダクションにプラス1枚)の作品を制作しました。今回の人物画は自分や自分の子を参照したので性別感はあるのですが、お仕事以外で人物を描くときは年齢や国籍をあまり意識させないように描いています。ですから瞼の描き込みもありません。まつ毛は一本、視線の情報として残しています。髪色も季節や出来事になぞらえているので自由です。私の描く人物は対峙した相手に自己を投影しやすいように入れ物のような存在です。

 

 

ー展覧会用のZINEはご自身で和綴じをされており、
ページも1枚1枚丁寧に折り込みがされているこだわりの1冊です。
このような形態にされた理由などはありますか。
何か参考にされた製本などはあるのでしょうか。

 

スケジュールと予算の関係で手製となってしまいました。笑。
今回の作品はA5サイズが刷れるプレス機で出力したA2サイズ大の人物画で、版を細かに分けて刷っています。柔らかで手仕事を感じさせる線画の各所には、紙版の矩形のプレートマークの痕跡や折ジワが直線的に入っていて、作品全体にリズム感や緊張感を生み出しています。そのような作品のプロセスを踏襲したブックデザインに仕上げたかったので折り込みを入れました。また、和綴じはこの本の場合の最適解の一つでもあり、今回の展示の雰囲気にも合っているので採用しました。ただ、お客様に「お部屋に貼るので折らないものが欲しい」と云われて配慮が足りなかったと反省しています。製本についてですが、以前はよく本のデザインや国内外のブックフェアに行っていて、その時見たアートブックのユニークなフォーマットなどが影響していたりします。

 

 

ーMIKIさんは今回展示されている紙版画や顔彩などを併用した混合技法はもちろん、
インクでの表現やコラージュ、デジタルなど様々な表現方法に挑戦され、研鑽を積まれています。
これまで経験された画材や表現に対して、どんな想いをお持ちでしょうか。これは扱いやすいな、これは相性が良いななど、感じることはありますか。
また、これまで影響を受けた作家や美術表現などをお伺いできますか。

 

色々な思いはあるのですが、とにかく「絵を描き続けられたらいいな」という事です。
プレス機を使うと手がブルブルと震えていたりして、もしかして歳を経た時には難しいかもしれません。
その時に生きて、その時に手に入る道具で絵を描いていけたら幸せだろうなと思います。
日本画が好きなので技法や画材は日本画由来だったりする事が多いですが、作家さんの展示を見に行った際に知らない方法で描かれていたりすると研究心をくすぐられます。

 

 

ーMIKIさんが今後挑戦されたいお仕事や活動、
イラストレーターとしての展望などをお聞かせください。

 

現在HB WORK Competitionのおかげで装画のお仕事の機会をいただけており、とても嬉しいです。
装画は難しい部分もあるのですがとてもやりがいを感じています。引き続きチャレンジしていけたらと思います。また今回制作した作品群のようなイラストレーションを起用していただける先があれば嬉しいです。
ご興味のある方、企業さま、是非お願いいたします。

 

インタビュアー 須貝美和

 

中野葉子個展 ” Love Earth “

今回ご紹介するのは、2024年2/2~7に個展を開催された中野葉子さんのインタビューです。

沢山のLoveが詰まったカラフルな世界、イラストレーターで描かれた独特な輪郭、
デザイナーとしても活躍されている、中野さんの様々なアプローチの作品たち、
会場の様子を制作インタビューとともにお楽しみください!

 

 

 

ー中野さんはデザイナー、アートディレクターとしてキャリアを重ねたのちイラストを描き始められたそうですね。
イラストを描かれるようになったきっかけや、
イラストを描こうと思われた理由などをお伺いできますか?

 

もう随分前になりますが、出産、子育て、さらに地方に住むことになり、
今までの様なペースで同じ様な仕事を継続できなくなりました。
アートディレクションや撮影は大好きだったのですが、
他の形でクリエイティブな仕事を続けたいと思い、イラストを描き始めました。


ー中野さんはHBでは初めての個展です。
今回の個展”Love Earth”はどのような思いで準備を進めて来られたのでしょうか?
個展を開催される目的などもお聞かせください。

 

ここ数年考えることも多く、自分にとっては大いなる通過地点でした。
創作する物に対しての向き合い方も自分の中では変化しました。
寄り添い合いながら見つけた日々の喜びを共有できればと思っています。
支えてくれる環境全てに感謝して、未来の子供達のために貢献しながら、
今後もゆっくり仕事を続けることができればと思い開催しました。
コロナ禍で人とのリアルな繋がりの大切さを感じたので
会える人には、みんな会っておきたいという思いもありました。
その点、HBギャラリーはお家の様にくつろげて、作品を見せながら
みんなで集える場を作れたので、とても良いスペースだと痛感しました。

ー中野さんが「心地よい生活」を活動のテーマにされた背景にはコロラドのボルダー滞在が影響しているのでしょうか?中野さんがご自身の制作において生活環境を意識されるようになった背景や経緯などを教えていただきたいです。

 

ボルダーに滞在したのも随分前ですが、理想的な生活スタイルでしたね。
名だたるIT企業が数多くあって、健康志向で週末はランニング,  キャンプや登山三昧で
住んでる人達がカジュアルだけどかっこいいんです。
既に、コロナ禍で移行した生活スタイルに近い感じでした。
子育てをしたり、地方で自然豊かな所に住む様になって目につくものや気になることが、
生活環境くらいしかなかったということもあります。身の丈のものしか描けませんから。

 

ー今後の発表予定や挑戦されたいこと、
イラストレーターとしての展望などをお聞かせください。

 

未来ある子供たちの為に、絵本の制作やSDGsなどの環境問題に関わるお仕事がしたいです。
また、幸せな気持ちにさせるお菓子のパッケージやオーガニック化粧品のイラストも描きたいです。
装丁もやったことないし、久しぶりに音楽のお仕事もやりたいですね。

インタビュアー 須貝美和