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6月2014

版画のイラストレーター展 凸凹「凸凹な庭」

今週は版画イラストレーター”凸凹“の6名による展覧会です。

2012年の12月に開催していただいて以来、今回が2回目の展覧会となります。
メンバーはアンドーヒロミさん、正一さん、タダジュンさん、楯川友佳子さん、平岡瞳さん、芳野さん。
今回は「庭」をテーマに、6名の作家さんそれぞれの個性あふれる楽しい作品がたくさん展示されました。

また、展覧会のために制作された「凸凹な庭」作品集も部数限定で販売中!
6種類の版画技法の説明や、作家さんのお人柄が感じられるコメントも収録された、
見応えのある1冊です。こちらもお見逃しなく!

凸凹



アンドーヒロミさん/銅版画

盛りあがったインクが何層にも重なっているような、重厚な質感がおもしろいアンドーさんの作品。
リズミカルなカタチや色が楽しく、じっくりと時間をかけて見ていたい作品ばかりです!

 

アンドーヒロミさんHP http://h-ando.jp/?page=0

 

 

 

 

 

 

 

 

正一さん/モノタイプ

同じイメージのものが版から一枚しか刷れないという、モノタイプという技法で描かれた正一さん。筆のたっぷりとした、のびのびした線が気持ちのよい作品です。
正一さんは7月4日から開催のHBファイルコンペ特別賞展での展示も控えています。こちらもお楽しみに!

 

 

正一さんHP http://showichi.jimdo.com/ 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

タダジュンさん/紙版画

蝶、カマキリ、蜘蛛など昆虫をモチーフに描いたタダさん。
見れば見るほどその不思議な魅力に引き込まれてしまいます。
モノトーンの深みのある色合いと、作品に付けられたタイトルから
さまざまな物語が膨らみます。

 

タダジュンさんHP http://juntada.com/

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

楯川友佳子さん/木版凹版

自然な木目の質感と、淡い色彩がここちよい楯川さんの作品。
会場にはウサギや、たんぽぽなどを描いたかわいらしい小ぶりな作品も。綿毛などのふわふわとした表現も秀逸で、楯川さんによる木版表現の奥深さに驚かされます。

楯川友佳子さんHP http://www16.ocn.ne.jp/~yukako/

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

平岡瞳さん/木版画

ひっそりと佇む、島猫がかわいらしい平岡さんの作品。どの作品も、ゆったりとしたおだやかな時間が流れています。作品の佇まいもかわいらしく、原画は手のひらにおさまるほど小さなものも。ぜひ実物を見て頂きたいです!

 

平岡瞳さんHP http://blog.goo.ne.jp/hitohito1103 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

芳野さん/リトグラフ

小鳥やお花、ちいさな動物がかわいらしく登場する芳野さんの作品。
色鉛筆のような質感が素朴で、やさしい雰囲気に包まれます。
近くでよく見ると、少しずれた色の重なり方がとてもきれい。
手描きのようで、でも手描きでは出せない魅力のある、
芳野さんの作品のおもしろさは必見です!

 

芳野さんHP http://nocodico.com/

 

 

阿部千香子個展「windows」

今週の作家さんは阿部千香子さんです。
HBでは約2年ぶり、2回目の個展となります。

つぶつぶとした線がとてもかわいらしい阿部さんのイラストレーション。
少ない色数でも表現のできる技巧と、親しみやすい線画で、数多くの媒体でご活躍されています。
日頃から気になった言葉を集め、絵のヒントにしているという阿部さん。
ユーモアたっぷりな作品タイトルにもぜひご注目を!

 

 

— 今回の展示のテーマについてお聞かせ頂けますか?

いろんな窓をテーマにしています。
自分のなかの色々な小窓をもう一度開けたり、覗いたりして
そこからひっぱり出してみました。
前回の個展からの2年間で、自分の記憶や印象に残ったことを絵にしたものと、
お仕事で楽しく描かせていただいた絵を飾っています。

 

— すごくかわいらしい線ですよね。どのような技法で描かれているんですか?

ラフは鉛筆で描き、その後スキャニングしペンタブレットを使って描きます。
ラフの時点では、最終的に出来上がる絵よりずっと小さめに描いています。
パソコンはWindowsを使って描いていて…実はタイトルにもそういった意味が含まれています。

 

 

 

— 珍しいですね !でもそこが阿部さんの作品のおもしろさに繋がっているのかもしれません。
阿部さんの視点や言葉のひっかかりがおもしろいなと思うのですが、日頃からメモなどはよくとられますか?

そうですね。メモをとったり、思いついたときにスマホに言葉を残したりします。
最初に文章で考える事が多いですね。
テレビでおもしろいと思ったことや、盛大に笑ったなぁと感じたことがあったらメモしてみたり。
モノを見て、これとこれを組み合わせたらおもしろいんじゃないかな?と考えたりもします。
今回のDMの絵を描いた時は、ちょうど冬季五輪を開催しているときで、
ずっとテレビでカーリングの試合が流れていたんです。
選手たちの「yap!yap!yap!」という声が聞こえてきていて、
それをどうしても描きたいなと思って絵にしました。
カーリングのハウスの、青・赤・白のカラーもいいなぁと。

 

 

— パソコンで描くのはどれくらい時間がかかりますか?

描く時間よりも、アイデアを出す方が時間がかかりますね。
元々持っていたアイデアを、お仕事になったときに改めて取り出して描くということもします。

— 常にアイデアをストックしておくような感覚ですね。
阿部さんのお仕事はよく本屋さんでも拝見しています。
2年前に個展をされたときよりも、お仕事の数が増えているような気がします!

ありがたいです。HBはパワースポット的な場所で、
「HBでその後が変わるよ!」と言われていました。

 

 

— そんなことはないと思うのですが…。阿部さんの努力の証ですね。
最後になりますが、今後イラストレーターとしてどのように活動していきたいですか?

クライアントの要望に応えつつ、自分らしさを表現できる仕事をしたいです。
そして今の自分も大事にしつつ、新しいことにも挑戦してみたいです。
— ありがとうございました!  また作品を拝見できるのを楽しみにしております。

 

 

訂正とお詫び

今年のHBファイルコンペの特別賞のDM,

副田高行さんの特別賞、坂元斉さんのお名前の表記に誤りがありました。

訂正してお詫び申し上げます。

ゴトウヒロシ個展「青の犇めき」

今週の作家さんはゴトウヒロシさんです。
HBでは約6年ぶりの個展となります。

イラストレーターでもあり、アートディレクターでもあるゴトウさん。
現在は、毎日新聞夕刊で連載中の「あなたが消えた夜に」(作・中村文則)で、
挿絵をご担当されています。

それらのお仕事とは別に、3年程前からご近所のアトリエへ通い、油彩を始められたとのこと。
今回はそのアトリエで描かれた、水辺をテーマにした油彩作品、19点を展示しています。
ゴトウさんの描くさまざまな美しい青色の風景。
きらきらと光る水面の表情が瑞々しいタッチで描かれています。
長い時間をかけて制作された作品からは、ゴトウさんのタッチや色遣いの変遷が見える興味深い内容に。
これまでに見たことのない、ゴトウさんの新境地をぜひ見にいらしてください!

 

 

— 今回の作品は、これまでのゴトウさんの作風とは違いますね。油彩はいつ頃から始められたのですか?

近所にアトリエができたので「いいじゃん、行ってみよう」と思って、それで油彩を始めました。
制作順に並べてみると、3年前描いたものと最近のもので、タッチの変遷がわかりますね。
点描のような、絵の具を盛るような描き方になってきたり、色の感じも変化している。

—  おもしろいですね。作品で描いているのは実際にある風景ですか?

いろんな場所へ出向いて、写真を撮って描いています。

— 水をテーマにしようと決めて描かれたのですか?

最初に水辺を描き出して。水しばりで描いたら展覧会できるかも、と思って。
1のキーワードで多様な表現を試す事ができました。

 

 

 

— このタッチでお仕事も広がりそうですよね。
現在、ゴトウさんは連載の挿絵をご担当されていますが、普段のお仕事ではどのようなものを資料としていますか?
展覧会の初日には絵のモデルになった方もいらしていましたね。

人物を描くことが多いのですが、いつもプロのモデルにお願いするという訳にもいかないので
素人の方で、物語にはまるような人を探しています。
でも絵にした時には、俳優さん並みに2割増くらい格好よくする。

 

— それは羨ましいですね。ゴトウさんに描いてもらうとみんな美人になれる…
ゴトウさんはこれまでずっとイラストレーターとしてご活躍されていますが、長く続ける秘訣は何だと思いますか?

一番は、自分に飽きないこと。
似たようなジャンルの限られる仕事だと、どうしても飽きちゃう。
この仕事はこんな感じでやればいいよね、というやり方もプロかもしれないけれど
それ以上に、もっとこうしようという仕事に対しての欲や、自分自身への欲がないとかな。

あとは、流行ってもいいけれど、流行りすぎないように、とかね。
個性が強いと、どうしても流行廃りがあるかな。
僕にとっては、挿絵のお仕事をずっと頂けていることが、長くやるという意味でよかった。
装画だと、そう頻繁に使ってもらえるものでもないから。
あるジャンルでシェアを持つのもいいと思います。

 

 

— なるほど。流行りすぎないように、というのは興味深いですね。
普段、若手の作家さんのイラストレーションを見る機会はありますか?

事務所へ持ち込みに来る方も多いので、見る機会はたくさんあります。
若い人のグループ展を見に行くようにもしています。

— 作品に対してはどんな印象をお持ちですか?

うまい人もいますし、なんとなく絵に覚悟がないなと感じることもありますね。
それは人目にさらしていないからだろうし、仕事の経験も少ないからだとは思います。
こういうことがやりたい、というものがないと、どこでこの絵を使っていいのかなと思いますよね。

スタイルとして、どういうイラストレーターになりたいの?という質問もよくします。
いくらくらいのギャラで、月にどれくらい仕事をしたいかとか。
名前は売れていないかもしれないけれど、いろんな角度やタッチで描けて
挿絵のお仕事で毎月何十万も稼いでいる、というイラストレーターさんもいっぱいいる。
そういう人たちの仕事ぶりは、見ていてプロとして清々しいと感じます。

僕のスタンスは、芸人みたいなもので、
飽きられないように、でもある程度は露出していかなければいけないよね。

 

 

— 勉強になります。
今後、イラストレーションでのお仕事、またそれ以外の制作でどのような活動をしていきたいですか?

長く使われる様な仕事のスタンスでありたいです。
自分なりのスタンダードを目指したいですね。

— このタッチの絵も今後も続けられますか?

画材も画風もまだまだ試して、探求したい事があるので続けます。
今回の個展でも、見てくださる方がどの絵が好きとか、この絵は嫌いとか
誰がどういう感想を言っていたかなというのをすごく聞いていて、

みんなの最大公約数的な意見と、特別な意見の両方を参考にしつつ、こっちだったら自分らしいかな、と思ってみたり、会場で自分の作品と向き合いながら、今後について展望する、それが個展の一番の意味だなと思います。

初めての個展をしたときは、全然絵が出来ていなくて、「こっちに市場があるのかも」「そっちの方向で突きつめて行こう」と思いながら、まずは花を描きだして。

そのタッチで長くやっていたけれど、今度は人物が描きたいと思うようになって
いきなり方向を変え、それでまた10年以上やってきました。

これからの10年を考えて、10年分のノビシロを作っておく。今回は良い機会になりました。

 

— 次の10年もたのしみですね。貴重なお話をありがとうございました!

 

延生律子個展「Sea Flow」

今週の作家さんは、HBでは初めての個展となる
大阪在住のイラストレーター、延生律子さんです。

貝殻、クラゲ、タコ、海藻など、色とりどりのグラデーションで丁寧に描かれた海の生き物たち。
延生さんの視点で美しくデフォルメされたカタチは、ずっと見ていたくなる心地よさがあります。
原画ならではの色彩の鮮やかさ、透明感もぜひ見て頂きたいです。

 

 

— まずは今回のテーマについてお聞かせ頂けますか?

海の生き物をメインに描かせて頂きました。
魚は以前、描いた事があったのですが、タコやクラゲなど
やわらかい動きのあるものを描いたことはなかったので、
こういうものも自分で描けるんだという、新しい発見がありました。
海をテーマに絞ることで、可能性を広げられたのではと思います。

 

 

— 涼しげな色彩がとても美しいですね。何で描かれているんですか?

日本画でよく使用される顔彩を使って描いています。
水をたっぷりと含んだ水性の生き物を
顔彩の透明感でうまく表現できたと思います。

— 扱い方は難しいですか?

使い方はふつうの水彩絵の具とほぼ一緒ですね。
濃度の違う3~4色の絵の具を、うすい順番から塗っていき
徐々に濃い色を重ねて、馴染ませていきます。

紙はアルシュを使っていますが、それとも相性がすごくよかったですね。
日本画のように和紙に描くと滲んでしまいますが、
アルシュだとシャープな輪郭線が描けるので、強さも表現できたかなと。

 

 

— グラデーションが美しいですね。見ていて安心します。
今回久しぶりの個展とお聞きしましたが、作品を飾ってみていかがでしたか?

大満足でした。初日の午前中からお客さんがいらしてくれて
想像以上にお運びいただけました。
唐仁原さんに個展開催のOKを出して頂けて、感謝の一言です。

 

 

— 嬉しいです。素敵な展覧会をありがとうございます!
最後になりますが、今後イラストレーターとしてどのような活動をしていきたいですか?

末永く、みなさんに楽しんでいただけるようなイラストレーターになりたいです。
年数は長くやらせていただけていますが、作風によっては寿命が短かったものもありまして、
すぐ飽きられる作品は描きたくないなと。
初期に描いていたものは、新しさやインパクトはあったけれど、次が無かった。
3年くらいで飽きられるのは悲しいですよね。

時代の変化や空気に敏感に、リサーチや勉強をしていかないと、と感じます。
イラストレーションは時代を映す鏡だと思いますので、
そういったことも大事なのかなと感じますね。

— 長く愛されるイラストレーションとは何なのか、興味深いですね。とても勉強になりました!
すてきなお話をありがとうございました。