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4月2015

休廊、オンラインショップお休みのおしらせ

まことに勝手ながら、

4月28日(火)~ 5月12日(火)まで、休廊とさせて頂きます。

それに伴いまして、HBオンラインショップの発送業務もお休みさせていただきます。
休廊期間中にいただきましたご注文やお問い合わせについては、
5月13日(水)以降に順次対応させていただきます。

商品発送は5月14日(木)以降となります。商品到着が遅れますことご了承くださいませ。

 

ご不便をおかけ致しますが、どうぞよろしくお願いいたします。

 

 

きたざわけんじ個展「さくら色のかぜ」

今週の作家さんはきたざわけんじさんです。今年で7年連続7回目の個展開催となります。
今年も新作イラストレーションと、これまでのお仕事の数々を一堂にご覧いただけます。
浮世絵をモチーフに、さまざまなシチュエーションから描かれた富士山シリーズの新作は必見です!
「さくら色のかぜ」は4月27日(月)17:00までです。お見逃しなく!

 

 

— 今年で7回目の開催となるのですね。7年目をむかえた心境をお聞かせください。

そうですね、一番はまだ7年かなというきもちです。やっと7年なんだという。

— 春の個展開催、多くの方に浸透してきているのではないでしょうか。今回は、富士山をテーマに描かれた作品が新しくておもしろいですね。

HBのファイルコンペ用に描いたもので、ちょっと違うことをやってみたいなと思い制作しました。自分としては新しい試みです。このまま眠らせておくのはもったいないので、展示をしていろんな方の反応を見たいなと思ったので、このシリーズは展示しようと決めていました。この絵の感じで仕事に使えるかどうかは謎で、実験的な作品です。墨を多用しているので、仕事になったときにどうなるのかな?と思います。でも毎年個展をやると決めているからには、やりたいことはやろう!という気持ちで描きました。

 

 

— そのほかの作品もすべてお仕事で描いたものではなく、オリジナルですよね。

そうですね。僕は描いてて楽しくて心地よい、ふだん描いているイラストレーションで仕事がもらえたらいいなと思っています。でも好きな感じで描いていると「人を描いてほしい」とか、「もう少し細かく描いてほしい」という依頼が多いですね。なので、自分で納得ができる仕事はなかなかないです。広々とした絵はそんなに需要はなくて、仕事には使いづらいんだろうと思いますし、省略し過ぎなのかなと思います。

毎年、考え込んでしまいますね。展示をする度に、やりきったということがなく…。ずっとこの路線でやるのは無理で、飽きられるっていうのはわかってはいるんですが、このままじゃいけないなと思います。今回も実験的にやってみたので、また悩んで、違うことをやってみたいと思います。毎年チャレンジするような展示にしたいと思います。

 

 

— 継続の姿勢、いつも本当に尊敬します!きたざわさんは今も絵の持ち込みを続けられているそうですね。おそらく相当な数行かれてると思うのですが、最近はどういう所へ行かれますか?

毎年自分で色々と調べて、まだ営業に行ったことのない新規のデザイン事務所などにアポをとっています。
すべてのところが持ち込みを受け入れている訳ではないのでまた数が絞られますが、毎年必ず新しい事務所はいくつかありますね。

 

 

— 個展とお仕事の両方の制作を、毎年コンスタントに続けられていて、変化したなと感じることはありますか?

最初の頃は、もっと単純に描いていたんじゃないかなと思います。自分で描きたいものはシンプルにしたいけど、仕事では「もっと描き込んで 」と言わることが多いので、オリジナルの作品を描くときにも少し影響が出てるのかもしれないなと思います。あとは、最初の頃に使っていたパソコンが古かったということもあって、複雑な作業が出来なかったんです。パスの数を少なくしたり、なるべく省略しようとしていました。それも理由かもしれません。

 

 

— きたざわさんご自身が感じる、今後の課題は何ですか?

いいもの悪いもの関係なくとにかく続けていきたいなという気持ちです。HBさんではベテランのイラストレーターさんたちが 毎年個展をやられていますよね。自分はまだまだ甘いなと感じます。辞めたら楽になるけど、ふ抜けになるんじゃないかと…。笑 仕事だけやっていればいいのはすごく楽ちんですけど、自分はそういう性分ではなくて、無理してでもハードルを上げないとダメ人間になるのでは…と思ってしまいます。ファイルコンペとかもいいですよね。年末には20枚仕上げるという目標ができますし。個展は、稼げなくなるまでやるつもりでいます。

 

田口実千代個展「うたう風のように」

今週の作家さんは田口実千代さんです。HBでは初個展となります。
軽やかな筆致と淡い色彩が心地よい田口さんの作品。
抜けのよい風景画や、余白の描き方には、風が吹き抜けるようなきもちよさがあります。
広々とした空、可憐な植物、甘いスイーツ…など、田口さんのすきな世界観がたっぷりつまった展覧会となりました。ぜひお立寄りくださいませ!

 

 

— まずは今回の展示テーマについてお聞かせください。

「うたう風のように」というタイトルに決めたので、きもちのよい空間にしたいなと思っていました。
HBでの初めての個展なので、具体的なテーマよりもいつもの自分らしい絵で描けるものにしようと。
そして、見ている人が気持ちよくなる空間になったらいいなと思いながら描きました。
ふだんから、のびのびした絵が描けたらいいなと思っています。

 

— 今回描かれているものは、 実際に見て描いているのですか?

静物は実際にセッティングをして描いていて、風景は今まで自分で撮影した写真からチョイスしています。
今まで行ったことのある場所なのでわりと覚えています。
仕事で描く場合は、いろいろ混ぜて描きます。個展では好きな絵を描けばいいので、自由に描きました。

 

 

— 旅行にはよく行かれますか?

旅行は大好きです。頻繁には行けないですが、旅先でスケッチや写生をするのが好きです。
旅行と絵を描くこと、大好きなことがダブルになるんです。セツモード出身ということもあり、外で大きな絵を描くことも好きです。雪が降ったり、うれしいと感じるとすぐ描きたくなります。
いつも小さめのスケッチブックを持っていて、水彩やペンで描きます。すごく楽しいです!

描いている時間が多いので、たくさんの場所は観光できないのですが、ゆっくりその場に居るのもいいなと思います。
外食するときも、食べる前に早描きでスケッチしたりします。
神奈川の出身なので、空や海、山とかも風景も広々としたものを見たり描いたりするのも好きですね。
外で描くと人が寄ってくるので、そういうときはなかなか描けませんが、外で描くととても気持ちいいんです。

 

 

— その場で描いている、空気感やきもちのよさが絵から伝わってきますね。青色をよく使われているように思いますが、やはりお好きな色なのでしょうか。

青色と、蛍光のピンク色が好きです。好きな色ばっかり使っていてもあれなのですが。
夜を描くのも好きです。夜の中に光っている、ちょっと蛍光が入った色が好きです。

— 夜の風景以外にも、所々に少し蛍光のピンクが入っていますね。最後に仕上げのような感じで、ポイントに入れるのですか?

自分でもわりと気に入っていて、最後の方に描き入れます。

 

 

— 蛍光色がきいていて、綺麗だなと思います。
話は変わりますが田口さんは以前、パリで個展をされたこともあるそうですが、どのような経緯で行かれたのですか?

その時は、パリで個展やってみたい!行っちゃえ!という気持ちでした。
3ヶ月近く向こうに住んでいて、現地で描いた絵と、日本から送ってもらった絵を展示しました。
DMを持って本屋やお店など、置いてくれそうなところへ配り歩いたりしました。
午前中は語学学校へ行き、個展が始まるまでは苦しくて、終わってからやっとパリ生活が楽しめた感じでした。

その頃はイラストレーターになることは意識していなくて、ただ絵を描くのが好きで、絵を見てもらいたいという気持ちでした。個展後はすごく疲れて、しばらくもういいやと思うのですがまたやりたくなります。個展をすることが好きですね。

その後、F-schoolとMJイラストレーションズでイラストレーションを学びました。
先生にアドバイスを頂き、仲間に刺激をうけ、とても勉強になりました。

 

 

— 個展、楽しいですよね。またやりたくなるというお気持ちわかります。
最後になりますが、今後はどんな活動をしていきたいですか?

仕事をもっとしたいです。装画ももちろんですし、憧れは広告で、大きく使われているものを見るといいなぁと思います。子どもの頃から絵本も憧れているので1冊まるまる描いてみたいです。

初めて鈴木成一さんから頂いた『野生時代』でのモノクロの挿絵のお仕事は、日にちが迫っているにもかかわらず、楽しくて10枚以上描いたりしました。初めて描くモノクロも楽しいなと感じたり、仕事で色々なものが描けるのもありがたいと思います。仕事で描く絵は、より多くの方に見てもらえるのでそれも嬉しいです。絵を描くのが基本好きなので、なんでもやってみたいなと思います。

 

大竹守個展「PUNK / 生きる 3」

今週の作家さんは大竹守さんです。約2年ぶり3回目の個展となります。
大竹さんならではの、疾走感溢れるタッチで描かれた太宰治の生涯。数々のエピソードと共に、太宰の生き様を体感するような展覧会となりました。大竹さんの最近手掛けられた装画、末井昭『自殺』や田中慎弥『宰相A』などの原画も展示しております。ぜひ多くの方にご覧いただきたいです!

 

 

— 今回も、ものすごい作品数ですね。テーマはなぜ太宰治なのですか?

今回急遽個展の開催が決まり準備期間が非常に短かったため、どうしよう間に合うかな?間に合うかな?間に合うかな?間に合うかな?と相当苦悩しました。そしてこの「間に合うかな?」という感覚をどこかで経験したことがあるぞこれは『走れメロス』じゃないか!と。そういえば以前仕事で『走れメロス』の装画をたくさん描いたっけ、それじゃあテーマは太宰にしようと。『走れメロス』の仕事の経緯はというと、2012年『PUNK/生きる1』で『人間失格』の文庫本160冊を自分で装丁し『勝手に人間失格フェア』と称して展示をしたのですが、その個展の直後に個展のことをまったく知らない方から偶然『走れメロス』の仕事の依頼が来て、もしかして太宰を呼んじゃったのか?と怖かったんですが、以来、太宰のことは強く意識していました。もしかしたら太宰に憑依されてるかもしれませんw

 

「勝手に人間失格フェア」写真

 

— 大竹さんにとって、太宰治はどんな存在なのでしょうか?

そもそも太宰初経験は教科書に載っていた『走れメロス』で「なんだか説教くさい話だな」という印象でした。その後まったく読まず、青年期に「太宰太宰」言ってる太宰大好き人間のことを「太宰太宰うるせえな、辛気くせえなまったく」と思っていました。30代半ばにして絵を描きはじめ、生活に行き詰まり、自分がそろそろ太宰が死んだ年齢(38歳)に近づこうとする頃、そういえば読んでなかったなと、初めて『人間失格』を読んだんです。そしたらものすごく面白かったんです。主人公が絵描きという設定で自分と重ね合わせたのかもしれません。

その頃つきあった婦女子が多少メンヘラ気味の太宰好きだったため、毎年6月の桜桃忌に太宰の墓参りに一緒に行ったりしていたんです。その太宰好きの婦女子にはよく「太宰みたいだね(内面の屈折具合が)」とか言われていました。

その太宰好きの婦女子とは5年ほどつきあい、自分が装画を描いた『走れメロス』が発売されたそのすぐ後に別れました。今思い出しましたが『走れメロス』発売記念にその婦女子にお祝いをしてもらえることになり、そのスケジュールの調整の過程で色々もめ事があって痴話喧嘩となりそれが引き金となって大喧嘩して最終的に別れました。(以前から別れる別れないの修羅場を幾度となく繰り返していたためそれが直接の原因ではないですが)もしかしたらその婦女子と別れたのも太宰に憑依されたせいかもしれないですねw

 

 

 

 

— 大竹さんは近年、装画を描く機会が増えたと思うのですがどれもぴったりないいお仕事ですね。
それぞれの本にまつわるエピソードをお聞かせ頂けますか?

●末井昭『自殺』
2013年のHBファイルコンペ藤枝リュウジ賞個展『PUNK/生きる2』の後、末井昭さんの『自殺』の装画の依頼が来ました。装丁は鈴木成一デザイン室です。太宰は最終的に自殺したので、今回の太宰がテーマの個展に、末井さんの『自殺』の原画も違和感なく展示できると思いました。初日には末井昭さんと、現在の奥さんで写真家の神藏美子さん(最近『たまきはる』を出した)も来ていただきとてもうれしかったです。『自殺』は悩める現代人必読の名著なので1人2冊は買うべきですね。末井さんにサイン本もわざわざ作ってもらったので欲しい人はお早めに。(残りわずかです)

 

 

大竹さんが書いた『自殺』推薦文

 

 

●田中慎弥『宰相A』
2013年TIS公募で大賞をとり授賞式のスピーチで酔っ払って長々とスピーチし今では何を話したかほとんど忘れてしまったのですが、たしか「大賞受賞が自分には身分不相応で肩の荷が重いけれども、せっかく審査員のみなさんに選んでいただいたので(辞退するわけにはいかず)いただきておきます(もらっといてやる)」みたいな発言をして「田中慎弥の芥川賞受賞会見みたいだな」と言われた記憶があります。その田中慎弥さんの本の装丁の仕事が自分に来たのも不思議な縁で面白いです。

 

 

— 今回の個展も、極限まで出し切った感があり、大竹さんのPUNK精神を感じました。展示した感想をお願いします。

唐仁原教久さんも新潮文庫の太宰治シリーズを手がけています。その唐仁原さんのHBギャラリーでテーマが太宰の個展ができてとてもうれしいです。太宰のすごいところは、常に死を鼻先にぶらさげて全力疾走しているにもかかわらず、なおかつユーモアにあふれているところです。『人間失格』執筆時の太宰は本当にもうヘロヘロでいつ死んでもおかしくない状態にあったのに『人間失格』の中には笑ってしまうくらいにユーモアがあふれているんです。

実は、昨年1年間ずっと調子が悪く仕事以外で絵をほとんど描かず、絵から逃げていました。もしかしたら、今回突如個展を開催することになったのも「絵から逃げるな、ちゃんと走れ(描け)」という太宰からのメッセージなのかもしれません。今もまだ自分に太宰が憑依しているかどうかはわからないですが、自分も太宰を見習い権威に媚びることなく、PUNK&ユーモア精神で今後も突っ走り続けたいと思います。

元気で行かう。絶望するな。では、失敬。(太宰治『津軽』より)