HB Gallery

Blog

9月2014

唐仁原多里個展「フジタとキキ」

今週の作家さんは、HBスタジオとギャラリーのスタッフでもある
イラストレーターの唐仁原多里さんです。HBでは約5年ぶりの個展開催となります。

画家の藤田嗣治とモデルのキキをテーマに、アトリエの風景や2人の愛用品など
エピソードと共に温かいタッチで描いています。
フジタのアトリエに来たような、楽しく心地のよい会場になっております。ぜひお立寄りくださいませ!

 

 

— 今回のテーマについてお聞かせください。

昔から”フジタ”こと、画家の藤田嗣治が好きで、
いつかフジタをテーマに描いてみたいなと思っていました。
フジタのことを色々と調べてみると、キキという女性の存在も知りました。
1920年代のフランスで有名なモデルだったそうです。
2人は仲が良かったようで、その話を描きたいと思い今回のテーマにしました。

 

 

— 人物をテーマにしてみて、むずかしかったのはどんな所ですか?

最初は2人の写真を観て描いていたのですが、
写真に引っ張られすぎていて中途半端にリアルになってしまいました。
描いても描いても、捨てるといった具合で
色々と模索したなかで、普段の技法ではない、新しい技法をみつけました。

— 新しい技法は、これまでの描き方とどのような違いがありましたか?

これまでの技法は、下絵をかっちりと決めてから描くのですが、
新しい技法は、マチエールを作って人物を削り出すように描きます。
やりやすく、描きやすい技法だなと思いました。人物を描くのにはいいかなと。

 

 

— 今回は5年ぶりの個展だそうですが、展示をしてみていかがでしたか?

こんなにしんどいものかと…。
でも、展示をすると新しい描き方を生み出したり、成長ができるところがいいと思います。
普段、仕事以外ではこんなに必死に描けないので。
いつもの描き方だけじゃない、新しい部分を見せたいというのが今回の展示だったので、
これを通過点として、これからも絵を描いていけたらなと思っています。

 

— 今後やってみたいお仕事はありますか?

どんなお仕事でも頂けたら嬉しいですが、海外のお仕事もしてみたいなと思います。
昔から外国のものが好きなので、イギリスやフランスなどでお仕事をやってみたいです。

最近は、ギャラリースタッフとして、編集の方や、デザイナーさんの需要に応じて

イラストレーターさんを紹介させて頂く事もあるのですが、
そういった、人と人をつなぐ仕事も楽しいと感じています。
良いイラストレーターでも、まだあまり知られていない人を、

誰かを紹介してあげるお仕事も楽しいなと感じています。
今後もっと幅広くできたらとも思っています。

— ありがとうございました。今後のご活躍も楽しみにしております!

 

 

水沢そら個展「残響する芳芬」

今週の作家さんは水沢そらさんです。HBでは初めての個展となります。
切り絵の手法で、植物や蝶、少女の細かな描写が美しい水沢さんの作品。
その独自の幻想的な世界観に陶酔される方も多く、連日たくさんの方が楽しまれています。
残すところあと2日、この機会をお見逃しなく!

 

— 今回ご自身2回目の個展開催となるそうですね。飾ってみて気づいたこと、感想などありましたらお聞かせください。

展示してみて気づいたことは、描き込みの密度が以前よりも高くなっているなと思いました。
ちょっと変わった技法で描いているということが、昔に比べて自分でも気にならなくなりましたし、
「技法うんぬんより、作品として目に入ってくるようになった」と感想をいただけて、とても嬉しかったです。

最初に個展のお話をいただいた時は、すぐには展示が出来なかったので1年間待って頂きました。
でもその1年間がよかったなと感じます。 HBでの展示は憧れでした。

 

 

— こちらも嬉しいです。作品の描き込みの密度が高くなったことにはどんな理由があると思われますか?

元々、描き込むことは好きだったんです。今の切り絵の描き方で、色々なものを描けるようになってから
「どこまで描けるかな?」という自分に対してのチャレンジもありました。

今後は描き込みも残しつつ、抜け感をもっと追求していきたいです。
構図やモチーフについてもそうです。少女を多く描いているので、そのイメージが強いと思うのですが
もしまた展示をする機会があれば、次はいい意味で裏切ることができたらなと思います。

 

 

—  水沢さんは、絵を描くときどういうものからイメージが湧きますか?

厳密には自分でも分かっていないのですが、音楽だと思います。
ぱっとイメージが頭に浮かぶときもありますし、そうではないときもあって、
浮かばない場合は、写真やネット、雑誌などから人物のかたちだけをとっていきます。
座っている人を描いたとしたら、そこからその人が動き出すんですね。
その後ろには人がいて、手前には植物があって…と、その後の物語を展開していきます。
ずっと展開していき、写真の大本が0%になるまで描いていきます。

あとは普段からラフも描いていて、ラフ同士を組み合わせていくとストーリーが繋がって、
また新しい世界がうまれるということもあります。

 

 

—  この切り絵のスタイルになるまで、他にはどんな画材を試されましたか?

アクリル絵具でのペインティングや、カラーインクも試しました。
長い間、一番多く描いていたのはアクリルです。
今の技法だと、以前より明らかに描くスピードが2~3倍早いです。

僕は優柔不断で、飲食店に入ってメニューを見てもぜんぜん決められない…そんな性格もあって、
切り絵だと描く部分が限られているので、切りがつけやすく悩まず描けます。
この技法になってからは、今まで自分が途中で終わらせていると思っていたところで、
終わらせてもいいんだということに気づきました。

 

 

— 本格的にイラストレーターを目指そうと思ったのはいつ頃ですか?

30歳越えてからです。
バンタンデザイン研究所で2年間勉強してはいたのですが、
卒業後10年は遊んでばかりで、ずっとバンドをやっていました。
30歳を越えたとき、そろそろまずい…と思い、職をどうしようかと考えたときに
イラストレーターがいいなと思い、もう一度描き始めました。

でも卒業してから10年近く経っていたので、周りに絵を描く仲間がいませんでした。
その頃はSNSも今ほど活発ではありませんでしたし。
自己流で描いてみるもののうまくいかず、批評してくれる人も居らず…
そこで学校に行ってみようかなと思い、MJイラストレーションズに入塾し3年間学びました。

 

 

— 通っていた頃から絵の売り込みはされていましたか?

その頃はしていなかったです。今もそれほどはしていないのですが、
MAYAさんの装画コンペで賞を頂いてから、ぽつぽつとお仕事を頂けるようになり、
お仕事の本を見た方から、またお仕事を頂けて…といった具合です。
もっと広げたいなと思っているので、売り込みもしていきたいです。

オリジナルの作品を描く上では、自分の中のファンタジーなところを描いていきたいです。

最近では、野菜の「もやし」を描くお仕事を頂けてとても楽しかったので、
こういうものも描けるんだ、と振り幅を広く持てたらいいです。

— 今後はどんなお仕事をやってみたいですか?

しいて言えば広告がやりたいです。
ハーゲンダッツが大好きなので広告をぜひやってみたいです。
他には飛行機の機内誌「翼の王国」が好きで、飛行機に乗る度に持ち帰っています。
いつかお仕事ができたらいいです。一流のイラストレーターさんの絵が載っているので夢ですね。

— お話がくるといいですね。楽しみにしております!すてきな展覧会をありがとうございました。

 

日笠隼人個展「世界旅行」

今週の作家さんは日笠隼人さんです。HBでは2回目の個展となります。

お仕事で旅行ガイドの表紙イラストレーションを手がけられた日笠さん。
今回はその原画と、展示のために描き下ろされた新作イラストレーションを展示しています。
正面の壁に飾られた大きな世界地図とともに、各国の雰囲気を味わえる楽しい展覧会です!ぜひお越しください!

 


— たくさんの国が並びましたね!これは全てお仕事で描かれたのですか?

18カ国を描くお仕事で、日本とスペインは展示にあわせて描きました。
大きな世界地図も新たに描きました。国の位置を地図でみつけながら、小さなお子さんにも楽しんでもらえたら嬉しいです。

— 各国の特徴がシンプルにまとめられていてお見事ですね。

資料は先方に頂いたものもありますが、組み合わせは自分でみつけたり、自由にやらせて頂けました。
構図のやり直しなどもほとんどなかったですね。
香港と台湾の違いを描くのが難しかったです。
名所だけを描くのではなく、人物やその土地の名産などと組み合わせて描くところが難しかったですね。

 

 

— 前回の個展から、タッチも変わりましたね。

これまではベージュ、紺、赤を基調にして描いてきたのですが、
はじめてこのテイストで色をつけてみました。自分でも発見だったなと思います。

— まだまだ広がりそうで楽しみですね。
日笠さんは普段、イラストレーションのお仕事の他に先生もされているとお聞きしました。

セツ・モードセミナーと、銀座の絵画教室で講師をしています。
イベントや作品展、スケッチ会などあって忙しいですね。
イラストレーションのお仕事をもっとやりたいなと思っています。

 

 

— イラストレーションのお仕事ではどんなことをやってみたいですか?

今回の旅の絵は、説明的な絵ではありますがとてもおもしろいお仕事でした。
旅ガイドの中身の挿絵なども含めてもっと描いてみたいなと思いました。

他には本の装画や小説の挿絵をやってみたいです。
物語性があるような絵を、本を読んで描くということをやってみたいです。
このタッチでどういう風になるのか見てみたいです。

 

 

— 日笠さんの絵はいい意味で軽さがあっておしゃれですよね。
ファッション系のお仕事も合うのではと思います。抜けがある感じがいいですね。

見る人に余地を残すような絵が描きたいなとはいつも思っています。
ファッションも好きですね。あと僕は調理師の免許も持っているので、料理のレシピを描く仕事などもぜひやってみたいです。

—レシピの文字も手で描いたらきっとかわいいと思います!このタッチで色々とお仕事が広がるといいですね。

しばらくはこのスタイルを極めたいと思います。
以前はボールペンで塗っていた部分を、今回はステンシルで描いてみたりと、大変でしたが楽しかったです。
新たな技法をずっと模索していたところでした。

線ももっと研究していきたいです。違うインクを使ったり、線の強弱があったり。
そういうものが出てくるとおもしろいかなと思います。人を単体で描いたらどうなるかとか。
付けペンなんかで描くとおもしろいのかなと思います。

 

 

— 今後の展望もみえましたね。

次なるテーマはそれかなと思います。
やり終わって、今後目指したいものがみえました。

— また作品を拝見できるのを楽しみにしています!ありがとうございました。

 

平尾直子個展「赤ペン同盟」

今週の作家さんは、平尾直子さんです。HBでは初個展となります。

赤色のボールペンだけで描かれたユーモラスな登場人物たち。
群衆や街並を緻密に描いていながら、楽しく軽やかな印象をうけます。
飄々としているような、でもどこか切ない表情がなんともかわいらしく魅力的!

今年で、イラストレーションのお仕事をされてから10周年を迎えられたという平尾さん。
そんな平尾さんの記念すべき展覧会、ぜひ見にいらしてください!

 

 

— 今回10年ぶりの個展となるそうですが、展示してみていかがでしたか?

不安ばかりだったのですが、自分の作品群がひとつの空間におさまったのを見れて
これからの展望を自己分析できたような気がします。
次のイメージが浮かんだところが、一番の収穫でした。

 

 

— 平尾さんといえば「赤色」の印象ですが、この描き方はいつ頃からされているのですか?

4年前くらいからです。
塗りがうまい人と線がうまい人がいる中で、自分は当時、水彩で鬱金(ウコン)色で描いていたのですが、
その描き方に自信が無くなってしまったときがあったんです。その時にふと、家にあった赤ペンで水彩紙に描いてみたのが最初です。 子育てで忙しかったというのもあります。

— 身近な画材で描いてみたのが良かったのですね。
平尾さんは、峰岸達さんのMJイラストレーションズに通われていたそうですが、どれくらい在籍されていたのですか?

3~4年は通っていたと思います。自分は3期生でした。

 

 

— 塾へ行ってよかったなぁと思うことはどんな点ですか?

描くべき方向性を、峰岸先生の意見やみんなの作品を見ていると整理されていった感じがします。
余計なものを取ったり、必要なものを入れ込んだり。
あの人の、あの部分が好きだなと思ったり、先生のあの部分を真似してみよう、と思いました。

— みんなで頑張れるいい環境ですね。
平尾さんはすでに書籍を中心にお仕事をされていますが、普段から売り込みをされているのですか?

売り込みはしていないです。知り合いの方にお声掛けいただいたものや、
MJイラストレーションズBOOK」という本に載せて頂いて、それを見た方からお仕事を頂きました。
峰岸先生には本当に感謝しています。

 

 

— イラストレーションを続けて10年になるそうですが、長く続けられた秘訣はありますか?

やはり峰岸先生とMJの仲間、家族のおかげだと思います。
先生と仲間の存在はすごく大きいですね。

— 連日、MJのお友達がたくさん見えてますね。みなさんすごく仲がいいんだなと思いました。
平尾さんは今後、どのようなお仕事をやっていきたいですか?活動目標などお聞かせください。

お仕事では、NHK出版のロシア語講座の表紙をやってみたいです。
エディトリアル、書籍のお仕事の売り込みをしていきたいですね。
また、自分にしか描けないスタイルを探していきたいです。
「〜風に描いて」という依頼が多いみたいなのですが、それはちょっと辛いなぁと。

 

 

— 今回もロシアのシーンをたくさん描かれていて、やはりロシアがお好きなのですね。お仕事くるといいですね!
最後にアピールしたいことをお願いします!

今回は赤ペンで描きましたが、仕事上で色が変わるのは全く違和感はありません。
ふわっとした赤い発色が好きなので、展示に統一感をもたせました。
外国の風景も描き続けますが、オリンピックに向けて東京の街もこれから描いていこうと思います。

— ありがとうございました!東京の風景、ぜひ見てみたいです。今後益々のご活躍を楽しみにしております。