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10月2012

那須慶子個展「MUSICIANS」

今週の作家さんは那須慶子さんです。
HBでは2回目の個展。那須さんの個性あふれる展覧会となりました。

 

 

— 前回の個展では、野菜の絵をパターンのようにならべ、スッキリとした作品でしたが、
今回は那須さんの趣味全開ですね、すごくパワーがあって圧倒されました。

前回での個展で飾った野菜の絵は、唐仁原さん(HBオーナー)のアドバイスをもとに制作した作品でした。
唐仁原さんが「君はみんなが真似できないくらいの画力がある人だから、
絵の上手さを生かした、野菜なんか描いたらどうかな?」とおっしゃったので挑戦してみたのですが、
唐仁原さんのアドバイスが的確だったので、その後売り込みに行ってもデザイナーさんが良い反応をしてくれました。

— 確かに前回の個展の絵は、真似できないほどの上手さでしたが、
今回のポートレイトも画力のある人でないと描けない絵ですね。
さらりとしたタッチなのに、すごく似ています。

ブログに俳優やミュージシャンを載せているのですが、今回はミュージシャン一本でまとめました。
もともとポートレイトがすごく好きで、小さい頃に描いていたのをよく覚えています。
人の顔が似るのが楽しくて。その感覚が今でも続いています。
あとは吉田カツさんが昔から大好きで、ポートレイトを描き続けるきっかけになりました。

— 吉田カツさんですか、画面から活気があふれるような雰囲気は那須さんとの共通点を感じます。
印刷しても、那須さんの絵はより一層魅力を増すような絵ですね。

今回の展示は、ディレクションをN.Gのアートディレクター永井裕明さん、
デザインを矢嶋大祐さんにお願いしました。
展示用の作品、ポスター、音楽雑誌風にした冊子、Tシャツのデザインですね。
展示をするにあたって、「画力にデザインが混ざると完璧なものになるんだよ」という唐仁原さんからの助言から
前々から知り合いだった永井裕明さんにお願いしてみたところ、引き受けていただけまして!
ご迷惑をおかけしてしまい、大変恐縮だったのですが
出来上がったものを拝見したとき「私の絵がこんな風になるんだ!!」
とプロのお仕事を間近に感じ、本当に感動して泣いてしまいました(笑)

— なるほど、那須さんの魅力を存分に感じる展示ですが、
永井さんとコラボレーションして引き出せた所もあるのですね。

 

— 那須さんの音楽に対する愛情が、とてもよくわかる個展ですね。
次の展示も那須さんの個性がたっぷり出た作品を拝見したいです。

そもそも音楽は私の元気の素なんです。気分が落ち込んだと時も、泥沼につかっているような時も
音楽が自分を救ってくれたんです。あとは映画と友達。
私の実家はクラシックや洋画が好きな家系で、小さい頃はクラシックバレエとピアノを習っていました。

それらも好きなのですが、小学校のときロックと出会い、バンっとはまってしまったんです。(笑)
今回の展示は描きたかったシリーズ第一弾です。
英国ロックミュージシャン、 DAVID BOWIEを核とし、
そこから繋がっている、様々なアーティストたちを描きました。

今回の個展は、唐仁原さん、永井裕明さん、矢嶋大祐さんに助けられ、
私だけの力では成り立たない展示でした。本当にありがとうございました。

 

 

 

「かっこつけず、声を張り上げ、己の心に嘘をつかず、真っ正直に突き進み続けることを教えてくれたロック。
時代を築いたロックミュージシャンに敬意を表し、イラストレーションポートレイトを描きました。」

那須さんの挨拶文より抜粋しました。
自分が好きなもの、尊敬する人、愛情。
はたまた腹がたつ事、戦いたくなる気持ちなどなど。
那須さんの様々な想いが込められ、表現している姿がとてもカッコいい作家さんでした。

I LOVE YOU!

 

インタビュー / HBstaff 土生はづき

 

 

菅野博子個展「パリへ行く」

今週の作家さんはHBでは9回目の展示となる菅野博子さんです。
福島県いわき市のご出身で、現在も地元で活動されています。
今回は展示に合わせ東京にお越し頂きました。

— 今回は9回目の展示ですね。変化したなぁと感じることはありますか?

以前より1枚にかける制作時間が長くなったと思います。
リキテックスソフトで描いてるのですが、色を重ねて描き込むようになりました。
そうすることで色に深みが出てくるんです。

— とても丁寧に描きこまれているのがわかります。なかなか出せない色合いですね。
絵も大きくのびのびしていて、見ていて気持ちがいいなと思いました。

前々回の展示からこの半切サイズで描いていますね。
描きやすい大きさというよりは、展示のための大きさという感じです。

—  今回のテーマはパリということで。旅行はいかがでしたか?

初のヨーロッパで、友達が向こうにいるので遊びに行きました。
モンサンミッシェルを観たり、美術館をまわったりと楽しかったです。

— 作品の多くは風景ではなく、人物に焦点を当てたのが菅野さんらしいですね。
絵のモデルになった方々とはなにかお話されましたか?

お話したのは少しだけでしたが、みなさん気さくな方ばかりでした。
写真を撮ってもいいですか?と聞くと「どうぞ!」という感じで。
中にはポーズをとってくれた方もいました。

— 地元いわき市を描いた作品もありますね。このあたりは菅野さんのお家の近くですか?

車で15分くらい行ったところですね。震災後の風景を描こうと思って行った場所です。

— 今もいわき市にお住まいなんですよね。
以前は小学校の先生をやられていたと聞きました。イラストレーターになろうと思ったのはいつ頃ですか?

大学を卒業してから6年間ほど福島の小学校で先生をしていました。
20代前半で先生になりクラスを持っていたので、
親御さんからは頼りない先生に見られていたんじゃないかなぁと思いますね。
大学では図画工作を専攻したこともあり教師時代もずっと美大への憧れがありました。

そんなとき、東京の多摩美術大学二部(夜間)があることを知り通うことに決めました。
大学ではデザインの勉強をしていたのですが、絵の基礎的なことも学びたいと思い、
授業のない午前中はセツ・モードセミナーにも通いました。
デザインも勉強してみて、やっぱり絵の方で行きたいなというきもちが強くなりまして
美大を卒業して2年後、HBで初個展をしました。
憧れのイラストレーターは和田誠さんをはじめたくさん居ます。

— いわきに戻られたのはいつ頃ですか?

2006年です。地元に戻ったら絵を描かなくなるんじゃないかという不安もあり、大変迷いました。
けれど、その年にHBでの個展が決まっていたので、いわきに戻ってすぐ制作にとりかかることに。
引っ越し作業でバタバタしたこともあり作品完成度は低かったです。

それからは描き続けるためにも1年半〜2年おきにHBで個展をするようにしています。
展示が〆切のような感覚で、やらなきゃ!という感覚になりますし、
人に見せなくちゃいけないという緊張感も続くんですよね。
東京にいた頃は部屋が狭かったので大きい絵もあまり描けなかったのですが、今はのびのび描けています。
戻って来てよかったんだなと思っています。

— 今回は展示してみていかがでしたか?

みんなに「うまくなったね」と言われたので、少しは上達したのかなと。
オープニングパーティーにはあこがれの和田誠さんにもお越し頂けてとても嬉しかったです。

—  これから描いてみたいもの、目標をお聞かせ下さい。

今回は色をたくさん使って描いたので、1色使いの挿し絵のようなものを描いてみたいなと思っています。
次の展示まであっという間に時間が経ってしまいそうなので、また気を引き締めて描いていきたいです!

— 次回の展示では違ったタッチの絵を見れるかもしれないですね。楽しみにしております!

菅野さんのあたたかいタッチで描かれた表情からはその人の人柄が伝わってくるようです。
パリの人々も地元の身近な人々も、どんな対象にも分け隔てなく愛情が注がれているのでしょう。
今年の2月に開設したという菅野さんのHPもとってもかわいらしいです。
こちらもあわせてぜひご覧下さい!
http://kannohiroko.com/ 

 

 

インタビュー / HBstaff 桑原紗織

藤枝リュウジ個展「あべこべ」/ 新刊「こきの空」発売!

今週の作家さんはHBでは30回目の個展となる藤枝リュウジさんです。
HBギャラリーが出来た当初から、毎年個展を開催しています。

今回は30年記念とし、藤枝リュウジさん作、俳句の書籍を制作致しました。
俳句、挿絵は藤枝リュウジさん、デザインはHBスタジオが担当しています。

 

ではここで、中身をちょっとご紹介。

「あたま数、かぞえなおして西瓜切る」
「水ゆらり木綿豆腐は絹に恋」
「夕立に黒塗りベンツ爆走す」

なんとも藤枝さんのお人柄が見える、微笑ましい俳句が並んでいます。
挿絵も 愛らしく、思わず笑みがこぼれてしまうような
ほのぼのとした一冊になっています。

 

 

 

 

こんなかわいいイラストレーションが満載!
HBギャラリーだけの発売です!
是非ご覧下さいませ。

 

【藤枝リュウジ こきの空 ¥1200】

《オンラインショップ》
http://hbgallery.shop-pro.jp/?pid=49950776

 

【 個展 あべこべ 】

今回はちょっと変わった「あべこべ」な展覧会です。
思わずププッと笑ってしまうような作品から、
よーく見ると…あれれ??というような作品まで
藤枝さんのアイデア満載な個展となりました。

 

パンダなのに、なにが違うのかな…??

 

逆から見ても顔に見える!

 

金太郎が熊に負けてる!

 

成田君子個展「追想」

今週の作家さんは、HBでは4回目の個展となる成田君子さんです。
名古屋在住の成田さん。はるばる個展の為に東京にお越しいただきました。

 

 

— 今回で4回目の個展ですが、前回と比べていかがでしたか?

そうですね、前回よりはリラックスして制作できたと思います。
個展って気合いが入るじゃないですか。
実は、東京で個展をやるのは3回まで思っていたのですが、
あるきっかけかあり、4回目の個展を開催する事にしました。
私の初個展は、他のイラストレーターさんと一緒の時期にしたんです。
他の作家さんはピンポイントさんでやったり、マヤさんでやったり。
その皆で同じ時期に開催した個展が楽しかったので、みんなでまたやりたいね、という話がでたのですが、
皆さんいろいろな理由で話が流れてしまい…でも私は個展をやりたい気持ちが強くなっていたので、
今回で4回目だけど、やってみよう!という気持ちになったんです。
なんで、きっとかまえた意気込みがなかったんでしょうね、素直に楽しく描けてよかったです。

— 個展はどうしても力が入ってしまったり、気をはってしまいますよね。
開催自体が久々なのも、ゆとりを持って制作できるのかもしれませんね。

初個展から3回目までは2年のペースでしていたのですが、
終了して、すぐ次回の個展を考えなくてはならない期間だなと感じていました。
今回は4年も開いているのですが、私にはこのぐらいのペースがちょうどいいみたいです。
皆さんに良いね!と言って頂けましたし。嬉しいですね。

 

 

— 今回の作品のコンセプトはありますか?

シンプルに、今までの作品より鮮やかに、でしょうか。
一年に一度、名古屋イラストレーターズクラブで展覧会をしているのですが、
去年のテーマが「光」だったんです。
震災の影響が私の中に強くありまして、
その時はB1サイズに、画面いっぱいに太陽を描き、下の方に松島の海を描きました。
色はほぼ全体黄色です。その作品を描きあげ、何か掴めたんですよね。
それがきっかけで今回の個展に繋がりました。

— とてもシンプルに構成されて、かつ色も鮮やかですが不思議とすんなり入ってくるような素敵な絵ですね。

何かよくわからないけど、何となく山かな?海かな?というような
抽象と具象の間ぐらいな絵が好きで、私自身もその中間を狙って制作しています。
見る人の想像をかきたたせるような絵を描きたいです。
あとは色自体がとても好きで。
オイルパステルや色えんぴつが並んでいるのを、見るだけでもホレボレしてしまうぐらい(笑)
カラーチャートってあるじゃないですか、あれを眺めているのも本当に好きです。
ただただキレイ。美しいですよね!

— 成田さんの性格や好みがそのまま作品に反映されていて、絵を見ると成田さん自身を見ているようですね。
あとは不思議な質感を持った画面ですが、これはなんですか?

ベニヤの上に描いています。昔からマチエールがあるものが好きで。
掃除をしていたとき、偶然段ボールいっぱいにB4サイズのベニヤが出て来たんです。
きっと誰かにもらったんですね。素材感のあるものが好きなので、
「壁紙余ったんだけど、いる?」みたいなかんじで知り合いがくれる時があるんですよ。
忘れていたベニヤを発見し、「これは神様がココに描けっていってるのよ!」と天のお恵みだと思いました。(笑)
描いてみたら気に入ってしまいましたよ。

— 他の人が気付かないような素材に描くのも、自分のスタイルを発掘する上で大切なんですね。

いつも「何に描いたら楽しいだろう?」って考えてますよ。
キャンバスの裏もガサガサしてて楽しそう。

 

— 絵の具の上にパステルを重ねるのも新しいですね。

これがなかなか難しいんですよ。
絵の具の彩度とパステルの彩度が似ていると、
馴染んでしまい、パステルの模様が見えなくなってしまう時があるんです。
今度は計画をたて、絵の具を塗ったものを画材屋に持参して、
一つ一つパステルをあてて、検討しようと思います。

 

 

イラストレーターとしてはベテランの成田さんですが、
現在でも試行錯誤を繰り返し、実験する日々。
新しい作品を生み出すため、また楽しく作り上げるため、
前に進んでいくプロの姿が、印象的なインタビューでした。

ぜひぜひ、5回目も楽しみにしております。

 

インタビュー / HBstaff 土生はづき

 

 

 

新目惠個展「通過点」

今週の作家さんはHBでは2回目の個展となる新目惠さんです。
普段は小学2年生のお子さんのママとして子育てもしつつ、
絵を描く時間もなんとか確保するという生活リズムにあるそうです。

今回はオリジナル作品のほかに、これまで手がけられた装画やパンフレットの表紙絵の原画も展示されました。
水彩絵の具で描かれた、新目さんらしい透明感にあふれたシーンが並びます。

― まずは展示のテーマについてお聞かせください。

今回は『思春期』をテーマに、14~15歳の人物を中心に描いています。
その頃の年齢というのは進路を考えたり、親とのコミュニケーションが難しくなってきたり、
恋愛や同級生との関係などに思い悩む人生の中でも多感な時期だと思うんです。
私自身、絵を描くのが楽しいとか、具体的な進路を、
ぼんやりですが、思い始めたのが14~15歳の時で、自分の原点とも言える時期だったんだなと。
そういった複雑な表情をおもしろく表現できるのでは思い、今回の展示テーマにしました。
お仕事でも10代の人を描く機会も得られ、今回のオリジナルの作品との統一感も出たかなと思います。



― 新目さんの絵は海外の風景や人物を描いたものが多いですね。
このような雰囲気の絵になるきっかけはありましたか?

これまで日本の風景や人物は描いていたのですが、
今回の展示の際、お仕事で担当させて頂いた装画は、海外の文学を選びましたので
その雰囲気に合わせました。統一感は意識しています。

― なるほど。オリジナルの作品はどんなものを資料にして描いているのですか?

やや古い映画のワンシーンだったり、自分で撮った写真をコラージュして描いています。
ただ、そのまま描くのではなく、人であれば髪の色を変えてみたり、
背景を変えたり植物を増やしたり…など、自分で新たなシーンを作っていきます。

― リアリティも感じられ、且つ新目さんらしい独特の空気感になるのはそのような手法からなのですね。
これまでデザイナーとしてもお仕事をされていたそうですが、
絵を描く上でデザインも学んでいて良かったと思うところはありますか?

印刷の行程や、パソコン操作を勉強できたこと、
仕事の流れなどを想像できるようになったことでしょうか。
自分の絵を俯瞰して見れるようになったのは、デザイナー時代の経験が少し役立っていると思います。

― 影響を受けた人、モノなどありましたら教えてください。

そうですね…イラストレ-ションはもちろん、現代美術、古代や近代の絵画まで、
どれをとっても素敵だなと感じますし、だんだん年をとるにつれ、これ!という幅がなくなってきました。
ただ、写真になりますが、何かのおり、Slim Aaronsさんという方の写真集をよく開きます。
リッチな世界観に憧れ、雰囲気を参考にしています。

― では最後に、今後やってみたいお仕事はありますか?
絵本に携わってみたいです。それと、文房具などのお仕事にも興味があります。
D-BROSさんが好きであこがれです。

― とても雰囲気が合うと思います。コラボレーション、ぜひ見てみたいですね。
新目さんの益々のご活躍を楽しみにしております!

新目さんの描く少し憂いを帯びた表情の少年少女たち。
その瞳にはどんな大人の世界が映っているのだろう…
新目さんはそんな10代の繊細な心のひだを描ける数少ない作家さんだと思います。
ご自身の作品に対しては「まだまだです」と一言。
どこまでも真摯に挑戦し続ける、プロフェッショナルなお姿に感銘を受けた一週間でした。

 

インタビュー / HBstaff 桑原紗織