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4月2013

HB 1DAY SHOP のおしらせ。

4月26日金曜日の1日限定で、「HB  1DAY SHOP」を開催いたします!



この日のために制作した、HBメンバーのトートバッグとTシャツや、
HBヴィジュアルブック、歴代ファイルコンペのTシャツ など、大放出いたします!

HBオリジナルポスターの展示・販売や、
和田誠さんデザインのHBキャラクター、バクのグッズ販売など盛りだくさん!

1日限り、2冊¥1000で販売するHBビジュアルブックもございます。
この機会にぜひお手に取ってご覧下さいませ!

みなさまのお越しをお待ちしております。

 

村田恵理個展「ペロー童話集」

今週の作家さんはHBでは2年ぶり2回目の個展となる、イラストレーターの村田恵理さんです。
今回は「赤ずきんちゃん」や「眠れる森の美女」の作家ペローを題材にし、
普段の村田さんのアクリルガッシュで描く画風に加え、さまざまな画材に挑戦した新作22点が並びました。
どのお話も村田さん独特の視点で描かれていて、これまでのお話のイメージを払拭するような、
新しいキャラクターや情景が生まれました。

— まずは今回の展示のテーマについてお聞かせいただけますか?

今まで風景とか動物をよく描いていたのですが、最近は人物を描くお仕事が多く、
人物の描き方をもっと研究しよう!というのが念頭にありました。

個展を行なうにあたり、人物を描く絵本を作ろうか、文字のない漫画をつくろうか…
など色々考えていた時に、ある方がペロ—の童話を教えて下さったんです。
これまでペローという作家がいたことも知らなかったのですが、
今までに無い自分の絵になりそうでしたし、挑戦になるのではと考えて今回のテーマに決めました。

—  いろんな画材に挑戦されてますね。どんな画材で描かれてるのですか?

アクリルガッシュ、鉛筆、顔彩、パステル、木炭、グラファイト、カラーインクです。
手法としては、木版画と多色刷りに挑戦しました。

— たくさん!普段使わない画材で描く事で、何か発見した事はありますか?

木炭が意外に楽しく、作品としてもおもしろく描けたかなと思います。
初めて使う画材もあり「上手に描こう!」と思ってしまって、最初はなかなかうまくいきませんでした。
その気持ちをぬぐい去るのに時間がかかってしまって…。
たとえば、パステルだったらうまい人のイメージが先に浮かんできてしまって、
その理想に近づけたい!という気持ちになってしまうんですね。

でも色々な画材を試せたのは自分にとって良かったと思います。
今までの作風に戻った時になにか広がりのある表現ができるんじゃないかなと感じています。

— 村田さんはHBでは2回目の個展となりますが、前回と比べていかがでしたか?

初めての個展の時は、宣伝したい!という気持ちが強かったのを覚えています。
まだほとんど絵でお仕事もしていない時で、仕事が欲しいなという想いでいっぱいでした。
でも2回目の今回は、そういうことはあまり気にせず自分が楽しむためにやろう!
と思う気持ちの方が強かったです。
いい意味で気が抜けてよかったんじゃないかなと。
また、見に来てくださる方のご意見を伺ううちに、今後の方向性も少し見えてきた様な気がします。

— 自由に描けるというのは、いちばん楽しいことですよね。
最後になりますが、今後やってみたいお仕事や抱負をお聞かせ下さい!

どんなお仕事でもどんどん挑戦していきたいです。
また機会があれば、10年後くらいに同じテーマで展示をしてみたいです。
経験や年を重ねていくうちに、違った考え方や見え方が出来てると思いますし、
ペローの物語の見え方も変わっているんじゃないかなと。
今回の展示と見比べる事ができたらおもしろそうだなと思うのでやってみたいですね。

— ありがとうございます。村田さんの10年後の変化、楽しみにしています!

自由な気持ちで変化を恐れず、色々なタッチ、画材に挑戦する村田さん。
新たな手法もどんどん取り入れ、今後もその世界観をより一層広げられていく事でしょう。
今後のご活躍、楽しみにしております。

10年後もぜひHBで展示を!

 

 

 

 

 

きたざわけんじ個展「さくら色のかぜ」

今週の作家さんは、HBでの個展は5年連続、5回目となるイラストレーターのきたざわけんじさんです。
2009年の4月を皮切りに、毎年4月に個展をされています。
さくらが咲きはじめると、きたざわさんの展示もそろそろだなぁと楽しみにされる方も多いのではないでしょうか。
今回も大きなパネルに描いた手描きの作品や、色とりどりのデジタル作品のほか、
きたざわさんの最新のお仕事もご覧頂けます。
1年ごとに少しずつ変化を見せるきたざわさんの作品。
さわやかな風が吹き抜けるような、ここちよい空間が広がりました。


— まずは、5年連続5回目の個展の感想をお聞かせ頂けますか?

よく5年続いたなぁと思いますね。最初は先のことはあまり考えていなかったのですが、
ずっと続けたいなとは思っていました。

— きたざわさんご自身、続けてきて変わったなと感じることはありますか?

最近は肩肘張らずに気楽に描けるようになってきたと思います。リラックスして描けるようになったかなと。

— 最初の個展の時のことは覚えていますか?

もちろん覚えてます!最初の個展では、すべてプリンターで出力した作品を飾っていたんです。
そのことは未だに悔やんでいて…。
やっぱり展示を見に来る方は手描きのものが見たいですよね。
僕自身、他の作家さんの展示を見る時も「どうやって描いてるのかな」というのが見たいですし、
印刷物だけというのは興醒めしてしまうような気がしてしまって。
それを1回目の展示でひしひしと感じて、次の年からは手描きでペイントした作品も飾ることにしました。


— 絵の具の質感が見えると、ライブ感が出て楽しい感じがより伝わってきますね。
普段のお仕事で描く絵はどのような手法で描かれているんですか?

まず、えんぴつでラフを描いて、それをパソコンに取り込んで彩色してます。たまにベジェ曲線も使ったり。
硬質な感じにならないよう、手描きのアナログ感を残しつつ…というのは心がけています。

— パソコンの作品は線の質感が楽しいし色もきれいですが、ペイントの手描き感もすごくいいですね。

毎年、展示の時だけこうして絵の具を使って描くんですが、それが気持ちの切り替えになっていますね。
気分転換になります。

— 絵を描くときに何か資料などは見ますか?

ほとんど見て描くことはないですね。
僕の作品は、木は葉っぱしかなくて幹が無かったり、夏じゃないのに入道雲だったり…と、
よく見ると変なところがたくさんあるんですよ。オリジナルの作品はほぼイメージで描きますね。
お仕事を頂いた際に「こういう物を描いてほしい」という指定がある場合は資料を見て描く事も。


—  絵を描かれる時に、一番大事にされていることは何ですか?

そうですね…たくさんあるのですが、一番はファーストインプレッションでしょうか。
最初にラフを2~3案描くんですが、頭に浮かんだイメージを元に、自然と手が動いて描けた絵を大事にします。
他には、風を感じるようなさわやかな色遣いになるように心がけてます。

— 今の作風になるまでに、どれくらいの期間がかかりましたか?

最初の頃はアルバイトをやりながら、ギャラリー巡りをして
1年くらい、ありとあらゆる作家さんの作品を見て回ったんです。
そうしていろんな方の作品や、ファイル作りを見ていると、
「こういうものを描いている人はいるから、まねしちゃいけないな」というのがわかってきて。
まだだれもやっていないものを描こうとしてました。
最初から営業の仕方も全部頭に入れて「食べていけなかったらやめよう」と覚悟を決めてから絵を描き始めたんです。
その頃からHBで個展をやりたいというのも目標に入れてました。


— 現在は装画や広告など幅広くお仕事をされてますね。すばらしい行動力です!

最初はアルバイトの仕事が100%で、その他にコンペに出品しつつ、営業にも行って…というのが
2~3年続いてすごく忙しい時期がありました。
でも徐々に絵のお仕事が頂けるようになって、アルバイトにかけるパーセンテージも80%、70%…と減っていき、
今は100%、絵で食べていけるようになりました。それまで、7~8年はかかったのかな。
スタートが遅かったので、それが功を奏したのかなと思います。
もう結婚もしていたので、稼げなかったらすぐやめようとは思ってました。


— きたざわさんはイラストレーターさんのお手本のような存在ですね。勉強になります。
最後になりますが、今後のイラストレーターとしての抱負をお聞かせいただけますか?

黙ってても仕事が来るような、それくらいのイラストレーターになりたいなと思います!
今、とても楽しめて描けてるので、それを継続させて今後も描いていきたいです。

— すてきなお話をありがとうございました!

きたざわさんの作品は一瞬にして見る人の心をつかむような瞬発力があるように感じます。
風を切り取ったような余白の気持ちよさや、説明し過ぎることなく見る人へと渡るイメージの余白が
広告や装丁に愛される由縁なのだと思いました。きたざわさんはこれからも留まることなく、
前へ前へと進み進化し続けるでしょう!

やまぞえみよ個展「ソノ辺サイクロペディア」

今週の作家さんはHBでは3年ぶり2回目の展示となる、イラストレーターのやまぞえみよさんです。
やまぞえさんはミシンや針を自由自在に動かして糸で絵を描かれています。
今回は「ソノ辺サイクロペディア」というテーマで、身の回りの道具や、道ばたに咲く草花、
はるか彼方の天体や宇宙まで、やまぞえさん独自の視点で捉えたユーモアあふれる展示会となりました。
どれも刺繍ならではの糸のきらめきが美しい作品ばかりです。中には、実際に触って楽しむ作品も!

— 「ソノ辺サイクロペディア」と聞いてどんな展示になるんだろう?とわくわくしました。
百科事典のような意味合いでしょうか。今回のテーマについてお聞かせ頂けますか?

昔から、西洋の航海者が旅先で描いた植物の絵とかを見るのが好きで、博物図鑑なども好きでよく見てました。
今回の展示ではその好きな感じを出せたらなと。理科的な要素にすごく興味があります。

— 昆虫を分類した図や、人体模型、宇宙、天体など…
理科の教科書で見覚えのあるようなモチーフ選びが楽しいですね。
この作品は髪の毛がめくれるようになってるんですね!

そうなんです、ぜひ触ってみてください。人体模型のような感じを出したかったんですが、
あまりにもリアルすぎると気持ち悪いかな…と思って。
「めくってみてください 」とお客さんに話しかけたりして、コミュニケーションになって楽しいかなと。
見て触れてたのしんでいただきたいです。

— ふふふ。みなさん楽しそうにめくってますよね!
ところどころに絵筆の筆跡も見えますが、どのように描いてるんですか?

広い面などは、最初にアクリル絵の具で色を塗って、さらにその上からミシンで刺繍しています。
星屑のつぶつぶしたところは針で塗ったり…と使い分けてますね。
帆布という少し厚めの布に、色を塗ったり糸で縫ったりして絵を描き、最後に木枠に布をぴんと張るんです。

— なるほど、最後に木枠にはめるのですね。
絵を描くことと、お裁縫と、最初に興味を持ったのはどちらでしたか?

最初はやはり絵を描くのが好きでしたね。絵は子供のころから好きで。
でも絵で食べていくという方法がわからなかったので、
大学ではテキスタイル科で勉強をして、卒業後はテキスタルデザイナーとして働きはじめました。
でも徐々に、やっぱり絵で行きたい!と思うようになって、フリーで制作をするようになり、絵に戻ったという感じです。

 

— やまぞえさんと言えば、黒バックの作品が印象的です。
絵がぽうっと浮かんできて幻想的な雰囲気がでますね。

以前、チョイスに応募し入選を頂けた絵がたまたま黒バックの作品だったので、
それを見た方がお仕事でも黒バックでお願いします、と依頼して頂くことが多いんですよ。
なのでその方向で作品も多く作ってました。やはり背景が黒いと、糸の色が映えるんですよね。
でも、今回展示したような白バックでの作品でもお仕事も広げていきたいと思っているので、
こんなのも描けますというのをぜひ見ていただきたいです。

— 背景が白いとほんわかとしたやわらかい印象になりますね。どちらも違った魅力があります。
最後に、これからの目標や今後やってみたいお仕事などお聞かせ頂けますか?

本を読んで、そのお話をイメージして絵をつくることが好きなので、やはり装画のお仕事がしたいですね。
自分でストーリーを書いて、絵も描いて絵本も作ってみたいです。まずはオリジナルで制作してみようかなと。
また、白バックの作品でもお仕事を広げていきたいなと思います。そのためには営業をがんばらないとなんですけどね…

— ありがとうございました!益々のご活躍を楽しみにしております。

見る人の想像をふくらませるような幻想的な世界観の作品もあれば、
ユーモアな作風で思わずふふふ!と笑みがこぼれてしまうような作品も。
ユニークさとファンタジーさ、両方を兼ね備えたやまぞえさんの作品には、
楽しんでほしい!という見る人への思いや、作ることが楽しい!という作家さん自身の想いなど、
たくさんの気持ちが詰まっていました。

会場では、やまぞえさん手作りのアゲハチョウやクワガタなどの昆虫を模したピンバッチ、
「ムシムシピン」も展示・販売中です。残りわずかですのでお早めに!

君野可代子個展「甘味」

今週の作家さんは、自身初の個展となるイラストレーターの君野可代子さんです。
昨年の春まで峰岸塾でイラストレーションを学ばれていて、
卒業された現在は、週刊誌の挿絵、装画など書籍のお仕事を中心にご活躍されています。
初日には峰岸達さんやたくさんの生徒さんがお祝いに駆けつけてくださいました。

君野さん独特のやわらかなえんぴつ線と淡い色彩で、春にぴったりな展覧会となりました。
恋するきもち、甘酸っぱい思い出、なつかしさなどを「甘味」というタイトルに込めた全17点が並びます。

— 初個展、おめでとうございます。展示されてみていかがですか?

個展をする意味というのが、これまではあまりよくわかっていなかったのですが、
実際に展示し、毎日いろんな方にお会いしたことで、なんとなくわかったような気がしました。
作品の感想も伺えたということもすごく大きいです。
自分のためにやっちゃっていいのかな?と思ってたのですが、これは必要なことだったんだと今になって感じますね。

— グループ展とはまた違った刺激がありますよね。
君野さんは以前、峰岸塾で絵を学ばれていたそうですが、どれくらい通われていたのですか?

去年の4月くらいまで約3年ほどですね。
絵で食べていけるようにがんばろう!と、入塾前に決意しました。

— それまでも絵を描くのはお好きだったんですね。

そうですね。もっと前になるのですが、セツ・モードセミナーに通っていた頃がありまして、
その頃は絵というよりはファッションの方に興味がありました。
そのうち「結婚しても家で仕事ができることを」と考えはじめ徐々に絵の方向へ…という感じです。

— 入り口はファッションだったのですね。当時憧れのイラストレーターさんはいましたか?

たくさんいました。宇野亜喜良さんや峰岸達さん、アメリカのジェシー・ウィルコックス・スミスなど。
最初にイラストレーターとして好きになったのは、70年代にチョコのおまけについていた、シシリー・メアリー・バーカーの絵を見たのがきっかけだったと思います。

— 憧れだったお仕事が現実に!最初に絵のお仕事を頂いたときはどんなお気持ちでしたか?

「詩とファンタジー」の挿絵が最初に頂いたお仕事なのですが、不安の方が大きかったですね。
ギャラリーハウスMAYAさんの装画コンペの受賞者展で観に来てくださった、
編集者の方からお声掛けいただいたのがきっかけでした。
自分が描いていいの…?という不安はすごくあったのですが、とってもうれしかったのを覚えています。

— その後も本のお仕事が続いていますね。君野さんご自身はどんな本がお好きですか?

結構おどろおどろしいお話が好きで、芥川龍之介とか京極夏彦さんとか。
今、『サンデー毎日』の連載で挿絵を描かせて頂いている、宮部みゆきさんのお話もすごくすきな世界観なんです。

— それはなおさらうれしいお仕事ですね!
連載の挿絵は昨年の7月からご担当されているそうですが、
楽しいことやここが大変!と思う事をそれぞれ教えていただけますか?

楽しいことは、まず内容がおもしろいことですね。
このお話に私の絵がついていいの…?と思うのですが、でも毎回すごくうれしいです。
本屋さんでも未だに自分の絵が載っている本などみかけるとまだ信じられないというか…大丈夫かな?と思ってしまいます。

— どのお仕事の絵もすごく素敵です。君野さんにしか描けないものという感じがしますね。
では逆に大変なことはありますか?

そうですね、登場人物に男の人が多いことでしょうか。
これまでほとんど男の人を描いたことがなかったので。大変ではありますが、とても勉強になっています。
あとは、最初の方で張り切りすぎて細かい描写で描いたので、その気持ちを持続させるのが…たいへんです。

— 君野さんの描く男の人は新鮮ですね。存在感があってお話の雰囲気が伝わってきます。
話しは変わりますが、絵を描くこと以外ではどんなことがお好きですか?

アコースティックギターが昔から好きです。中学のときにクラブに入ってそれからずっと弾いてます。
今は忙しくてなかなか触れていないので、また落ち着いたらやりたいなぁと思ってます。
エレキギターも買いたいなぁ…

— ギター、いいですね。君野さんの雰囲気ととっても合います。
いろいろとお話をありがとうございました。最後になりますが、これからやってみたいお仕事、目標をお聞かせ下さい。

お仕事はなんでもやってみたいのですが、こども服に関わるお仕事がいつかやってみたいです。
ファッション関係のお仕事も。目標はやっぱり、一生イラストレーターです!

— ありがとうございました。今後も君野さんの作品がいろんな方の目にとまり広がっていくことと思います。
これからのご活躍を楽しみにしております!

今回展示された作品のほとんどは、写真や資料などを見ずに想像で描かれたそうです。
どの作品も人の顔が魅力的で、目を閉じてもずっと忘れられないような儚さがありました。
それらは君野さん自身がこれまで出会った人、触れてきた感情の記憶から自然とにじみ出てきた表情なのでしょう。
作品から出てきたかのようなやさしい雰囲気そのままの君野さん。
これからもご自身のペースでひたむきに絵を続けられるのだろうなと感じました。