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1月2017

すぎもりえり個展「PORTRAIT」

今週の作家さんはすぎもりえりさんです。HBでの個展は約6年ぶり2回目の開催となります。
今回のテーマは女性のポートレイト。描かれているのはすぎもりさんのご友人やお知り合いの方たちです。ご自宅に招き、モデルをしてもらい描いた作品だそうです。ブルーを基調とした凛とした空気感はすぎもりさんならでは。惹きこまれる魅力ある作品たちです!ぜひご覧くださいませ。

 

 

2000年~2015年まで、期間をあけながらセツ・モードセミナーに在籍されていたすぎもりさん。モデルさんを見ながら人物画を描くことが楽しかったそうで、度々通われたそうです。
セツ卒業後も、ご自宅で人物画の制作を続けられています。イーゼルを立て、モデルさんに椅子にかけてもらい、合間にお茶をしながら楽しく描いた作品たち。鉛筆デッサンから着彩まで時間をたっぷりとかけ、モデルさんを見ながら完成まで描ききるのだそうです。

 

 

特に女性を描くことがお好きだというすぎもりさん。セツでも男性か女性を描くかを選べる授業では、自然と女性モデルの方へ行って描くことが多かったとのこと。洋服やアクセサリーは、モデルさんが身につけているものをそのまま描いているそうです。
時にはご自宅の壁に花柄の壁紙を貼り、それをバックにして描くのだそう。写真を見て描くのとは違い、実際に居てくれることでその人の持つ雰囲気から絵ができていき、描いているものはほとんどモデルさんからもらっている、という感覚なのだそうです。

 

 

大きな紙に描かれたのびのびとした筆のストロークから、夢中になって楽しく描いている様子が伝わってきます。モデルさんとじっくりと向き合った豊かな時間が感じられる作品たちでした。絵のお仕事はこれからスタートのすぎもりさん。本がお好きだそうで、本にまつわるお仕事は憧れがあるそうです。今後の作品も楽しみです!

 

竹中ゆみ子個展「巡る」

今週の作家さんは、竹中ゆみ子さんです。ご自身初めての個展開催です。
100年以上前に建てられた京都のお祖母さまの家を訪ねた竹中さん。今は誰も住んでいない、家具だけが残された部屋。いつかはなくなってしまうかもしれない風景を、幼い頃の思い出と共に絵に残されました。味のある手描きの線と、温かみのあるレトロな色彩が楽しい作品です。ぜひお立寄りくださいませ!

 

 

大阪ご出身の竹中さん。京都のお祖母さまの家には、幼い頃から一人で遊びに行っていたそうです。今回絵を描くにあたり、久しぶりに訪れた京都の家。近くに住む伯父さんから昔の話を聞かせてもらったそうです。

100年以上前に建てられたお家で、配送業や着物を繕うお仕事をされていたそうです。間口の広い造りだったり、布を切るための長机があったり、毛糸がたくさんあったり…と、仕事に関連する家具やモノが多いことに気づきました。竹中さんのお祖母さまはその家の4代目で、お亡くなりになるまで着物を繕うお仕事を続けられていたそうです。

遊びに行くと必ず常備してあった瓶のサイダーやみかんジュース、昼寝をさせてもらったソファ、 よく連れて行ってもらった京都のイノダコーヒーのこと…。家具や風景から当時の色々な記憶が思い出されたそうです。

 

 

 

京都精華大学でテキスタイルデザイン分野を卒業し、転職を期に8年前に大阪から上京された竹中さん。大阪時代は、勤めながら京都のパレットスクールに通われていました。上京後も絵を続けたいと思い、偶然知った安西水丸さんのイラストレーション教室に通いはじめます。水丸さんには叱られることが多かったという竹中さんですが、きっと絵の見込みがあっての厳しさだったのでしょう。水丸さんが教える、最後の期の生徒さんとなりました。

現在はオフィス家具会社でグラフィックを制作するお仕事をされながら絵を描いています。これからのご活躍が楽しみな竹中さん、絵のお仕事は媒体問わず何でも挑戦してみたいそうです。

 

 

 

大人になり家を訪ねてみると、部屋にあった旧式の痛そうなマッサージチェアや、庭にある灯篭、京都ならではの町家の格子など、幼い頃には気がつかなかったおもしろいものにたくさん出会えたそうです。お祖母さまの家や、京都の街並み、純喫茶やレストランなど、たくさんの思い出がつまった京都での出来事。その記憶が繋がって、今も古いものが大好きだそうです。大切な思い出を手繰りながら描いた温かい作品たちでした!

カクタミチコ個展「ブルカニロ博士のことば」

今週の作家さんはカクタミチコさんです。HBでは2003年以来、14年ぶり6回目の個展開催となりました。
今回はカクタさんの故郷、岩手県花巻市出身の作家・宮沢賢治をはじめ、トルーマン・カポーティ、アン・リンドバーグ等、好きな作家の物語からイメージを広げて描かれました。自由で力強い色彩とタッチをお楽しみください!

 

岩手・花巻1970年頃のイギリス海岸(宮沢賢治が名付けた北上川の一部の岸辺)

 

1992年に絵のお仕事をはじめたカクタさん。同年にHBでの初個展を開催し、当時は切り絵のタッチで作品を発表されました。その後は2~3年おきの個展開催、タッチも徐々に変化していき、筆での表現や木に描いたりとさまざまな手法で制作を続けられています。

 

ジョン・スタインベック著「赤い子馬」より”大連峰”

 

宮沢賢治「ペンネンネンネンネン・ネネムの伝記」より”サンムトリの噴火”

 

今回の作品はすべて、本を読みながら描いていった作品たち。ご自宅の近くに小さなアトリエを借り、20年以上通い続けているそうです。1日中絵を描く日もあれば、お掃除をしたり、昼寝をしたり、何もしなかったり…と、思い思いに過ごすそうです。

花巻ご出身のカクタさん。宮沢賢治は子どもの頃から身近な存在だったそうですが、大人になってから読んでみるとより好きになったとのこと。どの作品も、読後の頭の中に浮かんだイメージを、そのまま写し取るように描かれた迫力のある作品たち。何にも縛られることのない自由な描き方が新鮮に感じられる展覧会でした!

 

トルーマン・カポーティー著「ダイヤのギター」

 

宮沢賢治「虔十公園林」

 

高杉千明個展「Innocence」

新年最初の展示、今週の作家さんは高杉千明さんです。HBでは初めての個展開催となります。
うつむき加減な女の子、一人本を読む女の子、マスクをした女の子…など、制服姿の繊細な年頃の女の子たちが描かれました。彼女たちの内に秘めた感情が伝わってくるような作品たち。ぜひ原画をご覧いただきたいです!

 

 

今回のテーマは、子どもでもない大人でもない年頃の女の子たち。描いているのは現代の女の子だけではなく、どこか大人になりきれていない自分自身を重ねている部分もあるそうです。実際に中学2年生の娘さんをお持ちの高杉さん。お子さんから聞く学校での出来事や同級生との関係、スマートフォンを持たざるを得ない現状…など、現代の子どもたちの大変さを感じるそうです。友人関係、進路、部活、家庭のことなど、さまざまな事情をかかえた難しい年頃の内面が丁寧に描かれました。

 

 

高校時代から人物を描く事が好きだったという高杉さん。大学に入ってからは彫刻や塑像、人物デッサンに力を入れていたそうです。仲のいい先輩と交代で裸婦モデルをつとめ、お互いに描き合っていたことも。その頃の経験が今の制作に役立っているなと感じるそうです。高杉さんの絵には影の描写や風景の描写はほとんどありません。学生時代の制作が、今の作風の原点の一つとなっているようです。

 

 

これまでずっと人を描くことと向き合ってきた高杉さん。絵のお仕事では人物、動物、モノなどあらゆるものを描くそうですが、今後は今回展示したような作品のタッチでも装画や挿絵を描いてみたいとのことでした。今後のご活躍も楽しみです!