HB FILE COMPETITION vol.33 鈴木成一賞 田渕正敏個展「Signal」
HBファイルコンペvol.33 受賞者展ラスト!第6週目の作家さんは
鈴木成一さんの大賞を受賞された田渕正敏さんです。
多数の技法を駆使し、複雑な試みが垣間見える見応え抜群の内容でありながら、
鮮やかなブルー一色で統一された夏らしい涼やかな展示となりました。
会期中、付箋に手書きで作品の解説を加えていくなど
田渕さんらしいアイデアも必見です!ぜひ会場でご覧くださいませ。
一部展示作品はのちほどオンラインショップでもお取り扱いいたします。
http://hbgallery.shop-pro.jp/
Q1.
鈴木成一賞 大賞受賞、おめでとうございます。
受賞を知った時はどんなお気持ちでしたか?
鈴木成一さんに選ばれた感想もお聞かせください。
A1.
応募作は2年前に描き始めたシリーズで、大きな絵の変化を感じてコンペティションに応募することを決めました。
10年以上のキャリアがある中でこの変化がどのように受け取られるのか期待と不安がありましたが、とても早い段階でピックアップして頂けたことがとても嬉しかったです。
鈴木成一さんは、自分の読書体験と密接に関わるグラフィックデザイナーで小説に魅了されるきっかけとなった東野圭吾「白夜行」「幻夜」のブックデザインをはじめ
本屋に通うということが習慣になった学生時代に出会った書籍が多く、装幀・ブックデザインという言葉を意識し始め装画を描くことを志す時期と重なります。
鈴木さんから装画についての絶対的な指示は無く、とにかくゲラを読んで描いてみて下さいということを言ってくださるので、こちらとしては思いきりフルスイングで取り組めています。
Q2.
応募されたファイルを作成するにあたり、
工夫されたことや意図されたことなどはありますか?
A2.
まずは1年で様々な方向性の絵20枚を完成させるということに苦心しました。一つ手応えがあると似たものを量産してしまいがちなので、
そのスタイルを毎度避けたり壊したりしながらまだ試みてないことは何かを考えながら描きました。
20枚を完成させた後、今度はB4ファイルという形式での見せ方に苦戦しました。
B2サイズで描いている原画をB4サイズに縮小して見せなければならないので縮小することで消えてしまうディティールを時間をかけて補正しました。
横位置の絵は見開きで見せるとインパクトがありますが、ファイルの構造上真ん中で真っ二つに割れて下地の黒が見えてしまうので
絵の中心に重要なモチーフがある絵はセレクトから外しました。
Q3.
2023年はHBの受賞展の前に既に3回個展を開催され
アートフェスティバルへの参加やポップアップショップにも出店されています。
クライアントワークも数多く、非常にお忙しい日々の中で
同年開催の1つ1つの個展に対し、どのようにテーマやポイントを棲み分け、
準備を進めてこられたのでしょうか。
スケジュールを完遂させるために、田渕さんが日頃意識されていることや、
生活習慣などもあればお伺いしたいです。
A3.
去年から今年にかけてコンペティションで良い結果が残せたので、このタイミングしか無いと考え
仕事は多少セーブしながら出来る限り作品制作に時間を割きました。
3回の個展にはそれぞれやりたいことがありました。
3回目の「青いfoods」@恵文社では過去作と近作を同列に並べて絵の変化を確認する。
さらに日常生活も大切にしたいという欲張りなので、何とかかんとか平日の日中に仕事も作品制作も収めるようにやりくりしています。
Q4.
グラフィックデザイナー松田洋和さんとのユニット“へきち”での活動、アトリエでの読書会など
「イラストレーション」に対して課題を投げかけるような発信をされており、その視座の高さに感服します。
田渕さんはどのようにご自身の視野を広げ、洞察力を高めてこられたのでしょうか。
A4.
作品集や個展を企画する時にはいつもグラフィックデザイナーの松田洋和に相談してきました。
そこにはもちろんグラフィックデザインやイラストレーションの分野の先人達の尽力によって信頼を得ていった歴史があります。
そういったイラストレーションを取り巻く歴史に興味を持つと自ずと視野を広くする必要に迫られるのかも知れません。
今回で青のイラストレーションの展示は一旦区切りとされるということですが、
何か新しいテーマがあるのでしょうか。
田渕さんの今後の展望やビジョンをお伺いできますか。
いざ依頼が来ると自分の想像を遥かに超えたテーマが降りかかって来ます。
サッカーが好きな息子が「PKは練習できない」という話を聞かせてくれました。
基礎は練習できるけれど本番の緊張感は再現出来ないということらしいです。
装画も同じ様に本番でみなぎる想像力がとても待ち遠しくそれがやりがいになっていると思います。
今後の展望としてはもう少し青い絵でやり残しを感じているところをゆっくり進めながら、
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