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小林愛美個展「minimal」

今週の作家さんは、HBでは4年ぶり3回目の個展となる小林愛美さんです。
HBファイルコンペVOL.15での、鈴木成一さんの大賞受賞を機に作品のスタイルを確立されました。
今回は「minimal」をテーマに、限られた色数とカタチだけで室内と屋外を表現した作品が並びます。

 

—  どの作品も静かな佇まいで、心地のよい作品ですね。
構図を決める際はラフやスケッチなどから始めるのですか?

まず頭のなかに色のイメージがぼんやりと出てきて、
それに合ったカタチを、本番の紙にとっていくという描き方をしています。
H6くらいの鉛筆でうすく線を引いては消し…を繰り返して徐々に構図を決める作業に。

色を塗る段階ではマスキングテープを使っていきます。
色の配合は大切で、1色目を塗り、2色目を塗る段階で気持ち悪い配色になってしまうと、
もうその絵は描き直しますね。色数が少ないので、違う色が出てしまうと
調和のレベルに達していないなと感じるんです。
カタチや色でバランスをとる事を最終的な目標にしています。

 

 

— 細いラインがところどころに適所に描かれているなと感じます。
すごく繊細な作業ですよね。

日常の中でもこんなに緊張する作業はないというくらい、
澄んだ気持ちで集中しないと、なかなかできない作業です。
自分なりに、線を引く決め所のようなものはあります。

— 小林さんの作品は、日常の景色を描いてるようにも見えますし、
心象風景のようにも見えます。何か資料などを見て描かれるのですか?

もともと、写真や実際の風景を見ながら描くというのはできなくて…。
頭のなかにとっておいた風景や、記憶をたよりにして描きます。
そういったものが混ざり合った風景なので「どこかで見たことのある景色」
のように感じるのかもしれません。

— なるほど。小林さんの作品からどこか郷愁のようなものも感じるのは
そういった理由からなのでしょうね。
話しは変わりますが、これまでに影響を受けたものなどありますか?

好きなものは、戦後のアメリカの抽象表現やモダン建築、ミニマルアートに関心があります。
1940年代末の作品は好きでよく見ますね。音楽はエレクトロニカをよく聴いています。

 

 

— 今、読んでいる本や好きな本がありましたら教えてください。

心理学の本をよく読みます。
表面に見えているものの裏には何があるんだろう?と考えたりするのも好きで。
たとえば俳優さんだったら、この演技をするためにはどんなことをしてきたんだろう?

どんな背景があったんだろう?とか。裏を知り、表面に出てくる結果のようなものに
リンクした感覚を得ると楽しさを感じます。映画のメイキングを見るのも好きです。

 

 

— 興味深いですね。表現を生業にする人にとって、人間の心理を知ることは
とても繋がりが深いように思います。
最後になりますが、今後の目標などお聞かせ頂けますか?

私の絵には人物も出てこないですし、物をわかりやすく描くという作風でもないので
イラストレーションとして成立するのが難しいかなと思うことがあります。
けれど、わずかな色や単純なカタチでも、コミュニケーションとして通じるような表現力を
これから磨いていきたいと思っています。最近、念願だった雑誌のお仕事を頂けたので、がんばってみよう!と。
アニメーションにもいつか挑戦して、絵を動かしてみたいです。

— すごく楽しみです!すてきなお話をありがとうございました。

 

すっと心に染み入るような色合いや、丁寧な手塗りの質感が見る人に安心感を与える小林さんの作品たち。
表面の完璧さを極めつつ、さらに上の目標である”コミュニケーションのできる絵” に向かう探求心。
おだやかな口調の陰には、自分との静かな戦いに挑むような芯の強さを感じました。

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