きたざわけんじ個展「さくら色のかぜ」
今週の作家さんは、HBでの個展は5年連続、5回目となるイラストレーターのきたざわけんじさんです。
2009年の4月を皮切りに、毎年4月に個展をされています。
さくらが咲きはじめると、きたざわさんの展示もそろそろだなぁと楽しみにされる方も多いのではないでしょうか。
今回も大きなパネルに描いた手描きの作品や、色とりどりのデジタル作品のほか、
きたざわさんの最新のお仕事もご覧頂けます。
1年ごとに少しずつ変化を見せるきたざわさんの作品。
さわやかな風が吹き抜けるような、ここちよい空間が広がりました。
— まずは、5年連続5回目の個展の感想をお聞かせ頂けますか?
よく5年続いたなぁと思いますね。最初は先のことはあまり考えていなかったのですが、
ずっと続けたいなとは思っていました。
— きたざわさんご自身、続けてきて変わったなと感じることはありますか?
最近は肩肘張らずに気楽に描けるようになってきたと思います。リラックスして描けるようになったかなと。
— 最初の個展の時のことは覚えていますか?
もちろん覚えてます!最初の個展では、すべてプリンターで出力した作品を飾っていたんです。
そのことは未だに悔やんでいて…。
やっぱり展示を見に来る方は手描きのものが見たいですよね。
僕自身、他の作家さんの展示を見る時も「どうやって描いてるのかな」というのが見たいですし、
印刷物だけというのは興醒めしてしまうような気がしてしまって。
それを1回目の展示でひしひしと感じて、次の年からは手描きでペイントした作品も飾ることにしました。
— 絵の具の質感が見えると、ライブ感が出て楽しい感じがより伝わってきますね。
普段のお仕事で描く絵はどのような手法で描かれているんですか?
まず、えんぴつでラフを描いて、それをパソコンに取り込んで彩色してます。たまにベジェ曲線も使ったり。
硬質な感じにならないよう、手描きのアナログ感を残しつつ…というのは心がけています。
— パソコンの作品は線の質感が楽しいし色もきれいですが、ペイントの手描き感もすごくいいですね。
毎年、展示の時だけこうして絵の具を使って描くんですが、それが気持ちの切り替えになっていますね。
気分転換になります。
— 絵を描くときに何か資料などは見ますか?
ほとんど見て描くことはないですね。
僕の作品は、木は葉っぱしかなくて幹が無かったり、夏じゃないのに入道雲だったり…と、
よく見ると変なところがたくさんあるんですよ。オリジナルの作品はほぼイメージで描きますね。
お仕事を頂いた際に「こういう物を描いてほしい」という指定がある場合は資料を見て描く事も。
そうですね…たくさんあるのですが、一番はファーストインプレッションでしょうか。
最初にラフを2~3案描くんですが、頭に浮かんだイメージを元に、自然と手が動いて描けた絵を大事にします。
他には、風を感じるようなさわやかな色遣いになるように心がけてます。
— 今の作風になるまでに、どれくらいの期間がかかりましたか?
最初の頃はアルバイトをやりながら、ギャラリー巡りをして
1年くらい、ありとあらゆる作家さんの作品を見て回ったんです。
そうしていろんな方の作品や、ファイル作りを見ていると、
「こういうものを描いている人はいるから、まねしちゃいけないな」というのがわかってきて。
まだだれもやっていないものを描こうとしてました。
最初から営業の仕方も全部頭に入れて「食べていけなかったらやめよう」と覚悟を決めてから絵を描き始めたんです。
その頃からHBで個展をやりたいというのも目標に入れてました。
— 現在は装画や広告など幅広くお仕事をされてますね。すばらしい行動力です!
最初はアルバイトの仕事が100%で、その他にコンペに出品しつつ、営業にも行って…というのが
2~3年続いてすごく忙しい時期がありました。
でも徐々に絵のお仕事が頂けるようになって、アルバイトにかけるパーセンテージも80%、70%…と減っていき、
今は100%、絵で食べていけるようになりました。それまで、7~8年はかかったのかな。
スタートが遅かったので、それが功を奏したのかなと思います。
もう結婚もしていたので、稼げなかったらすぐやめようとは思ってました。
— きたざわさんはイラストレーターさんのお手本のような存在ですね。勉強になります。
最後になりますが、今後のイラストレーターとしての抱負をお聞かせいただけますか?
黙ってても仕事が来るような、それくらいのイラストレーターになりたいなと思います!
今、とても楽しめて描けてるので、それを継続させて今後も描いていきたいです。
— すてきなお話をありがとうございました!
きたざわさんの作品は一瞬にして見る人の心をつかむような瞬発力があるように感じます。
風を切り取ったような余白の気持ちよさや、説明し過ぎることなく見る人へと渡るイメージの余白が
広告や装丁に愛される由縁なのだと思いました。きたざわさんはこれからも留まることなく、
前へ前へと進み進化し続けるでしょう!
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