ゴトウヒロシ個展「青の犇めき」
今週の作家さんはゴトウヒロシさんです。
HBでは約6年ぶりの個展となります。
イラストレーターでもあり、アートディレクターでもあるゴトウさん。
現在は、毎日新聞夕刊で連載中の「あなたが消えた夜に」(作・中村文則)で、
挿絵をご担当されています。
それらのお仕事とは別に、3年程前からご近所のアトリエへ通い、油彩を始められたとのこと。
今回はそのアトリエで描かれた、水辺をテーマにした油彩作品、19点を展示しています。
ゴトウさんの描くさまざまな美しい青色の風景。
きらきらと光る水面の表情が瑞々しいタッチで描かれています。
長い時間をかけて制作された作品からは、ゴトウさんのタッチや色遣いの変遷が見える興味深い内容に。
これまでに見たことのない、ゴトウさんの新境地をぜひ見にいらしてください!
— 今回の作品は、これまでのゴトウさんの作風とは違いますね。油彩はいつ頃から始められたのですか?
近所にアトリエができたので「いいじゃん、行ってみよう」と思って、それで油彩を始めました。
制作順に並べてみると、3年前描いたものと最近のもので、タッチの変遷がわかりますね。
点描のような、絵の具を盛るような描き方になってきたり、色の感じも変化している。
— おもしろいですね。作品で描いているのは実際にある風景ですか?
いろんな場所へ出向いて、写真を撮って描いています。
— 水をテーマにしようと決めて描かれたのですか?
最初に水辺を描き出して。水しばりで描いたら展覧会できるかも、と思って。
1のキーワードで多様な表現を試す事ができました。
— このタッチでお仕事も広がりそうですよね。
現在、ゴトウさんは連載の挿絵をご担当されていますが、普段のお仕事ではどのようなものを資料としていますか?
展覧会の初日には絵のモデルになった方もいらしていましたね。
人物を描くことが多いのですが、いつもプロのモデルにお願いするという訳にもいかないので
素人の方で、物語にはまるような人を探しています。
でも絵にした時には、俳優さん並みに2割増くらい格好よくする。
— それは羨ましいですね。ゴトウさんに描いてもらうとみんな美人になれる…
ゴトウさんはこれまでずっとイラストレーターとしてご活躍されていますが、長く続ける秘訣は何だと思いますか?
一番は、自分に飽きないこと。
似たようなジャンルの限られる仕事だと、どうしても飽きちゃう。
この仕事はこんな感じでやればいいよね、というやり方もプロかもしれないけれど
それ以上に、もっとこうしようという仕事に対しての欲や、自分自身への欲がないとかな。
あとは、流行ってもいいけれど、流行りすぎないように、とかね。
個性が強いと、どうしても流行廃りがあるかな。
僕にとっては、挿絵のお仕事をずっと頂けていることが、長くやるという意味でよかった。
装画だと、そう頻繁に使ってもらえるものでもないから。
あるジャンルでシェアを持つのもいいと思います。
— なるほど。流行りすぎないように、というのは興味深いですね。
普段、若手の作家さんのイラストレーションを見る機会はありますか?
事務所へ持ち込みに来る方も多いので、見る機会はたくさんあります。
若い人のグループ展を見に行くようにもしています。
— 作品に対してはどんな印象をお持ちですか?
うまい人もいますし、なんとなく絵に覚悟がないなと感じることもありますね。
それは人目にさらしていないからだろうし、仕事の経験も少ないからだとは思います。
こういうことがやりたい、というものがないと、どこでこの絵を使っていいのかなと思いますよね。
スタイルとして、どういうイラストレーターになりたいの?という質問もよくします。
いくらくらいのギャラで、月にどれくらい仕事をしたいかとか。
名前は売れていないかもしれないけれど、いろんな角度やタッチで描けて
挿絵のお仕事で毎月何十万も稼いでいる、というイラストレーターさんもいっぱいいる。
そういう人たちの仕事ぶりは、見ていてプロとして清々しいと感じます。
僕のスタンスは、芸人みたいなもので、
飽きられないように、でもある程度は露出していかなければいけないよね。
— 勉強になります。
今後、イラストレーションでのお仕事、またそれ以外の制作でどのような活動をしていきたいですか?
長く使われる様な仕事のスタンスでありたいです。
自分なりのスタンダードを目指したいですね。
— このタッチの絵も今後も続けられますか?
画材も画風もまだまだ試して、探求したい事があるので続けます。
今回の個展でも、見てくださる方がどの絵が好きとか、この絵は嫌いとか
誰がどういう感想を言っていたかなというのをすごく聞いていて、
みんなの最大公約数的な意見と、特別な意見の両方を参考にしつつ、こっちだったら自分らしいかな、と思ってみたり、会場で自分の作品と向き合いながら、今後について展望する、それが個展の一番の意味だなと思います。
初めての個展をしたときは、全然絵が出来ていなくて、「こっちに市場があるのかも」「そっちの方向で突きつめて行こう」と思いながら、まずは花を描きだして。
そのタッチで長くやっていたけれど、今度は人物が描きたいと思うようになって
いきなり方向を変え、それでまた10年以上やってきました。
これからの10年を考えて、10年分のノビシロを作っておく。今回は良い機会になりました。
— 次の10年もたのしみですね。貴重なお話をありがとうございました!
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