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藤枝リュウジ賞 松下まり子個展「微笑むを犯す」

HBファイルコンペvol.24 大賞展4週目は藤枝リュウジ賞を受賞された松下まり子さんです。

リボン、ブラウス、ドレスなどを着飾った少女たち。
目や口は強くぬりつぶされ、笑っているのか怒っているのか、見る人にゆだねるような不思議な魅力を放った表情をしています。どの作品も圧倒的な存在感で、松下さんの創り出す独特な世界に強く引き込まれます。
力強い油彩の筆致も、ぜひ間近でご覧いただきたいです。

 


 

 

— この度は受賞おめでとうございます。
今回の展覧会タイトル「微笑むを犯す」にはどのような意味が込められているのですか?

描いていてあとから気づいたことなのですが、よく見ると笑っているような顔が多いなと思いました。
でも普通のにっこりした「微笑む」というよりは微笑むという悪事を働いているような、
我を忘れて何かにとりつかれているような微笑み、それで「微笑むを犯す」だなと。

— イメージのもとにはどんなものがありますか?

イメージの窓口になるものは、昔の白黒写真だったり絵だったりします。
それを入り口にはするものの、制作の途中ではゴチャゴチャとした暗くて汚いところから別のものを取ってきて、
最終的に大きなものになって出てくる、といった感じです。

 

 

— このようなモチーフは、いつ頃から描きはじめられたのですか?

心の中にイメージはずっとありましたが、チョイス展の後から描くようになりました。
途中描けない時期があって、普通のデッサンを一からやり直していたときもありました。
その後、油絵で描いてチョイスに応募したらポンッと受賞してしまいました。

— チョイス展の受賞作も拝見しましたが、色味が変わってきた印象をうけます。

ぼんやりとした色味から、だんだんと強くなってきました。
真っ赤だったり、真っ黒だったり。サイズも大きくなってきました。もっと大きいのが描きたいです。

— 迫力が増してきていますね。

遠慮が無くなってきたなと思います。別にいいんだわ、といった感じ。
どろどろとした表現になっていったり、ここまで形が変わるとまた具象に戻ると思います。
お化けみたいな方にいったり、肖像画へいったり、交互に変化していくのかなと思います。

— 紫色と黄緑色を組み合わせているところなど、松下さんご自身の色が出ているなと感じます。

紫色が引き立つように他の色を考えます。紫色のために黄緑を使っていたり。
自分のなかで、紫色は肉や肉体、生き物の色というイメージがあります。
茶っぽい紫色や、青っぽい紫色など、紫色の範囲で生きものや人間ができているような気がするんです。

 

 

— 松下さんの絵は、一見怖いけれど可愛い感じもする。不思議な魅力がありますよね。

自分自身では可愛いと思って描いています。
キティやマイメロディなどが一般的な「可愛い」だとするならば、
同じような感覚で、自分の絵を可愛いと思っています。
ちょっと壊れていたり、ズレている。乱暴な感じや、怖いくらいのものが好きで
ギャーッと言ってきそうな感じが可愛いし、愛着を感じます。

絵のなかでは血が流れたり、怪我をしている。
けれど自分では可愛いと思って描いているので全然怪我をさせたくないし、とても大事にしています。
可愛い衣裳を着て、大事にされている感じにしたいんです。やっつけたい、とは思っていない。
そこでバランスがとれていると思っています。

男の人にはよく「怖い絵」と言われます。

 

 

— 今後、イラストレーターとしてお仕事をしていきたいというお気持ちはありますか?

イラストレーションとして使っていただくのは全く抵抗はありません。
元々ある絵を使ってもらうのはかまいません。

ただ依頼されると絵が萎縮してしまって自由に描きづらくなります。
絵を描くとき、えのぐと私がトランスして遊んでいる感じになるといい絵が描けます。
絵の方がなりたい顔や形とかが、一緒に遊んでいると偶然出てくるんです。

 

 

 

 

— 楽しそうですね。その感じは絵からも伝わってきます。
最後に、今後どのような活動をしていきたいですか?

私は自分の絵を、四角いキャンバスを油絵の具で塗るといった行為や、モチーフにしても
わりと正統派のペインティングだと思っています。その正統派のペインティングで世界の最高レベルまでいきたいです。
スタイリッシュでインテリアみたいになるのではなく、古くさいこと、絵の一番いいところまで質を底上げしていきたい。そのためには大きい絵、物体の量が必要だと感じます。何年かやっているとまた変わるかもしれませんが
奇をてらうようなことはあまりせずに、絵を描くことをまじめにやっていくと思います。

あと、黒い壁に展示をしてみたいです。真っ暗なところに何かが出てくるような、そんな展示をやりたいです。