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並木千香個展 「どこかで出会う」

今回ご紹介するのは、2024年3/29~4/3に個展を開催された並木千香さんへのインタビューです。

並木さんはHBWORKvol.3で見事アルビレオ賞を受賞され、受賞者によるグループ展に続き、
今年は個展での作品発表となりました。
日常生活の中で見落としてしまうような一瞬の風景が、
並木さんの筆遣いや色彩によって、情景として蘇り、穏やかに心地よく表現されました。
会場の様子を制作インタビューとともにお楽しみください!

展示作品はオンラインショップでお取り扱い中です。
http://hbgallery.shop-pro.jp/

ー並木さんはHBWORKでアルビレオ賞を受賞され、昨年の受賞グループ展に続き、今回は初個展です。
グループ展と異なり、個展は全て一人で展示の準備を進められたと思いますが、
その中で大変だったことや悩まれたこと、
逆に楽しかったこと、やってみて良かったことなどをお聞かせください!


作品のサイズをどうするか悩みました。いつもは2号くらいのサイズに描いているのですが、ひとつの空間を通して見るときの体験を想像すると、大きめの作品もあるとよいと思いました。ただいきなり大きな作品を描く勇気はなく、段階的にいくつかサイズを用意して、感覚をつかみながらサイズを上げ、作品点数を増やしていきました。結果的に今回一番大きな作品は8号でしたが、ギャラリーで展示してみるとあまり大きくはなかったです。また、作品のサイズはある程度揃えたほうがよいなと、これも展示してみて思いました。

よかったのは写真を一緒に展示できたことです。受賞後にアルビレオのお二人から「写真も展示してみては」と助言をいただいて、うれしかったのですが、これは出せるものなのかという迷いがあり受賞展では出せませんでした。それから写真を撮っていくうちに、これはこれで見てもらいたいという気持ちが湧いてきて、そのときの助言を励みに2年越しの実現となりました。

ー展示されている絵は油絵具で描かれていますが油絵具を使われるようになった理由や
油絵具の魅力を教えてください!
また、油彩画でありながらグレイッシュで穏やかな印象を受けますが、白い絵の具を多く使われているのでしょうか?
木製パネルに描かれているのには何か理由があるのでしょうか?

絵を描きはじめたとき、鉛筆、パステル、水彩、切り絵、と思いつくまま画材を試してみて一度アクリル絵の具に落ち着いたのですが、どうも乾きが早いことに焦ってしまい、油絵具を試してみることにしました。ウエマツ画材店で店員さんに相談し、合わなくても潔くやめられるよう、本当に最小限の道具を教えていただき揃えて、描きはじめました。
油絵具のいいところは、乾きがゆっくりなので長い間全体のコントロールが効くところ、乾く過程で色が変わらないところです。安心して描けます。
絵の具は白と、グレー、青も好んでよく使っています。空気をふくめるようなイメージでいろんな色に混ぜています。
木製パネルは初の試みでした。いつもは油彩用の紙に描いているのですが、額装を用意するのがおっくうだったので、これを機にパネルに描いてみようと思いました。キャンバスに描く選択肢もあったのですが、枠のサイドがすっきりして見えるパネルの方を今回は選びました。

ー会場には並木さんが撮影された写真も展示されています。
並木さんはイラストレーションとは別に
写真のアカウントもお持ちですね。
https://www.instagram.com/chika_namiki_/

見落としてしまいがちな日常の一瞬の光景が写真に収められており
写真作品も魅力的です…!
写真を撮られるようになったきっかけなどはありますか?
また、並木さんが写真から絵に描きおこす際、何か意識されることはありますか?

 

はじめは絵を描くための素材としてスマホで写真を撮るようになったのですが、だんだん写真を撮ることそのものがたのしくなり、最近は絵のために撮ることはほとんどなくなりました。絵を描くときは、日頃から撮りためている写真のなかからそのとき描きたいものを選んで、トレースして描いています。
展示用の絵を描きながら意識しはじめたことなのですが、筆をどの方向に滑らせるかということが空気感をつくるうえで結構重要だということに気がつきました。過去の絵を振り返るとなんとなく無意識にはやっているのですが、今後は意識的にやっていくと思います。

ー並木さんは徳間書店発行の総合文芸誌「読楽」で1年間表紙絵を担当されました。
表紙絵を描くにあたって、並木さんが普段描かれる絵と何か意識は変わりましたか?


描きたいように描いて大丈夫ですと言って頂き、ほんとうに自由に描かせていただきました。
表紙の色味は各号で変化があったほうがよいとのことだったのでその点は意識し、
1年間分を並べた時になるべくかぶらないような配色を心がけました。
モチーフの色味の選定の他に、外のシーンだったら、昼、夕方、夜、と違う時間帯を選ぶことで色の違いが出るようにしています。
また、同じ理由で彩度も上げたほうが変化がつけられると思ったので、普段の絵よりも鮮やかに色味を感じられるように調節しています。ちなみに人物は自撮りしています。服の色や画面に対する肌の割合などを考え、三脚とリモコンシャッターを使ってもとになる写真を撮っています。

ー並木さんが今後挑戦されたいお仕事や活動、
ペインター、イラストレーターとしての展望などをお聞かせください。

 

フェミニズムに関心があるので機会があれば何かしらのお仕事で携わってみたいと思っています。
でもあまりテイストが合わないんじゃないかとも思っています。
おそらくこれからも生活の中で写真を撮ったり絵を描いたりして過ごしていくだろうと今は思っていますが、いちばんはその時々にやりたいことをやれるといいなと思っています。同じことを続けたり、休んだり、新しいことを試したりしながら、変化する気持ちに合わせて過ごしていけたらと思っています。

インタビュアー 須貝美和

しろた友貴個展 「四季小景」

今回ご紹介するのは、2024年3/22~3/27に個展を開催されたしろた友貴さんのインタビューです。

実在する風景と実在しない風景を描き、静かな時間が流れる展示会場となりました。
ふとした一瞬の風景から様々な景色や思いが感じられます。
会場の様子を制作インタビューとともにお楽しみください!

展示作品はオンラインショップでお取り扱い中です。
http://hbgallery.shop-pro.jp/

 

 

ーしろたさんはHBでは初めての個展となりました。
昨年はMJイラストレーションズ主催のコンペで南伸坊賞を受賞され、
受賞展やグループ展など、作品発表の機会が続いてらっしゃいますね!
しろたさんが今回の個展開催を決意された理由や、
「四季小景」というタイトルで展示作品を風景画に統一された理由などを教えてください。

 

HB galleryではとても素敵な展示を沢山みてきていたので、以前から展示することへの憧れはありました。
しかし、まさか私にお話がくるとは思ってもみなかったので、正直お話をいただいた時は驚きましたが、このチャンスを逃したらもうこないかもと思い後先考えず即決いたしました。
個展をすると決めた時、全て風景画にしようというのは最初から決めていました。
理由という理由はないのですが、描いてみたいモチーフがたくさんあったからだと思います。
四季小景というタイトルは、小景という言葉の「ちょっとした眺め、小規模な風景画」という意味が私のなかでしっくりきたからです。
そこでどうせなら四季折々の小景にしようと考えました。

 

 

ー展示作品は、実在する景色と実在しない景色が混在されているそうですが、
その違いが見分けられないほど、臨場感のある風景が広がり、心が静まるような思いがします。
実在しない景色は、どのように制作を進められたのでしょうか。
写真資料などをもとに描かれているのですか。
その景色をモチーフに選んだ理由なども教えてください。
また、多くの風景作品に、一羽の鳥が飛んでいる様子が伺えます。
鳥にはどんな想いがこめられているのでしょうか?

 

実在しない景色は、最初なんとなく描きたいイメージから構図を描き起こして、それにできるだけ不自然さが出ないよう気をつけながら物を配置していっている感じです。
写真資料をいくつか組み合わせたりもしますし、想像で描いている時もあります。
元々このような風景画を描き始めたのはコロナ禍なのですが、なんとなく息苦しい日々を送っている中で鳥が飛んでいるのをみるたび、のびのびとして気持ちよさそうだなと思っていました。
なので、絵の中でもその空気感を出したいときに好んで出すモチーフになっています。

 

 

ーしろたさんは大学で日本画を学ばれ、
現在はPhotoshopやProcreateで制作されていますね。
デジタルでの制作をされるようになったきっかけは何でしたか?
しろたさんが日本画で得た経験は、デジタルでの制作に何か影響を与えていますか?

 

きっかけは、仕事をしているので効率よく描きたかったのと、デジタルであれば外出中でもお仕事が来た時に対応できるかな、と思ったからです。
日本画で制作するときは、下地の色や塗る順番などかなり計算して描かないといけなかったのですが、デジタルのレイヤーなどの扱いがそれに近い感じで、割と抵抗なくできたかなと思います。

 

 

ー展示作品ではデジタル作品の上から絵の具で加筆するなど、
新しい試みをされていますね。
加筆されようと思った理由は何でしょうか?
また、絵の中のどのような箇所に加筆をされましたか?
加筆する前と加筆した後の効果や印象の違いはどんなものでしたか?

 

加筆しようと思ったのは、実際に足を運んで展示をご覧になられた方々は筆跡が見れる方が楽しいかなと思ったからです。
私自身、展示でそうゆうとこを楽しみにしているからかもしれません。
加筆してみて感じたのは、やはり描き込みすぎてしまったところもあるので、加減が難しかったです。
加筆する前と後の効果や印象の違いは、細かいところが描ける点は良かったですが、その分、視点が散りやすいですし、説明的になってしまうのが難しいなと思いました。

 

 

ーしろたさんが今後挑戦されたいこと、
イラストレーターとしての展望などをお聞かせください。

 

本の装画のお仕事をしてみたいです。
もともと絵を描くようになったのが、こどもの頃、図書館で借りた本の装画に感動したのがきっかけでして。。
表紙をみて、読んでみたくなるような絵を描けるようになるのが目標です。
絵本は、大学生の時に長新太さんの絵本と出会い、腰が抜けるほどの衝撃を受けて以来ずっと描いてみたいと思っていますが、物語を作るのが難しくて絵まで辿り着けていません。
色々な絵本を読んで、目下勉強中です。
また、今回の展示でいろいろなご意見をいただいたので、それを踏まえていろいろ試しながら挑戦してみたいと思っています。
まずは、売り込みなど積極的に動けるよう頑張りたいです。

 

インタビュアー 須貝美和

四宮愛個展 「だから、かけない」

今回ご紹介するのは、2024年3/15~3/20に個展を開催された四宮愛さんのインタビューです。

少し妖しくも美しい作品を描き出す四宮さん。
様々なテクスチャーで実験的な作品も並ぶ圧巻の展示会場にしていただきました。
会場の様子を制作インタビューとともにお楽しみください!

展示作品はオンラインショップでお取り扱い中です。
http://hbgallery.shop-pro.jp/

 

 

ー個展「だから、かけない」はどのような思いで
準備を進めて来られたのでしょうか。
個展のテーマと併せてお聞かせください。

 

この数年で受けた大きな変化のひとつに、コロナ禍がありました。
「会いたい」と気軽に言えない状況が、
「本当は伝えたい言葉を、書いては消してを繰り返す手紙のようだ」と感じました。
ある言葉を書けない、ある声を掛けられない…この感覚が、個展テーマのスタートでした。

個人的な変化としては出産や引越し、別れ(離別、死別)がありました。
それらの思い出の中で、理不尽さ、悲しみ、辛さ、後悔などたくさんの気持ちを感じました。
その思いを言語化したとき、とうてい相手に伝えられるようなものではなく
やはり「書いては消す手紙」のように自分の中に留めてきました。
たとえば、今現在も病気で戦う叔母がいるのですが、
「元気?」というごくありふれた言葉を掛けられないもどかしさ。
そういった、【(書/掛)けない】言葉たちや思いを絵に描こうと思いました。
(しかし、「元気?」って聞けなくても、「大好きだよ」と
別の言葉なら掛けられるという救いもあったのでした。)

ただ、このテーマで進めようとしたのですが、途中で身動きが出来なくなってしまいました。
【(書/掛)けない】言葉たちや思い…このままだとあまりに重かったようです。(ネガティヴすぎたようで笑)
そこで、【(書/掛)けない】に縛られず、様々な視点の【(か)けない】から制作する事にし、なんとか完走出来たのでした。

「(か)けない」違いの漢字を挙げ、そこからインスピレーションを得る。(賭けない、欠けない…など)
飽きやすい性格上、ずっと同じ方法では「かけない」ので遊びや実験をしてみる。
(不慣れの為)一発で「かけない」画材やモチーフに挑戦する。などなど。

 

 
ー展示作品は様々な画材、技法を併用され、
衣類に印刷できるガーメントプリンターを用いたり
OPPシートを活用した表現など、
1枚の絵の中に多様な絵肌を味わうことができます。
作品のキャプションにも実際に使用してみた結果、
そこから得たこと、感じた点など、
四宮さんの考察が書かれており、
その探究心の高さに脱帽します。
技法のアイデアは、普段の制作の中で生まれるのでしょうか?
影響を受ける媒体などはありますか?

 

普段の制作の中で、思いつきやアイディアを実験的に取り入れる事が好きなようです。
本当は、「手間の掛からない方法」を求めているのですが
気がつけば真逆の方法に手を付けている事が多いのです。(切る、貼る、多媒体をMIXさせる…)
自分の描き方はこう、といったスタイルがないのが長年の悩みでもありましたが
自由に実験するのが好きな性質なのだと自覚出来たので、今後はその部分を楽しもうと思います。
幼少から影響を受けてきたものはミュージカルでした。
近年、特に影響を受けたものにチェコのアニメーションがあります。
(ヤンシュヴァンクマイエル、クエイブラザーズなど)

 

 
ー四宮さんはオリジナルキャラクター「にゃんことみーこ®」を商標登録され、
もう15年以上、ハンドメイド作家としても精力的に活動されています。
http://www.nyanco-mico.com/
製品開発・イベントへの出展も継続されていることに加え、
ご本人名義の作品での評価も高く、2022年のペーターズギャラリーコンペでは審査員のW受賞もされました。
二人のお子さんの子育てもされながら、どうしてそれだけ多くのタスクをこなせるのでしょうか?

 
にゃんことみーこ®も、本人名義での活動および今回の個展も
夫の理解と協力がなければどれ一つも成り立ちませんでした。

学生の頃から、ただのラッキーで流れに任せて生きてきました。
何かひとつの事を、死ぬほどの努力と情熱で取り組んだことがなかったのです。
そういった経験が、裏打ちされた自信につながるという事を理解していなかったのですね。

あらゆる自信の無さに苦しんでいた私に
これらの「やりたい事」をやりぬくように勧めてくれたのが夫でした。

今回の個展準備期間中、
夫には、家事、育児、ときには制作の相談など色々と助けてもらいました。
幼い子供たちには、遊ぶ時間があまり作れずたくさん我慢をさせてしまったので
今後はもっと効率を上げて時間をうまく使いたいと切に感じています。

 

 
ー個展の挨拶文には、四宮さんが今回の個展制作を経て
「なぜ描けなかったのか」
「どうすれば描けるのか」
「何をこれから描いていきたいのか」
が分かったと書かれています。
描けなかった理由、描けるようになった理由、
四宮さんが到達された答えをお聞きしたいです。
そして四宮さんはこれから何をご自身のテーマとして
制作、探求されていくのでしょうか?

 
■描けなかった理由
個展のテーマを決める以前から、描くと決めていた絵がありました。
疎遠になった友人への気持ちを表現したものだったのですが、
何度描き上げても納得の仕上がりにならず。
仕上がらないという焦りももちろんあったのかもしれませんが、
描いている途中で、ただただ「苦しい」事に気がつきました。
そして、この作品が描きあがったところで何も嬉しくない気持ちになっている自分を想像しました。笑
絵を描くって、本当はこんなに苦しいものではないはずと思うと同時に
「描かずにはいられない!」から描く、それが一番だなと思い至りました。

■描けるようになった理由
仕事につながりそうだから、買ってもらえそうだから、誰かに評価してもらえそうだからではなく、
「描かずにはいられない!」から描く、それが自然体で描き続けられるものなのだと分かりました。
背伸びせず、難なく自分の引き出しから取り出せる題材はやはりコレなのだなぁと実感するものがありました。

■今後の自身のテーマ
上記のような思考を経て、自分はファンタジーの世界を表現するのが好きなのだと自覚しました。
考えてみれば、常にそういったシチュエーションを頭に巡らせ、絵に落とし込む方法を模索しているので…。
制作を続ける限りは、ずっと描き続けていきたいと思っています。
ただ、先に述べたように「飽き性」なのがネックです。
欲をかくようですが、違った表現や技法を求めて常に実験を続けていきたいというのが本音です。

 

 
ー作家として、イラストレーターとして、多彩な活躍をされている四宮さん。
今後挑戦されたいお仕事や、表現方法などを教えてください!

 

自分にとって大きな影響を与えてくれた、舞台や演劇の世界に絵を通して携わってみたいです。
それから、お話を考えるのも好きなので、1年に1作完成を目標に物語を創作してみたいです。
あとは、商業施設の広告で自分の絵を大きく使ってもらえる日がこないかなと…笑
他にも挙げきれないくらい希望がありますが、全部かなえられるよう精進します。

 

 

インタビュアー 須貝美和

くぼいともこ個展 「パティスリー」

今回ご紹介するのは、2024年3/1~3/6に個展を開催されたくぼいともこさんのインタビューです。

たくさんのケーキやお菓子をリアルでありながら可愛らしく描かれるくぼいさん。
実際に購入して、食べてから描かれた作品とのことです。
「美味しそう」「お腹が空いてきた」などのお声をたくさんいただき、
華やかな展示会場にしていただきました。
会場の様子を制作インタビューとともにお楽しみください!

展示作品はオンラインショップでお取り扱い中です。
http://hbgallery.shop-pro.jp/

 

 

ーくぼいさんは初めての個展となりました。
初個展は大好きなケーキやお菓子をテーマにされると決められていたとお聞きしています。
くぼいさんが感じるケーキやお菓子の魅力や
くぼいさんが食べ物をモチーフにされるようになったきっかけや理由を教えてください。

 

食べることが好きなので自然と食べ物モチーフを描くことが多くなりました。
ケーキなどのお菓子は普段の食事と違って必要な栄養素ではありませんが
私にとってはその美しさと美味しさは心ときめく潤いであり癒しです。
初めての個展を長年憧れていたHBさんで開くことができるということで
自己紹介を兼ねてケーキをテーマにいたしました。
今回HBさんの投稿をご覧になった銀座ウエスト様がお越しくださり
商品を描いた作品を本社にお迎えくださるという夢のようなご縁に繋がりました。

 

 

ーくぼいさんはイラストレーター山田博之さんが主催される塾でイラストレーションを学ばれたそうですね。
山田さんからはどのようなアドバイスを受けましたか?
山田塾に通って変化されたことなどはありますか?

 

「自分が描きたい物、楽しく描ける物、得意な物を描く」
「無理にタッチを作らず、10年後も自然に描けるように」など
イラストレーションへの向き合い方を教わりました。
それまではどうやったらコンペで選ばれるのか、
覚えてもらえるような個性的なタッチを作らなきゃと焦ってましたが
肩の力が抜けて自然に描けるようになりました。
自分では面白味のない普通の絵だなとは感じてますが
今はどんなに忙しくても描くことが楽しいですし、描いていて「生きてる!」と感じます。
個展ではお客様から「作為的な感じがしなくて良い」「実物より美味しそうに見える」
とお声を頂けて嬉しかったです。

 

 

ー展示されている作品は、全てくぼいさんが召し上がられたケーキやお菓子ということですが、
作品になるまでにどのようなプロセスをたどられるのでしょうか?

 

ケーキの場合はまず頑丈な保冷バッグと大きめの保冷剤を準備して買いに行きます。
崩れないよう慎重に持ち帰り、色々な角度から撮影して美味しくいただきます。
その後写真の中から一番そのケーキが魅力的に見える画像を選び参考にしながら、その時の味や食感、香りなど思い出しながら描いてます。

 

 

ーくぼいさんは水彩絵具でモチーフを丁寧に魅力的に描かれています。
水彩絵具を使われるようになったのはなぜでしょうか?
水彩絵具の魅力を教えてください。

 

子どもの頃から馴染みがあり、紙と水と筆があればすぐ描ける手軽さが面倒くさがり屋の自分に合っているようです。
水に溶ける鮮やかな絵の具の滲みが気持ち良く描いていて癒されます。
コントロールできないところも一筋縄ではいかない魅力があります。

 

 

ーくぼいさんが今後挑戦されたいお仕事や活動、
イラストレーターとしての展望などをお聞かせください。

 

広告やパッケージのお仕事がしたいです。
食品関係は勿論、花植物や動物も描きたいので化粧品や雑貨にも興味があります。
いつかCDジャケットなどのお仕事にも携わりたいです。
こだわりが詰まった丁寧に創られた商品や上質なブランドなどをより良く魅せるためのお手伝いが出来たら嬉しいです。
これから得意分野は活かしつつ技術は勉強して、幅広い視野で普遍的なもの、
より多くの方の心に届くようなイラストを描いていけたらいいなと思ってます。

 

インタビュアー 須貝美和

才村昌子銅版画展 「版の遊び」

今回ご紹介するのは、2024年3/8~3/13に個展を開催された才村昌子さんのインタビューです。

幻想的で、またモダンな雰囲気も醸し出ている個展会場となりました。
銅版画ならではの技法により、魅力的な質感で表現された作品たち。
会場の様子を制作インタビューとともにお楽しみください!

展示作品はオンラインショップでお取り扱い中です。
http://hbgallery.shop-pro.jp/

 

 

ー才村さんは3回目のHB個展となりました。
展示作品は全て銅版画の作品でありながら、
色や形、作品のサイズも多種多様で、銅版画の魅力が余す所なく発揮されています。
今回の個展「版の遊び」におけるテーマや、
発表にあたって意識されたことなど、今個展に寄せる才村さんの想いをお聞かせください。

 

多色刷りも版の組み合わせで多様な表情が生まれますし、抽象と具象のイメージを重ねて刷るなど、見え隠れするイメージがかくれんぼにも似て「版の遊び」というタイトルをつけました。銅版画の制作はいろいろな驚きと発見に満ちています。
そんな興奮と喜びが作品から伝わる展覧会になれば嬉しいです。

 

 

ー個展会場で流れている音楽は、才村さんの銅版画が使われているジャケットデザインですね。

音楽や異なる領域との関わりについて、どのように感じていますか?

 

会場で流れている音楽は、今回展示している『月の変奏』のシリーズを描くきっかけとなったアルバム
『ピアノフォルテ・イン・グリーン』です。
以前ピアニストの田中綾さんからピアノリサイタルのキービジュアルを依頼されて、
楽曲のイメージを銅版画で表現しました。
銅版画の表現を深めていくことで、音楽家や写真家など異なる領域の方々と
より深い交感が生まれるようになったことをとても嬉しく感じています。

 

 

ー才村さんは銅版画の制作にますます魅力を感じているそうですね。
銅版画のどんなところが才村さんを引きつけるのでしょうか?
デジタル化の時代で、敢えてアナログの複製技法を探求されている理由を教えてください!

 

プレス機の圧で紙に刷り取られた銅版の型とインクの盛り上がりには、
均一でフラットな現代の印刷物とはまるで違う魅力と物質感があります。
そして製版や刷りの段階で自分の意図しない偶然性や揺らぎが生まれることが、
アナログの複製技法の味わいと面白さですね。

 

 

ーこれから挑戦されてみたいこと、今後の展望をお聞かせください!

 

A5:銅版画+様々なマテリアル、
銅版画を陶器に見立てて作るなど新たなアイデアがどんどん湧いてきて、
版の遊びはこれからも続いていきそうです。

 

インタビュアー 須貝美和

CHIZURI個展 「くろいいきもの」

2024年2/23~2/28に個展を開催されたCHIZURIさんへのインタビューです。

力強い「くろいいきもの」たちが展示空間いっぱいに広がる圧巻の展覧会となりました。

また平面作品に加え、立体作品やオリジナルグッズ、消しゴムスタンプなど、観る人を楽しませる工夫も満載、

CHIZURIさんの制作意欲にあふれた個展の様子をこちらのインタビューでも是非お楽しみください!

 

ーCHIZURIさんはHBでは初めての個展となりました。
マンスリーコメントが印象的です。

太陽の熱を吸収する大地のような
光を際立たせる闇のような
なにか分かりづらい影のような
ただそこにいる 黒い生き物

個展のタイトルにもある「くろいいきもの」は
CHIZURIさんが実際に見たことのある生き物なのでしょうか?
CHIZURIさんが黒い生き物を描かれるようになったきっかけや理由をお伺いしたいです。

 

生き物を描いているのは、純粋に動物が好きで興味の対象というのもあります。

写実的に描くことよりも、気になった特徴やイメージを抽象化して描いているので、

その想いも含めて今回の展示タイトルとコメントに乗せました。

黒い生き物たちは、かたちに重きをおいて描くことを意識したことで生まれました。

表したものが何か、人によって見え方が違ってくるのですが、わたしとしてはそれも面白くていいなと思っています。


ーCHIZURIさんはHBギャラリーのスタッフを務めながら作家活動をされています。
ギャラリーのお仕事を始めてから、CHIZURIさんの作品制作に何か変化はありましたか?
影響を受けたことなどはありますか?

 

1年前にスタッフとしてジョインさせていただき、目の前のことに向き合って勤めてきましたが、

改めて振り返ると、絵や心に刺激を与えてくれていると感じます。

オーナーのたりさんには絵に対しての具体的なアドバイスもいただき、

オーナーもスタッフの皆さんも全員作家なので、

意見交換などもできて、やる気に火をつけてくれるような環境です。

そのコミュニティーにいることで自分も成長している、という感覚はすごくあります。ありがたいことです。

 

ー昨年は陶芸教室へも通われ、その学びを活かした粘土作品も展示されています。

陶芸教室へ通われたきっかけは何でしょうか?

また、立体作品の制作は、CHIZURIさんが普段アクリルガッシュで制作されている平面作品と比べて、

何か違いを感じることはありますか?

今後も粘土の制作は続けられるのでしょうか?

 

昔からモノづくりが好きで、イベントなどで発表してきた延長で、陶芸にも興味があったので家の近くの教室に通っていました。

どちらもアナログで作っているので、立体制作も絵を描くこととあまり違いを感じていません。そこにあるものが良いかどうか、

あったら嬉しいかどうかが基準になっていると思います。

粘土を触るのは楽しいので続けると思います。いつかその場所のシンボルになるような、大きな立体などもつくってみたいです。

 

ー今回の展覧会では、artipur COTTAGEとコラボレーションされたハンカチ、巾着、トートバッグも販売されています。

こちらはどのような経緯でコラボが実現されたのでしょうか?

また、展覧会終了後はどちらで購入できますか?

 

描いている絵がブランドイメージとも合うということで一緒に作らせていただきました。今回は自主制作のイラストを提供して、色は先方と相談して決まりました。

わたしの絵がファブリックにも合うという発見もあり、このような機会をいただき感謝しています。

▼こちらからご購入可能です。ご興味がございましたらぜひ。

https://www.kankan-online.jp/smartphone/list.html?search_key=chizuri

ーCHIZURIさんが今後挑戦されたいことや、イラストレーター、絵描きとしての展望などをお聞かせください。

 

人や自分の心を震わせるものができたら、作家としてそれ以上に嬉しいことはないです。

誰かと一緒に組んでお仕事をすることで、わたし個人だけでは作れない新しいものが出来るのも見てみたいです。

具体的には、プロダクトや児童教育などに関わるお仕事なども出来たらと思っています。

描く題材は変化していくと思いますが、とにかくわたしは素直に今描きたいものを描いて、

日々鍛錬しながら、その時々の最善を皆さまに見ていただく活動を命尽きるまで続けていきたいです。

インタビュアー 須貝美和

大床嘉代子個展 「愛でる」

今回ご紹介するのは、2024年2/16~2/21に個展を開催された大床嘉代子さんのインタビューです。

繊細な切り絵とボールペンで描かれた黒の質感が印象的な大床嘉代子さん。
技法によって身の回りの物の見方が変わるようにも思います。
会場の様子を制作インタビューとともにお楽しみください!

展示作品はオンラインショップでお取り扱い中です。
http://hbgallery.shop-pro.jp/

 

 

ー大床さんは初めての個展となりました。
個展「愛でる」はどのような思いで準備を進めて来られましたか?
個展のテーマと併せてお聞かせください。

 

今回、個展を通じて自分を見つめなおす、ということが大きなテーマとして自分の中にありました。
なので「愛でる」というタイトルは早い段階から決まっていて、自分の好きなものたちを切り絵にこだわらず、自分が好き、良いなと思う描き方で描いていきました。
ですが一方で、今まで描いてきた絵と違った印象になるので、これで展示を進めていってもよいのか、すごく悩みながら作っていました。
11月にHBギャラリーのスタッフさんにそのことを相談したときに、大丈夫ですよって言ってもらえて、そこからは吹っ切れたというか、自信をもって進められました。

 

 

ー展示作品を間近で拝見すると
ボールペンやアクリル絵の具で描かれたイラストレーションに切り絵の表現が併用されています。
切り抜かれた箇所から鮮やかな色彩がのぞいたり、
一方で切り抜かれたパーツ自体が画面に美しく構成されていたりと
繊細な表現に思わず目を見張ります。
大床さんが現在のような切り絵の表現をされるようになったきっかけや、
影響を受けた作家などをお伺いできますか?

 

きっかけは本屋さんで「切り絵の切り方」という本を見かけて、やってみたのが最初です。
そのときに、紙の切れる感触や出来たときの達成感にとらわれてしまいました。
影響を受けた作家さんは、パレットクラブスクールの同期の友人たちだと思います。
美大などには通っていないので、あんなにたくさんの感性に触れられたのは本当な貴重な体験でした。

 


 

ー展示作品の「黒い静物シリーズ」はバスケットやお皿、急須などの
生活雑貨がグラフィカルに表現され、黒の色面はペンが重ねられた跡が見受けられます。
バスケットの作品は種類も様々ですが、モチーフは大床さんが普段愛用されている物なのでしょうか。
これから黒で描いてみたいモチーフはありますか?
また、ペンで色面を作られている理由などはありますか?

 

はい。うちで愛用しているものと、こういうのが欲しいというあこがれのものと、半々くらいです。
バナナのかごなんかは、本当に描いているときにバナナを入れていました。
しばらくは身の回りにある雑貨たちを描いていきたいと思っていますが、ゆくゆくはこの感じで人物も描いていけたらと思っています。
ペンを使っているのは描くための準備がいらないからです。
絵の具などを使うときに水をくんで、絵の具を準備して…というのが私には結構ハードルが高くて、なかなか行動に移せないのです。
ペンならすぐに描き始めることができるので私に合っているのだと思います。あとはインクの少しメタリックに光るところが好きです。

 

 

ー大床さんは化粧品会社の研究員を経てイラストレーターになられたそうですね。
どのような経緯でイラストレーターになられたのでしょうか。
会社員として働く経験は現在の活動に影響されていますか?
 

化粧品会社に勤めながらも、イラストレーターという夢を諦めたくないという気持ちで両方続けていました。
会社で働いたお金でパレットクラブスクールに通ったり、デザインフェスタなどに出ているうちに少しずつイラストのお仕事が入るようになった感じです。
会社員としての経験は、効率化できそうな雑務は効率化してく、といったイラストレーターのイラストを描く以外の部分に生かされている気がします。

 

 

ー大床さんが今後挑戦されたいお仕事や活動、
イラストレーターとしての展望などをお聞かせください。

 

今回展示した、黒い静物たちが新しいお仕事に繋がってくれると嬉しいです。
本の装丁や、広告のお仕事もいつかできるようなイラストレーターになりたいと思います。

 

インタビュアー 須貝美和

MIKITAKAKO個展 「LOVE and HANDWORKS」

今回ご紹介するのは、2024年2/9~2/14に個展を開催されたMIKITAKAKOさんのインタビューです。

和紙に紙版画で制作された、独特の風合いのある作品を展示されたMIKITAKAKOさん。
展示方法にも工夫があり、原画ならではの作品がならぶ素敵な展示空間でした。
会場の様子を制作インタビューとともにお楽しみください!

展示作品はオンラインショップでお取り扱い中です。
http://hbgallery.shop-pro.jp/

 

 

ー今回の展覧会「LOVE and HANDWORKS」では
愛おしさと煩わしさ、過去と未来といった相対する出来事を和紙と紙版画で表現され、
原画を間近で楽しむことができる展示方法は、
初個展とは思えないほどの完成度の高い展覧会となりました。
MIKIさんご自身は、どのような想いで展覧会の準備を進めて来られたのでしょうか。

 

このような場所で展示させていただくというのはイラストレーションの仕事獲得の為の重要なショーケースだと考えています。また普段お世話になっている方々、ひいては友人や家族へ感謝、成長を見てもらう機会でもあります。その中で自分がイラストレーションの作品の中で大切にしていることを間近に見て知っていただけたらという思いで制作を進めました。また今年の年始は悲しいニュースも多かったのでゆったりとやすらげる絵画空間を目指しました。

 

 

ー今回の展示作品では12枚の絵に12ヶ月の日常を表現されてらっしゃいます。
桜やサンタ帽など、季節に関連するモチーフも見受けられますが、
描かれた各月の女性は髪の長さも肌の色も多様です。
MIKIさんが人物を描かれる際に意識されていることや大事にされていることはありますか。

 

今回の会期が春節とバレンタインの時期に重なっており、贈りものにもなるような12枚(とイントロダクションにプラス1枚)の作品を制作しました。今回の人物画は自分や自分の子を参照したので性別感はあるのですが、お仕事以外で人物を描くときは年齢や国籍をあまり意識させないように描いています。ですから瞼の描き込みもありません。まつ毛は一本、視線の情報として残しています。髪色も季節や出来事になぞらえているので自由です。私の描く人物は対峙した相手に自己を投影しやすいように入れ物のような存在です。

 

 

ー展覧会用のZINEはご自身で和綴じをされており、
ページも1枚1枚丁寧に折り込みがされているこだわりの1冊です。
このような形態にされた理由などはありますか。
何か参考にされた製本などはあるのでしょうか。

 

スケジュールと予算の関係で手製となってしまいました。笑。
今回の作品はA5サイズが刷れるプレス機で出力したA2サイズ大の人物画で、版を細かに分けて刷っています。柔らかで手仕事を感じさせる線画の各所には、紙版の矩形のプレートマークの痕跡や折ジワが直線的に入っていて、作品全体にリズム感や緊張感を生み出しています。そのような作品のプロセスを踏襲したブックデザインに仕上げたかったので折り込みを入れました。また、和綴じはこの本の場合の最適解の一つでもあり、今回の展示の雰囲気にも合っているので採用しました。ただ、お客様に「お部屋に貼るので折らないものが欲しい」と云われて配慮が足りなかったと反省しています。製本についてですが、以前はよく本のデザインや国内外のブックフェアに行っていて、その時見たアートブックのユニークなフォーマットなどが影響していたりします。

 

 

ーMIKIさんは今回展示されている紙版画や顔彩などを併用した混合技法はもちろん、
インクでの表現やコラージュ、デジタルなど様々な表現方法に挑戦され、研鑽を積まれています。
これまで経験された画材や表現に対して、どんな想いをお持ちでしょうか。これは扱いやすいな、これは相性が良いななど、感じることはありますか。
また、これまで影響を受けた作家や美術表現などをお伺いできますか。

 

色々な思いはあるのですが、とにかく「絵を描き続けられたらいいな」という事です。
プレス機を使うと手がブルブルと震えていたりして、もしかして歳を経た時には難しいかもしれません。
その時に生きて、その時に手に入る道具で絵を描いていけたら幸せだろうなと思います。
日本画が好きなので技法や画材は日本画由来だったりする事が多いですが、作家さんの展示を見に行った際に知らない方法で描かれていたりすると研究心をくすぐられます。

 

 

ーMIKIさんが今後挑戦されたいお仕事や活動、
イラストレーターとしての展望などをお聞かせください。

 

現在HB WORK Competitionのおかげで装画のお仕事の機会をいただけており、とても嬉しいです。
装画は難しい部分もあるのですがとてもやりがいを感じています。引き続きチャレンジしていけたらと思います。また今回制作した作品群のようなイラストレーションを起用していただける先があれば嬉しいです。
ご興味のある方、企業さま、是非お願いいたします。

 

インタビュアー 須貝美和

 

中野葉子個展 ” Love Earth “

今回ご紹介するのは、2024年2/2~7に個展を開催された中野葉子さんのインタビューです。

沢山のLoveが詰まったカラフルな世界、イラストレーターで描かれた独特な輪郭、
デザイナーとしても活躍されている、中野さんの様々なアプローチの作品たち、
会場の様子を制作インタビューとともにお楽しみください!

 

 

 

ー中野さんはデザイナー、アートディレクターとしてキャリアを重ねたのちイラストを描き始められたそうですね。
イラストを描かれるようになったきっかけや、
イラストを描こうと思われた理由などをお伺いできますか?

 

もう随分前になりますが、出産、子育て、さらに地方に住むことになり、
今までの様なペースで同じ様な仕事を継続できなくなりました。
アートディレクションや撮影は大好きだったのですが、
他の形でクリエイティブな仕事を続けたいと思い、イラストを描き始めました。


ー中野さんはHBでは初めての個展です。
今回の個展”Love Earth”はどのような思いで準備を進めて来られたのでしょうか?
個展を開催される目的などもお聞かせください。

 

ここ数年考えることも多く、自分にとっては大いなる通過地点でした。
創作する物に対しての向き合い方も自分の中では変化しました。
寄り添い合いながら見つけた日々の喜びを共有できればと思っています。
支えてくれる環境全てに感謝して、未来の子供達のために貢献しながら、
今後もゆっくり仕事を続けることができればと思い開催しました。
コロナ禍で人とのリアルな繋がりの大切さを感じたので
会える人には、みんな会っておきたいという思いもありました。
その点、HBギャラリーはお家の様にくつろげて、作品を見せながら
みんなで集える場を作れたので、とても良いスペースだと痛感しました。

ー中野さんが「心地よい生活」を活動のテーマにされた背景にはコロラドのボルダー滞在が影響しているのでしょうか?中野さんがご自身の制作において生活環境を意識されるようになった背景や経緯などを教えていただきたいです。

 

ボルダーに滞在したのも随分前ですが、理想的な生活スタイルでしたね。
名だたるIT企業が数多くあって、健康志向で週末はランニング,  キャンプや登山三昧で
住んでる人達がカジュアルだけどかっこいいんです。
既に、コロナ禍で移行した生活スタイルに近い感じでした。
子育てをしたり、地方で自然豊かな所に住む様になって目につくものや気になることが、
生活環境くらいしかなかったということもあります。身の丈のものしか描けませんから。

 

ー今後の発表予定や挑戦されたいこと、
イラストレーターとしての展望などをお聞かせください。

 

未来ある子供たちの為に、絵本の制作やSDGsなどの環境問題に関わるお仕事がしたいです。
また、幸せな気持ちにさせるお菓子のパッケージやオーガニック化粧品のイラストも描きたいです。
装丁もやったことないし、久しぶりに音楽のお仕事もやりたいですね。

インタビュアー 須貝美和

増田いづみ個展「My nostalgia . .」

今回ご紹介するのは、2024年1/26~31に個展を開催された増田いづみさんのインタビューです。

故郷である大阪の街をテーマに描かれた増田さん。
大阪に馴染みがある方も、初めて見るという方も、
懐かしさを感じずにはいられないあたたかい風景が並びました。
会場の様子を制作インタビューとともにお楽しみください!

展示作品はオンラインショップでお取り扱い中です。
http://hbgallery.shop-pro.jp/

 

 

ー今回の個展「My nostalgia . .」は、
増田さんが生まれ育った大阪の風景を描かれたそうですね。
個展制作のために実際に現地で取材をされたのでしょうか?
幼少期に過ごされた町を描かれようと思われたのはなぜですか?

 

現地には昨年春と冬、2回訪れました。
2年前に大病を患い、大げさですが人生観が変わりました。自分にとって本当に大切なものとそうでないものが明確になりました。
大切なものの一つが幼少期の記憶です。
いつも苦しい時に自分自身を助けてくれていることに気づき、その時代の空気感や町を描いてみたいと思いました。

 

 

ー増田さんはアナログの線で、風景や人物、食べ物を味わい豊かに描かれます。
増田さんが線を引かれる時に心がけてらっしゃることや意識されていることはありますか?

 

感情が線に現れるので気持ちを落ち着けてリラックスした状態で、ゆっくり大切に描くようにしています。
仕事はデジタルが多いのですが、デジタルでも線の引き方は同じです。

 

 

ー現在の作風になるまでに、増田さんが影響を受けた表現や、基礎となった考え方などがあれば是非お伺いしたいです。

 

小学生の頃からイラストを描くのが好きで、学級新聞のカットや絵に関わる事をよく頼まれ、描いていました。
自分のイラストで誰かが喜んでくれたり、イラストでお手伝いする事に喜びを感じたので将来仕事にできたらいいなと思っていました。
高校生で愛読していた『オリーブ』には可愛いイラストがたくさん載っていて、そこでイラストレーターという職業がある事を知りイラストレーターになりたいと思いました。

イラストレーションの塾には3つ行きました。
最初のF-schoolではアクリルや水彩、油性色鉛筆などいろんな画材を使用させていただき、色々な画材を組み合わせて描いていいんだと絵を描く上での柔軟さを教えてもらいました。

山田塾では、今の作風のベースとなる自分の線が描けるようになりました。
自由で楽しく描けていた幼少期に戻していただいたと思います。
自分が楽しければ良い線が描けて、良い絵になるのだと気づかされました。精神面でのぶれない軸ができました。

HB塾ではさらにその線を活かした絵を描き続けました。唐仁原さんに、『気持ちが途切れると線が良くなくなる、そういうの分かるから。ゆっくり大切に』と言われその言葉をいつも忘れずに描いています。
コロナ禍で塾は途中で終わってしまい唐仁原さんもお亡くなりになってしまったのですが、その言葉を胸に描き続けて今の作風にいたります。

 

 

ー増田さんが今後挑戦されたいお仕事や活動、
イラストレーターとしての展望などをお聞かせください。

 

変わらず書籍、雑誌の表紙やカットはやりたいです。広告やテキスタイルにも挑戦したいです。

自分が楽しくないと良い絵にならないので、これからも年齢や性別にとらわれず楽しい、描きたいと思うものをどんどん見つけて行きたいと思います。

 

 

インタビュアー 須貝美和