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HB FILE COMPETITION vol.34 鈴木久美賞 宮城高子個展「マルチクロス」

HBファイルコンペvol.34 受賞者展、第2週目7/12~7/17に個展を開催された宮城高子さん。
鈴木久美さんの大賞を受賞されました。

繊細な刺繍で制作された作品を展示していただきました。
会場では宮城さんが装画を担当され、鈴木久美さんデザインの書籍もご覧いただきました。
ファイル作成にまつわることや、どのようにして刺繍による制作に至ったか等お聞きしました。

会場の様子をインタビューとともにお楽しみください!

 

 

ー鈴木久美賞 大賞受賞、おめでとうございます。
受賞を知った時はどんなお気持ちでしたか?
鈴木久美さんに選ばれた感想もお聞かせください。

 

選ばれるとも思ってなく、そろそろ結果かなとか二次通ってたらいいなあ
と思っていた時に連絡が入っていたのでただただびっくりで、
嬉しさのあまりいただいたメールを何回も確認しました。
その後は少し、大丈夫なのかな?といった怖さもありました。
鈴木久美さんに選ばれた感想は、
2020年のギャラリーハウスMAYAさんの装画コンペで鈴木さんに選んで頂いてから、
今回選ばれるまでの3年の間、鈴木さんの期待に応えたいという思いは常にあったので、
選ばれた時は本当に嬉しかったです。



ー応募されたファイルを作成するにあたり、
宮城さんが工夫されたことや、意図されたことなどはありますか?

工夫については特になく全力でした。ただ、統一性がないと思っていましたので、
ページをめくるときになるべく違和感ないように心掛けました。
実はしばらく絵を描けなかったのですが、
徐々に復活しやっと絵が描ける状況になれたその喜びと、第39回ザ・チョイス年度賞の講評で、
鈴木久美さんが私の入選作品に関して「応援したい。ぜひほかの作品も見てみたいです。」
というコメントを寄せて下さったのを目にした時から、とにかく鈴木さんに見ていただきたい、
喜んでいただきたいという思いで作成しました。
ー個展タイトル「マルチクロス」には、宮城さんのどのような思いがこめられているのでしょうか。
今回の個展のテーマと併せてお聞かせください。
もともと生地が薄く大きめのスカーフや、綺麗な柄のマルチクロスが好きで、
それらをセンス良く使いこなし、生活している欧州の田舎暮らしの人々の雰囲気などを表現できたらいいなと思って制作しているところがあります。
今回は作品群が統一性がなかったので、ごちゃごちゃでも一枚の布でひとくくりしてしまおうという意味でマルチクロスがテーマになりました。
ー宮城さんは刺繍糸やフェルトを用いてイラストレーションを制作されています。
色鮮やかな糸が線や面へと形を変え、清らかで美しい世界が表現されています。
刺繍は何がきっかけで始められたのでしょうか?
現在の画風になった経緯を教えてください。
最初は絵の具で制作していたのですが、自分の作る色がなんかくすんでるように見えて悩んでいたとき、たまたま鳥の刺繍がされた籠バックを見て、絵を糸で縫ってみようと思い立ちました。
それから厚めのフェルトを見つけ、現在の画風になりました。
糸の色も奥深く、色の組み合わせなど難しいところもありますが、
素材のおかげでお褒めのお言葉をいただくのでとてもありがたいです。
実はそれまでお裁縫なんてしたことはなかったので、
現在のこの画風は自分でも不思議だと思ってます。
今も本当のお裁縫やプロフェッショナルな刺繍は出来ません。
ですので自分では「刺繍」というよりは「絵を描いている」という感覚で制作しています。
ー宮城さんが今後挑戦されたいお仕事や活動、
イラストレーターとしての展望などをお聞かせください。
装丁画、映画音楽関係などの何かの作品にご縁があればいいなと思います。
それからイラストレーターの皆さまが通ってこられた媒体で起用されたら嬉しいです。
本当に素晴らしい作品が次から次へと世に出て拝見する度に、打ちのめされまくってますが、
本物の作品を作り上げたいという欲求は常にあるので、
見てくださる方に響くような作品を作れたらなと思っています。
インタビュアー 須貝美和

HB FILE COMPETITION vol.34 特別賞展 特別賞5人によるグループ展

今週からファイルコンペvol.34の受賞者展が始まりました!

7月5日から8月21日まで、受賞者の作品を展示致します。<br>第1週目(7/5(金)-7/10(水))は、特別賞に輝いた受賞者5名によるグループ展です。5人それぞれの個性が光る展示をどうぞお楽しみください!

葛西薫特別賞 / eumoo
河西達也特別賞 / サトウアユム
鈴木久美特別賞 / かとうゆうか
鈴木成一特別賞 / 見崎彰広
服部一成特別賞 / おおはしたくま

服部一成特別賞 / おおはしたくま

葛西薫特別賞 / eumoo

鈴木久美特別賞 / かとうゆうか

鈴木成一特別賞 / 見崎彰広


河西達也特別賞 / サトウアユム

次回HB WORKvol.6とHBFILEvol.35の応募要項が完成致しました。
皆さんの力作、お待ちしております!
ぜひご応募下さい!
https://www.hbgallery.com/compe.html

もとき理川個展 「おしゃれ独本」

今回ご紹介するのは、2024年6/28~7/3に個展を開催されたもとき理川さんへのインタビューです。

HBギャラリーでは6回目の個展となったもときさん。
ご自身もとても素敵な装いでギャラリーに在廊していただきました。
ご本人にとってのファッションのこと、またイラストレーターになられた経緯をお聞きしました。
カラフルでユニークな作品で彩られた会場の様子を、インタビューとともにお楽しみください!

展示作品はオンラインショップでお取り扱い中です。
http://hbgallery.shop-pro.jp/

 

 

ーもときさんはHBギャラリーで今回6回目の個展を開催していただきました。
前回は5年前の開催ですが、今回の個展に向けてどのような思いで制作されましたでしょうか。

コロナ禍、私自身も含む大多数の人々がギャラリーに足を運ばなくなった最中。3年後のカレンダーを眺めていてふと、私の誕生日2024年6月28日が金曜日であることに気づきました。しかも還暦を迎える区切りの誕生日。そこでなぜか突然「お祝いの個展をやろう!」と思いついてしまいました。コロナで1人もお客様がこないかもしれないけど、私のためだけの個展だからOK、それならできるなぁと。
自分を喜ばすための個展なので、自分の好きなものをテーマにしようと思い、「パリ」か「ファッション」かで迷いました。パリはもっと歳をとってもできそうだけど、ファッションはこれ以上歳をとると難しそうだからと今回選びました。
ーとても素敵な質感の作品たちはカッティングシートやステンシルで制作されたそうですね。
特にカッティングシートはあまり画材としては使われないかと思います。
今の制作スタイルとなった経緯をお聞かせいただけますか。
カッティングシートの厚さが好きなんです。もともと「面」の絵が好きなので、面の魅力をストレートに伝えたく、マットでシャープな色面を作り出すことに取り組んできました。
カッティングシートに出会うまでは、アクリル絵の具を何層にも塗り重ねていましたが、そうするとエッジのシャープさが失われていく。なにかいい材料ないかなと探していたある日、世界堂の紙カウンターの壁面にある色とりどりの「何か」を発見しました。
それがカッティングシートでした。
ー作品もおしゃれですが、もときさんご自身もとてもおしゃれで素敵です。
展示のコメントや販売されているZINEにもファッションにまつわることが書かれています。
ファッションがもときさんの作品にどのような影響がありましたか?
ありがとうございます(笑)。そうですね、こう言っては何ですが、イラスト作品にファッションが影響することはなく、今回は「ファッション」がテーマなのでこうなりました。
でも遡ること40年前、実は私はファッションデザイナーになりたいと思っていました。しかしながら両親に反対され、根性がなかったのでそのまま素直に諦め、30代後半までふつうに社会人として働いてきましたが、勿論その間もおしゃれは大好きでした。いま仕事などで描いているイラスト作品はファッションを意識してはいませんが、私の人生とファッションが密接な関わりを持っているので、そういう意味でイラスト作品にも反映されているかもしれませんね。
ー現在はイラストレーターとして装画や挿絵など、たくさんの魅力的なお仕事をされているもときさん。
会社員時代を経てイラストレーターになられたと伺いました。
イラストレーターになられた経緯などをお伺いできますか?
私が幼い頃、実家の家業が小さな印刷屋でした。おもちゃ代わりに刷り損じの紙を与えられ、物心ついたときから絵を描いて遊んでいました。年賀状もカレンダーも自分で作るのが当たり前。小5の頃、自分が描いたうさぎの絵の年賀状を父が刷ってくれて、なにやら感動を覚えました。たぶんそれが初のイラストレーター体験(笑)。でもまぁ、その後は普通に受験して進学して就職して…と普通の暮らしをしながらも、いつかはクリエイティブな仕事をしたいと絶えず願っていました。30代半ばで会社員を辞めイラストレーターを志して、仕事が来るまでにさらに10年。小5の年末に味わった喜びを再び味わうまでに40年近くかかりました。今でも献本を頂くとあの時の気持ちになります。
ーもときさんが今後挑戦されたいこと、
イラストレーターとしての展望などをお聞かせください。
こんな後ろ向きなことを言っていいのか分かりませんが、今回の個展の制作をしていて身体の機能の衰えに愕然としました。老眼が進み細かい作業はとてもシンドく、夜も遅くまでは起きていられず、若い頃なら1日でできたことが今は3日かかります。もう60歳ですからね。ただ、やりたいことがないかと言うとそんなことはなくて、これまではエディトリアル中心だった仕事の幅を少し広げて、広告やパッケージのお仕事もやってみたいと思っています。
そして恩師・安西水丸氏から頂戴した言葉「ものすごい売れっ子にならなくてもいいから、絶えず仕事をしている人になりなさい」、これは今後も第一の目標に掲げてゆきたいです。

いわしまあゆ個展 「Little by Little」

今回ご紹介するのは、2024年6/21~6/26に個展を開催されたいわしまあゆさんへのインタビューです。

HBギャラリーでは初めての個展となったいわしまさん。
温かみのある作品やグッズでとても素敵な空間にしていただき、
たくさんのお客様がお越しくださいました。
インタビューではデザイナーをされていた時のお話もお伺いしました。

会場の様子をインタビューとともにお楽しみください!

展示作品はオンラインショップでお取り扱い中です。
http://hbgallery.shop-pro.jp/

 

ーいわしまさんはHBでは初めての個展となりました。
今回の個展のテーマや、展示タイトル「Little by Little」にこめられた想いをお聞かせください。
個展させていただくことになってから、ある程度期間があったにも関わらず仕事とこどものことなどでいっぱいになってしまい、制作になかなか時間を使えませんでした。
本当はテーマを絞って展示を、と思っていたのですが、今回は無理しすぎず、挑戦もしつつ、できるペースで、自分なりの展示ができたらと考えをあらためて、
「少しずつ」という意味の「Little by Little」テーマに決めました。

ーいわしまさんはグラフィックデザイナーを経てイラストレーターとしてのキャリアを積まれ、
本や雑誌、広告やWebなど、幅広い媒体でお仕事を手がけられています。
いわしまさんがイラストレーターを志されたきっかけや経緯などをお伺いできますか?

デザイナー時代に商業施設のリーフレットのデザインをしていた時に、たまたまアイデアとして出した、自分で描いた絵を採用していただくことがありました。
近年はデザイナーがイラストレーターも兼ねている方が多くいらっしゃると思うのですが
かなり前の話なので、当時は(少なくとも私の周りでは)デザイナーとイラストレーターは分けるものという感覚が強く、描いてもいいんだ!ととても衝撃的だったし、採用されたことをうれしかったのを覚えています。
そこからあらためて絵を描くのに挑戦したり挫折したりして、といろいろあり11年ほど前からwebサイトなどでお声をかけていただくことが増え、フリーのイラストレーターとして活動し、現在に至ります。
ー展示会場では直接木に描かれた鳥などのオブジェ作品も楽しむことができ、
販売されているグッズの中にも可愛らしい木製のブローチがあります。
展示されている作品の額も、温もりを感じる木の額を使用されていますが、
いわしまさんが木を使用される理由は何でしょうか。
いわしまさんにとって木はどんな存在ですか?
「木」という存在が好きです。
自然のものはどうしてもゆがんだり、よくも悪くも変化もしていくけれど、あたたかくて惹かれます。
ここ14年?くらい、木工が趣味で、素人ではあるけれど、自分で棚や家具やあらゆるものを作っています。家の家具でイスとキャビネット以外はほぼ私が作ったものだったり…なので、一般的な人よりは木材が身近かもしれません。
あとは自分の絵を既製のきれいな額に入れた時に、どうしてもしっくりこなくて現在のスタイルになっています。
今後も絵に合うものを追求していきたいです。
ーいわしまさんはご自身のオンラインショップでも様々なグッズを販売されており、
中でも毎年のカレンダーは大人気商品です。
毎年のカレンダーで使用するイラストや描くモチーフはどのように選ばれていますか?
また、カレンダーの他にもカードやマスキングテープなど、
いわしまさんがグッズ製作で意識されていることなどはありますか。
カレンダーでは毎月1日にめくるのが楽しみになるような、季節の絵を描きたいなと思って制作しています。
ポストカードはそのままで飾れるようなモチーフがいいなと思っています。
そのほかのグッズは手帳などのデコレーションに使っていただくことが多く、自分の絵をさまざまな使い方をしているのを見せていただいていてとても楽しいです!
なので切り取って使えるようにモチーフが切れないようにも意識しています。
ーいわしまさんが今後挑戦されたいこと、
イラストレーターとしての展望などをお聞かせください。
今まで絵を見てくださる方と直接お話ししたりコミュニケーションを取らせていただく機会がほとんどなかったのですが、今回展示でSNSを見てきてくださる方もとても多く、お話しできてとてもうれしかったです。
少しずつですがイベントにも出て行って直接お話しできる機会を増やせたらいいなと思っています。
9月に手紙社さんの「紙博」にも初めて挑戦します。
あとは初期の方によく描いていた風景を数点、今回展示に合わせて久しぶりに描きました。
特に風景の作品が好きだといってくださる方や、風景を見にきたといってくださった方がいてうれしかったです。
風景だけの展示もしてみたい。
あとは人物やいきもの。挑戦しては挫折したりもしているのですが、描きたい気持ちが強くなってきたのでこれからたくさん描いていきたいと思います。
インタビュアー 須貝美和

堀江恭一個展 「海底酒場で逢いましょう」

今回ご紹介するのは、2024年6/14~19に個展を開催された堀江恭一さんへのインタビューです。
懐かしいモチーフがたくさん登場する堀江さんの作品たち。
懐かしいだけではなく、不思議な雰囲気も感じます。
版画やコラージュで制作された独特のテクスチャも魅力的です。
会場の様子をインタビューとともにお楽しみください!

 

ー堀江さんは初めての個展となりました。
「海底酒場で逢いましょう」と題し、昭和レトロな風景とSFの世界をミックスされた、
ユーモアと温かさのある世界を表現されています。
ご自身が創造された世界をイラストレーションで表現するために、
堀江さんが工夫されていること、意識されていることなどはありますか?
今回の個展においては、主に紙版画を使い、昭和レトロとSFをミックスした世界観を表現しましたが、
その世界観が出るよう一番工夫したことは、昭和の匂いのするアイテムを画面内に置き、どこか懐かしい印刷物を感じさせる色合いを出すということでした。
幸い版画用インクはレトロ感を出せる色があったので、それを多用しました。
また、ユーモアのあるストーリーをできるだけ盛り込んでいきました。
ー堀江さんは定年退職を機に本格的にイラストレーションに取り組まれ、
東京装画賞では銀賞を受賞されるなど目覚ましいご活躍をされています。
堀江さんがイラストレーションを志されたきっかけや理由は何だったのでしょうか?
40年以上も前の話になりますが、もともと美術系の大学への進学希望はあったものの、
家族の理解が得られそうにもなかったので普通の文系大学に入学しました。
しかしながら絵への想いをあきらめられず、夜はセツ・モードセミナーに通っていました。
大学卒業時点で絵の世界へ踏み切ることも考えましたが、絵で生計を立てていくほどの腕前も自信もなかったことから、普通のサラリーマンの道を選びました。
サラリーマンの定年退職が近づくにつれ、絵への想いが再燃し、後悔してあの世に行きたくないと考え、
定年退職を機にイラストレーションに本格的に取り組むこととしました。
ー展示されている版画作品は、ドライポイントやコラージュなど、様々な技法を併用され、マチエールへのこだわりを感じます…!
現在の表現方法に至った経緯や、堀江さんご自身が作品制作で影響を受けた作家や表現媒体などあれば教えてください。
もともとドライポイント教室に通って作品を作成しており、ここでは細かく彫った具象的な作品を作成していました。
このような中、もうちょっと心象的なものを表現できないかと考えるようになっていたところ、
当時、タダジュンさんの紙版画に出会い、作品が訴えかけてくる力に圧倒されました。
そこで、私も紙版画をやってみようと思い、独学で紙版画を始めました。
独学でやっていますからどんどん好き勝手に作っていき、現在のスタイルになりました。
ー個展では鮮やかな色彩で表現されたデジタル作品も展示されています。
堀江さんがデジタル制作を始められたのはなぜでしょうか?
堀江さんが感じるデジタルの魅力や、
版画の制作と比較して何か違いや共通点などはありますか?
デジタル画を始めたきっかけですが、もともと興味はあったものの、Photoshopで絵を描くことをマスターできずに途中であきらめていました。
こうした中、峰岸達先生が主宰されているMJイラストレーションズに入塾しました。
そこでは、課題が2週間毎に出されますが、版画ではとても間に合いません。
そこで、昔、あきらめたデジタル画に再チャレンジしました。
今度はAdobe Frescoで始め、これは比較的、初心者でも使いやすく、私でも絵を描くことができました。
デジタル画の魅力ですが、版画と比べ自由に色を使え、また、色んな筆が使え、油絵風、水彩風など色んな描き方ができるということです。
また、絵を描いていくうちに自分が求めている色がどんな構成で成り立っているか、「かすれ」とはどういうことかなどを学べ、非常に勉強になります。
版画との相違点ですが、私の場合、版画は3~4色刷ですので、使える色数が少なく、作成する際、パズルのようにどこにどの色を置くか考えなければなりません。
一方デジタル画はその辺を気にする必要はありません。
版画と似ている点ですが、双方とも、描く際にレイヤー若しくは版を使い、色面を分解して作成するところだと思います。
版画をしていたせいか、レイヤーにはすんなり馴染めたと思います。
ー堀江さんが今後挑戦されたいこと、
イラストレーターとしての展望などをお聞かせください。
私は現在63歳ですので、他の新人イラストレーターに比べ、残された時間が非常に短いという現実を踏まえなければいけないところですが、あと、油絵、アクリル画をしてみたいと考えています。
今後は、装画の仕事ができればいいなと考えています。
インタビュアー 須貝美和

安里貴志個展 「fragment」

今回ご紹介するのは、2024年5/31~6/5に個展を開催された安里貴志さんへのインタビューです。

HBギャラリーコンペでも賞を受賞され、注目されている安里さん。

独特のテクスチャで描かれた作品で素敵な展示空間にしていただきました。
そんな安里さんならではの作品はどのように制作されているのか等お聞きしました。

会場の様子をインタビューとともにお楽しみください!

展示作品はオンラインショップでお取り扱い中です。
http://hbgallery.shop-pro.jp/

ー今回の個展では「fragment」と題し、
安里さんが日々の断片をモチーフに作品を制作されました。
忘れてしまいそうな日常のかけらを、作品として描き留めるために
安里さんご自身が意識されていることや、
工夫されていることなどはありますか?
外で歩いている時に道端の花や人のことを見て、なんとなく覚えておこう程度で記憶しています。余裕がある時にはキョロキョロしながら、身の回りのなんでもないものをスマホで簡単に写真に撮って、自分の趣味趣向、琴線を確かめるためのメモな感じで記録することもあります。
ー安里さんのInstagramを拝見すると
https://www.instagram.com/takashi_asato/
現在の画風に至るまでに、ペンやクレヨンなど様々な画材で
グラフィックデザインやイラストレーションの研究を重ねてこられた痕跡が伺えます。
安里さんがこれだけの試行錯誤を継続できた理由はなぜでしょうか。
また、安里さんが制作を通して追い求めてきたテーマや、
表現したいこと、見たい景色などがあれば是非お聞かせください。

 

何か自分でできることをやらなきゃという不安と焦燥感があったので、
それを解消するのに日々の実験や研究はちょうど良かったというのはあります。
あと、1日1枚制作している時期は短時間で描くしかなかったので、
他のイラストを見てこんな感じにしたいとか考える間もなく、自分の絵に向き合うことしかできなかったのが良かったと思っています。

頭の中にある方法や感覚で描いていく中で、遊びを加えたり、発見があったりと自分なりの楽しみに繋げられたからこそ継続できたのだと思います。

また、これまでやってきた実験、制作を通して、自分のコントロールできないアナログ感や偶然性に魅力を感じているので、そういった予定調和ではないところを楽しんでいきたいなと思いました。そして、日常の繰り返しの中にある少しの変化やちょっとした喜びを表現できたらいいなと今のところ思っています。

ー安里さんはグラフィックデザイナーとして広告制作に携わりながら、イラストレーターとしても活動され、
昨年はHBファイルコンペ八木彩特別賞、HB WORK岡本歌織大賞を受賞されました。
安里さんがイラストレーターとして活動を始められたきっかけは何だったのでしょうか?

前の質問の答えとも少し重なるのですが、デザイナーとしても社会人としても何もできず、何か武器になるものがないと不安だったので、イラストのスタイルを作っていこうと思って取り組み始めました。結果的に、大衆に向けての広告デザインに対して好き勝手に自分の趣味趣向に合わせたイラストを描いてみたことが、仕事とのバランスがとれて良いチャレンジになったとは思います。

ー安里さんの揺らぎと温度感のある独特のテクスチャはどのように生み出されているのでしょうか?
また、現在の手法に影響したグラフィックデザインや絵画などはありますか?

 

作風については、自分の好きな映画や音楽の、抑揚の少ない穏やかな感じに合うテンション感でありたいと思っているので、自分の好きで落ち着くところを確かめながら絵とすり合わせています。

また、影響というほどではないかもしれませんが、アウトサイダーアートという位置付けの作品を見た時の感動を今でも覚えていて、糸を執念深く縫い続けたり、緻密で色鮮やかな点を打ち続ける作品たちから伺える、純粋な行為としての作品作りに、憧れというかリスペクトがあります。その個人的なこだわりを貫くスタンスから学び、現在の色鉛筆の線をしつこく複製してテクスチャとして用いる手法に繋がっている気はします。

 
ー安里さんが今後挑戦されたいこと、
アーティスト、イラストレーターとしての展望などをお聞かせください。

お仕事で言うと、商業施設のビジュアル、パッケージもやってみたいですし、温度感や柔らかな空気感のあるイラストなので、ファッション系や香り系の微妙なニュアンスの表現も得意かと思います。ぜひやってみたいです。展示の機会があれば色々な場所でやりたいと思っていますし、その都度作品として表現方法や技法など、何かチャレンジしていきたいとも思っています。

インタビュアー 須貝美和

あきやまりか個展「Curious」

今回ご紹介するのは、2024年6/7~12に個展を開催されたあきやまりかさんへのインタビューです。
あきやまさんはHBでは初めての個展開催です。

独特の風合いの作品は紙版画を中心に制作されたそうです。魅力的な作品の並ぶ展示空間となりました。展示作品はオンラインショップでお取り扱い中です。

http://hbgallery.shop-pro.jp/

ー大阪在住のあきやまさん、東京では初めての個展となりました。
HBでの個展を決意された理由や
今回の個展のテーマをお聞かせください。

今まで、大阪や京都など自分が生活している地域で個展を行っておりました。東京に来る度に立ち寄らせていただいたり、好きな作家さんが個展をされている会場でしたので、いつか自分もできたら良いなと思っておりました。

今回は「Curious」をテーマに自分の興味のあるものや、夢で見た不思議な生き物などを描きました。
 
ー会場では紙版画による作品を中心に展示されています。
あきやまさんはこれまでにも、阪急梅田やコトモノミチなどで紙版画のワークショップを開催されています。
紙版画を始められたきっかけは何でしたか?
あきやまさんが感じる紙版画の魅力は何でしょうか?

初めはアクリル絵の具で絵を描いていたんですが、版画に触れる機会があり、そこからどんどん版画が好きになりました。

線のカスレやにじみなど、版画独特の表現がとても好きで、やはりプレス機から刷り上がった紙をめくるワクワク感がたまらなく魅力的です。ワークショップはそのワクワク感を皆さんに体験していただけたらと思い、開催しました。めくる瞬間、みなさん目がキラキラしてこちらまで嬉しくなります。
ー個展では木製パネルと真鍮ピンを使った半立体の作品も発表されており、会場でも目を惹く存在です。
あきやまさんがこのような独自の表現をされるようになった経緯や影響を受けた表現などはありますか?

以前にチェコを旅行で訪れたことがあり、その際に見たちょっと怖いような不思議な魅力がある人形たちがすごく印象に残りました。

版画は白黒の世界ですが、自分の中のイメージはカラーなので、版画と一緒に、版画の中のモチーフを飛び出させて展示したことが始まりで、今は版画と木製パネルの作品を制作しています。
ー三重県の和菓子店「瑞宝軒」では
https://zuihouken.co.jp/
あきやまさんがキービジュアルを担当されました。
あきやまさんが描かれた龍と亀のイラスト(龍乃掌と亀乃尾)が
紙袋やパッケージに使用され、イラストの入ったマグカップも販売されています。
こちらのお仕事であきやまさんが心がけられたこと、意識されたことなどを教えてください!

元々和菓子を中心に扱っていたお店が洋菓子と和菓子を扱うお店に変更されるとお聞きしました。ですので、和の雰囲気を残しつつ、渋くなり過ぎないように。和のモチーフはとっつきにくかったり怖くなってしまうこともあるので、若い方にもお年を召した方にも手に取っていただけるように、少し滑稽味がある感じを意識しました。

ーあきやまさんが今後挑戦されたいこと、
イラストレーターとしての展望などをお聞かせください。

本や雑誌に関わるお仕事や、お菓子のパッケージ、テキスタイルなど、いろいろなことに挑戦していきたいです。

今回展示してみて、自分に足りない部分や必要なことが見えてきたので、もっと精進していきたいと思います。
この度はありがとうございました!
インタビュアー 須貝美和

長谷川和子個展 「FUKEI画とチョット猫」

HBギャラリーでは久しぶりの個展となるイラストレーターの長谷川和子さん。
表紙絵のお仕事で描かれた作品や大作の風景画まで、活き活きと描かれた作品をどうぞご覧ください。
チョットした猫さんもお見逃しなく!

 

 

 

 

kigimura / 太田マリコ / 紙谷俊平 「レッツゴー!三人展」

今週は同じイラストレーション青山塾出身でもあるkigimuraさん、太田マリコさん、紙谷俊平さん実力派3名によるグループ展です。

太田マリコさん

kigimuraさん

紙谷俊平さん

太田侑子個展 「静かに波打つ」

今回ご紹介するのは、2024年5/10~15に個展を開催された太田侑子さんへのインタビューです。
太田さんはHBでは4年ぶりの個展開催となりました。
アクリルガッシュによる威風堂々とした力強い作品は
太田さんがこれまで培われた画力の賜物です。

1枚1枚の作品の密度の高さ、情報量の豊かさ、構成の美しさに誰もが目を見張る圧巻の展覧会、
会場の様子をインタビューとともにお楽しみください!

展示作品はオンラインショップでお取り扱い中です。
http://hbgallery.shop-pro.jp/

ー太田さんはHBでは2回目の個展となりました。
4年ぶりに個展を開催されようと思った理由や、今回の個展のテーマ、展示タイトル「静かに波打つ」にこめられた想いをお聞かせください。

最近はお仕事と子育てでドタバタで自分のことを考える余裕が全然無く、このままだと完全に迷子になりそうな予感がしたので、ふと思い立ち、勢いでHBさんに個展をしたいと申し出ました。
タイトルについてですが、1人深夜に、昔の記憶を遡りながらぼーっとする時間が最近好きなんです。その記憶自体は大したものではなくて、ただぼーっと海を眺めたこととか、北風が冷たかったなーとか、綺麗だった夕日のこととか、ほんとに他愛もないものです。

でもそれを思い出してる時間だけはホッとできて現実から離れられてるような気がしてたんです。
仕事や子育ての不安や、焦りがどんどん押し寄せてくるなかで、波が凪いでいくような、私の大好きな時間を絵にできたらと思い、このタイトルにしました。

ー大学では油絵を学ばれ、卒業後は作家としてのキャリアを積まれた太田さん。
その時代の経験は、現在イラストレーターを生業とされている太田さんに何か影響を与えていることなどはありますか?

油絵で作家活動をしていきたくてずっと絵を描いてました。でもこのまま続けていくのは私には無理だなと突然思い立って、恥ずかしながら逃げちゃった感じなんです。 でもイラストレーターとして仕事をするようになると、

油絵で培ってきた技術や絵に対する考え方が今の私の柱のようになって支えてくれているように思えて、凄く心強いのです。
なので、たくさん悩んで、最終的には逃げてしまったけど今は油絵を夢中で描いてたあの頃の時間にすごく感謝してます。

ー太田さんは2021年に男の子を出産されました。子育てとお仕事を両立させるために、制作面で何か工夫されていることはありますか?また、お子様が生まれてから太田さんの生活のリズムや仕事の進め方などに変化はありましたか?

産後1ヶ月で仕事を始めてしまったのですが、、少し休んだほうがよかったな、、と心の底から思います。
でも、無理してやったからこそいただけた仕事もたくさんもあるので、、難しいところです。
両立を完璧にするのは、多分無理なんです。工夫のしようがない感じでした、、。生活のリズムは絶対に崩れるし、2年くらいずっと寝不足で、今思い出しても「辛かったーー」と叫びたくなります。。周りの人の助けがなかったら絶対に出来ませんでした。

仕事の進め方は、子供が生まれるまで全てアナログだったのですが、今は書籍のお仕事はほとんどをiPadで行っています。使っているのはプロクリエイトです。
あえていろんな筆先は使わずアクリル絵の具で塗った時の風合いが出るよう意識しながら描いてます。

ー太田さんが今後挑戦されたいこと、イラストレーターとしての展望などをお聞かせください!

夢は息子に私が描いた絵本を読んでもらいたい、、!です。
それと、今は文芸のお仕事が多いのですが、それ以外のお仕事もたくさんできるようになれればな、と思ってます。

インタビュアー 須貝美和