新井ユキコ個展「怖い箱(誰かの見たもの)」
今週の作家さんは、8月に『おめでとうおばけ』(大日本図書)という絵本を出版された新井ユキコさん。
新井さんはHBファイルコンペVol.9で廣村正彰さんの賞を受賞された、実力派のイラストレーターさんです。
今回はできたての絵本の原画と、2010年に出版された新井さんの著書『誰かの見たもの』(大日本図書)という
怖いお話を集めた児童書の原画が展示されています。
「怖い」をテーマにたくさんの作品が会場に並びました。
— 初めて絵本作りに挑戦されたんですよね。どのような経緯で出版されたのですか?
ずっと絵本が作りたいなぁと思っていたのですが、娘がまだ幼かったこともあり、
なかなか踏み出せないでいたんです。娘が中学2年になって、そろそろ落ち着いてきたかな?というタイミングで
トムズボックスの絵本のワークショップに通うことになりました。
— 絵本の制作で難しかったことはありましたか?
ワークショップでは毎回、編集者の土井さんにラフを見て頂いたのですが、
「この絵のタッチは子供向けではないね」とか「このシーンだけを描きたかったんじゃないかな?」という
アドバイスに、ラフをひっこめたくもなりました…(笑)
普段の挿絵などの仕事は、絵を一枚で完結させたり美しさを重視するようなところがありました。
絵本の場合、物語の状況を表現しなければならなかったり、
子供にも伝わるような絵作りをするということは初めてだったので、
慣れていないこともあり難しかったですね。
土井さんは「こんな絵もあるよ」といつもいろんな作家さんの絵を見せてくださりとても勉強になりました。
毎回、ラフもどんどん変化していきました。
ここで新井さんが、『おめでとうおばけ』のラフ画を見せてくださいました。
ほぼ絵本に近いかたちで、細かな描写で描かれています。
このラフ画を出版社に持ち込みし、絵本の出版につながったそうです。
— すごい!こんなに細かいんですね。ラフ画でも絵本になりそうなくらいですね。
すごく大変でした!紙の上で死ぬかと思いました…(笑)
『明日のジョー』のように真っ白に燃え尽きた感を、絵を描く作業でも感じるとは…でもすっごく楽しかったですよ!
— もうひとつの著書、『誰かの見たもの』は連載を本にまとめたそうですが、こちらの本についてお聞かせ下さい。
『小説すばる』で6年くらい連載していたもので、文章も自分で書いています。
普段から怖いお話が大好きで、いろんな人に怖い話を聞かせてもらってお話を集めていったんです。
それを1冊の本にしたいと思い、知り合いの方を通じて出版社に持ち込みに行きました。
この本の挿絵は連載時の絵ではなく、出版にあたって書き下ろしたものです。
コーヒーを使って着彩し、線は鉛筆で描いています。線を書くのはすごく楽しいですね。
— 絵を拝見していると、楽しそうな様子がすごく伝わってきます。今後やってみたいお仕事や、描いてみたいものなどはありますか?
そうですね…これからはもっともっと仕事の幅を広げていきたいです!
また、これまでの雰囲気とは真逆のすっごくかわいいものを描いてみたいなぁとも思ってます。
たとえば…お姫様やフリフリのドレスなんかおもしろそうだなと思うんです。
今は絵本制作ですべて出し切った感じがあるので、まずは一息ついて、
自然と見えてくるもの、描きたいものを待ちたいです。
新井さんの作品には「怖い」の中にもユニークさやかわいらしさ、
不思議さ、美しさ…などたくさんの魅力がありました。
鉛筆の線の美しさや、色彩の鮮やかさは原画ならではです。
怖くて不思議なことが大好き!という作家さんの気持ちが存分に伝わる展示となりました。
インタビュー / HBstaff 桑原紗織
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