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陣内昭子 作品展 「こもれび よろこび」

今回ご紹介するのは、2024年4/19~24に個展を開催された陣内昭子さんへのインタビューです。
一貫して樹木を描かれ、掛け軸の作品や
80号サイズの大きな樹木の作品で迫力のある展示となりました。
会場の様子をインタビューとともにお楽しみください!

展示作品はオンラインショップでお取り扱い中です。
http://hbgallery.shop-pro.jp/

 

ー陣内さんは3年連続3回目のHB個展となりました。
一貫して樹を描かれ、今回のDMではのびやかにダンスする樹が描かれています。
陣内さんが今回のタイトル「こもれび よろこび」へこめた想いや
個展のテーマを教えてください!

 

『樹』-The Tree with me – に続き、『樹』から受け取る印象をテーマにしました。
前回は“樹の肌の表情”や“枝の動き”がメインでしたが、
今回は葉が作る光と影を中心に制作を進めていきました。
“こもれび”の下にいると守られているような
穏やかな気持ちになる。あの静かな”よろこび“を表現できたらと思いました。

 

ー会場では大きな樹の作品「PLEATS TREES」が一際存在感を放っています。
こちらは昨年展示された『My Mentor』と同じ80号サイズの作品ですが、
今回はどのようなイメージで描かれたのでしょうか?

 

前回の『My Mentor』は、毎朝行く小金井公園では私が勝手に慕っている地味な存在ですが、
今回の『Pleats Trees』のユーカリの木は、高さが32mあり広場の名前になるような女王様的存在。
その木肌は長く細い皮が折り重なるようになっていて、まるでプリーツドレスを纏っているようです。
空に向かって堂々と立つ樹の美しさを表現したいと思いました。
タイトルは、贔屓のブランドからサンプリングさせてもらいました。

 

 

ー掛け軸に仕立てられた3部作「踊る樹〈月夜〉」「眠る樹〈赤い実と鳥〉」「踊る樹〈夜明け〉」 は力強く情熱的な色彩が印象的です。
こちらの3作品にこめた陣内さんの思いをお聞かせください。

 

”こもれび“の下で光を享受する『私』の視点ではなく、
”こもれび“ができるような光を浴びている『樹』の視点で、
描いたのが『踊る樹<朝日><月夜>』の2点。
私たちが知らない瞬間にはきっとこんな大胆でエネルギッシュな姿があるのではと妄想しました。
そして、真ん中の『眠る樹 <赤い実と鳥> 』は、
その大胆な活動ぶりを奥にひそめて周囲の生命を育む存在です。
ずっと同じところに変わらず立っているように見える『樹』ですが、
実際はもっと色々なことが起きているような、
そんなミステリアスな魅力を表現したいと思いました。

ー次回の個展はどんな展覧会にされたいですか?
今後も樹をテーマに陣内さんは制作されるのでしょうか。
今後の展望をお聞かせください!

 

 

ひとつ具体的にやりたいことは、今回の『踊る樹』を発展させて、
『樹』それぞれが持っている個性(樹皮の様子、枝の伸び方、芽の出方、葉の茂り方、落ち方、実のつき方)を
盛り込みながら、それぞれをダンサーに見立て舞踏団のお話を絵本にしたいなと思っています。
所属するボランティア団体(小金井公園樹木の会)のメンバーの方の知識をいただきながら、
図鑑風味の学べる要素も入れられるといいなあと。
次の個展はその過程で生まれた作品たちによって、ギャラリーの空間を森の中のようにできるといいですね。

 

インタビュアー 須貝美和

右近茜個展 「春と白昼夢」

今回ご紹介するのは、2024年4/12~17に個展を開催された右近茜さんへのインタビューです。
春が訪れ、右近さんならではのどこかホッとするような作品たち。
会場内もゆるやかな時間と空気が流れる素敵な空間にしていただきました。
会場の様子をインタビューとともにお楽しみください!

展示作品はオンラインショップでお取り扱い中です。
http://hbgallery.shop-pro.jp/

ー右近さんはHBでは初めての個展となりました。
今回の個展に寄せる右近さんの想いや
「春と白昼夢」という展示タイトルにされた理由をお聞かせください!

 

この頃、イラストレーターの仕事がぽつりぽつりと貰えるようになったのですが、安定した状況とは程遠く、ここで一度仕切り直しをてしっかりと売り込み活動する必要があると考えました。

HBギャラリーは、私にとって憧れの存在でいつの日か個展ができたらいいなと少し遠くに感じてたのですが、勇気を出して個展をさせて欲しいと唐仁原さんにお願いしました。

普段、身の回りのものを描くことが多い私にとって「春」は新しいことに挑戦したくなったり、少し遠くへ出かけたくなるような活力に満ちた季節です。また暖かな気候の中で、花が咲き、若葉が茂り、見慣れた日常がいつもよりぼんやりと美しく映る「白昼夢」のようなときでもあります。そこで「春と白昼夢」というタイトルに決めました。

ー右近さんはパレットクラブスクール、山陽堂イラストレーターズ・スタジオでイラストレーションを学ばれています。

各々のスクールで右近さんが得た気づきや基礎となった考え方はありますか?
また、講師の方から受けたアドバイスで印象に残っていることなどがあれば教えてください!

 

 

私は子どもの頃から絵を描く職業=イラストレーターに憧れていました。そこで美術大学に行ってデザインを学びますが、イラストレーション作品をほとんど描かないまま、学校を卒業してしまいます。恥ずかしいことに、子どもの頃「私はイラストレーターになれる」と思い込んでそれを疑わず、自己暗示にかかったまま大人になってしまったのです。

イラストレーターへの道が見えないまま大学生活が終わってしまい、困っていたところ、パレットクラブのことを知ってすぐに通う事を決めました。
パレットクラブの基礎コースは週1回、プロとして活躍しているイラストレーターの先生が出す課題をこなしていくのですが、毎週別の先生が色々なアドバイスするので、イラストレーションを描き始めた私にとっては迷うことばかりでした。一年間の授業で一度だけ安西水丸さんの授業を受けてもっと話が聞きたいと思っていたところ、水丸さんが講師の山陽堂イラストレーターズ・スタジオ(SIS)が開講する話をパレット仲間から聞きます。

翌年、一年間SISで安西水丸さんの授業を受けます。課題はなく、月に1回山陽堂書店のギャラリースペースに集まり、描いた作品を先生に見ていただきます。枚数制限もないので、たくさん出す人もいれば1枚しか出せない人もいます。私は後者でした。生徒の中には実際の仕事の絵を先生に見せている人もいたので、とても勉強になりました。

水丸さんの授業の中で私がたくさん作品を持っていけたのは最後の一回だけで褒めてもらえたのも、その時だけでした。「君はどうなることかと思ったけどなんとかなりそう」みたいなことを言ってくれた講評から数日後、水丸さんが突然逝去されたことを知ります。

呆然としていたところにK2の長友啓典さんが講師を引き継いでくれるという話が舞い込んできます。残された水丸さんの生徒たちは、長友さんにどんな授業をしてもらうのか、授業内容から相談しながら2代目講師長友さんとのSISが始まります。

水丸さんと、長友さんでは指導のアプローチが全く違いました。
水丸さんはどんな絵でも一枚の絵の中からいい部分を見出そうとします。よく絵のすみの方に描かれた部分を褒めて、ここがいい、全部このくらいの調子で描いたらいいのにと言っていました。講評の際に水丸さんは作品だけでなく、描いた人の座る位置や作品を置く場所、服装、髪型、態度などからその人の全体を鋭く観察しながらアドバイスします。講評ではぐさりと刺さる毒舌が飛んできたりするので、ピリっとした緊張感がいつもありました。
いい絵とはなんなのか、水丸さんの講評を聞いているとなんとなくわかってくるような気がします。
いい絵とは絵には描かれていない部分、ニオイや温度までも想像させる、見ていて気持ちがよくなる絵だと言っていました。
今思えば、水丸さんの授業に出ているとその感性を少しずつ共有できる、そんな授業だったと思います。

一方長友さんは一枚の絵がどのようなプロセスを経て描かれているのかを知った上で講評するために、作品を一枚だけ持ってこられては困ると言います。講評の際には描いたものはラフでもなんでもいいから、全部持ってきなさいと言いました。絵の束を持ってくる人がいると嬉しそうにして、全てに目を通しました。そしてイラストレーターになりたい人をイラストレーターにするために「たくさん描け」、「描き続けろ」この2つを口酸っぱく言い続けました。K2に持ち込みにくるイラストレーターみんなに毎日たくさん描き続ければイラストレーターになれるって言っているけど、それができる人はほとんどいない。辞める理由なんて探さないで、どんなときも描き続けて欲しいと言いました。
正反対のような二人の指導でしたが、イラストレーターになるには水丸さんの感性や見る目を養う授業と長友さんの四の五のいわずに描くこと、描き続けることの大切さを教える授業は両方大事で、二人の授業を受けられたことは私にとって幸運でした。

ー右近さんは今回の個展のためにアクリルガッシュで描きおろしされ、
アナログでの作品制作は久しぶりだったそうですね。
普段、お仕事のために描かれるデジタルでの制作と比べて、
絵の具や筆を使われた感触や印象はどのようなものでしたか?
楽しかったことや面白かったこと、
逆に苦労したことなどがあれば教えてください。

 

私は普段、タブレットやPCで絵を描いています。水丸さんの授業を受け始めた頃、版画や切り絵など、紙と手に距離がある方法を試したらどうか、と言われて以来ペンタブレットを使っています。それから展示する時を除いて仕事の時もほとんどデジタルで描いています。
ただギャラリーで展示する際には絵の具を使いたいと考えています。全く同じものが描かれていたとしても(私の技術ではできませんが)、出力されたものと、絵の具など使って描かれた絵ではなにか説得力が違うように思います。出力には乗らない情報が原画にはあって、ギャラリーで絵を見る際にはそれを見ることが醍醐味だと感じているからです。
デジタルで描く時には簡単に曖昧な色味を作れるのですが、その色を絵の具で作ろうと思うとなかなか難しくて、色作りには苦戦しました。
計画していた色と違う色ができても気に入って使うときもあって、いつも使わない色が使えたのは楽しいなと思いました。
今後は仕事でも、用途によって絵の具とデジタルを併用できたらいいなと思っています。

ー右近さんが今後挑戦されたいことや、
イラストレーターとしての展望などをお聞かせください。

 

イラストレーターとして、もっと仕事がしたい。書籍の仕事が少しずつ増えてきたので、これをもっと増やしたいと思っています。本に限らず他のジャンルの仕事にもどんどん挑戦できたらいいなと思っています。

インタビュアー 須貝美和

タカヤママキコ個展 「奇譚」

今回ご紹介するのは、2024年4/5~10に個展を開催されたタカヤママキコさんへのインタビューです。
ポップとミステリアスが共存する世界は水彩と切り貼りを併用された独自の表現で描かれています。
タカヤマさんがこれまで手がけられた数々のお仕事作品も展示され、大変見応えのある展覧会となりました。
会場の様子をインタビューとともにお楽しみください!

展示作品はオンラインショップでお取り扱い中です。
http://hbgallery.shop-pro.jp/

ー昨年は東京と京都での個展や、複数のグループ展での発表、そして数々のクライアントワークと、
非常にお忙しい毎日を過ごされていたと拝察いたします。
HBでの個展が決まってからは、どのような展覧会にしようと準備を進めて来られたのでしょうか。
今回の個展に対するタカヤマさんの想いを是非お聞かせください!

 

昨年の個展では、コロナ禍中に描き溜めた自主制作のイラストを中心に展示したため、テーマを決めて描くということをしなかったのですが、今回の個展では何かしらテーマを決めて描こうと思っていました。ここ最近、イラストを見ていただいたデザイナーさんやエージェンシーの方から「タカヤマさんが描く不気味で怖いイラストをもっと見たい」と言っていただくことが多かったので、今回は不思議な物語を意味する『奇譚』をテーマに、ちょっと不気味で怖い雰囲気のイラストを中心に展示しようと準備を進めてきました。また、イラストからストーリーを自由に想像していただきたかったので、タイトルを表記したキャプションはあえて掲示しませんでした。

ータカヤマさんは水彩絵具で描かれてから、切り貼りの工程を経て仕上げるとお聞きしています。
実際に原画を拝見すると、カットされた紙の重なりや輪郭の表情、髪の毛や顔の陰影表現など、
丁寧な手作業に目を奪われ、アナログの魅力を改めて実感します。
タカヤマさんが現在のような制作スタイルになった経緯などをお伺いできますか?

 

10年くらい前から線画にPhotoshopで透明水彩の着彩をしたイラストで、挿絵やパターンデザインなどの仕事をしていたのですが、ずっと憧れていた装画の仕事をしたいと思ったときに、装画としてはイラストの印象が少し弱いのではないかと思いました。そこで、ほかの画材や手法を色々と試してみたのですが、以前のスタイルよりは強い印象を与えることができ、楽しく描き続けられそうだと感じた現在のスタイルに落ち着きました。
切り貼りのスタイルを始めた頃に、ギャラリーハウスMAYAのブラッシュアップ講座で講師をされていたアルビレオさんと大島依提亜さんからイラストを評価していただけたことも、今のスタイルを続けていくうえで大きく影響していると思います。

 

ーHB個展のDMはタカヤマさんの切り絵の表現が再現されているかのようなエンボス加工が施されており、
世界観が滲み出るタイポグラフィも見事です。
昨年のtwililightでの個展でも円型の変形DMに手書き文字と、手元に保管したくなる素敵なDMだと感じます。
双方のデザインを担当された千崎杏菜さん(https://twitter.com/senzaki_d)へは、

タカヤマさんからデザインの希望などはお伝えされるのでしょうか。
ご自身でも寒中見舞いなどで印刷にこだわられていると存じますが、
タカヤマさんがDM制作に力を注がれている理由や、
千崎さんにデザインを依頼されている理由などもお伺いできますか。

 

千崎さんにはDMに使用したいイラストやサイズ規定など最低限の希望はお伝えしますが、デザインについては基本的にお任せしています。いつも想像を上回る素晴らしいデザインをご提案くださるので、安心してご依頼しています。千崎さんとの関係は、3年前にケーキのパッケージイラストをご依頼いただいたことからスタートしましたが、偶然自宅が近所だったり、アートやファッションなどの好みが似ていたりと、不思議なご縁を感じています。DM制作に力を注いでいる理由としては、目を惹くDMを作ることによって、より多くの人の記憶に残ることができるのではないかと考えているからです。私自身、紙ものが好きで素敵だと感じたDMを収集して壁に飾っているのですが、DMを持ち帰ってお部屋や仕事場に飾って毎日眺めてもらえたら本望だと思っています。

 

ー会場では、タカヤマさんが装画を担当されたソン・ボミさん著/橋本智保さん訳『小さな町』が掲載されている、
書肆侃侃房さんの海外文学カタログが配布されています。韓国文学の装画担当はタカヤマさんの念願だったそうですね!
タカヤマさんが思う韓国文学の魅力はどんなところでしょうか?

 

『小さな町』で初めて韓国文学の装画として過去作のイラストをご使用いただいたのですが、念願だったのでとても嬉しかったです。また、イラストが物語の内容と絶妙にリンクしていて、『小さな町』の装画ために描いたのかも…と思えるほどでした。
すべての韓国文学を読んでいるわけではないので一概には言えないのですが、韓国文学では社会問題や実際に起きた過去の事件などを物語に織り込んでいたりして、それらの問題に触れながら物語が進んでいく点に、深みや面白さを感じています。私はとくにチョン・セランさんのSF作品が好きなのですが、ストーリーの面白さもさることながら、社会的に自立していて、ありのままの自分を生きている女性が主人公のことが多く、読んでいて背中を押されます。チョン・セランさんのSF作品と自分のイラストの世界観には、不思議とリンクする部分を感じていて、読んでいるとイラストのイメージがむくむくと湧いてきます。韓国のエッセイも好んで読んでいますが、これまで社会で当然とされてきた慣習や価値観に抗い、ありのままの自分で人生を謳歌するために行動する女性の姿に共感しますし、勇気づけられる点にも魅力を感じています。

 

ータカヤマさんはX(旧Twitter)で、ご自身のやりたい仕事を公言され、見事実現されています。
まさに有言実行、イラストレーターとして明確なビジョンを持って活動されているとお見受けします。
是非こちらのインタビューでも、タカヤマさんがこれから挑戦されたいお仕事や、活動の展望などをお聞かせください!

 

大変ありがたいことに、やりたいと公言してきた仕事を一つ一つ実現することができました。たくさんのイラストレーターの中から私を見つけて、ご依頼くださる方々のおかげに他ならないと思っています。また、やりたいと公言した仕事を1度実現して終わるのではなく、繰り返しできたらいいなと思います。装画の仕事はもっとたくさんしたいですし、お菓子などパッケージの仕事もたくさんしたいです。

これから挑戦したい仕事は、商業施設のビジュアルや映画のオルタナティブポスターなど広告系の仕事ですが、基本的にはどんな仕事にも挑戦していきたいと思っています。

今後の展望としては、昨年から陶芸を始めて面白さに目覚めたので、いつか陶芸作品での展示を開催してみたいです。

インタビュアー 須貝美和

並木千香個展 「どこかで出会う」

今回ご紹介するのは、2024年3/29~4/3に個展を開催された並木千香さんへのインタビューです。

並木さんはHBWORKvol.3で見事アルビレオ賞を受賞され、受賞者によるグループ展に続き、
今年は個展での作品発表となりました。
日常生活の中で見落としてしまうような一瞬の風景が、
並木さんの筆遣いや色彩によって、情景として蘇り、穏やかに心地よく表現されました。
会場の様子をインタビューとともにお楽しみください!

展示作品はオンラインショップでお取り扱い中です。
http://hbgallery.shop-pro.jp/

ー並木さんはHBWORKでアルビレオ賞を受賞され、昨年の受賞グループ展に続き、今回は初個展です。
グループ展と異なり、個展は全て一人で展示の準備を進められたと思いますが、
その中で大変だったことや悩まれたこと、
逆に楽しかったこと、やってみて良かったことなどをお聞かせください!


作品のサイズをどうするか悩みました。いつもは2号くらいのサイズに描いているのですが、ひとつの空間を通して見るときの体験を想像すると、大きめの作品もあるとよいと思いました。ただいきなり大きな作品を描く勇気はなく、段階的にいくつかサイズを用意して、感覚をつかみながらサイズを上げ、作品点数を増やしていきました。結果的に今回一番大きな作品は8号でしたが、ギャラリーで展示してみるとあまり大きくはなかったです。また、作品のサイズはある程度揃えたほうがよいなと、これも展示してみて思いました。

よかったのは写真を一緒に展示できたことです。受賞後にアルビレオのお二人から「写真も展示してみては」と助言をいただいて、うれしかったのですが、これは出せるものなのかという迷いがあり受賞展では出せませんでした。それから写真を撮っていくうちに、これはこれで見てもらいたいという気持ちが湧いてきて、そのときの助言を励みに2年越しの実現となりました。

ー展示されている絵は油絵具で描かれていますが油絵具を使われるようになった理由や
油絵具の魅力を教えてください!
また、油彩画でありながらグレイッシュで穏やかな印象を受けますが、白い絵の具を多く使われているのでしょうか?
木製パネルに描かれているのには何か理由があるのでしょうか?

絵を描きはじめたとき、鉛筆、パステル、水彩、切り絵、と思いつくまま画材を試してみて一度アクリル絵の具に落ち着いたのですが、どうも乾きが早いことに焦ってしまい、油絵具を試してみることにしました。ウエマツ画材店で店員さんに相談し、合わなくても潔くやめられるよう、本当に最小限の道具を教えていただき揃えて、描きはじめました。
油絵具のいいところは、乾きがゆっくりなので長い間全体のコントロールが効くところ、乾く過程で色が変わらないところです。安心して描けます。
絵の具は白と、グレー、青も好んでよく使っています。空気をふくめるようなイメージでいろんな色に混ぜています。
木製パネルは初の試みでした。いつもは油彩用の紙に描いているのですが、額装を用意するのがおっくうだったので、これを機にパネルに描いてみようと思いました。キャンバスに描く選択肢もあったのですが、枠のサイドがすっきりして見えるパネルの方を今回は選びました。

ー会場には並木さんが撮影された写真も展示されています。
並木さんはイラストレーションとは別に
写真のアカウントもお持ちですね。
https://www.instagram.com/chika_namiki_/

見落としてしまいがちな日常の一瞬の光景が写真に収められており
写真作品も魅力的です…!
写真を撮られるようになったきっかけなどはありますか?
また、並木さんが写真から絵に描きおこす際、何か意識されることはありますか?

 

はじめは絵を描くための素材としてスマホで写真を撮るようになったのですが、だんだん写真を撮ることそのものがたのしくなり、最近は絵のために撮ることはほとんどなくなりました。絵を描くときは、日頃から撮りためている写真のなかからそのとき描きたいものを選んで、トレースして描いています。
展示用の絵を描きながら意識しはじめたことなのですが、筆をどの方向に滑らせるかということが空気感をつくるうえで結構重要だということに気がつきました。過去の絵を振り返るとなんとなく無意識にはやっているのですが、今後は意識的にやっていくと思います。

ー並木さんは徳間書店発行の総合文芸誌「読楽」で1年間表紙絵を担当されました。
表紙絵を描くにあたって、並木さんが普段描かれる絵と何か意識は変わりましたか?


描きたいように描いて大丈夫ですと言って頂き、ほんとうに自由に描かせていただきました。
表紙の色味は各号で変化があったほうがよいとのことだったのでその点は意識し、
1年間分を並べた時になるべくかぶらないような配色を心がけました。
モチーフの色味の選定の他に、外のシーンだったら、昼、夕方、夜、と違う時間帯を選ぶことで色の違いが出るようにしています。
また、同じ理由で彩度も上げたほうが変化がつけられると思ったので、普段の絵よりも鮮やかに色味を感じられるように調節しています。ちなみに人物は自撮りしています。服の色や画面に対する肌の割合などを考え、三脚とリモコンシャッターを使ってもとになる写真を撮っています。

ー並木さんが今後挑戦されたいお仕事や活動、
ペインター、イラストレーターとしての展望などをお聞かせください。

 

フェミニズムに関心があるので機会があれば何かしらのお仕事で携わってみたいと思っています。
でもあまりテイストが合わないんじゃないかとも思っています。
おそらくこれからも生活の中で写真を撮ったり絵を描いたりして過ごしていくだろうと今は思っていますが、いちばんはその時々にやりたいことをやれるといいなと思っています。同じことを続けたり、休んだり、新しいことを試したりしながら、変化する気持ちに合わせて過ごしていけたらと思っています。

インタビュアー 須貝美和

しろた友貴個展 「四季小景」

今回ご紹介するのは、2024年3/22~3/27に個展を開催されたしろた友貴さんのインタビューです。

実在する風景と実在しない風景を描き、静かな時間が流れる展示会場となりました。
ふとした一瞬の風景から様々な景色や思いが感じられます。
会場の様子を制作インタビューとともにお楽しみください!

展示作品はオンラインショップでお取り扱い中です。
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ーしろたさんはHBでは初めての個展となりました。
昨年はMJイラストレーションズ主催のコンペで南伸坊賞を受賞され、
受賞展やグループ展など、作品発表の機会が続いてらっしゃいますね!
しろたさんが今回の個展開催を決意された理由や、
「四季小景」というタイトルで展示作品を風景画に統一された理由などを教えてください。

 

HB galleryではとても素敵な展示を沢山みてきていたので、以前から展示することへの憧れはありました。
しかし、まさか私にお話がくるとは思ってもみなかったので、正直お話をいただいた時は驚きましたが、このチャンスを逃したらもうこないかもと思い後先考えず即決いたしました。
個展をすると決めた時、全て風景画にしようというのは最初から決めていました。
理由という理由はないのですが、描いてみたいモチーフがたくさんあったからだと思います。
四季小景というタイトルは、小景という言葉の「ちょっとした眺め、小規模な風景画」という意味が私のなかでしっくりきたからです。
そこでどうせなら四季折々の小景にしようと考えました。

 

 

ー展示作品は、実在する景色と実在しない景色が混在されているそうですが、
その違いが見分けられないほど、臨場感のある風景が広がり、心が静まるような思いがします。
実在しない景色は、どのように制作を進められたのでしょうか。
写真資料などをもとに描かれているのですか。
その景色をモチーフに選んだ理由なども教えてください。
また、多くの風景作品に、一羽の鳥が飛んでいる様子が伺えます。
鳥にはどんな想いがこめられているのでしょうか?

 

実在しない景色は、最初なんとなく描きたいイメージから構図を描き起こして、それにできるだけ不自然さが出ないよう気をつけながら物を配置していっている感じです。
写真資料をいくつか組み合わせたりもしますし、想像で描いている時もあります。
元々このような風景画を描き始めたのはコロナ禍なのですが、なんとなく息苦しい日々を送っている中で鳥が飛んでいるのをみるたび、のびのびとして気持ちよさそうだなと思っていました。
なので、絵の中でもその空気感を出したいときに好んで出すモチーフになっています。

 

 

ーしろたさんは大学で日本画を学ばれ、
現在はPhotoshopやProcreateで制作されていますね。
デジタルでの制作をされるようになったきっかけは何でしたか?
しろたさんが日本画で得た経験は、デジタルでの制作に何か影響を与えていますか?

 

きっかけは、仕事をしているので効率よく描きたかったのと、デジタルであれば外出中でもお仕事が来た時に対応できるかな、と思ったからです。
日本画で制作するときは、下地の色や塗る順番などかなり計算して描かないといけなかったのですが、デジタルのレイヤーなどの扱いがそれに近い感じで、割と抵抗なくできたかなと思います。

 

 

ー展示作品ではデジタル作品の上から絵の具で加筆するなど、
新しい試みをされていますね。
加筆されようと思った理由は何でしょうか?
また、絵の中のどのような箇所に加筆をされましたか?
加筆する前と加筆した後の効果や印象の違いはどんなものでしたか?

 

加筆しようと思ったのは、実際に足を運んで展示をご覧になられた方々は筆跡が見れる方が楽しいかなと思ったからです。
私自身、展示でそうゆうとこを楽しみにしているからかもしれません。
加筆してみて感じたのは、やはり描き込みすぎてしまったところもあるので、加減が難しかったです。
加筆する前と後の効果や印象の違いは、細かいところが描ける点は良かったですが、その分、視点が散りやすいですし、説明的になってしまうのが難しいなと思いました。

 

 

ーしろたさんが今後挑戦されたいこと、
イラストレーターとしての展望などをお聞かせください。

 

本の装画のお仕事をしてみたいです。
もともと絵を描くようになったのが、こどもの頃、図書館で借りた本の装画に感動したのがきっかけでして。。
表紙をみて、読んでみたくなるような絵を描けるようになるのが目標です。
絵本は、大学生の時に長新太さんの絵本と出会い、腰が抜けるほどの衝撃を受けて以来ずっと描いてみたいと思っていますが、物語を作るのが難しくて絵まで辿り着けていません。
色々な絵本を読んで、目下勉強中です。
また、今回の展示でいろいろなご意見をいただいたので、それを踏まえていろいろ試しながら挑戦してみたいと思っています。
まずは、売り込みなど積極的に動けるよう頑張りたいです。

 

インタビュアー 須貝美和

四宮愛個展 「だから、かけない」

今回ご紹介するのは、2024年3/15~3/20に個展を開催された四宮愛さんのインタビューです。

少し妖しくも美しい作品を描き出す四宮さん。
様々なテクスチャーで実験的な作品も並ぶ圧巻の展示会場にしていただきました。
会場の様子を制作インタビューとともにお楽しみください!

展示作品はオンラインショップでお取り扱い中です。
http://hbgallery.shop-pro.jp/

 

 

ー個展「だから、かけない」はどのような思いで
準備を進めて来られたのでしょうか。
個展のテーマと併せてお聞かせください。

 

この数年で受けた大きな変化のひとつに、コロナ禍がありました。
「会いたい」と気軽に言えない状況が、
「本当は伝えたい言葉を、書いては消してを繰り返す手紙のようだ」と感じました。
ある言葉を書けない、ある声を掛けられない…この感覚が、個展テーマのスタートでした。

個人的な変化としては出産や引越し、別れ(離別、死別)がありました。
それらの思い出の中で、理不尽さ、悲しみ、辛さ、後悔などたくさんの気持ちを感じました。
その思いを言語化したとき、とうてい相手に伝えられるようなものではなく
やはり「書いては消す手紙」のように自分の中に留めてきました。
たとえば、今現在も病気で戦う叔母がいるのですが、
「元気?」というごくありふれた言葉を掛けられないもどかしさ。
そういった、【(書/掛)けない】言葉たちや思いを絵に描こうと思いました。
(しかし、「元気?」って聞けなくても、「大好きだよ」と
別の言葉なら掛けられるという救いもあったのでした。)

ただ、このテーマで進めようとしたのですが、途中で身動きが出来なくなってしまいました。
【(書/掛)けない】言葉たちや思い…このままだとあまりに重かったようです。(ネガティヴすぎたようで笑)
そこで、【(書/掛)けない】に縛られず、様々な視点の【(か)けない】から制作する事にし、なんとか完走出来たのでした。

「(か)けない」違いの漢字を挙げ、そこからインスピレーションを得る。(賭けない、欠けない…など)
飽きやすい性格上、ずっと同じ方法では「かけない」ので遊びや実験をしてみる。
(不慣れの為)一発で「かけない」画材やモチーフに挑戦する。などなど。

 

 
ー展示作品は様々な画材、技法を併用され、
衣類に印刷できるガーメントプリンターを用いたり
OPPシートを活用した表現など、
1枚の絵の中に多様な絵肌を味わうことができます。
作品のキャプションにも実際に使用してみた結果、
そこから得たこと、感じた点など、
四宮さんの考察が書かれており、
その探究心の高さに脱帽します。
技法のアイデアは、普段の制作の中で生まれるのでしょうか?
影響を受ける媒体などはありますか?

 

普段の制作の中で、思いつきやアイディアを実験的に取り入れる事が好きなようです。
本当は、「手間の掛からない方法」を求めているのですが
気がつけば真逆の方法に手を付けている事が多いのです。(切る、貼る、多媒体をMIXさせる…)
自分の描き方はこう、といったスタイルがないのが長年の悩みでもありましたが
自由に実験するのが好きな性質なのだと自覚出来たので、今後はその部分を楽しもうと思います。
幼少から影響を受けてきたものはミュージカルでした。
近年、特に影響を受けたものにチェコのアニメーションがあります。
(ヤンシュヴァンクマイエル、クエイブラザーズなど)

 

 
ー四宮さんはオリジナルキャラクター「にゃんことみーこ®」を商標登録され、
もう15年以上、ハンドメイド作家としても精力的に活動されています。
http://www.nyanco-mico.com/
製品開発・イベントへの出展も継続されていることに加え、
ご本人名義の作品での評価も高く、2022年のペーターズギャラリーコンペでは審査員のW受賞もされました。
二人のお子さんの子育てもされながら、どうしてそれだけ多くのタスクをこなせるのでしょうか?

 
にゃんことみーこ®も、本人名義での活動および今回の個展も
夫の理解と協力がなければどれ一つも成り立ちませんでした。

学生の頃から、ただのラッキーで流れに任せて生きてきました。
何かひとつの事を、死ぬほどの努力と情熱で取り組んだことがなかったのです。
そういった経験が、裏打ちされた自信につながるという事を理解していなかったのですね。

あらゆる自信の無さに苦しんでいた私に
これらの「やりたい事」をやりぬくように勧めてくれたのが夫でした。

今回の個展準備期間中、
夫には、家事、育児、ときには制作の相談など色々と助けてもらいました。
幼い子供たちには、遊ぶ時間があまり作れずたくさん我慢をさせてしまったので
今後はもっと効率を上げて時間をうまく使いたいと切に感じています。

 

 
ー個展の挨拶文には、四宮さんが今回の個展制作を経て
「なぜ描けなかったのか」
「どうすれば描けるのか」
「何をこれから描いていきたいのか」
が分かったと書かれています。
描けなかった理由、描けるようになった理由、
四宮さんが到達された答えをお聞きしたいです。
そして四宮さんはこれから何をご自身のテーマとして
制作、探求されていくのでしょうか?

 
■描けなかった理由
個展のテーマを決める以前から、描くと決めていた絵がありました。
疎遠になった友人への気持ちを表現したものだったのですが、
何度描き上げても納得の仕上がりにならず。
仕上がらないという焦りももちろんあったのかもしれませんが、
描いている途中で、ただただ「苦しい」事に気がつきました。
そして、この作品が描きあがったところで何も嬉しくない気持ちになっている自分を想像しました。笑
絵を描くって、本当はこんなに苦しいものではないはずと思うと同時に
「描かずにはいられない!」から描く、それが一番だなと思い至りました。

■描けるようになった理由
仕事につながりそうだから、買ってもらえそうだから、誰かに評価してもらえそうだからではなく、
「描かずにはいられない!」から描く、それが自然体で描き続けられるものなのだと分かりました。
背伸びせず、難なく自分の引き出しから取り出せる題材はやはりコレなのだなぁと実感するものがありました。

■今後の自身のテーマ
上記のような思考を経て、自分はファンタジーの世界を表現するのが好きなのだと自覚しました。
考えてみれば、常にそういったシチュエーションを頭に巡らせ、絵に落とし込む方法を模索しているので…。
制作を続ける限りは、ずっと描き続けていきたいと思っています。
ただ、先に述べたように「飽き性」なのがネックです。
欲をかくようですが、違った表現や技法を求めて常に実験を続けていきたいというのが本音です。

 

 
ー作家として、イラストレーターとして、多彩な活躍をされている四宮さん。
今後挑戦されたいお仕事や、表現方法などを教えてください!

 

自分にとって大きな影響を与えてくれた、舞台や演劇の世界に絵を通して携わってみたいです。
それから、お話を考えるのも好きなので、1年に1作完成を目標に物語を創作してみたいです。
あとは、商業施設の広告で自分の絵を大きく使ってもらえる日がこないかなと…笑
他にも挙げきれないくらい希望がありますが、全部かなえられるよう精進します。

 

 

インタビュアー 須貝美和

くぼいともこ個展 「パティスリー」

今回ご紹介するのは、2024年3/1~3/6に個展を開催されたくぼいともこさんのインタビューです。

たくさんのケーキやお菓子をリアルでありながら可愛らしく描かれるくぼいさん。
実際に購入して、食べてから描かれた作品とのことです。
「美味しそう」「お腹が空いてきた」などのお声をたくさんいただき、
華やかな展示会場にしていただきました。
会場の様子を制作インタビューとともにお楽しみください!

展示作品はオンラインショップでお取り扱い中です。
http://hbgallery.shop-pro.jp/

 

 

ーくぼいさんは初めての個展となりました。
初個展は大好きなケーキやお菓子をテーマにされると決められていたとお聞きしています。
くぼいさんが感じるケーキやお菓子の魅力や
くぼいさんが食べ物をモチーフにされるようになったきっかけや理由を教えてください。

 

食べることが好きなので自然と食べ物モチーフを描くことが多くなりました。
ケーキなどのお菓子は普段の食事と違って必要な栄養素ではありませんが
私にとってはその美しさと美味しさは心ときめく潤いであり癒しです。
初めての個展を長年憧れていたHBさんで開くことができるということで
自己紹介を兼ねてケーキをテーマにいたしました。
今回HBさんの投稿をご覧になった銀座ウエスト様がお越しくださり
商品を描いた作品を本社にお迎えくださるという夢のようなご縁に繋がりました。

 

 

ーくぼいさんはイラストレーター山田博之さんが主催される塾でイラストレーションを学ばれたそうですね。
山田さんからはどのようなアドバイスを受けましたか?
山田塾に通って変化されたことなどはありますか?

 

「自分が描きたい物、楽しく描ける物、得意な物を描く」
「無理にタッチを作らず、10年後も自然に描けるように」など
イラストレーションへの向き合い方を教わりました。
それまではどうやったらコンペで選ばれるのか、
覚えてもらえるような個性的なタッチを作らなきゃと焦ってましたが
肩の力が抜けて自然に描けるようになりました。
自分では面白味のない普通の絵だなとは感じてますが
今はどんなに忙しくても描くことが楽しいですし、描いていて「生きてる!」と感じます。
個展ではお客様から「作為的な感じがしなくて良い」「実物より美味しそうに見える」
とお声を頂けて嬉しかったです。

 

 

ー展示されている作品は、全てくぼいさんが召し上がられたケーキやお菓子ということですが、
作品になるまでにどのようなプロセスをたどられるのでしょうか?

 

ケーキの場合はまず頑丈な保冷バッグと大きめの保冷剤を準備して買いに行きます。
崩れないよう慎重に持ち帰り、色々な角度から撮影して美味しくいただきます。
その後写真の中から一番そのケーキが魅力的に見える画像を選び参考にしながら、その時の味や食感、香りなど思い出しながら描いてます。

 

 

ーくぼいさんは水彩絵具でモチーフを丁寧に魅力的に描かれています。
水彩絵具を使われるようになったのはなぜでしょうか?
水彩絵具の魅力を教えてください。

 

子どもの頃から馴染みがあり、紙と水と筆があればすぐ描ける手軽さが面倒くさがり屋の自分に合っているようです。
水に溶ける鮮やかな絵の具の滲みが気持ち良く描いていて癒されます。
コントロールできないところも一筋縄ではいかない魅力があります。

 

 

ーくぼいさんが今後挑戦されたいお仕事や活動、
イラストレーターとしての展望などをお聞かせください。

 

広告やパッケージのお仕事がしたいです。
食品関係は勿論、花植物や動物も描きたいので化粧品や雑貨にも興味があります。
いつかCDジャケットなどのお仕事にも携わりたいです。
こだわりが詰まった丁寧に創られた商品や上質なブランドなどをより良く魅せるためのお手伝いが出来たら嬉しいです。
これから得意分野は活かしつつ技術は勉強して、幅広い視野で普遍的なもの、
より多くの方の心に届くようなイラストを描いていけたらいいなと思ってます。

 

インタビュアー 須貝美和

才村昌子銅版画展 「版の遊び」

今回ご紹介するのは、2024年3/8~3/13に個展を開催された才村昌子さんのインタビューです。

幻想的で、またモダンな雰囲気も醸し出ている個展会場となりました。
銅版画ならではの技法により、魅力的な質感で表現された作品たち。
会場の様子を制作インタビューとともにお楽しみください!

展示作品はオンラインショップでお取り扱い中です。
http://hbgallery.shop-pro.jp/

 

 

ー才村さんは3回目のHB個展となりました。
展示作品は全て銅版画の作品でありながら、
色や形、作品のサイズも多種多様で、銅版画の魅力が余す所なく発揮されています。
今回の個展「版の遊び」におけるテーマや、
発表にあたって意識されたことなど、今個展に寄せる才村さんの想いをお聞かせください。

 

多色刷りも版の組み合わせで多様な表情が生まれますし、抽象と具象のイメージを重ねて刷るなど、見え隠れするイメージがかくれんぼにも似て「版の遊び」というタイトルをつけました。銅版画の制作はいろいろな驚きと発見に満ちています。
そんな興奮と喜びが作品から伝わる展覧会になれば嬉しいです。

 

 

ー個展会場で流れている音楽は、才村さんの銅版画が使われているジャケットデザインですね。

音楽や異なる領域との関わりについて、どのように感じていますか?

 

会場で流れている音楽は、今回展示している『月の変奏』のシリーズを描くきっかけとなったアルバム
『ピアノフォルテ・イン・グリーン』です。
以前ピアニストの田中綾さんからピアノリサイタルのキービジュアルを依頼されて、
楽曲のイメージを銅版画で表現しました。
銅版画の表現を深めていくことで、音楽家や写真家など異なる領域の方々と
より深い交感が生まれるようになったことをとても嬉しく感じています。

 

 

ー才村さんは銅版画の制作にますます魅力を感じているそうですね。
銅版画のどんなところが才村さんを引きつけるのでしょうか?
デジタル化の時代で、敢えてアナログの複製技法を探求されている理由を教えてください!

 

プレス機の圧で紙に刷り取られた銅版の型とインクの盛り上がりには、
均一でフラットな現代の印刷物とはまるで違う魅力と物質感があります。
そして製版や刷りの段階で自分の意図しない偶然性や揺らぎが生まれることが、
アナログの複製技法の味わいと面白さですね。

 

 

ーこれから挑戦されてみたいこと、今後の展望をお聞かせください!

 

A5:銅版画+様々なマテリアル、
銅版画を陶器に見立てて作るなど新たなアイデアがどんどん湧いてきて、
版の遊びはこれからも続いていきそうです。

 

インタビュアー 須貝美和

CHIZURI個展 「くろいいきもの」

2024年2/23~2/28に個展を開催されたCHIZURIさんへのインタビューです。

力強い「くろいいきもの」たちが展示空間いっぱいに広がる圧巻の展覧会となりました。

また平面作品に加え、立体作品やオリジナルグッズ、消しゴムスタンプなど、観る人を楽しませる工夫も満載、

CHIZURIさんの制作意欲にあふれた個展の様子をこちらのインタビューでも是非お楽しみください!

 

ーCHIZURIさんはHBでは初めての個展となりました。
マンスリーコメントが印象的です。

太陽の熱を吸収する大地のような
光を際立たせる闇のような
なにか分かりづらい影のような
ただそこにいる 黒い生き物

個展のタイトルにもある「くろいいきもの」は
CHIZURIさんが実際に見たことのある生き物なのでしょうか?
CHIZURIさんが黒い生き物を描かれるようになったきっかけや理由をお伺いしたいです。

 

生き物を描いているのは、純粋に動物が好きで興味の対象というのもあります。

写実的に描くことよりも、気になった特徴やイメージを抽象化して描いているので、

その想いも含めて今回の展示タイトルとコメントに乗せました。

黒い生き物たちは、かたちに重きをおいて描くことを意識したことで生まれました。

表したものが何か、人によって見え方が違ってくるのですが、わたしとしてはそれも面白くていいなと思っています。


ーCHIZURIさんはHBギャラリーのスタッフを務めながら作家活動をされています。
ギャラリーのお仕事を始めてから、CHIZURIさんの作品制作に何か変化はありましたか?
影響を受けたことなどはありますか?

 

1年前にスタッフとしてジョインさせていただき、目の前のことに向き合って勤めてきましたが、

改めて振り返ると、絵や心に刺激を与えてくれていると感じます。

オーナーのたりさんには絵に対しての具体的なアドバイスもいただき、

オーナーもスタッフの皆さんも全員作家なので、

意見交換などもできて、やる気に火をつけてくれるような環境です。

そのコミュニティーにいることで自分も成長している、という感覚はすごくあります。ありがたいことです。

 

ー昨年は陶芸教室へも通われ、その学びを活かした粘土作品も展示されています。

陶芸教室へ通われたきっかけは何でしょうか?

また、立体作品の制作は、CHIZURIさんが普段アクリルガッシュで制作されている平面作品と比べて、

何か違いを感じることはありますか?

今後も粘土の制作は続けられるのでしょうか?

 

昔からモノづくりが好きで、イベントなどで発表してきた延長で、陶芸にも興味があったので家の近くの教室に通っていました。

どちらもアナログで作っているので、立体制作も絵を描くこととあまり違いを感じていません。そこにあるものが良いかどうか、

あったら嬉しいかどうかが基準になっていると思います。

粘土を触るのは楽しいので続けると思います。いつかその場所のシンボルになるような、大きな立体などもつくってみたいです。

 

ー今回の展覧会では、artipur COTTAGEとコラボレーションされたハンカチ、巾着、トートバッグも販売されています。

こちらはどのような経緯でコラボが実現されたのでしょうか?

また、展覧会終了後はどちらで購入できますか?

 

描いている絵がブランドイメージとも合うということで一緒に作らせていただきました。今回は自主制作のイラストを提供して、色は先方と相談して決まりました。

わたしの絵がファブリックにも合うという発見もあり、このような機会をいただき感謝しています。

▼こちらからご購入可能です。ご興味がございましたらぜひ。

https://www.kankan-online.jp/smartphone/list.html?search_key=chizuri

ーCHIZURIさんが今後挑戦されたいことや、イラストレーター、絵描きとしての展望などをお聞かせください。

 

人や自分の心を震わせるものができたら、作家としてそれ以上に嬉しいことはないです。

誰かと一緒に組んでお仕事をすることで、わたし個人だけでは作れない新しいものが出来るのも見てみたいです。

具体的には、プロダクトや児童教育などに関わるお仕事なども出来たらと思っています。

描く題材は変化していくと思いますが、とにかくわたしは素直に今描きたいものを描いて、

日々鍛錬しながら、その時々の最善を皆さまに見ていただく活動を命尽きるまで続けていきたいです。

インタビュアー 須貝美和

大床嘉代子個展 「愛でる」

今回ご紹介するのは、2024年2/16~2/21に個展を開催された大床嘉代子さんのインタビューです。

繊細な切り絵とボールペンで描かれた黒の質感が印象的な大床嘉代子さん。
技法によって身の回りの物の見方が変わるようにも思います。
会場の様子を制作インタビューとともにお楽しみください!

展示作品はオンラインショップでお取り扱い中です。
http://hbgallery.shop-pro.jp/

 

 

ー大床さんは初めての個展となりました。
個展「愛でる」はどのような思いで準備を進めて来られましたか?
個展のテーマと併せてお聞かせください。

 

今回、個展を通じて自分を見つめなおす、ということが大きなテーマとして自分の中にありました。
なので「愛でる」というタイトルは早い段階から決まっていて、自分の好きなものたちを切り絵にこだわらず、自分が好き、良いなと思う描き方で描いていきました。
ですが一方で、今まで描いてきた絵と違った印象になるので、これで展示を進めていってもよいのか、すごく悩みながら作っていました。
11月にHBギャラリーのスタッフさんにそのことを相談したときに、大丈夫ですよって言ってもらえて、そこからは吹っ切れたというか、自信をもって進められました。

 

 

ー展示作品を間近で拝見すると
ボールペンやアクリル絵の具で描かれたイラストレーションに切り絵の表現が併用されています。
切り抜かれた箇所から鮮やかな色彩がのぞいたり、
一方で切り抜かれたパーツ自体が画面に美しく構成されていたりと
繊細な表現に思わず目を見張ります。
大床さんが現在のような切り絵の表現をされるようになったきっかけや、
影響を受けた作家などをお伺いできますか?

 

きっかけは本屋さんで「切り絵の切り方」という本を見かけて、やってみたのが最初です。
そのときに、紙の切れる感触や出来たときの達成感にとらわれてしまいました。
影響を受けた作家さんは、パレットクラブスクールの同期の友人たちだと思います。
美大などには通っていないので、あんなにたくさんの感性に触れられたのは本当な貴重な体験でした。

 


 

ー展示作品の「黒い静物シリーズ」はバスケットやお皿、急須などの
生活雑貨がグラフィカルに表現され、黒の色面はペンが重ねられた跡が見受けられます。
バスケットの作品は種類も様々ですが、モチーフは大床さんが普段愛用されている物なのでしょうか。
これから黒で描いてみたいモチーフはありますか?
また、ペンで色面を作られている理由などはありますか?

 

はい。うちで愛用しているものと、こういうのが欲しいというあこがれのものと、半々くらいです。
バナナのかごなんかは、本当に描いているときにバナナを入れていました。
しばらくは身の回りにある雑貨たちを描いていきたいと思っていますが、ゆくゆくはこの感じで人物も描いていけたらと思っています。
ペンを使っているのは描くための準備がいらないからです。
絵の具などを使うときに水をくんで、絵の具を準備して…というのが私には結構ハードルが高くて、なかなか行動に移せないのです。
ペンならすぐに描き始めることができるので私に合っているのだと思います。あとはインクの少しメタリックに光るところが好きです。

 

 

ー大床さんは化粧品会社の研究員を経てイラストレーターになられたそうですね。
どのような経緯でイラストレーターになられたのでしょうか。
会社員として働く経験は現在の活動に影響されていますか?
 

化粧品会社に勤めながらも、イラストレーターという夢を諦めたくないという気持ちで両方続けていました。
会社で働いたお金でパレットクラブスクールに通ったり、デザインフェスタなどに出ているうちに少しずつイラストのお仕事が入るようになった感じです。
会社員としての経験は、効率化できそうな雑務は効率化してく、といったイラストレーターのイラストを描く以外の部分に生かされている気がします。

 

 

ー大床さんが今後挑戦されたいお仕事や活動、
イラストレーターとしての展望などをお聞かせください。

 

今回展示した、黒い静物たちが新しいお仕事に繋がってくれると嬉しいです。
本の装丁や、広告のお仕事もいつかできるようなイラストレーターになりたいと思います。

 

インタビュアー 須貝美和