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藤枝リュウジ賞 大竹守個展「PUNK/生きる2」

HBファイルコンペvol.23 大賞展4週目は藤枝リュウジ賞を受賞された大竹守さんです。
2008年のファイルコンペで特別賞を受賞された後、さらに作品に磨きをかけ今回の大賞受賞へと繋がりました。
また今年の5月に開催されたTIS公募でも見事に大賞を受賞され、今最も注目を集めている作家さんです。

HBでは2008年の特別賞展、2012年1月の個展「PUNK/生きる」につづき、今回で3 度目の展示となります。
会場には、永井荷風  色川武大  深沢七郎  ブコウスキー等々、PUNK精神を貫き生きた人々と引用した数々の言葉、
それに引けを取らない大竹さんのPUNKな生き様を垣間見るような95点もの作品が会場いっぱいに並びました。

— 受賞を聞いたときはどんなお気持ちでしたか?

信じられませんでした。
審査があった日の深夜2時頃に、多里さん(HBスタッフ)から電話がかかってきました。
でも夜中だったので就寝中で気づかず、出られなくて。
近々、一緒にカレーを食べに行く約束をしてたのでその電話かなと。でもなんでこんな夜中に?と思いました。

次の日、お昼頃にまた電話がかかってきて、てっきりカレーの電話だと思って今度はちゃんと出たら、
「大竹さん、藤枝さんの大賞に選ばれたよ!」という知らせでした。
それを聞いた時点では話がうまく理解できませんでした。(とりあえずカレーの話ではなかったというのだけは理解できましたが。)
賞を獲れるなんてまったく予想も期待もしていませんでしたし、
藤枝さんは自分の絵には興味ないと思っていたので余計にびっくりして…
その年のコンペは、出すか出すまいか迷っていたのですが、
出さないとなんだか逃げている様な気がして、一応出してはみたものの本当にまったく期待はしていなかったです。

— 狙っていなかったのが功を奏したのですかね。
これまでコンペには何回くらい応募していましたか?

初めて出したのが、特別賞を受賞したときで、かれこれ4~5回出してます。
最終選考に残った年もありました。

—   ファイル作りで意識した点はありますか?

今回に限っては、昨年の個展で展示した作品をまとめました。そこそこ評判がよかったので。
ドローイング作品と貼り絵作品を両方入れてますが、技法は変わっても描く世界観は一貫統一させてます。

— 今回の展示は貼り絵の方がメインですね。

藤枝さんが一番良いと選んでくれた絵が貼り絵だったので、
これは「貼れ」ということなのだと思い、とにかく貼りまくりました。
技法はコピー用紙に絵の具で色をぬりたくり、それをちまちまちぎって厚紙にざっくり貼る。
細かいところはあまり気にしないです。
昔の古いモノクロ写真の退廃的な質感や空気感を貼り絵でうまく再現できればと思いながら貼っています。

— 昨年の「PUNK/生きる」の個展後、何か動きや変化はありましたか?

個展の約1ヶ月後に装画のお仕事をいただきました。
太宰治「走れメロス」の文庫本のカバー装画を描く仕事です。

その個展の際に壁に飾る作品とは別に、太宰の「人間失格」200冊が本棚に並んであるという
シュールなインスタレーション作品を試みようとしていたんです。ブックオフの100円コーナーを都内色々まわって約200冊の「人間失格」を買い集めました。(どんだけ人間失格したいんだい、君は!という阿呆みたいな話ですが。)
こんなアイデアを個展会場でやろうと思うのですが、とあるADの方に相談したところ、
「並んでいる本のカバーが、ぜんぶ大竹の絵だったらおもしろいのに。既成本のままじゃ全然面白くないしPUNKじゃない。」と言われてしまいました。でもその時点で既に個展の2週間前くらいで時間もあまりなくて。でも悔しいからやってやろう!と。
今までに描きためてきた絵の中から、本の内容に合う160枚の絵を選び自分でデザインしインクジェットプリンターで出力し本に巻き
「勝手に人間失格フェア」と題して160冊の「人間失格」を並べて展示しました。

それを発表した1ヶ月後に太宰治の「走れメロス」の仕事が来たので、
当然「展示を見た(知った)方がお仕事を発注してくれたんだ。大変だったけれどやってよかった!」と思いました。

しかし打ち合わせに行きよくよく話を聞いてみると、その展示は見ていないし知らない、
それとは関係のない理由で自分が選ばれたのだと、そのときわかったんです。
あれっ?と思いました。こんなことってあるんだと。
このタイミングで偶然に太宰の仕事が来るなんてありえないし…正直ちょっと怖かった。

あれは太宰からの、
「200冊買ってくれてありがとう!」「人間失格フェアやってくれてありがとう!」ってことだったのかなぁと思っています。

オーナーの唐仁原さんにも「(太宰を)呼んじゃったんじゃないの?」と言われました。
HBではこういう奇跡がよく起こるんですよ。

最近やった深沢七郎さんの「人間 滅亡的 人生案内」という装画のお仕事の時もそう。

[時流に媚びずPUNK精神を貫き生きた怒れる奴らを描きました。永井荷風 色川武大 深沢七郎 ブコウスキー等々。 彼らの言葉や生きざまは腐れた今を生きる我々の道標となるはずです。]

これはHBのサイトに、個展内容を掲載するためのコメントなのですが、
この文章をギャラリーへ送った一週間後に、深沢七郎さんの人生相談本の装画を描くお仕事が偶然来たんです。
このタイミングで?!とまたびっくりしました。HBで展示するたびに何か奇跡が起こるんですよね。
他にも今回のDMに決めていた絵をTIS公募に出したら、その絵が大賞作品の中の1枚に選ばれたり…
今回もなにか起こるのではないかと、ちょっとだけ期待しています。

— そんなことがあったんですね。大竹さんの引きが強いのでは…と思いますが。
今回も何かいいことが起こりますように!最後になりますが、今後はどのような活動をされたいですか?

実は、去年の個展終わった後くらいから絵と並行して別の仕事をはじめようと考えていたんです。
決して後ろ向きな理由ではないのですが、今の時代絵一本で食べていくのは相当厳しいので、何かしらの副業に就こうと考えていました。
でもこの藤枝リュウジ賞を獲ってしまって、個展が決まったので今回の個展が終わって落ちついたら職を探して、絵と両立させていくぞ!と考えてた矢先に、今度はなんとTIS大賞受賞の知らせが…
もう自分でもなにがなにやらわけがわからなくなってきてしまいましたが、もしかしたら
これは「このまま絵一本で行け」という啓示なのかなと。せっかく追い風も吹いてきたことですし、今後は苦手な営業活動に力を入れてみようかなと思っています。

 

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