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津田周平個展「カレンダーが終わらせてしまう」

今週の作家さんは津田周平さんです。HBでは初個展となりました。どこか懐かしく、寂しい雰囲気が心地よい津田さんの作品たち。今回のために描かれた新作や、ZINEの販売も!作品はすべて販売しております。お見逃しなく!

 

 

Q.今回のタイトルにはどんな想いが込められていますか?

HBギャラリーといえば思い入れが強過ぎてかなり悩みました。
昔のロシア文化がミーハーに大好きで、映画監督のニキータ・ミハルコフや小説ならドストエフスキー、画家だとピロスマニなどから、キジ島の木造教会、マトリョーシカ等の小物まで魅入ってしまう感じだったので、今回の個展タイトルはロシアから取らせてもらおうと思い立ち、アニメのチェブラーシカに出てくるワニのゲーナの歌「空色の列車」から抜粋しました。
最初は動画の翻訳そのまま「カレンダーが終わらせてくれる」としていたんですが「今日という日が一年続けば良いのに」という箇所もあって感情的な矛盾を感じ、語尾を「しまう」にすれば歌詞の要約というか、対比をまとめてしまえると思いました。個展が終わるのを惜しむようなニュアンスも付け加えられて良かったです。

そういうロシア文化への憧れの総括として個人的な偏見ですが、ロシアの人々は絶望的なのになぜか異様に力強い印象を受けます。
寒すぎる土地、強い酒、あまりにも広すぎる土地、そう言った色々なネガティヴを納得したうえで諦観して生きている感じになんとも言えない魅力を感じてしまいます。

学生の頃チェブラーシカは流行の最後の方は可愛いという理由になってしまったけど、実際にアニメを見てみると沈んでいますし、淡々と生きているだけで。子供番組なのにかなり暗い。でもリアルで強くこれでいいんだなとも思った。絶望の中に無理やり希望を埋め込んだら中和されて淡々とした肯定感がある。自分の絵もそうありたい。

 

 

Q.津田さんは新聞社で長い間お勤めされていたんですね。

元は新聞社で整理記者をしていました。主に見出しとレイアウト作りです。文章を渡されて読んで、見出しを字数制限に合わせ考え、紙面をつくる。新聞は斜陽ですから仕事は過酷でした。
若い頃は新聞内で4コマ漫画を描かせてもらおうと勝手に社内で営業をした事もあります。4コマは全然相手にされませんでしたが、挿絵はたくさん描きました。正月新聞に見開きですごろくの絵を4年ほど描いていました。組織なので様々な意見が入って全然面白くないすごろくでしたが。埋まらない紙面をどうするかというところで、絵を好きなことを利用されていた気もします。

妻には、宮沢賢治の詩から引用した「ちょっとぐらいの仕事ができてそいつに腰掛けやがって」などとよく言われていたので、仕事をしていたわりに敬意は払われてなかったです。

 

 

Q.作品制作はどのようなきっかけではじめたのですか?

11年勤めた新聞社を辞め、外資系の会社へ転職しました。しかしどうやら事業計画がうまくいかないという理由で唐突に、その計画に参加する予定だった僕を含めその期に入った社員は辞めてくださいという流れなりました。その後の半年間は失意の中、失業保険で暮らしていました。新聞社でのごたごた引越しの疲れ、突然の解雇などで疲弊しきってしまい、ずっと寝ているような生活を送っていました。保険が終わり3ヶ月経っても、僕はまだぼーっとしていて、ある日妻と息子ら3人が不在で留守番してた時に僕は急に絵を描いてみようと思いました。
妻には暇なら漫画でも描けと言われていたけど描けなかった。その時絵を描いて「自分は1枚絵の人間だったんだ。漫画じゃなかった」と気付きました。息子が可愛いうちに横顔を描いておこうと思ったり、新聞の挿絵のために描き溜めていたメモを大きく描き出したり。そうしたらどんどん絵が描けて楽しくなりました。
描きはじめた時に放っておいたSNSも10年ぶりに再開しました。InstagramやTwitter、以前は反応がなかったのに、いいねがつき始めてそれも面白かった。そこからSNSが楽しくなったのがいい方向へ向かったんだと思います。

 

 

 

Q.今後はどんな活動をしていきたいですか?

子どもは大きなテーマなので、普遍性のある絵本など、子ども向けの仕事をしてみたいです。
最近家族が遊びで僕の絵でアニメを作ってくれて嬉しかったので、僕の絵が動くということにも挑戦してみたいです。
死ぬまで取り組めるライフワークのような活動を見つけられたらと考えています。
もう、絵を描くしか出来そうなことが無いので描ける環境を、健康的に保てるかどうかも課題です。

 

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